今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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アンちゃんとヴィッパー回。これが彼女達にとっての日常です。


安価ウマ娘と何気ない日常

 トレーニングも自主トレもない休みの日。僕は寮の自室でヴィッパーと過ごしていた。

 

 

「……」

 

 

「く……ぬ……っ!こ、コイツ……!」

 

 

 僕はスピーカーで音楽を聴きながら漫画を読んでいて、ヴィッパーは格闘ゲームをやっている。

 

 

「う、うぅ~……!」

 

 

(また負けてんのかな?)

 

 

 別にヴィッパーは格闘ゲームが弱いわけじゃない。多分、そこそこ上手いレベルにはいると思う。あんまりよく分からないけど。

 

 

「あうっ!?く、こ、この……!」

 

 

 劣勢そうな声を上げているヴィッパーを尻目に僕は漫画を読んでいる。いや~発売を楽しみにしていた甲斐があったね!最高に面白「あぁ~!?こ、コイツ!今ヴィッパーを煽ったです!」……そろそろ助け船でも出してあげるか。さっきから30分はこの状態が続いているし。

 漫画を置いて、僕はゲームをしているヴィッパーに近づく。丁度対戦が終わって、ヴィッパーが負けたタイミングで話しかけた。

 

 

「どうしたのヴィッパー?さっきから苦戦してるみたいだけど」

 

 

「……う、うぅ~!」

 

 

 余程負け越したのか、ヴィッパーはすでに涙目だ。そして、涙目になりながら僕に縋りつく。

 

 

「アンちゃん!コイツ今ヴィッパーのこと煽ったです!やっつけて欲しいです!」

 

 

「え~……別にいいけどさぁ」

 

 

 僕はヴィッパーと代わってアケコンを持つ。対戦相手は……これは部屋か。ヴィッパーやさっきの対戦相手以外にもたくさんの人がいた。

 

 

「見るですアンちゃん!こいつの配信!」

 

 

「え~っと、何々……」

 

 

 どうやらこの人は配信をしているらしい。同接数は……1000人超えてるや。結構大手の人なのかな?

 

 

《はい雑魚乙~。もうちょっと腕上げてから挑んでこようね~?》

 

 

 ふんふん、まぁこういうスタイルってことか。対戦の映像を見ている限り、煽り行動を滅茶苦茶してる。対戦相手もなんとか奮戦しようとしているが……まぁこの人には勝てていない。ダウンさせて、煽って、ダウンさせてまた煽っての繰り返しだ。コメントも信者らしきコメントで溢れかえっている。……というか。

 

 

「なんでこの人の配信部屋に入ろうと思ったのさ?」

 

 

 少なくとも、前情報で分かってそうなもんだけど。

 

 

「だ、だって。普通に苛つくです。だからヴィッパーがやっつけてやろうと思って……」

 

 

「それで分からされたわけか」

 

 

「それに、友達が好きな配信者をバカにしてたです!許せないです!」

 

 

「う~ん……まぁ、こういうスタイルの配信者だろうからあれこれ言うつもりはないけどさ……」

 

 

 さすがに度を過ぎている気がしないでもないね。コメ欄は信者に混じってまともな感性をしている人がチラホラいるけど……あ、信者に攻撃されてる。ヒェ、怖いな~。

 

 

「まぁいいや。この対戦が終わったら申し込んでみるよ」

 

 

「お願いですアンちゃん!」

 

 

 それから待っていると、対戦が終わったようだ。僕は配信者に対戦を申し込む。

 

 

《あれあれ~?さっき私にコテンパンにやられてた雑魚じゃ~ん!またやられに来たんだ~!》

 

 

「ムギギギ……!」

 

 

「落ち着きなよヴィッパー」

 

 

 僕はキャラ選を終わらせて待機する。その間も配信者はバカにするような発言を繰り返していた。

 

 

《ま、ちゃちゃっと終わらせちゃうよ~》

 

 

 さてさて、コメ欄はっと。

 

 

「う~ん、当たり前のごとく対戦相手である僕のことをバカにしてる。とんでもねぇ民度だな」

 

 

トップチャット

・はい雑魚ー!

・TUEEEEEEEEE!

