今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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ダービーの決着ですよっと。


安価ウマ娘とダービー決着!

 

 

 

 

 

《あ、アンカデキメルゼが逃げる逃げる!すでに第1コーナーのカーブを曲がり終わろうとしているぞ!先頭のアンカデキメルゼが第2コーナーのカーブへと入る!そのスピードは……全くと言っていいほど衰えない!どうしたことか!?コレは暴走か?暴走なのか!?》

 

 

《か、彼女が逃げで走っていた記録はありません!つまり今回が逃げ初挑戦……ッ!これはおそらく、暴走でしょう!疲労が溜まってボロボロの身体で……無茶も良いところです!》

 

 

《なんということだ!?レースの序盤から大波乱だ!アンカデキメルゼが逃げに逃げている!2番手との差はもうどれくらい開いているでしょうか!?止まらない止まらない!アンカデキメルゼは止まらない!しかし誰もアンカデキメルゼを追わない!アンカデキメルゼの気ままな一人旅!それもそうでしょう!彼女はすでに満身創痍!落ちてくることは分かっているのですから!》

 

 

 

 

 やっぱり、観客席からは悲鳴が上がっているね。分かってたことだけど。

 

 

「そりゃあそうです。初めての逃げで大逃げです、驚かない方が無理です。というかです、アンちゃんは疲労で満身創痍です……傍から見たら」

 

 

「そうだね。本当に、彼女の頑丈さにはビックリするよ」

 

 

 確かにアンカは連闘に次ぐ連闘で疲労が残っているだろう。だけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()、実は。

 

 

「まさか1週間程度でほぼ全快するなんて思わないでしょ普通……本当にどうなってんのさ、アンカの身体は」

 

 

「昔っからバカみたいに鍛えまくったせいです。気絶するまで練習を繰り返してたです、そりゃあ体力もつくし疲労の回復も早くなるです」

 

 

 そんなアンカは2番手を大きく引き離して先頭を走っている。それこそ、凄く楽そうに走っていた。

 

 

「アンカってさ、周りに他の子がいるとソラを使う癖がある、これが一番の弱点だった。だから周りに他の子がいない状況が多い追い込みが最適性だと思ってたんだけど……それは違ったんだよね」

 

 

「まぁアンちゃん鋭い末脚も持っているです。そう思っても仕方ないです」

 

 

 でも、そうじゃない。彼女の本当の武器……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「逃げこそが彼女の最適正なんじゃないか。そんな風に思ってたけど……やっぱり間違いじゃなかったね」

 

 

「しっかしまぁ両極端です。逃げと追い込みが最適性なんて」

 

 

「周りに他の子がいるだけで極端にパフォーマンスが落ちるからねぇ……。ま、今回はその心配はないけど」

 

 

 周りの子達はみんな、アンカに疲労が溜まっていると思い込んでいる。だから必ず落ちてくる……そう考えているはずだ。実際は、アンカの疲労はほとんど回復しているんだけど。

 ただアンカ自身もかなりのハイペースで飛ばしている。アンカの疲労は回復していると分かっていても……やっぱり心配だ。

 

 

(無事に帰ってきてね……アンカ!)

 

 

 そう願うばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《先頭アンカデキメルゼが最初の1000mを通過しました!最初の1000mは……ご、57秒2ィ!?57秒2で最初の1000mを通過しましたアンカデキメルゼ!凄まじいハイペースまさに大逃げ!果たしてどこまでスタミナが持つのでしょうか!?すでに2番手との差は10バ身以上はついているでしょうか!スピードが衰えることはありませんアンカデキメルゼ!》

 

 

 

 

 いや、どんな奇想天外な策が来ても大丈夫なよう心構えはしてきたけれども……!

 

 

(まさか大逃げで来るなんて思わないでしょう!?)

 

 

 この大一番で、一度も取ったことがない戦法を取ってきた!本当に、何をしてくるか分からないわね、アンカさんは!

