「ほらほら!早く行きましょうアンカさん!」
「ま、待ってぇ~……うぅ、人が多い……」
やってきました春のファン大感謝祭当日。僕はというと──ファインさんに連れられてこのイベントに参加することに。それにしても人が多い……もう帰りたい。でも帰れない。だってファインさんに迷惑がかかるし。せっかく誘ってくれたのに即帰るというのはあまりにも迷惑過ぎる。
(まぁ誘って貰ったというよりSPさん達の圧に屈したともいうんだけど……)
……誘ってくれたのは嬉しいけど。
さて、この春のファン大感謝祭。調べたところによると運動的な側面が強いらしい。つまるところ、運動会と文化祭の合体?みたいなもんだろうか。あちこち出店が出たりしているけど、メインは学園の運動場を使ったスポーツイベントや駅伝とかそういうのがあるんだとか。なんでこんな大規模なイベントなのに今まで知らなかったんだよって?参加すらしたことないからですが何か?
僕にとっての死活問題はとにかく人が多いということ。この日はファンにも一般開放されているという点から滅茶苦茶人が多い。そもそも人が多いとこが苦手な僕からすればマジで地獄。レースもそうだろというツッコミは受け付けない。
「な、なにかあてはあるのか?ファインさん」
「ん?そうだね~……」
ファインさんは考えるように唸った後、ピコーン!って擬音が付きそうな仕草をした後ものっそい笑顔で。
「とりあえず学園の運動場の方に行きましょう!きっと楽しいことやってるから!」
僕の手を掴んで走り出してぇぇぇぇ!?
「じ、自分で走るから離してぇぇぇぇ……」
「ふふ、だ~め!ほらほら、アンカさん早く行きましょう!」
うぅ、周りからすげぇ注目されてる……!早いとこ着いてくれ!
「はぁ~ウマ娘ちゃん達の尊みを摂取出来てデジたんはしあわ「運動場までもう少しだよ!アンカさん!」ひょえ?ファインさんで「わ、分かったから離してぇ~……」……え?アンカさん?」
「なにをやっているのかな~?今から凄く楽しみ!」
「そ、そうですね……」
「アンカさんも想像してみて?きっと、すっごく楽しいことが待っている気がするの!」
「あ、あはは……」
「こここ、これはぁ!?ファインさんの押せ押せオーラにたじたじになっているアンカさん!一見するとポジティブ系とクール系のアンバランスな組み合わせに思えるかもしれませんが古来よりこの2つの組み合わせは最高にして至高とも言われております!普段滅多に表情に出さない、こういうイベントに顔を出さないクール系の子がポジティブ系の子に誘われて仕方ないからちょっと顔を出すか……みたいな感じで参加を決めたのであればよりGOOD!そしてそしてこのポジティブ系の子が迷惑だったかな?ってちょっと不安げな表情を見せているところに別に楽しくなかったとは言ってないって会話があったらそりゃあもうゲームエンドどころかこのシチュだけでご飯3杯は固いですね!つまるところファイ×アンはデジたん的にも盲点だったというか尊みが溢れて爆発すりゅうううぅぅぅぅ!」
「きゃああぁぁぁ!?デジタルさんが倒れた!」
「いつものことだから保健室に運んであげなさい」
なんか知らないところで誰かが倒れてたらしいけどこっちはそれどころじゃない。ファインさんに手を引かれて運動場へと連行されることになりましたとさ。
そして連行された運動場。何か催し物をやっているらしいが……なにやっているのかは分からない。
「え~っと、受付は……あ!あっちだね!」
「ま、まさか参加する気か?」
僕の質問にファインさんはそれはそれはもう素敵な笑顔で。
「勿論!早速向かいましょう!」
「で、ですよね~……」
参加できないんじゃね?という一縷の望みに賭けるもののそんなことあるわけなく。僕とファインさんは飛び入り参加が決まった。その競技というのが……。
《それではリギル主催!借り物二人三脚が始まります!出走するウマ娘のみなさんは速やかに会場の方へと……》
「あ、呼ばれたよアンカさん!私達の参加する競技!」
「……借り物競争と二人三脚の合体版か。何故その2つを合体させようと思ったのか」
まだマシな部類、なのか?とにかくファインさんと向かうことに。僕の右脚とファインさんの左脚をひもでがっちり結んで、と。
「できる限りファインさんに合わせる。とにかく完走を目指すぞ」
「はーい!」
《それでは位置について。よーい……スタートです!》
よし、スタートだ!だけど僕1人で先走るわけにはいかない。
「えっほ、えっほ」
「……」
今回はファインさんとの二人三脚。人と合わせるのは苦手だけどそれでも精一杯頑張るしかない!……って!
