アンカさんと遊ぶ約束をした次の日。私はトップロードさんを連れてショッピングモールでアンカさんを待つ。アンカさんはまだ来てないわ。一応、時間前だからそんなに気にしてないのだけど。
「あ、あの~。アヤベさん?」
「何かしら?」
「私はなんで呼ばれたのでしょうか?理由を聞かされてないんですけど……」
「……いってなかったかしら?」
「言われてませんよ!?昨日急に私のとこに連絡来たと思ったら【明日遊ぶわよ】としか聞かされてないですよ私!?」
これはうっかりだわ。先走り過ぎて用件を伝えるのをすっかり忘れてしまったみたい。
「ごめんなさいね。でも、遊ぶなら人数が多い方が良いと思って。トップロードさんに声を掛けさせてもらったわ」
「多い方が良い?私とアヤベさん以外にも来るんですか?まぁ誰かを待ってるみたいなのでそうだとは思いますけど」
「えぇ。アンカさんが来るわ」
「へ~アンカちゃんが!……アンカちゃんが!?」
トップロードさん。凄く驚いているけどあの子だって普通に遊ぶと思うわよ?
「あ、アンカちゃんは邪神さん達によって遊ぶのを禁じられているんじゃないんですか!?」
「邪神?……なにを言っているのか分からないけれど、こうやって遊ぶのを承諾してくれたんだもの。あの子だって普通に遊ぶんじゃないかしら?」
「は~……じゃあ遊ぶのが禁止されているのは私の勘違いだったんですね。良かったです……」
さて、そろそろ約束の時間だけど……あの子はちゃんと来るかしら?釘はさしておいたし大丈夫だとは思うけど、やっぱり心配だわ。
「お、お待たせしました~……」
「ん?」
「あれ?今の声って……アンカちゃん?」
凄くか細い声だったけど、アンカさんの声が聞こえたわね。あの子、一体どこに……そう思って辺りを見渡すと。
「……」
顔を真っ赤にしてゴシックロリータ調……ゴスロリ服といったかしら?を身に纏っているアンカさんがいた。……この子、意外とそういう服を着るのね。ちょっと意外だったわ。
「わ~!可愛いですアンカちゃん!えっと、あの~……凄く、凄い可愛いです!はい!」
「う、うぅ~……ッ!」
……ギャップが凄いわね。いつもは無表情でいることが多いのに、恥ずかしさからか顔を真っ赤にしているわ。だったら、そんな服じゃなくて普通の服を着ればいいのに。
「似合っているわ、アンカさん。顔を真っ赤にしてるけど大丈夫かしら?」
「だ、大丈夫じゃない!は、恥ずかしい……ッ!」
「なら、違う服を着てくれば良かったんじゃないかしら?」
「……んだよ」
「どうしました?アンカちゃん。なんて言ったんです?」
トップロードさんと私の追及に耐えかねたのか、アンカさんは顔を真っ赤にしたまま叫ぶように言った。
「これしか持ってないんだよ!」
「これしか持ってない?どういうことかしら?」
「……僕、友達がヴィッパーしかいないし、友達と遊ぶことなんてないから出かける用の服とか持ってなくて……。これも、僕の両親が僕宛てに贈ってくれたものなんだ」
「「……」」
なんというか、凄く悲しいことをカミングアウトされたわね。この子、他の子と遊んだことがないだなんて。
「ヴィッパーとだったら、気兼ねなく遊べるからラフな格好ができるんだ。僕達はお互いに家で遊ぶ方が好きだから、よそ行きの服なんて考える必要がないし……」
「そう……悪いことを聞いたわね」
「やっぱり邪神さん達のせいで……?だとしたら、許せません!」
トップロードさん、何か小声で決意を固めているようだけどそれ多分間違ってるわよ。分からないけれど。
「なら、まずやることは決まったわね」
「はい!決まりましたね!」
「な、何をするんだ?」
「あなたの服を買いに行きましょう。よそ行きの服、この機会に買っておきましょうか」
「え?で、でも……」
「いいから。これからも遊ぶことはあるだろうし、持っておいて損はないわ」
渋るアンカさんの手を取って私達は服を見に行く。
「これからも遊んでくれるんだ。えへへ……」
……さて、何を買おうかしら?この子に似合う服、しっかりと考えてあげないとね。
洋服を何店舗か見て回って
「見てくださいアンカちゃん!これなんかアンカちゃんに似合うんじゃないですか?」
「……ふむ。機能性もよさそうだし、後はサイズを合わせれば完璧だな」
「アンカさん。こっちの洋服を着ましょう。あなたにきっと似合うわ」
「チョイスがふわふわ系なのはアヤベさんの趣味じゃないか?……まぁ試着してみるが」
アンカさんの服を何着か買って。それからは映画を見に行ったわ。
「グスッ、か、感動しまじだ~!凄く、凄い感動しました~!」
「良き物語だった……BDが出たら購入も視野だな」
「……そうね。その時はまた一緒に見ましょうか」
映画を見に行った後はお昼を食べたり。
「アンカちゃん、食べる前にご飯の写真を撮ってますけどウマスタにでもあげるんですか?」
「……まぁそんなとこだ」
「それにしても、結構食べるのねアンカさん。いつもはそんなに食べてないのに」
「た、たまにはな。それに食べないと大きくなれないからね……よしよし!今回は当たり安価祭りだ!こんなにたくさんあるのに1つも外れがないんだなんて!運が良いぞぉ!」
