〈中央でデビューすることになったワイを安価で導くスレpart19〉
76:名無しのウマ娘 ID:vVuRrY85w
SLRC障害レース部門安価まとめ
・戦法は追い込み
・逆立ち入場
・ラチを使ってアクロバット
さてさて、ついにこの日を迎えましたねぇ。
「ようアンカ。お前さん、なにしてるんだい?」
「フジノオーさんか。見ての通り、ラチを使ってパフォーマンスをしているところさ」
新体操のごとく僕はアクロバットを決めている。会場は爆湧きですよ!どこもかしこも拍手喝采雨あられです!
「ガッハッッハ!ウォーミングアップで新体操をしているウマ娘なんて聞いたことねぇな!だが、それでこそお前さんだ!」
それ褒められてるんですかね?いや、多分褒められてねぇなコレ。だけど次の瞬間フジノオーさんは鋭い目を僕に向け……あの、怖いから止めてください。
「お前さんの強さはよぉく知っている。だがな、我達とて障害レースを走っている意地がある……負ける気はさらさらねぇ」
フジノオーさんから浴びせられるのは、強者のオーラ。一筋縄じゃいかねぇぞ?って気概をビンビンに感じる。
だけど、僕だって負けない。確かに他のみなさんに比べれば僕なんてまだまだだが*1、それでも負ける気は毛頭ないというわけですよ!
「それはこちらも同じことだ。負ける気で走る愚者などおるまい」
「違いねぇ!さて、楽しいレースにしようじゃあねぇかアンカ!」
手をひらひらさせて去っていくフジノオーさん。う~ん、相変わらず豪快な方。
そんなわけでゲート入り。今回は外枠かつ追い込み。僕にとっては絶好の枠番ということだ!
《中山レース場、スーパーレジェンドレーシングカーニバル予選障害レース部門!特に注目されているのはやはり障害のレジェンドフジノオーと今を刻み続けるウマ娘アンカデキメルゼの直接対決でしょう!他にも名だたる名ジャンパー達が出走しています!果たして障害レース部門を勝つのはどのウマ娘か!?距離は4,250m、芝の状態は良バ場の発表です!》
今回は追い込みなので気持ち遅めにスタートを切る……あれ?よくよく考えたら。
(僕の飛越って障害レースを走る方々に比べてクッソへたくそだから大分キツくね?)
……待って!追い込みで喜んでたけどこれ大分まずくない!?ちょっと待〈ガシャン!〉あ、ちょ!ゲート開いた!
「なるようになれぇぇぇぇ!」
もうやるしかねぇよ!
障害レースっていうのは日の目を浴びにくい。加えて、障害レースに参戦するウマ娘も芝やダートで残せなかったのがくる最後の砦ってとこだ。これは障害レースの出走条件も絡んでくるんだが……それでもそういう認識が広まっている。悔しいけど、それが現実だ。
(障害レースを湧かせるスターウマ娘も、いないわけじゃねぇ。だが……)
我とタカを筆頭に、グランドマーチスやバローネターフ、キングスポイント……様々な障害のスターウマ娘が生まれた。だが、芝と比べて見向きもされないというのが現実。
(我らとて必死に走っている!だが、世間様の認識はそう簡単には変えられねぇ)
注目されるレースのほとんどは平地。これでは障害のレースはいずれ廃れるだろう──そんな風に思っていた時、面白いウマ娘に出会った。
いつだったかの日、珍しい客人が我の家に来た。
『やぁやぁフジさん。息災かい?』
『おぉ、シンザンじゃねぇか!浮世人のお前さんが、どうして我んとこに来た?』
URAから重要なポストを与えられただろうに、そんなもんいらんと突っ返して各地を方々としているウマ娘──【生ける神話】シンザン。浮世人であるアイツが来た時はまぁ驚いた。アイツの世話を買って出ていたミホシンザンですら消息を掴めなかったようなやつだ。そんな相手が、何故か我のとこに。
『なぁに、面白い娘に出会ってねぇ。フジさん……モンゴルダービーに出る気はないかい?』
『は?』
唐突なお誘い。そしてモンゴルダービーとやらに出走することに至った経緯、途中でタケのやつも捕まえてシンザンが気に入ったというウマ娘に会ってみることに。
『アンカデキメルゼ。本来であればこのモンゴルダービーには僕が単独で出走する予定だったが……規定でそれは無理なのでな。なので、今回はみなさんにご足労をいただいた』
『元より確実だった勝利がより強固になっただけ。このメンバーでモンゴルダービーを獲る、それだけだ』