「「うわっ(きゃあ)!?」」
言った側から転びかけたんだけど!うぅ……ふ、ファインさんに迷惑かける……。
「だ、大丈夫か?ファインさん」
「大丈夫だよ!よ~し、頑張って走るぞ~!」
「あ、あぁ」
とにかく足並み揃えて、と。いっちに、いっちに。
そして借り物のところへ。二人一組でお題に取り組むらしいが……はてさて、僕達のお題はっと。
「それでファインさん。僕達のお題は?」
「えっとね~……あ!【友達】だって!」
はっ?詰んだんだが?
(おいおいおい詰みじゃねぇか!?どうすんだよこれ!)
ファインさんは別にいいよ!友達たくさんいるだろうし!でも僕アレだよ?交友関係クソ狭いよ?基本的に海外の人ばっかだから凄く狭いよ!?
考えろ……考えろ……!今この場にいそうな人を!
(ヴィッパー!……いや来るわけないか。アヤベさん!……うん、多分来ない。オペラオー!……ドトウさんと一緒にいるとこ邪魔しちゃ悪いよなぁ。トップロードさん!……他のとこ回ってそう)
おいおい、全滅じゃないかHAHAHA。……詰んだぁぁぁぁぁぁ!?
「あ、シャカール~!ちょっと来て!」
「あ?ンだよ……って!引っ張るんじゃねェ!」
ファインさんは早速見つけたみたいだ……って、えらい厳ついな。目つきが鋭い!怖い!
どどどどどうすんのど~すんの!?後は僕だけだよ!誰か、誰かいないの「あら、珍しく参加してるのねアンカさん」……アヤベさん?
「あなた、こういうイベントには参加しないと思っていたのだけれど……どういう風の吹き回しかしら?」
「……アヤベさん」
「えぇ、そうだけど。何かあったのかしら?」
「とにかくついてきてくれ!」
「は?ち、ちょっと!?」
よっしゃあ!アヤベさんがいてくれた!アヤベさんマジ女神!
シャカールさんとやらとアヤベさんを連れて僕とファインさんはゴールの元へ!
「お題を確認しま~す……それではエアシャカールさんこちらに」
「なんなンだよ本当に……」
シャカールさんは運営の人の質問に答えて言って今度はアヤベさんの番。アヤベさんも特に困った様子は見せずに答えていた。
「……はい!OKです!ファインモーション・アンカデキメルゼのペアが1着で~す!」
え?僕達が一着?……。
「「やったぁぁぁぁぁぁ!!」」
やったやった!僕達が1着だ!完走すればいいなんて言ってたけど、やっぱり勝つと嬉しいなぁ!
「……不本意だが、間違っちゃいねェからな」
「ま、あの2人の楽しそうな姿が見れたらいいんじゃないかしら?」
「……チッ」
やったやった!やったったー!
