〈中央でデビューすることになったワイを安価で導くスレpart9〉
21:名無しのウマ娘 ID:vVuRrY85w
セントレジャーステークス安価まとめ
・戦法は逃げ
・欽ちゃん走りで登場
・勝利後に指を一本掲げて天道〇司のポーズ
・最後の直線に入った瞬間全力疾走
22:名無しのウマ娘 ID:HTW+y2qTv
最近逃げばっかね
23:名無しのウマ娘 ID:VFpSJ2DA+
まぁ日本ダービーで脳を焼かれたファンが多いから仕方ない
24:名無しのウマ娘 ID:V+Rj8LZr6
スレ民は 力を 溜めている !
迎えたイギリスクラシック3冠レースの最終戦、セントレジャーステークス。日本からはアンカとアドマイヤベガが出走する。
《今年もこの日を迎えました。クラシック3冠レース最後の戦いセントレジャーステークス!舞台はここドンカスターレース場、今年は日本からのチャレンジャーがなんと2人もいるぞ!最近は権威が失墜しつつある本レース果たして未知の領域である14ハロン115ヤード*1の戦いを制するのはどのウマ娘か?天候は晴れ、芝の状態はFirm。ウマ娘達が続々と入場してきて……日本から来たアンカデキメルゼのあの走りはなんでしょうか?手を何やら振り子のように振りながら横向きに走ってきましたが……》
アンカの奇行はいつものことだから気にしない。どうせ神の啓示とやらだろう。
「アンカやアドマイヤベガにとっては経験したことのない長距離のレース……アンカは特に心配してないけど、アドマイヤベガが心配だ」
「まぁアンカ君だし何とかなるだろうねぇ」
「アヤベさん……大丈夫かな?」
心配そうに呟くカレンチャンの不安を取り除くように、平静であるように努める。
「大丈夫だよ。アドマイヤベガには、ダメそうになったらすぐにレースを止めるように伝えてある。それに万が一は起こさせないようにはしてきた。だから大丈夫さ」
俺の言葉で、カレンチャンもちょっとは持ち直してくれた。ターフへと視線を向ける。
「『そういや、デイラミのヤツはいねぇんだな。シルバーラビットのレースともなれば見境なく飛びつきそうなもんだが』」
「『彼女はアイリッシュチャンピオンステークスの方に出走してますよ。だから来れないんじゃないでしょうか?』」
多分だけど、本人的にはものすごく来たかったんだろうなぁと思いながらセクレタリアトさんの言葉に答える。納得のいった表情をしていた。ターフの方では……丁度アドマイヤベガが入場してきたところだ。彼女が最後に入場してきたウマ娘らしい。
全員がウォーミングアップを済ませてゲートへと入っていく。
《なんとセントレジャーステークス上位3人の内2人は日本からのチャレンジャー!まずは3番人気の紹介から入りましょう。3番人気はアドマイヤベガ!パリ大賞で見せた流星の如き末脚はこのドンカスターでも炸裂するか!?2番人気はラムルマ!オークスとアイリッシュオークス、そしてヨークシャーオークスと3つのオークスを制してのセントレジャーへの挑戦!期待が持てるウマ娘です!そしてこの2人を抑えての1番人気はやはりこの子!キングジョージでデイラミとの対決を制したアンカデキメルゼ!日本のクラシック4冠、エクリプスステークスも制してのセントレジャーへの挑戦!無敗記録をどこまで伸ばせるのか?気になるところです!》
アンカが紹介された途端、ドンカスターレース場が今日一番の盛り上がりを見せた。それだけアンカの人気があるということだろう。
「『HAHAHA!シルバーラビットも随分人気になったもんだ!』」
「『まぁ……あれだけのことをすれば人気にはなりますよね』」
エクリプスステークスに加えてデイラミを下してのキングジョージウマ娘。そりゃ人気が出ないわけがない。しかもセクレタリアトさんの弟子。いま世界で一番人気なウマ娘らしい。……まぁ、普段の奇行に加えてとんでもない量のトレーニングを自分に課すこと、常人には理解できないトンデモローテ、また海外のレースでは今のところ逃げで走ることが多い。海外ではラビット*2というウマ娘がいること、そのことにちなんで【クレイジーラビット(イカれたウサギ)】なんて呼ばれているわけだが。本人はものすごく不服そうにしていた。
ウマ娘が全員ゲートに入る。そして一瞬の静寂の後……ゲートが開いてレースが始まった。
《さぁ始まりましたセントレジャーステークス!10人のウマ娘が一斉に駆け出します!出遅れはありません、一斉に綺麗なスタートを取りました。まず先手を取ったのはやはりこのウマ娘アンカデキメルゼだ!アンカデキメルゼがペースメーカーになる!》
先頭を走るのはアンカ。今日は……最初から飛ばすわけじゃない、ポジション争いの序盤だけ……抜け出す時にだけ全力を出してハナを奪った。後はそのまま先頭に立って走る。大逃げじゃない、逃げで走るってことか。
