弥生賞が終わってしばらく経ってからの昼下がり。アルナイルのメンバーでまったりと過ごしております。
「それにしてもタキオン。いつあんなことを考えていた?」
「ん~?なんのことかな、アンカ君」
「とぼけるな。イギリスのクラシックに挑戦することだ」
マジでびっくりしましたからねあれ!ウィナーズサークルの映像見ておったまげましたよ!
「アンちゃん椅子から転げ落ちるぐらいには驚いていたです。あの時のアンちゃんの絵面は面白かったです」
「言うんじゃないヴィッパー!……それで、いつから考えていたんだ?」
「考え自体は大分前からあったさ」
タキオンはこともなげに答えた。ほ、ほほう?
「アンカ君の海外遠征に付き合っているうちに、海外のウマ娘にも興味が湧いてねぇ!フフフ、今から楽しみで仕方がないねぇ!」
「……コイツを海外に解き放って大丈夫なのか?」
「──No problem.アンカが、海外のレースに出走している時点で、今更だ」
おいゴラァ!最近僕に対して容赦がなくなってきたなクリスさん!
ただ、タキオンは穏やかな表情になってますね?どうしたんでしょうか?
「それに、これはアンカ君のおかげでもある」
「……僕のだと?」
「あぁ。君の挑戦し続ける姿勢を見て、私もあてられたのだろう。己の衝動のままに挑戦したい……そう考えていたら、イギリスクラシックへの挑戦という考えが浮かんだのさ」
「タキオン……」
「empathy.──その気持ちは、とても良く分かる」
「そうだねぇ。アンカさんのレースを見てると、こっちもドキドキしちゃうから!」
「そうですね。タキオンさん達の気持ちは私も分かります!アンカさんのレースを見てると、私も頑張ろう!って気になれるんですよね!」
ふ、ふふ~ん?どうしたんですかみんなして僕を褒めて!いや~悪い気はしませんね~!これってもしかして、僕のモテ期きちゃいました!?
「ま、生活態度はアレだがな」
「どういう意味だクソチビ!」
「テメェのない胸にでも聞いてろケツデカ葦毛!」
「対して変わんねぇだろうがクソチビ!」
「「あ゛ぁ゛!?」」
「……こういうとこもあるから素直に尊敬はできないがね」
「相変わらず煽り耐性が無さすぎる……」
「でもでも~、ジャーニーさんもアンカさんのいないとこでは「黙ってろロイヤルお嬢様!」は~い」
「フフフ、やはりみなさん分かっていますね!そうです、アンカ先輩は素晴らしいのです!あぁ、輝いて見える……煽り耐性の低いところも素敵……!」
シーザリオちゃん!それは絶対に褒めてないでしょ?絶対そうでしょ!*1
「ま、なんにせよ私はイギリスのクラシックに挑戦する。海外でも私は通用するのかというのも気になるからねぇ」
「ふ~ん。ま、がんば「おいタキオン!どういうことだテメェ!?」わきゃあ!?」
「う、うるせぇ……!なんだこのクソデケェ声は……!」
「誰かと思えば……ポッケ君じゃないか」
「私も、います」
「カフェもいたのか。2人とも何の用だい?」
い、いやいやタキオン。この状況でお2人が来たのなんて大体察しがつくでしょう?タキオンのことだからわざと言ってそうな気はしますが。
「とぼけんじゃねぇ!俺らとの勝負をほっぽり出して、海外に行こうとしてんだろうがッ!」
「あぁ、そのことか。別に私がどのレースに出走しようが自由だと思うが?」
「テメェ……!」
ちょいちょい!なんでそんな神経逆なでしそうなことばかり言うんですか!?ポケットさんめっちゃ怒ってるじゃないですか!カフェさんは……こっちは冷静だな。静かにタキオンさんを見てる。
「タキオンさん、1つだけ、聞いても……よろしいでしょうか?」
「なんだいカフェ?まさか君も私に日本のクラシックに出走しろというのかい?」
「違います。……それが、あなたが考え抜いた末での、決断でしょうか?」
「ふぅン……」
おや、タキオンが考え込むような素振り。ただ、返事をするときには迷いのない表情になってた。
「そうだとも。私は私の限界に挑戦したい。幸いにも、脚に関しては克服しつつあるからねぇ……別に日本のクラシックに挑戦するというのも悪くないが、それ以上に興味が惹かれるのが」
「……イギリスの、クラシック三冠というわけですか」
「ま、そういうことだ。ポッケ君には悪いがね」
ほほう。これを受けてのポケットさんは……身体を震わせているな。これ爆発しますね間違いなく。これは遠くに退避「納得できるかぁ!!」ダメだったよ!