その後もファインさんに連れられて春のファン大感謝祭を回ることに。
「安いよ安いよ~!シリウス特製焼きそばが今ならなんと564円!増量キャンペーン中だよ~!」
「焼きそばだって!一緒に食べようアンカさん!」
「あ、あぁ」
「ハッ!素敵な葦毛のお嬢さん……特別にこの焼きそばを無料で「勝手なことしてんじゃねぇテメェは!葦毛なら誰でもいいのか!」げふぅっ!?」
ゴルシさんが作った特製焼きそばを食べたり。
「いけいけ~!頑張れクリス~!」
「──missionを遂行する」
「クリスさんも出るんだ……」
運動場の催し物に参加していたクリスさんの応援に行ったり。
「お、オイ見ろ!アンカデキメルゼだ!」
「え!本当!?」
「マジだ!あのアンカデキメルゼがいるぞ!」
「絶対いないと思ったのに!」
「クソ!否定できねぇ!」
「アンカさん次はあっちに行きましょう!」
ファンの人達に囲まれそうになったり。なお僕がいるとは思われてなかった模様。その通りだよ畜生!ファインさんと色々なとこを回った。なんていうか、こう。
(たまには、悪くないかな)
心地よい時間だった。
時間は流れて夕暮れ時。もう春のファン大感謝祭も終わりを迎える時間だ。屋台も撤去作業に入っている。僕とファインさんは歩くことに。
「ふぅ。楽しかったねアンカさん!」
三女神像の前で休憩。ファインさんは──凄く満足げな表情をしていた。
「……そうか。それは良かったな」
「うん!私はとっても楽しかった!アンカさんは?どうだった?」
ファインさんの方に視線を向けると、不安げな表情。なんでそんな表情するのか分からないけど。
「……楽しかった。僕、表情に出にくいから分かりにくいけど、ファインさんの思っているよりは楽しんでいた」
「本当!?それならよかった!」
手を叩いて嬉しそうなファインさん。うん、これが見れたならよかったのかもしれない。参加した意味があったと思う。
しばしの無言。話を切り出したのは、ファインさん。
「ねぇ、アンカさん。1つ聞いても良いかな?」
「……どうした?」
ファインさんから質問とは珍しい。ま、答えてしんぜましょう。
「私は、アンカさんみたいになれるかな?」
止めとけ。絶対に止めとけ……という前に。
「それはどういう意味でだ?」
とりあえず意味を問いておきましょう。実績的な、レースローテ的な意味だったら即刻止める。
「ほら、アンカさんってファンの皆様から凄く思われているでしょう?アンカさんも、それに応えている。アンカさんは……皆様に夢を与えている」
「……まぁ、それが僕の信条だからな」
「私もね、皆様に何かを与えられるようなウマ娘になりたいなって。だから、アンカさんみたいなウマ娘になれるかなって。そう思っただけ」
ほ~ん、なるへそ。当のファインさんはちょっと不安げだ。自分の将来を考えているのだろう。
……ま、答えは決まってますが。
「なれる。とは言っても、僕とは違うアプローチで、だが」
「アンカさんとは違うアプローチ?」
「そうだ。僕には僕の、ファインさんにはファインさんのアプローチがある。夢の与え方なんてそれぞれなんだから、ファインさんはファインさんのやり方でファンの期待に応えればいい」
「私は私のやり方で……」
ふふ~ん?ちょっとカッコいいこと言ったんじゃないですか僕?
「うん!分かった!」
「わきゃあ!?」
急にファインさんが立ちあがったからビックリした!?
「私は私のやり方で頑張ってみるよアンカさん!これからも、チームの仲間としてよろしくね!」
「あ、あぁ。これからもよろしく」
ファインさんに手を差し出されて。僕はその手を握る。そしたらまた引っ張られてぇぇぇ!?
「それじゃあ後夜祭に行きましょう!まだまだ楽しいことが待っているわ!」
「えぇ!?ぼ、僕もうそろそろ帰りたい……」
「ムッ!そんなこと言うと拗ねちゃうぞ!プンプン!」
だから怖いんですって後ろの圧が!SPの圧が怖いんですよ本当に!
「わ、分かった!分かりましたから!後夜祭も参加しますよ!」
「本当!?やったやった~!」
……まぁ、ファインさんの笑顔が見れたならいいんですかね?
こうして僕とファインさんは後夜祭も楽しく過ごしましたとさ。
フフフ……当方、引っ込み思案な子がポジティブな子に引っ張られて行事ごとに参加するというシチュエーションが大好きでしてね……。祭りが終わった後、ポジティブな子はその子のことを案じて「楽しくなかった?」って不安げにいうんですけど引っ込み思案な子がこれまで出したことのないような大声で「楽しかった」って答えるとポジティブな子は花が咲くような笑顔を見せるんですよ。抱き着きもセットで来るとなおよい。この描写は古来より至高と言われておりなんていうか、フフ……良いよね。