《各ウマ娘がスウィンリーボトム*1めがけて走っている!先頭を走るのは日本のアンカデキメルゼ!アンカデキメルゼが先頭だ!先頭を走るその姿はまさしくラビット!しかしただのラビットの枠では収まらないのがこのウマ娘アンカデキメルゼ!そこから10バ身は離れているでしょうか?2番手はダリアプールとネダウィそして内からデイラミが上がっています。2番手から最後方までは6、7バ身に収まっている。他のウマ娘はアンカデキメルゼを追わない様子だ。これを見てかアンカデキメルゼもややペースを落としたか?》
アンカは先頭に立って逃げている。それも……大逃げの形で。ただ、下り坂ということもあってか加速した後はストライド走法で脚とスタミナを残すようにしている。
「本当ならもうちょっとペースを落とした方が良い。それが定石なんだけどね」
「それってやっぱり、アスコットレース場が特殊な造りをしてるからですか?」
カレンチャンの言葉に俺は頷く。
ここのレース場はかなり特殊な造りになっている。最初のコーナーがかなり急ということもあり、普通ならスピードを落としてカーブに入らないと大きく外に膨らんでしまう……
「もうそろそろスウィンリーボトムね。アンカさん、加速に乗ったままカーブに入っていくけど……」
「『HAHAHA!何の問題もねぇよ……見せつけろ!シルバーラビット!お前という存在を……この国に刻みつけてやれ!』」
アンカはスウィンリーボトムを……
《さぁ先頭のアンカデキメルゼがスウィンリーボトムに入って……!?ほ、ほとんど減速していないぞ!?そのままのペースで突っ込んで……曲がったぁぁぁぁぁぁ!!凄まじい走りだアンカデキメルゼ!なんとアスコットレース場の急なカーブをほとんど減速せずに曲がった!?ストライド走法でどうやって曲がって……?いや!よく見たら走りを切り替えている!ストライド走法からピッチ走法へ切り替えている!これは凄い!勢いのままカーブを曲がり他のウマ娘との差をさらにつけていくその差はさらに広がった!そんなアンカデキメルゼを待ち受けるのはラスト1ハロンまで続く上り坂!果たしてアンカデキメルゼにスタミナは残っているのか?後続のウマ娘達の動きも気になるところだ!》
アンカはその勢いのままに坂を上っていく。観客席では固唾を飲むような雰囲気が漂っているけど……俺はあまり心配していない。
「スタミナはセクレタリアトさんのおかげで滅茶苦茶に鍛えまくったからね。パワーもついてるし、アンカならこのままのペースでも十分に持つ。だけど……問題は」
「デイラミさんがどう動くか……でしょうね」
欧州最強の名は伊達じゃないだろう。元々2000mが距離限界なんて言われてたけど、12ハロン6ヤード*2のコロネーションカップを勝っている。展開に助けられただけ、というのが世間の評判だけど……絶対にそれはない。デイラミは、この距離不安を克服している。俺はそう感じていた。
「『ま、我が弟子なら問題ねぇさ。何せ、俺が鍛えたんだからな!』」
「『……相変わらずの自信ね。セクレタリアト』」
そんな悪態をつきながら現れたのは……!?え、ちょ!?な、なんでこのウマ娘がここに!?
「『おー!ようやく来たか!ほら、あの先頭走ってるのが俺の弟子だ!アンカデキメルゼっていうんだけどよ、これがまた凄くてな!』」
「『あなたから何回も聞かされたから知っているわ。全く……態々ここまで呼びつけて。良い思い出がないの知ってるでしょ?』」
「『まぁそう言うな!一緒にレースを見ようじゃねぇか!』」
「『……ふぅ。まぁいいわ。あなたのお気に入りが敗れる様でも見てあげる』」
そのままウマ娘はセクレタリアトの隣でレースを見始めた……あ、ヤバい。また胃が痛くなってきた……。どうして、こう……アンカは凄いウマ娘ばかり引き寄せるのかなぁホント。
さて、スウィンリーボトムを曲がってまた長い直線に入ったんですけど……!今度は上り坂が続いてスタミナと足が削られますね!でも、師匠との特訓やトレーナーさんのメニュー。そして何よりもぉ!安価のおかげで全く苦になりません!ほとんど減速してませんよ!やっぱりパワーとスタミナがついてきた証拠です!
《オールドマイルコースも残り半分を過ぎました先頭を走るアンカデキメルゼ!快調に飛ばしていきます!果たしてこのペースで最後まで持つのか気になるところ!後続はデイラミがペースを上げ始めました!デイラミが外に進路を取る!それを見てか他のウマ娘達もペースを上げ始めている!先頭のアンカデキメルゼを捉えるために他のウマ娘達もペースを上げるぞ!その差は徐々に、徐々に縮まってきております!10バ身以上はあった距離がグングン縮まっていく!……いや!デイラミだけが、デイラミだけが他のウマ娘よりもペースをさらに上げている!一気に2番手に躍り出たデイラミ!外からデイラミが上がっていくぞ!》
さぁて!最後のカーブも見えてきた!後はこのまま……先頭に立ったままゴールするだけです!