・さっき負けた奴がリタマしてきて芝

・あれ?これさっき負けた奴じゃね?

・ホンマや

・対面顔真っ赤になってそう

・さっきみたいに完封だ!

・むしろハンデつけてもいいぐらいだろwww相手雑魚だしwww

・負けたのがそんなに悔しいんでちゅか~?www

・リタマ草。身の程を弁えてどうぞ

 

 

 まぁそういう実況スタイルなんだろうから別に否定はしない。見てて良い気はしないけどね。

 

 

「さて、早速始まったな……ヴィッパー、動かしにくいから抱き着かないでくれる?」

 

 

「だって気になるです」

 

 

 まぁいいや。さてさて……どんなスタイルで戦うかを見極めるために、1()()()()()()()()()。どうせ3本先取だからね。1本くらいどうってことない。僕は相手を観察しながらキャラを動かす。対戦画面はまぁ悲惨なものだ。なす術もなくやられている。

 

 

《アハハ!やっぱ雑魚じゃ~ん!ほらほら、好きなコンボいれてみ?》

 

 

「アンちゃん煽られてるです!早くやっつけるです!」

 

 

「……」

 

 

《キャハハ!ざ~こざ~こ!このゲーム辞めたら?》

 

 

 そんなわけで、僕は煽られながら1戦目を落とした。配信は大盛り上がりである。結構なことで。

 

 

「……まぁいいや。お陰様で……()()()()()()()()

 

 

 早速2戦目に移る。配信では相変わらず僕を煽るようなコメントで埋め尽くされている。ま、それも今の内だけどね。

 

 

「……」

 

 

《あれ?ちょ、な、なんで?》

 

 

 僕は陽気に鼻歌を歌いながら相手のキャラを蹂躙する。さっきから相手の攻撃は一度も通っていない。

 

 

「うぇ、やっぱとんでもないです」

 

 

《ちょ!?ず、ズルでしょそんなん!?ま、待って……》

 

 

 結局、2本目は……対戦相手がなす術もなく負けた。配信は、っと。おーおー盛り上がってら。

 

 

「チーターを疑われてるな。いざ負けたらチーターってどういうことだよ」

 

 

《ま、まぁ?今のは調子が悪かっただけだし!今度は私が勝つもんね!》

 

 

「残念だけど……君が勝つことは絶対にないよ」

 

 

 3本目が始まる。その3本目も……僕の蹂躙劇が始まっていた。

 

 

「ふんふふ~ん」

 

 

《な、なんで私の行動が全部読まれてるのよ!?どうなってんの!?》

 

 

 僕がやってることは簡単だ。対戦相手がやってくる行動に対して……全部先読みで動いて攻撃を当てているだけだ。

 

 

「1本目でどう動くか、どういう性格なのか全部分かってるからね~。分かりやすい相手で助かったよ」

 

 

 僕のAという行動に対して、相手は有利な行動Bで動く。なら、そのAという行動を囮にして僕はBに有利であるCの行動を先読みして当てる……単純化すればこんなものだ。ここに相手の性格を加味して、どういう行動を立てるかをパターン化する。

 勿論相手だってバカじゃない。僕が対策したことを知って、パターンを変えてくるだろう。対策の対策をしてくる。そしたら……また新たなパターンを構築すればいい。対策し返してやればいいだけの話だ。そうして積み重ねていく。読みに読みを重ねていくわけだ。そうすれば……普通に勝てる。

 

 

「……相変わらずえげつねぇです。どうやって1本目だけで相手の性格・行動・取ってくるパターンの全てが分かるです?」

 

 

「そう?結構簡単だけど」

 

 

「絶対簡単じゃないです。相変わらず情報処理能力が化物じみてるです。というか、入力精度も半端じゃないです。一度もコマンドミスらないってどういうことです?」

 

 

「練習」

 

 

「あ、はいです」

 

 

 結局戦況は覆ることなく。そのまま3本目4本目も僕が勝った。3本先取で僕の勝ち。対ありでしたってね。

 

 

「うえぇ……全試合ほぼ完封してたです。やっぱとんでもねぇです」

 

 

「これぐらい頑張れば誰でもできるよ」

 

 

「絶対できないということだけ分かるです」

 

 

 配信主は……めっちゃキレてんな。笑える。さてさて、せっかくだから。

 

 

「ヴィッパー。君のアカウントでコメントしてもいい?」

 

 

「別にいいです。あ~……今最高に愉悦です!」

 

 

 さてさて、どんなコメントを打ってやろうか?……決めた!

