あぁ~……朝から憂鬱な僕です。
連勝街道に乗ってる!このまま無敗でクラシックに乗り込んじゃったり!?そしたらそしたら~シンボリルドルフ会長と一緒になって~、みんなから尊敬されちゃったりなんかして!……な~んてことを京王杯前には考えたのが嘘みたいに落ち込んどりますよそれは。
「見て、アンカさんいつにも増して不機嫌そうよ」
「本当ね。……やっぱり、あの記事のせいかしら?」
「どうなんだろう?でも、次走に関してはアンカさん自身が決めたことらしいから……」
いやね?そりゃあね?確かに安価で次のレース決めた僕が悪いとは思うよ?でもさぁ……!
(なぁぁぁぁんで!よりによって初のダート挑戦がG1なのさ!?せめて、こう、もっと……段階踏むだろ!?)
しかもあの後全日本ジュニア優駿について調べたけどさぁ!ジュニア級のダートウマ娘最強決定戦らしいじゃん!そこに僕乗り込まなきゃいけないの!?芝しか走ったことがない僕が!?正気かと疑われるよそりゃあ!記者の人達の方が正しいじゃん!僕の反応の方がおかしいじゃん!何さ、僕の実力が疑われてるかと思ったって!疑われる以前の問題だよ!
「……ッ」
「余程苛々してるみたいね……。圧が凄いわ」
「そうね。今日は近づかない方がよさそー……」
「何があったんだろうね?アンカさん」
しかも、記事の方も酷いんですよ!?どこもかしこも僕が全日本ジュニア優駿に出走する記事が書かれてさぁ!しかもその見出し、何だったと思う?
【今世代No.1の呼び声が高いアンカデキメルゼ、ダート初挑戦でジュニア級ダートの頂上決戦に殴り込み!】
【アンカデキメルゼ全日本ジュニア優駿に出走表明!アンカデキメルゼはこれがダート初挑戦!】
【芝のレース4連勝のアンカデキメルゼがダート転向!?陣営の意図は!?】
陣営の意図ォ!?ねぇよんなもん!強いていうならスレ民の悪ふざけだよ!
(おかげでダートを主にしてる子達からは白い目で見られるしさぁ!散々だよぉ……ッ!止めてくれよぉ白い目で見るの!僕そういうのに弱いんだよぉ……ッ!)
絶対僕の事ふざけた奴って目で見てるよあれ!僕だってそう思うよ?でもさぁ、安価は絶対なんだよ!やらなきゃいけないんだよ!トホホ……。
なお、現実のダートを主に走ってる子達のアンカデキメルゼに対する評価は。
「だ、大丈夫かなアンカさん。ダート初挑戦だけど……」
「よっぽど自信があるみたいね……!私もうかうかしていられないわ!」
「芝のジュニア級王者がダートに殴り込み……!やってやろうじゃん!腕が鳴るねぇ!」
別に白い目で見てるなんてことはなかった。むしろ好意的な声の方が上がっていた。
あ~あ、ダート走れる知り合いもいないしなぁ。おっと、そもそも僕知り合いが少ないんだったよ!ハッハッハ!……ハァ。
(どうするかなぁ本当……)
ダートなんて走ったことないしなぁ。大丈夫かな僕……。
イェェェェェエエエイ!ダートで走るのたーのしー!
「いやぁ……アンカの適性の幅は広いっていうのは知ってたけど……まさかダートもいけるなんてね。これには俺もビックリだよ」
「まぁアンちゃん地面がどんな状態でもトレーニングするような子です。今更な気がするです」
「それもそうか。そういえばアンカは土砂降りだろうがコンクリートの上だろうが問題なく走ってるしね。案外、海外の芝とダートでも走れたりしてね」
トレーナーさんとヴィッパーがなんか言ってますけど僕は走るのを止めません!いやぁ、初めて走りましたけど中々楽しいですねダート!これならイケるかもしれませんよぉ!神様ありがとう!
とまぁ。ダートでの試走は程々にしておいて。トレーナーさんとの打ち合わせタイムです。汗を拭いて水分を取りつつトレーナーさんの話を聞きます。
「とりあえず……お疲れ様アンカ。なんというか……ダートで走っても特に問題はなさそうだね」
「当然だ。芝だろうがダートだろうが……神の啓示を賜る僕には何ら問題はない。全ては想定内の出来事なのだよ」
「京王杯終わった後に寮の部屋で滅茶苦茶嘆いてた癖によく言うです」
「何か言ったか?ヴィッパー」
「いえ、何も」
ふっふ~ん!まぁ?僕にかかれば?これくらいお茶の子さいさいってとこだし?……な~んて、調子に乗るのはここまでにしときましょうか。
「だが、トレーナー君。あくまで僕は
「……そうだね。芝とダートではレースの感覚が違うのはもちろんのこと、追い込みが得意なアンカには1つの問題点が浮かび上がってくる」
芝とダートで明確に違う点、そして……追い込みで走る僕だからこそ受ける不利。それは……。
「前の子が蹴り上げた砂をモロに被る可能性がある。そのことを頭に入れておく必要があるよ」
「……まぁ。僕が走る作戦は神託(安価)によって決まる。その時にならなければ分かるまい」
「だね。だからできれば逃げ、次点で先行が良いんだけど……そう上手くはいかないだろうね」
トレーナーさんは苦々し気な表情をしています。分かります、分かりますよ……!だって、神々(スレ民共)がそんな有利な状況に持っていくわけありませんもんね!
