《中山グランドジャンプ残り1200mになりました!現時点で競走中止となったウマ娘は1人もいません!全員が問題なく障害を飛越しゴールに向かって進んでおります!現在先頭を走りますのはアンカデキメルゼ!アンカデキメルゼが先頭に立ってレースを支配する!谷を下っていきましたアンカデキメルゼ!このレース最注目のウマ娘、まだまだ余裕といったところでしょうか?》
《芝とダート、そしてこのG1中山グランドジャンプを制することができれば前例のない三刀流ウマ娘が誕生することになります。芝・ダート・障害でのG1制覇……恐ろしいですね》
《芝とダートを経て、この障害レースでもなお強し!といったところでしょうか?しかし他のウマ娘もただ指を咥えて見ているわけではありません!2番手は3バ身離れてミナミノゴージャス!3番手ダンシングターナーおよそ1バ身!4番手はヤスノテイオー5番手ヨイドレテンシ!前5人を見る形で前回覇者ゴーカイ!ゴーカイはこの位置に控えている!残る障害は後3つその一つが近づいてきて……ジャンプぅ!先頭アンカデキメルゼが見事な飛越!他のウマ娘も続々と飛越しています!》
中山レース場で開催される中山グランドジャンプ。応援に来たファンは実に12万人。中山レース場には12万人分の歓声が飛んでいる。
「頑張って~!アンカデキメルゼ~!」
「いけいけ~!無事にレースを終えてくれよ~!」
「周りが何と言っても、お前を応援してるからなー!ヨイドレテンシー!」
中には障害レース初観戦のファンもいる。
「俺障害レース初めて見たけど……すっげぇんだな!」
「わ、私も。でも、凄くビリビリする……!」
「頑張れー!頑張れー!」
そんなファンの様子を見て、満足げな表情を浮かべるウマ娘が1人いた。かつて海外挑戦の道を切り開いたパイオニア──フジノオーである。
(相変わらずの求心力だ。やっぱり、アンカのヤツは人を惹きつける走りをしている。これほどの観客ってのはそうは見れねぇからな)
障害レースは平地の競争と比べると集まるファンは少ない。だが、今日の中山グランドジャンプはかなりのファンが中山レース場に集まっていた。そのことに、フジノオーは満足げに頷く。
「嬉しそうだねぇ、フジさん」
そんなフジノオーに話しかける1人のウマ娘。網傘をしているためその顔は見えないが……フジノオーはすぐに察しがついたのか笑顔で出迎える。
「おぉ、来たか!ほら、こっちにこい松!ここからならよく見える!」
「ありがたいねぇ。アンカちゃんの晴れ舞台だ、良い席で見たいからね」
松──シンザンはフジノオーの隣へと並ぶ。レースは最後の障害を飛越し、後は全速力で駆け抜けるだけとなった。
《さぁ最後の障害が立ちはだかる!最後の障害を、ジャンプぅ!見事に飛越しましたしかしアンカデキメルゼは少しもたついたか!?アンカデキメルゼが最後の障害で少しもたついた!しかしゴーカイは見事に飛越!最終コーナーで差を詰めていたゴーカイは見事な飛越!先頭に代わったゴーカイ二連覇に向かって突き進む!遅れてアンカデキメルゼが追走する!アンカデキメルゼ追走!後続も続々と飛越しているがゴーカイとアンカデキメルゼの一騎打ちか!?》
レースの様子を見てシンザンは不思議そうにしていた。
「アンカちゃん、かなり手こずってるねぇ。やっぱり障害は障害でキツいんだろうか?」
「そりゃあそうだ、松」
シンザンの言葉に、フジノオーは当然だとばかりに返す。
「まずこの中山グランドジャンプは単純に距離が長い。これはまぁいいにしてもだ……坂を上ったり下ったりでアップダウンが激しいし、障害の飛越もあるからかなりタフなレースになる。ま、アンカならば問題はないだろう。アンカの問題点といえば……