そして僕は最後のカーブを先頭で駆け抜けます!残り500m、まだ上り坂は続きますけど……脚もスタミナも十分に残っている!これなら問題ない……ッ!?
「ッ!?な、なんだ……何の気配だッ!?」
後ろには誰もいない。だけど……強烈な気配を外から感じたんですけど!?で、でもこのペースのままなら問題なく勝て……いや!
(とてつもなく嫌な予感がする……ペースをさらに上げるか!)
僕は、スパートをかける。スタミナも脚も十分に残っているし、このままでも十分に持つ。ただそれ以上に……さっきから増している、外からの圧をどうするか考えないと!
そして……それは突然やってきた。
「『やぁ我が愛しのプリンセス!私と……ワルツを踊っていただけるかな!』」
僕以上のペースで、デイラミさんが上がってきた!?いや、あんたいつの間に上がってきたんですか!?
《残り200m!もう上り坂はないぞ!先頭を走るアンカデキメルゼを……デイラミが捉えたぁ!その差は3バ身程!他のウマ娘も追い上げてきているが……デイラミとアンカデキメルゼには追いつけない!3番手はネダウィ粘っているがこれはもうアンカデキメルゼとデイラミだ!この2人の対戦カードになる!欧州最強がキングジョージを取るかそれとも日本の絶対女王が凱歌を轟かせるか!果たしてどちらが勝つか!》
すんごい勢いで迫ってきてるー!?しかも外から来てるから外にも逃げれない!差が徐々に縮まってきてる!……まぁ、僕にも二の矢があるわけだが。
「『生憎だが、あなたとワルツを踊っている時間はない……だから、あなたのためにレクイエムを奏でてやろう!』」
「『つれないね!最後の200m……どちらが上か、試そうじゃないか!』」
こっから先は僕とデイラミさん。どっちが先に力尽きるかの勝負だ!身体から力をかき集めろ、ここで負けたらヴィッパーやトレーナーさん達が悲しむし、スレのみんなだって師匠だって悲しむ!僕に期待してくれているみんながガッカリする。ガッカリするってことは、夢を魅せれなくなるってことだ。それだけは……ごめんだ!
「『諦めてもらおうか欧州最強!勝つのは僕だ!』」
「『あなたの頼みでもそれだけは聞けないね!私とて意地がある!昨年は悔しい思いをした……だからこそ!今度こそは栄光を掴み取ってみせる!私が最強であることを証明するために!』」
デイラミさんの思いが伝わってくる。絶対に負けたくないという気概、そして……自らの矜持というものだろうか?それを感じた。思わず、周りに他のウマ娘……1人しかいないけど。それすらも忘れて、僕は集中を高めていた。
「『そうか!今のあなたなら、ワルツを踊っても構わないと思うぐらいには素敵だね!』」
「『それは嬉しいね!ワルツを踊ってくれるあなたのために……私の勝利をプレゼントしよう!』」
「『いいや!あなたへの手土産に僕の勝利を上げよう!』」
「「勝つのは僕だ(私だ)!」」
逃げる僕と追うデイラミさん。お互いの全力がぶつかり合う。その速さは……わずかにデイラミさんが上。この辺はやはり、キャリアの差が出ているのかもしれない。けど……残り200という距離で、余力をそれなりに残していた僕相手に3バ身のリードは致命的だったようで……。
「『やはり、仕掛けるのが遅かったか……ッ!』」
クビ差まで迫ってきたところが……デイラミさんの限界だった。
《200mの壮絶な叩き合い!逃げるアンカデキメルゼ!追うデイラミ!差は徐々に縮まる!徐々に縮まるが……!デイラミ僅かに届かない!勝ったのはアンカデキメルゼ!アンカデキメルゼに軍配が上がった!キングジョージを制したのはアンカデキメルゼ!エクリプスステークスに続いてアンカデキメルゼがキングジョージを制した!日本のウマ娘として初の快挙!そして無敗記録をまた伸ばした!デイラミは惜しくもクビ差の2着!しかし、これはもう距離不安はないと示す走りでしょう!3着ネダウィはデイラミから遅れること7バ身差です!》
……ヤバかったぁ。マジで紙一重の戦いだった。もう少し、もう少しデイラミさんが仕掛けるのが早かったら、僕がデイラミさんが上がってくるのに気づくのが遅れていたら……僕が負けていたかもしれない。
だが、僕は勝った!だからこそ……拳を上げて勝利を宣言する!
