今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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さらっとね。


安価ウマ娘と駄々!

 僕のSLRC予選のため、そしてもう一つはタキオンのイギリスクラシック挑戦のためにやってきました欧州。今現在の僕達はというと。

 

 

「嫌だぁぁぁぁ!君達も欧州に残るんだぁぁぁぁ!役目だろぉぉぉ!」

 

 

「ふざけたことを言うな!僕だって他の予選があるしトレーナー君だってアルナイルの業務がある!それにニジンスキーサブトレーナーが面倒見てくれるだろうが!」

 

 

「嫌だぁぁぁぁ!」

 

 

「そうは言われてもねタキオン……」

 

 

「見ろよシーザリオ。あぁはなるんじゃねぇぞ」

 

 

「見苦しいことこの上ないですね」

 

 

「あ、あはは……」

 

 

 えぇいめんどくさいですねこの駄々っ子が!そんなこと言われても僕達は日本に帰りますよ!

 どうしてこんなことになっているのか?話はちょっと前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕のSLRC予選も近づいてきているのとタキオンも早めに現地入りして芝に慣れておくという名目で僕達はイギリスへ。

 

 

「ここに来るのも随分久しぶりだな」

 

 

「最後に来たのは……ロンズデールカップの辺りだったかな?」

 

 

「よく来たわねアンカ達」

 

 

 空港ではニジンスキーコーチが出迎えてくれた。あ、そうだ!

 

 

「ニジンスキーコーチ、SLRC順調のようですね。2連勝、おめでとうございます」

 

 

「あら、ありがとう。でも……あなたも順調そうね?短距離とマイルで結果を残しているじゃない」

 

 

「当然です。例えコーチが相手でも負けません」

 

 

「……言うじゃない。あなたと戦う時が楽しみだわ」

 

 

 あ、ちょっと怖い怖い。自分から煽っといてあれですけどごめんなさい。

 そして始まるタキオンのトレーニング。

 

 

「……うん、悪くないね。こっちの芝でも十分なタイムを記録できてる」

 

 

「まぁ、アンカ君の遠征について回っていたからねぇ。対応はできるということさ」

 

 

「だろうな。僕もその辺の心配はしていなかった」

 

 

 とは言っても、タキオンは僕の遠征にずっとついて回っていたということもあり、こっちの芝の適正に関しては全くといっていいほど問題ない。なんならアメリカでも走れるんじゃないかな?ダート適正に関してはさすがに分かんないけど。

 そんな日々を過ごして迎えた僕のSLRC長距離部門。今回選ばれたのは……。

 

 

「ロンシャンの4,000m……走ったことないな」

 

 

「カドラン賞想定のレースだね」

 

 

「アスコットゴールドカップを走ったことあるから大丈夫だろ」

 

 

「そう言えばアンカさん4,014m……でしたっけ?走ってましたもんね」

 

 

「むしろ走ってない距離の方が少ないんじゃないかな?」

 

 

「──different.正確には、アンカは6,000km走って、いる」

 

 

「クリスエス先輩、さすがに公式のレースの話だと思います」

 

 

「?」

 

 

 いや、頭に疑問符を浮かべられても。まぁ4,014mも4,000mも誤差みたいなもんか。

 迎えた本走。今回の神の啓示はというと。

 

 

《おぉっとアンカデキメルゼ、パドックでダブルバイセプスの構えを取っている!しかし露わになっているのは可愛らしい腕の筋肉のみ!これは愛らしいですね!》

 

 

《しかし彼女、トレーニング量を考えると不思議なくらい細いですね。女性からしたら羨ましい限りでしょう》

 

 

《もっともあの細腕には凄まじい密度の筋肉が凝縮されていることでしょう!》

 

 

 パドックでダブルバイセプスの披露である……なんか、すげぇ恥ずかしいんだけど。

 

 

「キャー!キレてますよアンカせんぱーい!」

 

 

「それだけの筋肉!眠れない日もあっただろう!」

 

 

「その腕に挟まれたい!」

 

 

「なぁ、掛け声してる奴には何が見えてんだ?アタシにはただの細腕にしか見えんぞ」

 

 

「まぁ実際のところはかなりの筋肉なんじゃないのかい?知らないが」

 

 

「タキオンさんでも分からないんですね」

 

 

 別に僕はボディビルダーでもないし見せるための筋肉とか作る意味ないし……それにしても我ながらぷにぷにとした二の腕である。滅茶苦茶鍛えてるのにこれなの逆に凄くない?