「飛越が並?……オープンレースだとかなりの差をつけてた気がするけどねぇ」
「そりゃオープンレースだからな。だが、さすがにG1ともなると一味も二味も違う」
フジノオーは冷静に分析していた。アンカデキメルゼの障害レースの適性を。
「後は体格の問題。単純にアンカは身体が他のヤツらと比較しても小さいからな。その分パワーも使うだろう」
「ふ~ん……そんなもんかねぇ」
「それでも、身体能力のゴリ押しが通用するのがアイツの怖いところだがな!ガハハ!」
フジノオーの言葉を証明するように、アンカデキメルゼは一度は取られた先頭をまた奪い返して先頭に立っていた。
《残り200を切った!先頭はゴーカイかアンカデキメルゼか!?いや、これはアンカデキメルゼがハナを奪い返した!そのままアンカデキメルゼが突っ走る!アンカデキメルゼ先頭残り100m!アンカデキメルゼがゴーカイを躱して今ゴールイン!中山グランドジャンプを制したのはアンカデキメルゼ!芝とダートの世界王者は障害レースでも王者だった!一度は追い抜かれたもののやはりこれがアンカデキメルゼの実力だ!》
《おっと、これはどこかで見たことあるようなジャンプを披露していますね。アンカデキメルゼは余裕があるとばかりにジャンプしています》
《芝とダートのG1を取り!この障害レースでもG1を取りました!これで前例のない芝とダート、障害の三刀流ウマ娘の誕生です!2着ゴーカイとの差は1バ身差!そしてアンカデキメルゼは今月末に開催されるスーパーレジェンドレーシングカーニバルの障害レース部門にも出走を表明しています!つまりは……障害の絶対王者達とのレースが繰り広げられるということです!》
中山レース場に湧き上がる歓声。勝利の祝福と、月末に開催されるスーパーレジェンドレーシングカーニバルに向けた期待の言葉が上がっていた。
「障害レースのウマ娘達との激闘が見れるのか!こりゃあ楽しみだぜ!」
「ゴーカイも調整が間に合えばな~。さすがに厳しいよな」
「……同条件のアンカデキメルゼはどうして出走できるの?」
「比べたらダメだ。アンカデキメルゼは例外だから」
チラホラアンカデキメルゼは何故この日程で挑戦できるのかという疑問の声が上がっていたが。その言葉を聞いてシンザンは思わず噴き出す。
「アッハハハハ!やっぱりアンカちゃんは面白い!面白い子だよ本当に!」
「ガハハハ!違いねぇ!まっこと不思議なウマ娘よ!」
ひとしきり笑った後、シンザンはアンカデキメルゼを見据えて笑みを浮かべる。先程までのとは違い、今度は攻撃的な笑みだ。
「だからこそ、戦う時が楽しみだよ。このSLRCはアンカちゃんと戦うことができる機会だからねぇ。あの子と戦える……そう考えただけでも滾るってもんさぁ」
「おいおい?年甲斐がねぇな松。ま、それは我もだが」
2人は踵を返して中山レース場を後にする。2人の思いは1つだろう。
──アンカデキメルゼと戦う時が楽しみだ……と。
「ッ!?な、なんだ……なんか悪寒がしたんだが。き、気のせいか?」
「おいおい大丈夫か?ニューチャンピオン。風邪でも引いた?」
「ッ!ふ、フン。心配には及ばん。僕の体調は万全だからな」
「そう?なんにせよおめでとう。次は負けないよ!」
「……つ、次も僕が勝つ。ゴーカイさん」
「おう!……それにしても、あんた本当に小さくてかわいいね~!ほら、たかいたか~い!」
「は、離せー!」
《おっと、ゴーカイに抱っこされていますアンカデキメルゼ!これは微笑ましい光景ですね!》
《ジタバタと暴れていますね》
そんな一幕はあったものの、アンカデキメルゼは中山グランドジャンプを見事勝利で飾ることができた。
※2人は変装しているのできっとファンは気づかなかったんでしょう。