結論から言えば、シンザンの言うようにすげぇ面白いやつだった!表情はほとんど変わらねぇわ、すげぇ自信家だわ、かと思えば変なとこで気弱だわ。なにより圧倒的な結果を残し続けてきたウマ娘だった。もしかしたら、も考えたが。
(ま、障害レースには来ねぇだろうな)
さすがに来ないだろう。そう思っていた。そんな時に聞いた一つのニュース。
『ガハハ!マジか!?あの小娘……マジでやるのか!』
アンカが障害レースに出走するというものだ。
《最初の1000mを通過しました!現在先頭を走るのはなんとフジノオー!障害レースのパイオニアが先頭に立って逃げている!注目のアンカデキメルゼは現在最後方!今回は追い込みで走るようだ!前から先頭の差はかなり開いています!現在時点で14バ身から15バ身は離れているでしょうか?ここからどういった巻き返しを図ろうというのか気になるところ!》
まさか障害レースにまで来るとは思わなんだ。だから聞いちまったよ、アンカに。
『なぁアンカ。ちょっといいか?』
『……どうしました?フジノオーさん』
『お前さん、どうして障害レースにも出走しようと思った?芝とダートで結果を残しているんだから、障害にまでくる意味はねぇんじゃないか?』
『神々が望んだから。それ以上の理由などありません』
毅然とした態度で答えたアンカ。迷いも何もない、アンカの言う神々が望んだから出走した、ただそれだけのことなんだろう。
『そうかい。お前さんの信じる神々というのもまぁ、奇妙なもんだ』
『碌でもない奴らですよ』
『それを信じるアンカもアンカだと思うが……まぁいい。それで?お前さん自身はどう思ってるんだい?』
『……なにをです?』
『障害レースについてだよ。こう、悪く言いたかねぇがどう足掻いても平地落ちしたやつらの集まりだ。そう思われても仕方ねぇ』
『……』
『なぁ教えてくれ。お前さん自身は……障害レースをどう思っている?』
我ながら情けねぇ弱音だ。このまま日本の障害レースは日の目を浴びることなく埋もれていくんじゃねぇか、そう思わずにはいられなかった。
だがアンカは。
『レースだなぁと思っています』
『……は?』
思わず素っ頓狂な声を上げちまったよ。まさかそんな、何言ってんだコイツ?みたいな感じの声で言われるとは思わんかったからな。
《3コーナーの谷を下って、上ります!高低差5.3mの谷を上がっていきます!依然として先頭はフジノオーしかし!その差はかなり開いている!2番手との差をグングンつけるフジノオー!フジノオーが逃げに逃げている!そしてフジノオーが大いけ垣障害を、ジャンプゥ!綺麗な飛越だ!これが世界を股にかけた名ジャンパーだ!見惚れるような美しい飛越!いまだ健在のフジノオー、後続も次々と障害をジャンプしていきます!難関を越えて右にカーブを切る!依然としてアンカデキメルゼは最後方!》
呆然としている我にアンカは続けた。
『僕にとって平地も障害も大して変わりません。同じレースです』
『いやいやいや……注目度とか段違いだろ?』
『注目度……別に注目されてなくても良いですよ僕は』
そして、アンカは──こう答えた。
『どんな道理にも困難にも、真っ向から立ち向かう。今までそうしてきたので。その結果注目されてきただけです』
『……あぁ、そうかい』
『それに、やるからには全力で挑みます。障害レースを走るウマ娘達にだって誇りがある。その誇りを、お遊び気分で汚すつもりはありません。やるからには全力で挑む……何事にも』
目から鱗だった。まさか、ハナから平地も障害も差はない、同じレースでしかないと思ってるやつがいるとは思わんかった。そして、シンザンが面白いといった意味が……分かった。
アンカにとって差なんてものはないんだろう。平地であっても障害であっても、等しく誇りを持って走っている。きっとアンカはそう考えている。注目されていようかいまいが関係ない……ただ誇りを持って走るだけ。きっとそう考えているに違いねぇ。注目がどうとか言ってた自分が恥ずかしいたらありゃしねぇ。
そしてアンカとともにモンゴルダービーを制し、そして──今このSLRCで戦っている。
(ガハハ、最後方でもすさまじい圧を感じるじゃねぇか!)
アンカの飛越は下手だ、お世辞にも上手いとはいえねぇ。だからこそ、最初の内から差をつけておく!逃げることでな!
アンカに集中しすぎて他のやつらがおろそかになっている?そんなもん知るか!
「かかってこいひよっこ共!このフジノオーの首を──獲ってみせろ!」
我はフジノオー!全てのレースを全力で走るのみよ!