「『僕の勝ちだ!キングジョージを勝ったのはこの僕……アンカデキメルゼだ!』」
その言葉が、静寂に包まれていたアスコットレース場を湧き上がらせた。そんな中、拍手をしながらデイラミさんが近づいてくる。その表情は……笑顔だった。
「『素晴らしい!やはり君は素晴らしいよアンカ!』」
「『デイラミさん……』」
悔しいだろうに、それでも勝者である僕を讃えにこうしてやってきた。……やっぱ強いな、この人は。
「『敗北に言い訳はしない。このレースで私は負けた。それは事実だ』」
「……」
「『だが、次は私が勝つよ!凱旋門賞、あなたも出走するんだろう?』」
何で知ってる!?って思いましたけどそういえばダラカニさんに教えてましたね。僕は頷きます。
「『私もいくつかレースを挟んで凱旋門賞にチャレンジする予定だ!あなたとまた戦う時を、楽しみにしてるよ!アンカ!』」
「『……僕も、まぁ、楽しみにしてる。デイラミさんとのレース……悪くなかったし』」
「ッ!!」
オペラオーさんやアヤベさん、トップロードさんと競うのも悪くないけど……デイラミさんとのレースも楽しかった。それは間違いない。だからその気持ちをデイラミさんに伝える。
デイラミさんはなんか震えてるけど……どうしたんだろう?ま、まさか本当に調子が悪かった!?だから僕勝てたの!?……ん?デイラミさんが僕に近づいてきて……
「『嬉しいことを言ってくれるじゃないか!アンカ!』」
「むぐっ!?」
僕に抱き着いてきた。な、なんで?なんでぼくだきつかれてるの?
「『私は……私は!とても感動した!この衝動を、止めることができなかった!あぁ、どうかこの私の愚行を許してほしい!けれど、私が君にかける思いはそれほどまでに本気だったということだ!今も瞳から零れそうになる雫を必死に堪えている!』」
「……」
「『それでは愛しのプリンセス。また会おう!今度は……私が勝たせてもらうよ?』」
僕を離した後、デイラミさんは僕に投げキッスしてきた。なんで?どうして?よくわかんなーい。
《おぉーっと!アンカデキメルゼとデイラミの熱い抱擁に会場からは割れんばかりの大歓声です!これは大盛り上がりだアスコットレース場!果たして2人の関係はどのようなものなのでしょうか?それも気になります!今後の展望に期待しましょう!》
いや、期待してるようなもんは何もないからね!?僕に聞かれても困るからね!?絶対やめてよね!?
……なんか、アンカはデイラミに抱きしめられていた。デイラミは感極まった表情をしているし、多分アンカに何か言われたんだと思う。……ふぅ。
「胃が痛くなる気配がしてきたな……」
「大丈夫かい?トレーナー君。この私が調合した胃薬を……」
「それ、身体は光らないよね?この前タキオンの薬を飲んだから身体が光って大変だったの、覚えてるよ?」
「……」
目を逸らされた。多分、同じ副作用があるんだな。
「あの野郎……!アンちゃんになんてことをです……!これは愉悦じゃないです……!戸惑っているアンちゃんは愉悦ですけど、これは愉悦じゃないです……!」
ヴィッパーもなんか謎に怒ってる。アドマイヤベガとカレンチャンは……ちょっと呆れ気味だ。2人を知っているからこその反応かもしれない。
「『……ふぅん。ま、あなたが目にかけてるだけのことはあるわね。それに、あなたの走りを再現しているなんて……アメリカを飛び出してここまでやってきた理由が分かるわ』」
「『そうだろ?アイツ面白れぇだろ!』」
「『だから何?って話だけど。ワタシには関係ないもの』」
セクレタリアトさんとあるウマ娘は会話をしている。面白そうなセクレタリアトさんとは対照的に、会話をしているウマ娘さんの方は興味なさげだ。
「『おいおい。そうつれないこと言うなよ?だったら、面白いネタを提供してやるよ』」
「『……なに?どうせ、くだらないこと「『セントレジャーの呪い』」……なんですって?』」
「『アイツはな。セントレジャーからの凱旋門賞に挑戦しようとしている……お前には、馴染み深いもんじゃねぇか?なぁ、
セクレタリアトさんの言葉に、どことなくリギルのマルゼンスキーを想起させるような風貌をしているニジンスキーさんは……溜息を吐いた。
「『……バカバカしい。どうせ、無理なことよ。呪いは呪いのまま終わる……未来永劫、変わることはないわ』」
「『そうかい。だったら……そんな呪い、俺の弟子が打ち破ってやるよ』」
「『そう。期待しないで待ってるわ』」
ニジンスキーさんはその言葉を最後にアスコットレース場を去った。……さて。
「多分ここからまた胃が痛くなるんだろうなぁ……」
別にアンカが幸せそうなら良いけどさ。アンカの笑顔を見ていれば、痛くなる胃もなんてことはない。とりあえず、アンカのためにお祝いをしないとね。
アンカデキメルゼ現時点での育成目標
メイクデビューに出走 達成!
フェニックス賞に出走 達成!
新潟ジュニアステークスに出走 達成!
京王杯ジュニアステークスに出走 達成!
全日本ジュニア優駿に出走 達成!
桜花賞で1着 達成!
皐月賞で1着 達成!
NHKマイルカップに出走 達成!
オークスで1着 達成!
日本ダービーで1着 達成!
エクリプスステークスに出走 達成!
キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに出走 達成!
セントレジャーステークスに出走
凱旋門賞に出走
チャンピオンステークスに出走
菊花賞で1着
BCクラシックに出走
新しいウマ娘が出る。新しいウマ娘が出るとどうなる?知らんのか?トレーナー達の胃がさらに痛くなる。