 私の現在の位置は最後方3番手の位置。とは言っても……この位置からは早いとこ抜け出さないといけないわね。

 

 

(きっと、みんなアンカさんが落ちてくると思っている。あんな破滅的ペースが持つわけない、連闘の疲労ですぐに落ちてくる……そう、思っているでしょうね)

 

 

 でも、相手はあのアンカさん。きっと落ちてこないでしょうね。なんで分かるかって?あの子だったら気合でなんとかしそうだからよ。それに、疲労が溜まっていると言っていたけれど……私はあまり信じていない。アンカさんならこのまま逃げかねない。だからこそ最大限警戒しておく。

 

 

「本当に……厄介な子ね!あなたは!」

 

 

 私は自然と笑みを零していた。……我ながら、この状況を楽しんでいるのかもしれないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんで……なんでそんなに自分を追い詰めるんですか!?

 

 

(自滅覚悟の大逃げ……!アンカちゃんすっごく疲れてました!だからきっと……!)

 

 

 落ちてくる。それも、大惨敗をするような破滅的ペースです。こんなペース、最後まで持つわけない!

 

 

 

 

《さぁすでにバックストレッチ半ばを過ぎました!先頭は依然としてアンカデキメルゼ!2番手との差を10バ身以上はつけている!アンカデキメルゼの気ままな1人旅!追いつこうとするウマ娘は誰1人としていません!》

 

 

《まぁ彼女は落ちてくるでしょうからね……落ちてきますよね?まさか、このままなんて……》

 

 

《確かに落ちてくるかもしれません!しかし!このまま逃げ切るんじゃないかと期待する私もいます!さぁもうすぐ第3コーナーに入ろうとしていますアンカデキメルゼ!まさかこのまま大逃げをしてしまうのか!?後続はそろそろ追い上げてこないと不味いんじゃないでしょうか!?20万の大歓声が鳴り響いています!アンカデキメルゼを心配する声、何かをしてくれるんじゃないかと期待する声が上がります東京レース場!》

 

 

 

 

 ……けど、同時に湧いてくるこの嫌な感じはなんでしょうか?まるで、このまま逃げさせたらまずいって警告しているような……!

 

 

(……なら、この嫌な感じに従いましょう!多分きっと、そうした方がいい!)

 

 

 私はペースを上げる。現在は第3コーナーの手前。他の子たちはまだ上がってこない。上がっているのは……オペラオーちゃんとアヤベさんだけでした。……アヤベさん!?

 

 

(成程!でしたらこの嫌な感じは……)

 

 

「間違いじゃないですね!」

 

 

 アヤベさんも警戒している!アンカちゃんの大逃げを!

 それに、アンカちゃんはコーナーを回るのを苦手にしているはずです!だって、今までずっと大外を回っていたから!だから、大外を回って上がっていく!距離のロスが響くはずです!

 

 

「アンカちゃん!あなたを解放するためにも……なによりも!私自身があなたに勝ちたいから!」

 

 

 だから、諦めません!このレース、勝つのは私です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやはや、まさか大逃げで来るなんてね……!ボクもビックリだよ、アンカ君!

 

 

(とんでもないペースでの大逃げ。他のライバル達は落ちてくると思っているようだが……)

 

 

 だが少し待ってほしい。彼女が……アンカ君が何の勝算もなしに大逃げなんて選択するだろうか?

 確かに一度も取ったことのない戦法だ。落ちてくる可能性の方が高いだろう。だが……それ自体が罠だとすれば?もしこれが罠だとすれば……きっと、彼女はそのまま逃げ切ってしまうだろう。

 まぁつまるところだ!

 

 

「アンカ君はこのまま逃げ切るつもりだろう……。だが!そうはさせないよアンカ君!」

 

 

 ボクは早めにペースを上げる。アンカ君の大逃げを捉えるために、少しでも前につけておいた方が良い!そう考えていたのは……どうやらボクだけじゃなかったようだ。

 

 

(トップロードさんにアヤベさんも同じことを考えていたか!やはり、ボクの勘は間違っていなかったようだ!)