ちくしょー!案の定結構な差が開いてるじゃねぇか!体格的な問題で飛越がアレなのに本当!ホンマ!
(だからといって負ける気はさらさらないんだけども!それにそろそろ芝の外回りコース!残り1200mのここで……全員捲ってやる!)
こっからロングスパートじゃぁぁぁい!
《先頭フジノオーが芝の外回りコースに入ります!各ウマ娘が芝の外回りコースに行こうとしている……この段階で!アンカデキメルゼが進出を開始!アンカデキメルゼが上がってきている!アンカデキメルゼ速い速い!スペックはやはりこのスーパーレジェンドレーシングカーニバルでもトップレベルのウマ娘!》
《障害の飛越、谷のアップダウンがあってもやはりスタミナが凄まじいですね。勝負根性も素晴らしいの一言です!》
《そしてハードル障害をフジノオーが、ジャンプゥ!残り1200mを切っています!アンカデキメルゼが進出を開始!フジノオーは逃げ切ることができるか!?》
30バ身はついてるであろう差を必死こいて埋める!あぁクソ、障害の飛越で減速するぐらいなら!
「このまま突っ込んでやらぁぁぁ!」
僕はスピードを落とさずに障害を飛越する……が。これがまぁ上手くいった。
(──あぁ成程。こう飛べばいいのか)
ようやくわかったぜ、勢いを殺さずに飛越する方法が!
そうと決まれば後は実践よぉ!残り2つしかねぇけどな!前のウマ娘達を続々と追い抜いていって、また障害を飛越して──最後のコーナー。
「射程に捉えたぞ、フジノオーさん!」
「ようやく来たか!待ちくたびれたぜ!」
ついにフジノオーさんを捕らえるに至った!差は10バ身あるかないか……このまま追いつくだけよ!それにしても、このギリギリの勝負……!
「
領 域
Stand up HERO!Wake up my soul!
向こうも多分領域を使ってる!圧をビリビリ感じる!だけど──だからこそ面白いってもんですよ!
《最後のコーナーを越えてついにアンカデキメルゼがフジノオーを捕らえたぁ!アンカデキメルゼとフジノオーが最後の直線に向かう!2人の競り合いだ!明暗を分けるのは最後のハードル障害!最後のハードル障害を、ジャンプゥ!2人揃って綺麗なジャンプだ!全く差がありません!さぁどちらが勝つ!?どちらの伝説が勝利を手繰り寄せる!勝利の女神が微笑むのはどちらだ!?》
やっべぇ、めっちゃ疲れる!スタミナついてもやっぱ疲れる!でもそれは相手も同じ!こっから先は根性勝負!そして根性勝負なら……!
「僕はぁ!誰にも負けねぇぇぇぇ!」
「クソがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何が何でも先にゴール板を駆け抜けてやらぁぁぁぁぁぁぁぁ!
《全く譲らない!全く譲らない!さぁどっちが先に前に出る!?残り200m!ここでわずかにフジノオーが前に出るか!?いや、アンカデキメルゼ!アンカデキメルゼが前に出る!しかしフジノオーも譲らない!フジノオー一歩も譲らないしかし!残り100m!わずかにアンカデキメルゼが前に出たぁぁぁぁ!その勢いのままアンカデキメルゼがゴール板を通過ぁぁぁぁゴォォォォルイィィィィン!障害レース部門を制したのはアンカデキメルゼ!アンカデキメルゼが障害レースのレジェンド達を打ち破っての制覇です!フジノオーはクビ差の2着!》
気づいたらゴール板を駆け抜けて。減速して膝に手をついて。めっちゃ疲れた……。
「は、ハハ、ハハハ、ガハハハハ!まっこと楽しい勝負だった!」
……めっちゃ元気ですやんフジノオ―さん。いや、よく見たら膝が笑ってら。結構無理してんなさては?
「アンカよ!真良き勝負だった!他の連中も、そう思っていることだろう!」
「……僕もだ。良い勝負、だった」
「応!機会があればまた走ろうじゃねぇか!」
ハハ、それもいいかも「おっしゃあお前ら!アンカを胴上げだ!」え?ちょっとまっ!?
「ぎゃあああぁぁぁぁ!?たけぇぇぇぇ!?」
待って待って!?めちゃくちゃ高く放り投げるじゃん!ちょっとした恐怖体験なんだけど!?
《おぉっと!勝者であるアンカデキメルゼを讃えるように胴上げしています!レースが終わればノーサイド!微笑ましい光景ですね!》
誰かぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇ!
──アンカデキメルゼ、SLRC4連勝。
次はタキオンの2000ギニーの模様かもしれない。