さてさて、ところ変わってアメリカですよアメリカ!いや~久しぶりな感じしますねぇ!そんな僕はというと、アメリカの地でヴィッパーを手をつなぎながら歩いているわけだが。
「……ッ!」
「ヴィッパー、歩きにくいからそんなに引っ付かないでよ」
しかもめっちゃ周り警戒してるじゃん。確かに海外だから危険が危ないかもしれないけど、さすがに度を過ぎてない?というかそもそもの問題、僕の方がヴィッパーより強いでしょ。
だがヴィッパーの反論。
「アンちゃんはただでさえ危機感が薄いです!これぐらい警戒して然るべきです!」
「え~?今更じゃない?」
「うるさいです!……後目を離したらアホみたいな安価を実行しかねないです!見張るしかないです!」
後半は聞き取れなかったけど……まぁヴィッパーも心配してくれているんだろう。ならそれを断るのも何かな~って感じだし。突っ込むのは止めるか。
……というか、そもそもの問題点として僕に手を出そうなんて輩はアメリカにいないと思うけどな。
(師匠に聞いたけど、僕ってこっちじゃ英雄扱いらしいし。下手に手を出そうもんならアメリカ国民全員を敵に回すなんて冗談も言われたな~)
アレが本場のアメリカンジョークってヤツか!こーれは僕も小粋なジョークを身につけるしかないですね!*1フフフ、ちょっと考えるのが楽しくなってきましたよ!
そんなこんなでヴィッパーと歩いているわけだが。目の前に見知ったウマ娘さんが現れた。というか、車から出てきた。
「『お久しぶりですね、アンカさん』」
葦毛の髪をショートカットにした、僕とそこまで身長が変わらないウマ娘さん……レディーズシークレットさんだ!本当に久しぶりに会った!
「『あぁ、久しぶりだな』」
……なんだよ?どうせ素っ気ないとか思ってんだろヴィッパー!目を見りゃ分かんだよ!良いだろ別に!向こうだってもう気にしてないよ!
その証拠に、レディさんは薄く微笑んだ。うお、ちょっとドキッとするな。
「『えぇ。それに……予定の時間よりも少し早いですね。良い心がけです』」
「『当然だ。待ち人を待たせるわけにもいくまい』」
「『日本の美徳ですね。それでは参りましょうか』」
アメリカに来た目的は2つ。1つはSLRCに出走するため。もう1つは……レディさんのお願いがあってだ。
そのレディさんのお願いというのはっ!
「『こちらに目線くださーい!』」
「『良いですよ~!凄く良いですよ~!』」
そう、撮影会である。なんでもファッション雑誌に僕とレディさんで共演できないか?という打診があり、それを僕が許可したことで実現した。ちなみに着る服はロリータからパンク風ファッションまで様々である。僕とレディさんのツーショットですよツーショット。
ちなみに許可した理由はモンゴルダービーの件があるから。レディさんには出走してもらったし、お世話になった。なので断るのも忍びないということで今回の撮影会が実現。しっかしまぁ、僕とレディさんのファッション誌か……どんなのになるか想像がつかん。
(というかレディさんこなれてるな~。余裕ありありって感じだ)
僕なんてカメラ向けられて超顔引き攣ってるのにな!……悲しくなるから止めようこの比較。いい加減慣れろ?無理を仰る。
「『良いですよアンカさーん!そのクールな表情!とても素敵でーす!』」
あ、受けは良いぞぉ!よしよし、これなら面目躍如ってやつだな!うん!あ、ちなみにヴィッパーも現場にいる。僕達みたいに写真は撮られてないけど。隅っこではちみー飲んでる。
そんなこんなで撮影会が進むこと小一時間。とても良い表情の監督さんがやってきた。超ニコニコしてるよ。
「『いやぁ……!レディーズシークレット様だけでも凄いのに、まさかシルバーラビット様まで撮影に参加してくれるなんて!とても良い雑誌になりそうです!』」
「『それは良かったです。完成、楽しみにしています』」
「『それは勿論!完成品はお届けいたしますね!シルバーラビット様にも!』」
「『え?僕にも?』」
勿論!とばかりに頷く監督さん。う~ん……まぁもらえるもんはもらっときましょう。それにどんな感じになってるのか楽しみですからね!