「タキオン!お前は忘れてるかもしれねぇが……俺は忘れてねぇぞ!あの時のホープフルステークス!」
「ホープフルステークス?……あぁ、確か9バ身差に千切ったレースだねぇ」
「言うんじゃねぇ!」
あ、ホープフルステークスの2着ポケットさんだったんだ。……まぁ9バ身差で千切られた相手が海外に行くなんて言ったらそりゃ止める、の、か?
「あの日の悔しさは今でも覚えてる!あんだけの差を見せつけられたのは初めてだった……2連勝でノっているところで挑んだホープフルステークス。俺は……格の違いってヤツを見せつけられた!」
「ふぅン」
「その日から猛特訓した!チームの先輩達に頼んで、お前に勝つために必死にトレーニングを積んで!クラシックじゃ
おぉう、ポケットさんも並々ならぬ思いをお持ちですね。
「俺はお前に勝ちてぇ!誰よりも、何よりも勝ちてぇお前は……日本のクラシックに出てこねぇ!ふざけんな……俺と勝負しやがれ!タキオン!」
「……まぁポッケ君の言いたいことも分かるがねぇ」
タキオンの反応は……溜息を吐いていた。ポケットさんはバカにされていると思ったのかさらに沸騰しそうになってる!?ままま、まずいですよ!
「さっきも言ったように、私がどのレースに出走するかは私の自由だ。ポッケ君に言われたからといって、じゃあ日本のクラシックに出走しますとはならないねぇ」
「タキオン……!テンメェ……!」
「だが、別にポッケ君のことをどうでもいいと思っているわけじゃないさ」
「……ンだと?」
タキオンの様子は変わらない。ただ淡々と、事実だけを告げているみたいで。
「さっきも言ったように、これは私の挑戦なんだよポッケ君。別に日本のクラシックに満足していないわけじゃない……私は、誰もが挑戦してこなかったことに挑戦したいのさ」
「……それが、イギリスのクラシックだってのかよ?」
「そうだとも!私は、世界のウマ娘を相手に競ってみたい!そして競った先で……私は挑戦したいのさ」
うん?タキオンがチラッとこっち見たけどなんか用です?……あ、すぐに視線を逸らした。
「それに、なにも日本のクラシックだけが戦う舞台じゃあるまい。ジャパンカップに有マ記念……クラシック級でも戦う機会はある。シニア級になればさらにその機会は増える」
「……まぁ、確かにそうだけど」
「そこで戦うというのも悪くはないはずだが?私はなにも、ずっとあっちにいるとは言っていない。日本にはちゃんと戻ってくるさ」
「……」
ポケットさんは沈黙。ただ、次の瞬間「なぁ~んだそういうことかよ!急いできて損したぜ!」感情の変化が激しい!ものっそい笑顔になってる!
「タキオン、お前がもう日本で走らねぇかと思ってきたのに損したじゃねーか!いや~良かった良かった!」
「……だから、言ったじゃないですか、ポッケさん。タキオンさんは、ずっとあっちに、いるわけでは、ないと」
「おや~?か~ふぇ~、カフェは私を心配してくれないのかい?それは寂しいねぇ~」
うわ、カフェさんめっちゃウザそうな表情してる。タキオンのウザ絡みをめんどくさそうにしてる。
「……どうせ、あなたは帰ってくると、思っていましたので。それに、私も、あなたには借りがあります。なので、帰ってきてもらわないと、困ります」
「ほほ~う!そうかそうか、カフェは私が帰ってこないと困るのか!いや~、そんなに思われてて私は嬉しいよか~ふぇ~!」
「……」
うわ、すんげぇ目をしてる。にしても仲良いですねこの3人。
「んじゃ!迷惑かけたな!話はそんだけだ!イギリスでも頑張れよタキオン!」
「無論だとも。私は私の限界に挑戦する……2人も頑張りたまえよ」
「……あなたに、言われずとも」
そうして2人は去っていきましたとさ。……うん。
「嵐のようだったな」
「──あぁ。とても良い、rivalだ」
「あぁ、そうだね」
タキオンも素直にそう答えました。これが良きライバル関係というヤツですか!
その後は普通にトレーニングをした。もう少ししたら欧州へ飛ぶ。僕もSLRC頑張るぞー!
これがJAMですか。