 

 

 やはりボクの勘は冴えわたっている!後はただ……アンカ君を追い抜いて!トップロードさん達に競り合ってボクが1着を取る!それだけだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《先頭アンカデキメルゼが第3コーナーを越えた!後続との差はまだ縮まらない!まだ縮まらない!しかしテイエムオペラオーとナリタトップロード!そしてアドマイヤベガにつられてか他のウマ娘もペースを上げ始めた!ようやく不味いと気づいたか!?そうしている間にもアンカデキメルゼだけが、アンカデキメルゼだけが第4コーナーのカーブへと入っていった!まだ気ままな一人旅を継続中だアンカデキメルゼ!このまま独走してしまうのか!?》

 

 

《しかし後続も差を詰めてきましたよ!やはりきつかったかアンカデキメルゼ!》

 

 

 

 

 ……キッツ!いやキッツ!しんど!マジで死にそうなんですけど!?誰だよこんなバカげた安価したヤツ!?マジでぶっ殺してやりましょうか!?

 疲労?とれてるわけねーでしょうが!オークスから中0週ですよこちとらぁ!しかもオークスの二週間前にNHKマイルも走ってんですよ!疲労なんて完全にとれるわけね―でしょうが!

 

 

「ハァ……ハァ……ッ!」

 

 

 あぁ……だけど。僕は凄く追い込まれている。第4コーナーを()()()()()()()()()()()そう思っていた。

 

 

(あ~……キッツイなぁ、しんどいなぁ……)

 

 

 本当にしんどい。身体の節々が痛いし、もう極限状態まで追い込まれてんだなーってのが何となく分かる。というかさ、僕逃げで走ったことなんてねーんですよ。だからペース配分なんて分かんないし。とりま破滅逃げ?ってのは初っ端からぶっ飛ばせばいいって教えてもらってたからそうしたけどさ。マジガス欠寸前な訳よ。

 

 

「ハァ、ハァ」

 

 

 マージで苦しい。本当にしんどい。すんげー追い込まれてる。

 

 

(あぁ……本当)

 

 

 本当に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 これだよコレ!本当、最高に生きてるって実感してるこの感じ!超・最・高!第4コーナーを抜けて最後の直線に入る。僕は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 でも、最後の直線に入ってすぐに坂だ。坂に入ったら今度は……()()()()()()()()()()()()()()()。ほっとんど何も考えないで走っている。いや、だって最高に生きてるって実感してんだよ?そりゃあ楽しんで走んなきゃ損でしょ!

 

 

「おいおい!?さすがに無理だろ!」

 

 

 ……あん?

 

 

「で、でもさ……なんか、いけそうじゃない!?」

 

 

「無理だって!よく見ろよ、疲れ切ってるじゃねぇか!アンカデキメルゼ!」

 

 

「そうだよ!不可能なんだよ!」

 

 

 ……あぁ、ごちゃごちゃうるせーですね。なーにが無理ですか。なーにが不可能ですか。まだ結果も出てねーのに。

 

 

「決めつけてんじゃねーですよ……!」

 

 

 

 

 

 

《アンカデキメルゼが坂を上っている!後方からはグングン差を縮めてくる!アンカデキメルゼと後方との差はすでに10バ身以内に収まりました!アンカデキメルゼはここまでか!?アンカデキメルゼの逃亡劇はここまでなのか!?》

 

 

 

 

 あぁ……うるせぇんですよ!人が気持ちよく走っているところに……ッ!余計な雑音(ノイズ)が……!

 

 

「うるせぇんですよ……!」

 

 

 必要ない。僕は僕で……気持ちよく走りたい!そのために……僕をもっと、もっと高みへ!誰も到達できない高みへと……僕を導け!なんかパキパキ音が鳴ってるような気がするけど……どうでもいい!