その後はレディさん、ヴィッパーとともに帰路につく。なんでもレディさんがホテルまで送ってくれるらしい。いやぁ、太っ腹!
「『すまないな、ホテルまで送ってもらって』」
「『気にしないでください。私の撮影会に付き合って貰ったわけですので。これぐらいは当然の責務です』」
う~ん、器が大きい。
さて、どうやらレディさんの言う迎えが来た、みたいだけど……。
「HEY!『素敵なお嬢さん達!おれの車で風を感じないかい!?』」
ドクターさんがでっかいサングラスをかけながら、真っ赤なスポーツカーを運転してやってきた。というかなんだ?その口説き文句のような言葉は。隣のレディさん見てくださいよ。絶対零度みたいな目で見てるよ。
無言の空間……が、我慢できない!
「……『迎えが来たようだが?』」
だが肝心のレディさんは素知らぬ表情。プイってした。
「『知りません、このような無法者。大方誰かと勘違いしているのでしょう』」
うん、関わりたくないってのがヒシヒシと感じられるな。僕だって関わりたくないしヴィッパーも何とも言えない表情をしている。
そんな僕達の雰囲気を察してか、ドクターさんは慌てていた。
「『悪かった悪かった!おれが悪かったよ!ほら、さっさと乗ってくれ!送るから!』」
「『最初からそうすればよいのです』」
レディさんは助手席に乗る。僕達は後部座席。う~ん、ちょっとしたドライブ気分。
「『それで?撮影はどうだったよ、レディ』」
「『滞りなく。ですが、アンカさんがいたおかげでさらに売り上げは伸びるかと』」
いやいや~、そんなことないでしょ~。レディさんも僕をおだててくれるなんて良い人だな~!神的に良い人!
「『違いねぇな!こりゃメガヒット……ミリオンヒットするんじゃねぇか?』」
「『おそらくするでしょう。ほぼ間違いなく』」
「『嘘でしょ』」
僕の写真集だぞ?そんなに需要ある?隣のヴィッパーめっちゃ高速で首を縦に振ってるけどそんなに需要ある?
「『レディさんならともかく……僕の写真集にそんな需要はあるのか?』」
「「「……」」」
な、なんだよその目は!憐みの籠った目で僕を見るんじゃないよ!
「『需要ってもんを分かってねぇなシルバーラビット。ま、お前がそう思うのは自由だ』」
「『えぇ。ですが確実に言えます。今回の写真集はミリオンヒットは間違いなしだと』」
「『というか、間違いなく買う連中が数人はいるです。その数人が布教用に何冊も買うです』」
うん、心当たりしかないわその布教用に大量に買う人達。失念してたわ。
そんなこんなでホテルまで送ってもらい、レディさん達と別れた。さ~て、夕飯まで適当に過~ごそっと。
帰りの車内。ドクターは鼻歌を歌いながら車を運転しています。とても上機嫌ですね。
「~~~♪」
「随分と気分良さそうですね」
「ん?あぁ、まぁな。最近謎が1つ解明してね……ちょっとウキウキしてたんだよ」
謎を解明、ですか。ちょっと興味がありますね。
「どのような謎ですか?」
「お?興味ある?それはな~……シルバーラビットのことさ」
……アンカさんのこと。尚更興味が湧きますね。果たしてどのような謎を解明したのか。
「俄然興味が湧きました。果たして、どのような謎を?」
「おれはさ、ず~~~っと不思議に思ってたわけよ。なんでシルバーラビットがセっちゃんに勝てないのか」
アンカさんがセクレタリアト様に勝てない理由、ですか。確か、アンカさん曰く一度も併走で勝てたことがないと仰っていましたね。
思えば不思議ではあります。セクレタリアト様の実力が高いと言えばそれまでですが、アンカさんもそれに比肩しうる能力……というよりは、越えてもおかしくないような強さをレースでは発揮している。良くて五分の勝敗になるのが普通のはずです。
なのに併走で勝ったことがない、これは不思議なことです。
