SLRC2回目の予選が終わったアルナイルの部室。
「タキオンの弥生賞も近づいてきてるね」
「ふぅン、不安材料も特にない。後はこのまま詰めていくだけだ」
おぉう、相変わらず自信満々のタキオンですこと。
「前評判もぶっちぎりの一番人気、対抗に挙げられていたシリウスのマンハッタンカフェは不調気味だからなぁ」
「それに、タキオンさんが出走すると分かってか他の子達は出走回避しているみたいですね。これもひとえにタキオンさんの強さが評価されてのことでしょうけど」
「アンカさんが出走してきても回避しなかったのって結構異例だったんだね~」
どういう意味ですかねぇファインさん。いや、まぁ分かりますけども。
「当然です!だってアンカ先輩の輝きは出走するウマ娘の方々すら魅了しますから!その輝きを見るために少しでも近くにいようと考えるのは「──本能を、抑えることはできない。アンカに負けることよりも、勝ちたい、という気持ちが上だった。──それだけのこと」うっ、そ、そうですよね……」
「……まぁ気持ちは嬉しいぞ、シーザリオちゃん」
凄い。少しフォローしたらめっちゃ目を輝かせて僕を見てる。クリスさんは不思議そうな表情をした後、自分の発言に気づいてか少ししょんぼりしていた。……しょんぼりクリスエス。
「後は、他の陣営はここで無茶をする段階じゃないと思ったんだろうね。今ここでタキオンにぶつかるよりも、皐月賞でタキオンにぶつかる……そんな風に考えていると思う」
「負けるとどうしても気が滅入るだろうからねぇ。少しでも良い調子を持続するために、大敗するという事態は避けたい……そんなところかな?」
「あまり油断していると、足元を掬われるぞ?」
フフン、ここは先にデビューしている先輩としてアドバイスですよ!これで足元掬われてちゃ世話ないですからね!
……ぶっちゃけ、タキオンのことだからそんなに心配していないんだけど。
「しっかり分かっているさ。どちらかと言えば、出走する人数が少なくてデータの採取が手間取りそうなことぐらいだ。皐月賞に向けて有力なデータが欲しかったんだがねぇ」
「皐月賞の対抗に挙げられているジャングルポケットは弥生賞には出てこないからね。でも、共同通信杯のデータはちゃんと取ってあるよ」
「さすがはトレーナー君だ!では、弥生賞が終わった後にじっくりと見させてもらおうじゃあないか!」
タキオンめっちゃ元気になったな。タキオンが楽しそうでなによりです。
これでタキオンの話は終わり。次は──デビューを控えている2人、クリスさんとファインさんだ。
「それじゃ、次はファインとクリスエスね」
「──OK。準備は、いつでもできている」
「はい、はーい!私もそろそろデビュー?」
ファインさんの言葉に頷くトレーナーさん。それを見てファインさん達は嬉しそうにしていた……クリスさんは微妙過ぎて分からんが。多分笑顔。きっと笑顔。
「とはいっても、デビュー自体は8月から先を予定しているよ。今後は2人で併走しながら調子を見ていこうか」
「──分かった。トレーナーが、bestと思ったタイミングで、order──指示をくれ。任務を遂行する」
「はーい!ついに私もデビューか~!」
「おいトレーナー!アタシはまだかよ!?」
そうして突っかかるのはジャーニーだ。ま~ジャーニーはまだでしょ。
「ジャーニーはもう少し先かな。君が目指すもののためにも、今はまだ力をしっかりと蓄えておかないと」
「……チッ!」
「焦らずゆっくりと、だ」
「わーってるよ!」
口調は乱暴だけどちゃんと分かってるんだろうな、あれは。現に口調だけでなにかにあたる様子もない。
その後はトレーニング。僕はというと。
「それでは、今日も頼むよアンカ君」
「良いのか?レース前にへこむようなことになって」
「構わないさ。1回の負けで一喜一憂するには遅すぎるぐらい私は負けているからねぇ」
「生憎だが容赦はしない……やるからには全力だ」
「そうでなくては面白くない……さぁ、走ろうか!」
タキオンとの併走だ。デビュー前からちょくちょく頼まれてはいたんだけど、最近は実験と称して併走の機会は増えてきていた。結果?さすがに負けんよ僕は。
「ふむふむ……今日も良いデータが取れたよ。早速検証だ!」
「……良くもまぁ飽きないものだ」
ま~何かに夢中になるって気持ちはとても良く分かる。凄く良く分かる!良いよね、夢中になれる何かがあるって!