 

 

「不可能を蹴飛ばせ……逆境を楽しめ……追い詰められた時こそ、笑うことを忘れるな!」

 

 

 今この瞬間をもっと楽しみたい。極限まで追い詰められたこの状況を……もっと、もっと!そう考えていると、ガラスが割れた音が頭の中で響いた気がした。それと同時に力が身体の奥底から湧き上がってくる。なんかよく分かんないけど……

 

 

「……アハ」

 

 

 最高に楽しいってことだけは分かるね!

 

 

 

 

領域発現

 

Stand up HERO!Wake up my soul!

 

 

 

 

 イヤッホォォォォォォォウ!なんも聞こえねぇ!でも身体が超軽い!最っ高に楽しい!さっきまでガス欠だったのが嘘みてぇだぜ!

 とっくに坂は上り終わった!後はこんまま……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「この僕に夢を見ろ!不可能なんて蹴っ飛ばせ!これが僕の……アンカデキメルゼの走りだぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

《さ、坂を上り終わってアンカデキメルゼがぶっ飛ばす!まだ後続は8バ身以上ついている!だがそれ以上……8バ身から先が縮まらない!2番手アドマイヤベガ・ナリタトップロード・テイエムオペラオーが必死に追走している!だが差は縮まらない!まさかこのまま逃げ切るのか!?逃げ切ってしまうのか!?残り200を切りました!》

 

 

《ま、まさか……!こんなことが!?》

 

 

《これはもう決まった!完ッ全に決まった!アンカデキメルゼ独走状態!圧倒的ハイペースで!破滅的なペースで!アンカデキメルゼが逃げ切ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ゴォォォォォォォォルイィィィィィィン!アンカデキメルゼの逃亡劇が決まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!》

 

 

 

 

 走り終わった僕の耳に聞こえてきたのは……とんでもねぇ大歓声だった。あ~……マジでしんどい。ガチで死ぬ。吐きそう。というか吐きたい。でも女の子としてそれはどうなん?という意地の下ぜってー吐かない。後吐いたら絶対スレ民の玩具にされる!それだけは勘弁!

 

 

「アンカ……ちゃん……っ」

 

 

「……クソッ!」

 

 

「アンカさん」

 

 

 うん?なんかアヤベさん達が僕の方を見てますね。生憎と僕にはあんま受け答えする余裕がないんですよ。でも疲労の色を見せるとまた心配させそうだしなぁ……あ!丁度いいのあるじゃん!このピエロのお面!こいつを被って……と。

 

 

「……なにを意外そうな顔をしている?」

 

 

「アンカちゃん……!」

 

 

「常日頃から言っているだろう?僕は道化だと」

 

 

「「「……ッ!」」」

 

 

「道化ってのは……騙すのが得意なんだぜ?」

 

 

 ふっ、決まりましたね……って!そうだタイムだ!記録どうなってんですか!?安価のためには世界記録更新しなきゃいけないんですけど!

 

 

 

 

《アンカデキメルゼの走破タイムは2.20.0!……え?に、にふんにじゅうびょお!?ほ、ホーリックスの世界記録2.22.2を2.2秒も縮めました!ど、どういう脚をしているのかアンカデキメルゼ!なんで連闘でこんな勝ち時計が出せるのか!?》

 

 

《……彼女は本当にウマ娘なんですかね?》

 

 

 

 

 オイこらどういう意味だ解説!?ウマ娘に決まってんでしょうが!このプリティーな耳が見えねぇのか節穴ぁ!まぁいいや、世界記録は更新できた!つまりは……

 

 

「今日も安価達成だぜひゃっほい!」

 

 

 今日も飯が美味く食えますよ!




そら(死に体のはずなのに大逃げで世界レコード更新したら)そう(ウマ娘かどうか疑われる)よ。
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