「後はそうだね……ダートではパワーが必要になるから、今まで以上にパワーを重視したトレーニングをしようか。そうした方が、本番でもアンカの走りを発揮しやすいだろうし」
「分かった。そのトレーニングについては君に一任しよう。頼んだよ、トレーナー君」
「あぁ、任せてくれ。君に最適なトレーニングを組んでみせるさ」
本当に頼りになりますねぇトレーナーさん。頼もしい限りです!
さて、ダート対策もこれぐらいにして……後はまたトレーニング……ですが!
「トレーナー君、少しいいかな?」
「どうしたんだいアンカ?」
「何。レースの走法について妙案が思いついてね」
「レースの走法?確か……アンカはストライド走法だったよね?」
「そうだ」
僕は長めのストライドを取って走っています。身長の割には大きいストライドだと自負してますよ……って、そうじゃなくてですね。
「ストライドは加速するのに時間がかかる……加えて今の僕にはパワーがない。だからどうしても最高速に至るまで時間がかかるのが課題として挙がっていた。だが……その欠点を克服する方法を見つけた」
「へぇ!そりゃ凄いね!どんな方法なんだい?」
「簡単さ」
これが僕が思いついた妙案……!僕のパワー不足のせいで加速が乗りにくいという弱点を克服する方法!
「ピッチ走法で加速して、ストライド走法でその加速を維持すればいい。加えてストライド走法はコーナーで走るのを苦手としている。だからコーナーをピッチ走法で加速し、コーナーで加速した脚を直線でストライド走法に切り替えスピードを維持する……どうだ?妙案だろう?」
「……」
ふふん。あまりの妙案にトレーナーさんも大口開けてポカーンとしてますね。どうですこの天才的なアイデア。我ながら完璧です。
「まさかアンちゃんがここまでバカだとは思ってなかったです」
誰がバカじゃい!これでも成績は上から数えた方が早いし、何なら毎回テストの順位は1桁台だよ!
「あ~……え~っと……本気で言ってる?アンカ」
「本気も本気だ。これほどまでに完璧な走りもあるまい」
「いや、確かにそうだけどね!?」
なしてそんな驚いてるんですかねトレーナーさん。完璧な走りだと思うんだけどなぁ……。
「じゃあ、実際にやってみると良いですアンちゃん。早速トラックに行くです」
「……良いだろう。実際に走って確かめてみようじゃないか。この理論がいかに完璧か」
「ほざいてろです」
「酷くない!?」
そんなわけでトラックに移動して。僕は早速この理論を試してみることにしました!
(ふっふ~ん。言っても、コーナーをピッチ走法で走って、直線でストライド走法に切り替えるだけでしょ?こんなの簡単かんた~……ッ!?)
早速コーナーをピッチ走法で加速してストライド走法でその加速を維持する走法を試したんですけど……あ、あれ?なんか思ったよりうまくいかない?な、なんで!?
「ふぎゃっ!?」
「あ、アンちゃん転んだです」
「だ、大丈夫かい!?アンカ!」
い、痛い……。で、でもめげないぞ!もう一度トライじゃい!
……なお、できんかった模様。
「な、何故だ……?」
「そりゃあそうです。アンちゃんがやろうとしている技術は、歴史上でただ1人しかできなかった走法です」
「そうだね。それだけ難しい技術だし、今のアンカじゃさすがにできないよ……」
あ、一応やってる方いたんですね。ま、そりゃあそうか。理論上なら最強の走りですし。あれ?じゃあ何で誰もやらないんでしょうか?
疑問が顔に出ていたのか、トレーナーさんが答えてくれます。
「アンカの言う走法は通称等速ストライド……ピッチ走法とストライド走法を自在に使い分けることによって、短距離でも長距離でも、コーナーでも直線でも加速を可能にする技術のことだ」
おぉ!つまり僕の理論は間違っていなかったんですね!……あれ?でも歴史上で1人しかできなかったって……。
「ただ、これには強靭な心肺機能とバネ、そして何より……パワーが必要とされているんだ。今のアンカじゃさすがにパワー不足かな……?」
「ぱ、パワー不足だと!?な、ならそれを克服すれば……!」
「無理に決まってるです。アンちゃん、今自分がやってみてどうだったか覚えてるです?」
「うぐぅ!?」
そ、そりゃあ確かにできなかったけどさぁ!難しかったけどさぁ!
「じゃ、大人しく今日の練習をしようか。今日の神託は?」
「……アンクルつけてショットガンタッチ」
「そっか。じゃあ今日も頑張ろね、アンカ」
あぁ……トレーナーさんの優しさが身に沁みる……。
「アンちゃんがアホみたいな考えを実行して失敗して傷心しているです……!でもしょげてるアンちゃんも可愛いです……!」
何肩震わせてんだよヴィッパー!笑ってんのか?アホな考え実行した僕を笑ってんのか!?トレーナーさんの優しさの十分の一でもいいから僕に向けろよコンチクショー!
もう怒った!激おこだ!いつか等速ストライドをものにしてヴィッパーを驚かせてやる!でも今はそれ以上に……!この恥ずかしい気持ちを消すためにも!
「練習して発散してやるー!」
「頑張れよーアンカー!」
この後滅茶苦茶ショットガンタッチでスピード練習した。
ダート適正はあった模様。