「ドクターは、その謎が解けたと。どのような理由だったのですか?」
チッチッチと指を振るドクター……イラっとしますね。私の雰囲気を察してか、すぐに止めましたが。
「まずはデータを取ってみたんだ。併走時のシルバーラビットのデータとレース時の比較をな」
「……お待ちください。併走時のデータはどうやって取ったのですか?」
アンカさんは日本。取れるはずがないと思いますが。でもその疑問もすぐさま解消しました。
「この前日本に行った時にちょろっと、な。向こうのトレーナーから貰ってきたぜ。それにしても良い経験だった!向こうの驀進王なるウマ娘とのレースは心躍ったぜ!」
そういうことでしたか。それならばデータを持っているのも納得しますね。というかドクターはこの前日本の芝で走ってましたね。元々ダートが本職なのに。なんでなのかは知りませんが。
「それで、どのようなことが分かったのですか?」
「あぁ。データを比較してみると……レースで走っている時の方が併走時よりもパフォーマンスがデカいことが分かった」
「……」
不思議ですね。併走時とレース時で出せる力が違う、というわけですか。それもレース時の方が高いパフォーマンスを出している……本番に強いタイプ?いや、一概にそうは言えないでしょう。
ひとまずドクターの推理を聞いてみることに。ドクターは楽し気に語ってくれました。
「向こうでちょろっと走ってみたんだが……併走時と大して変わらないデータだったな。だからレース時にだけ作用するなにか、があるんだろう」
レース時に作用するなにか……あぁ、何となく心当たりがありますね。
「神の啓示、でしょうか」
「そういうことだ!レディ!」
興奮を抑えきれないドクター。余程楽しいのでしょう。こういう性分の方なのは分かっておりますが。
「おそらく彼女の言う神の啓示とやらはバフのような役割を果たしているのだろう!彼女の能力を底上げする、バフのようなものが!」
「……もしくは、アンカさん自身の気持ちの持ちよう、といったところでしょうか?」
「多分そっちの方が適切だ!神の啓示があることで、シルバーラビットは真の全力を出せるというわけだ!しかも、追い込まれれば追い込まれるほど彼女の輝きは増す!これは数値が示していることだ!」
いやー面白い!と語るドクター。それにしても神の啓示があることで全力を出せる、ですか。
セクレタリアト様から聞いたことがあります。アンカさんの奇行の数々は、その神の啓示によるものだと。レースの展開に関しても、その神の啓示に一任しているとも。……え?あんな不利を背負うようなことをされて?むしろ全力を出せている?
「それは、また……なんというか……かなりの被虐趣味ですね」
「あぁ!とんでもねぇマゾヒストだ!筋金入りだな!」
う、う~ん……そのような感じはしないのですが……。ま、まぁ人の趣味はそれぞれと言いますし、アンカさんの趣味に私が口出しをする権利などあろうはずがないでしょう。
それにしても……
「ドクター……次のSLRC、今度こそあなたに勝ってみせます」
今度のSLRC……アンカさんはどうやら、アメリカのダート短距離に出るのだとか。だとすれば、私とドクターと戦うことになる。……腕がなりますね。
ドクターも、獰猛に笑う。
「……良い覇気だ!流石はレディ!もっとも、お前の相手はアメリカが誇る【スピードキング】ドクターファーガー……追いつけるかな?」
「追いつける、ではありません。追いつきます。私ならばそれができると、自負しておりますので」
「……ハッハッハッハッハ!ついにシルバーラビットとも戦えるし、楽しみでならねぇな!それにダマスカスの野郎も来る、どでかい祭りだぜ!SLRC!企画してくれた関係者には感謝しかねぇ!」
そう話しながら、ドクターとのドライブは続きました。
真面目にネタ切れでした。