 このSLRCだが、僕の戦法は逃げ。そして上がり最速を記録する必要がある。ま、つまりは最後の直線で他者を寄せ付けなきゃいいってことだ。

 その結果はというと──

 

 

《フォルスストレートを抜けて最後の直線に入りました!アンカデキメルゼ速い速い!ずっと逃げ続けていますアンカデキメルゼ!後続との差は開いていませんが、縮まってもいません!いえ、わずかにですが、徐々に開いているようにも感じられます!しかしこの場に立っているのも歴戦の猛者達!アンカデキメルゼを必死に追いかける!》

 

 

《凄いですね。最初から逃げていたのにも関わらずペースを維持……やはりこのウマ娘は強いという他ないでしょう!》

 

 

《アンカデキメルゼが先頭残り200!少しずつ、少しずつ差を広げていってゴールイン!最終的に2バ身差をつけて勝利しましたアンカデキメルゼ!上がりのタイムは……勿論最速!逃げて逃げてこれだけの強さ!これだけの強さ!スーパーレジェンドレーシングカーニバルでもその強さは変わらない!これで3連勝!3連勝です!果たしてこのウマ娘は次はどの舞台をターゲットにするのか!?》

 

 

 勝ちましたよっと。でもやっぱり一筋縄じゃいかないもんで。

 

 

「……ッ」

 

 

 息も結構乱れております。さっさと帰ってシャワー浴びたい……。

 ──とまぁ。これがつい先日起こった出来事。SLRCの予選も終わったことだし、日本に帰ろうとした矢先の出来事。

 

 

「おや?アンカ君にみんな。そんな大荷物を持ってどこに行く気だい?」

 

 

「どこって……日本に帰るつもりだが」

 

 

 僕の言葉を聞いたタキオンは目を丸くした後手を叩いて笑い出した。何がそんなにおかしいんですかねぇ。

 

 

「ハーッハッハッハ!面白い冗談だねぇ!私がイギリスに滞在するんだ。勿論君達も滞在するだろう?」

 

 

「……?何言ってんだコイツ?」

 

 

 ジャーニー。その気持ちは凄く分かる。

 だが、現実を突きつけなきゃいけない。この、明らかに私が滞在するんだから勿論お前らも滞在するよな?って思ってるしなんなら口にしたウマ娘に。

 

 

「あ~……タキオン?まさかとは思うけど、俺達がイギリスに滞在すると思ってる?」

 

 

「当然だろう?私が残るんだ、君達も残るというのが筋じゃないかい?」

 

 

「……俺達は日本でやることあるから普通に帰国するよ?タキオンのことはニジンスキーさんに頼んであるし」

 

 

 まぁ、そういうことである。

 呆然としているタキオン。彼女の二の句は──

 

 

「……嫌だぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在に至るというわけだ。

 

 

「トレーナー君!君に人間の心はないのか!?このままでは私は餓死してしまうじゃあないか!」

 

 

「いや、ニジンスキーさんに言えばご飯ぐらい出してもらえるでしょ……というか普通に出すでしょ」

 

 

「わ・た・し・は!トレーナー君かアンカ君のご飯が食べたいんだ!君達もここに残りたまえよ!」

 

 

「わがままを言うな。第一、それを承知でイギリスのクラシックに挑戦するといったんだろう?」

 

 

「まさかとは思うけど、俺達もこっちに残る前提で考えてた~とか言わないよね?」

 

 

「は~?私がこっちに残るんだからトレーナー君達も残るべきだろう?」

 

 

 なんでそんなさも当然のことかのように言えるんですかねタキオンは。僕達は帰るに決まってるでしょうJK。

 それからもタキオンの駄々は止まらない。

 

 

「嫌だ嫌だ!トレーナー君達もここに残れ!」

 

 

「そんなワガママ言わないでよ。俺達だって向こうでやることあるんだから」

 

 

「──私と、ファインの。メイクデビュー、もある。どの道、帰国せざるを得ない」

 

 

「ぐぬぬ……!今から身体を2つに増やしたまえよトレーナー君!というか、アンカ君ならそれぐらいできるだろう!?」

 

 

「僕をなんだと思ってんだよ!?」

 

 

 できるわけねぇだろそんなこと!

 

 

「ウケる。撮っとこ」

 

 

「悪趣味ですよジャーニーさん」

 

 

「あ、あわわ……!どうすればいいんでしょうか!?」

 

 

 それから数時間。わがままを言い続けるタキオンと格闘し。最後の決め手は。

 

 

「あまりワガママを言うようだとあなたの研究資料全部燃やすわよタキオン」

 

 

「そ、それだけは勘弁してくれ!?」

 

 

 背後に阿修羅を宿したニジンスキーコーチによって終焉を迎えた……あの時のニジンスキーコーチの迫力はヤバかった。どれくらいヤバかったというとその場にいた全員が恐怖で震えるぐらいにはヤバかった。普段表情が顔に出にくいクリスさんが明らかに怯えた表情を見せたことからも分かる。

 こうして僕達は日本へと帰ることになる。

 

 

「……ニジンスキーコーチ、怖かったな」

 

 

 僕の言葉に、全員無言でうなずいていた。




ニジンスキーコーチを怒らせたらヤバい。
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