他のメンバーもしっかりトレーニングをしている。さて、と。
「僕も次のSLRCをどこにするか決めるか」
「まだ決まってなかったのかい?」
う、うるさいですね。まだ安価してないんですよ。
「啓示をまだ賜ってないだけだ。賜り次第すぐにトレーナー君に伝える」
「ふぅン……ま、アンカ君ならどこに行っても勝てる、と言えないのがスーパーレジェンドレーシングカーニバルだからねぇ」
「……確かにな」
ここ2戦はギリギリの勝利。特にスプリント戦に関しては僕の得意な逃げだったのにも関わらず接戦だった。ま~千直だから仕方ない面はあるけど。
次のレースはどこになるか?相手次第では……本当に不味いことになる。
「セクレタリアト外部コーチにニジンスキーコーチも順調に勝ち星を重ねている。2人とも2連勝だそうだ」
「ま、師匠とコーチならば当然だろう……現役退いてるはずだよな?あの2人」
「現役退いて長いはずなんだがねぇ……」
それ言ったら松さんとかフジノオーさんとかどうなるんだ?って話だしタケシバオーさんもやべーことになるし……よし、深く考えたら負けだ!知らん知らん!
「しかし!私の研究にはひっじょ~に役立っている!かつての伝説達が一堂に会するこのレース、まさに研究のし甲斐があるというもの!それに、アンカ君経由でドクターファーガー氏ともつながりが持てたからねぇ!」
「そんなに有名なのか?」
「一部の界隈ではね。モンゴルダービーでメディカルチームのリーダーに抜擢されていただろう?それが何よりの証拠だ」
「あぁ~……そういやそうだったな」
たまに忘れがちになるがあの人メディカルチームのリーダーだったわ。ということは、すげぇ頭良いんだよな……そのたびに思い出すのは師匠の言葉。
『アイツは頭のいいバカだ。お前と一緒だな』
「僕は頭のいいバカじゃない!」
「急にどうしたんだい?アンカ君」
ハッ!?タキオンが怪訝な表情で僕を見ている!?口に出してたか!
「いや、なんでもない。気にするな」
「そうかい……ちなみに、アンカ君が頭のいいバカという言葉には同意だよ」
「どういう意味だよオイ!」
「普段の行動を省みたまえ」
ぐぬぬ……!常識人ぶってんじゃねーですよマッドサイエンティスト!
「生活能力皆無のマッドサイエンティストめ!」
「ハーッハッハッハ!事実だからなにも言い返せないねぇ!実際その通りだとも。私はトレーナー君やアンカ君がご飯を作ってくれなければすぐに餓死していたさ!」
「威張ってんじゃねーですよ!?改善する努力を見せたらどーですか!」
「無理だね!私は1人では生きていけないんだ、君達が養いたまえ!」
「微塵も努力する気がねーですねコイツ!?厚かましすぎる!」
「大体君だって良く分からない奇行をしているだろう?迷惑をかけているという点では私とそう変わらないと思うがね!」
「良く分からない奇行とは失礼な!神の啓示と言え神の啓示と!」
「ほほ~う?神の啓示とやらの為なら校舎の壁を使ってボルダリングするのも構わないと?それでたづなさんにしこたま怒られていたのはどこの誰だったかな~?」
「ぐぬぬ……!」
言うに事欠いてコイツ……!
「なーにやってだアイツら」
「争いは同じレベルの者同士でしか発生しないです。つまりあの二人は同レベルです」
「レースの成績は凄いのに生活態度がどっちもな~……」
「怒っているアンカ先輩も素敵……!」
「──シーザリオ。あれは、respect──する必要はない」
「あの2人は最古参だから仲良いね~」
その後もタキオンと滅茶苦茶競い合った。
タキオンとアンカの仁義なき戦い(勝手に争ってろ)。