 

 

《くっそ~!なんなのよアイツ!絶対チーターじゃん!……あ、みんなスパチャありがとー!チート野郎がいたけど……あれ?コメント……ってこれ!?【散々バカにしてた相手に負けるってどんな気持ち?よければ教えてください】……絶対さっきのチーターだな!?黙れチートのくせに!チートさえなければお前なんか勝てるんだよ!》

 

 

 ウケる。動画撮っとこ。ヴィッパーのウマホだけど。

 どうやら相手は再戦希望のようだ。なら再戦してあげよう。まぁ。

 

 

「これでアンちゃんの50連勝です。いつものことながらえげつねぇです」

 

 

「というか、50連敗しても挑んでくる相手も相手だと思うけどね」

 

 

 最終的に部屋からキックされた。ちなみにチートの類は一切使ってないことは言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アンちゃん、読むスピードが早いです。もっとゆっくり読むです」

 

 

「え~?僕はもう読み終わったよ?」

 

 

「ヴィッパーはまだ読み終わってないです」

 

 

「というか、僕の方が読むスピード早いんだから後で読めばいいんじゃん」

 

 

「ヴィッパーだって先が気になるです……あ、読み終わったです」

 

 

「はいはい」

 

 

 格ゲーで相手を分からせた後、僕達はくっついて漫画を読んでいた。共通で読んでいる漫画はこうやってくっついて読むことが多い。まぁ2人で一気に見れてお得だしね。

 

 

「そうだ、晩ご飯はどうする?ヴィッパー」

 

 

「……せっかくだから生姜焼き食べたいです」

 

 

「生姜焼きか……材料はあるから大丈夫かな?分かったよ。後で作っておく」

 

 

「アンちゃんの作る料理滅茶苦茶美味いです。楽しみです」

 

 

「そう言ってくれると嬉しいよ」

 

 

 漫画を読み終わった後は、料理を作るためにいったん別れる。料理を作って、ヴィッパーと一緒に食べて。やること終わったから今度はお風呂だ。

 

 

「……ジーッ」

 

 

「なに?ヴィッパー。僕の顔になんかついている?」

 

 

 視線は下の方に向いてるけど。

 

 

「相変わらずアンちゃんのお尻は大きいです」

 

 

「うるさいよ!?」

 

 

 人が気にしてることをコイツ!言いながら人の尻を触るんじゃないよ!

 

 

「いや、だって……胸と身長に対してお尻だけ大きい気がするです」

 

 

「やかましい!本当に気にしてんだかんな!?」

 

 

 くっそ~!ぼ、僕だって師匠みたいなダイナマイトボディになるんだい!いっぱい食べて、いっぱい運動してるからきっとなれるはずだ!*1

 なんだかんだありつつも、僕達は部屋に戻る。部屋に戻ったら、また思い思いの時間を過ごす。

 

 

「「……」」

 

 

 僕とヴィッパーの間に会話はない。この無言の空間が、凄く落ち着く。お互いに気兼ねなく過ごせるこの時間が、僕は好きだ。

 漫画を読んで、ふと時間が気になったので確認する。ありゃ。

 

 

「……?あれ、もう消灯時間か。じゃあ寝るか」

 

 

「そうです。早く寝て明日に備えるです」

 

 

「久しぶりに一緒のベッドで寝る?」

 

 

「賛成です。ぬくぬくするです」

 

 

「夏は勘弁したいけどね」

 

 

「それには同意です」

 

 

 電気を消して1つのベッドで寝る。ヴィッパーが壁側だ。僕の方が起きるの早いしね。

 僕とヴィッパーの他愛もない日常。いつも通りのこの日常が僕は好きだったりする。

*1
無理です




アンカデキメルゼの秘密①
実は、格ゲーの腕が世界ランカー並。
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