ご飯を食べ終わった後は、私オススメのプラネタリウムを見に行ったり。
「はわ~……綺麗ですね~」
「……あぁ。思わず見惚れてしまったよ」
「そう。気に入ってくれたのなら良かったわ」
「しかし……少々眠くなってきてしまったな」
「なら、眠っててもいいわよ。出ていく時には起こすから」
「はい。任せてください!」
ショッピングモールのお店というお店を見て回った。我ながら、とても充実した時間を過ごせたと思うわ。
プラネタリウムの帰り道。すでに空は夕焼けに染まっている。私達は学園への帰路についている。
「ん~~……ッ!楽しかったですね!アヤベさん、アンカちゃん!」
「そうね。充実した時間を過ごせたわ」
「……あぁ」
私も、アンカさん程じゃないけど他人とはあまり関わらない。レースで勝つためには遊ぶよりも、トレーニングの時間に割いた方が有意義だから。それが、あの子への罪滅ぼしにもなる。そんな私が、こうやってアンカさんとトップロードさんを誘って遊びに行くようになるなんて……ね。それだけ、アンカさんが放っておけなかったのだけれど。
「どうしたんですかアンカちゃん?もしかして……楽しくなかったんですか?」
「そんなことは断じてない!……とても、楽しかった」
「……そう」
アンカさんはまた恥ずかしそうにもじもじしている。私達に何かを伝えようとしているけど伝えられない。そんなところかしら?トップロードさんと目配せして、待ってみることにした。
「そ、その……。アヤベさんも、トップロードさんも……あ、ありがとう……。こんな僕と、一緒に遊んでくれて……」
「……」
「アンカちゃん……」
その発言は少しイラっとするわね。私はアンカさんの頬を引っ張る。
「あ、あひゃへひゃん!?」
「アンカさん。こんな僕、だなんて言わないでちょうだい」
「……え?」
「少なくとも私はアンカさんと一緒に遊んで楽しかったし、とても充実した休日を過ごせたわ。……たまには、トレーニングを休んでみんなでこんな時間を過ごすのも悪くないわね」
アンカさんと出会う前の私だったら、ちょっと考えられないようなセリフ。あの子への思いを忘れたわけじゃない。でも、少しだけ変われたような気がしてる。
「そうですよアンカちゃん!こんな私、だなんて寂しいこと言わないでください!」
「……アヤベさん、トップロードさん」
「また機会があったら一緒に遊びましょう!私達、もう友達ですから!」
「ッ!」
トップロードさんの言葉にアンカさんが驚いたような表情を浮かべる。そして、今度はニヤニヤしながら頬を抑えていた。
「と、友達……友達……え、えへへ……」
……今日一日過ごして思った。この子ってもしかして……結構分かりやすい?
「重ねて、礼を言おうアヤベさん、トップロードさん」
「カッコつけてるわね」
「今だとちょっとカッコ悪いですけどね」
「う、うるさい!」
けど、アンカさんは真面目な表情に切り替わる。
「知っての通り、僕は神託を賜った。その神託は……クラシック5大レースの制覇。その行く手を阻むものは……たとえ誰であろうと容赦はしない」
「……そうね。私も、負けるつもりはないわ」
「ッ!私も、負けられません!」
アンカさんからの宣戦布告。私も、おそらくトップロードさんもクラシック戦線を走る。けど……アンカさんはそのクラシック戦線に加えてティアラ路線を走る。前代未聞の偉業を成し遂げようとしている。途方もない道のり、苦難の連続になるでしょうね。だからといって、手を抜くつもりは一切ないのだけれど。
「僕はクラシックの5つの頂を手中に収める……道化らしく、観客を楽しませながら、ね」
「楽しませることに集中しすぎて、油断しないことね。私が差し切るわ」
「そうです!私だって、負けませんから!アンカちゃんを解放するためにも!」
((解放?))
何となく私とアンカさんの思考が一致したような気がした。トップロードさんが勘違いしている気がするけど……まぁいいわね。
「……ま、早いとこ帰りましょうか」
「そうですね。門限までまだ時間はありますけど、急ぐに越したことはありませんから!」
「……今日は楽しかったなぁ。えへへ、友達と過ごすのも悪くないかも」
「嬉しいこと言ってくれるわね」
「き、聞こえてました!?」
「お、思いっきり声に出てましたね」
「わ、忘れろー!?」
もうすぐクラシックの戦いが始まる。それに備えて……トレーニングもしっかりしないとね。
「えへへ……友達、友達……えへへ……」
「どうしたですアンちゃん。ニヤニヤして」
「ヴィッパー!ついに僕にも友達ができたよ!」
「ふーんです。それは良かったです」
「……淡白すぎない?」
「わー、やったーです、アンちゃんにも友達ができたでーす。ヴィッパー大喜びでーす」
「棒読みすぎるよ!?」
「……本当に、良かったです。アンちゃん」
「へ?なんか言った?ヴィッパー」
「いえ、何も」
帰った後、僕はヴィッパーとそんな会話をしていた。
???「蚊帳の外でも美しいボク!」
???「す、救いはないのですか~……?」