「『シルバーラビットは今日も大逃げか?』」
「『いえ、あの様子だと今日は逃げですね。いつもみたいに全力で走ってはいませんし、突き放すことに重きを置くんじゃなくてペースを握るための走りをしています』」
「『ふーん。アイツが良く言う神の啓示とやらかね?』」
「『まぁ……多分そうかと』」
アンカは基本的に神の啓示に従って作戦を立てているわけだし。最近はアンカが得意とする逃げばかりが下りてきているらしく、アンカも上機嫌だった。ただ……その分後の揺り戻しが怖いところでもあるが。
アドマイヤベガは最後方に位置している。いつものように、最後方から捲っていくつもりなのだろう。それが彼女の得意な戦法だし、何より……このドンカスターでは彼女の末脚は有利に働く。
ただ、アドマイヤベガの脚が心配だ。何事もなければいいんだけど……。
……まだ、大丈夫ね。脚の調子は問題ない。
(約3000mの長丁場……初めて経験する距離)
一応、スタミナを克服するためのトレーニングは積んできたつもり。それに、ここにいるみんな同じ条件で走っている。だから、私だけが不利な訳じゃない。ドンカスターレース場のカーブを曲がりながらそう考える。
《各ウマ娘が最初のカーブを曲がっていきます。先頭に立つのは1番人気アンカデキメルゼ。そこから3バ身程離れて2番手はイスカン。先行集団はイスカンを先頭に3人のウマ娘がいます。2番人気ラムルマはこの位置にいる。先行集団から後ろはばらけています。オールザウェイ、アダイア、プラランアイランド、最後方アドマイヤベガと続きます。このカーブを抜けて次のカーブを抜ければ最後の直線に入ります。ここはまだ余力を残す段階と言ったところでしょう》
ここのレース場最大の特徴と言えば、最後の直線の長さ。その距離は実に5ハロン……つまるところ、1000mだ。直線が長ければ長いほど、私の末脚は輝く。初めて走る距離で、ペースも分からないレース。逃げで走る子にとっては不利な条件が重なっている。私が圧倒的に有利な状況……本来ならば。
相手がアンカさんとなったら、話しは変わってくる。アンカさんはペースを間違えようがごり押しが通用するし、何よりペースを下げようが……
「本当……厄介なことこの上ない相手ね」
しかも、これは彼女の本領じゃないというのだから末恐ろしい。大逃げで走らない理由は分からないけれど……私は私のペースを貫くだけ。
レースは淀みなく進んだ。レースが動いたのは……最後の直線に入った、その瞬間だった。先頭を走るアンカさんが突如としてペースを上げた。それも、ただ上げたわけじゃない……スパートを仕掛けた。
《最後の直線に入りました残り5ハロン!そしてここで……アンカデキメルゼがスパートをかけたぁ!アンカデキメルゼが爆走する!逃げで走っていたアンカデキメルゼがここでスパート!残り5ハロンを爆走するアンカデキメルゼ!最後まで持つのかどうか!だが、このウマ娘ならやってくれるんじゃないかという期待をもたずにはいられない!他のウマ娘はまだ様子見の段階でしょうか?ペースは上げない模様!落ちてくると予想しているのでしょうか?気づいた時には遅かったなんて言う事態にならないことを祈るばかりだ!……いや!アドマイヤベガだけがペースを上げている!アドマイヤベガが徐々に進出を開始する!アドマイヤベガがペースを上げた!》
他の子達はペースを上げた私を見てビックリしている。でも、動かない。冷静にレースを見ている。きっと、アンカさんは落ちてくるとか思ってるかもしれないけれど……それはないわね。
(あの子は皐月賞の時もそうだった……残り1000mでスパートをかけて、最後まで持たせてみせた。条件は違うけど、持つ可能性は十分にある!)
だからこそ、手遅れにならない今のうちに順位を上げっ!?
「な……ん、で!こんな時に……!」
突如として、左足に鋭い痛みが襲う。今まで練習中にも感じていた痛みが……このセントレジャーでも!
負けたくない、運命を覆したい。そんな運命……私は認めない!だけど、そんな気持ちとは相反するように私の左足は痛みを訴え続けている。ペースを上げることができずに失速していく。
残り600m……走り切れるかすら怪しくなってきた。他の子達もペースを上げ始めた。私は……ペースを上げることができない。痛む左足に対して、意識を保つのが精一杯。
(まずい……わね。こんなところで、諦めたくはないけど……)
意識を手放しそうになる……そんな時だった。
目の前の景色が変わる。広がる夜空、どこかも分からないレース場。そこに……私と妹は立っていた。妹は、申し訳なさそうな笑みを浮かべている。
「……ここ、は?」
「精神世界……みたいなものかな?大丈夫だよ、レースはまだ続いてる。お姉ちゃんはちゃんと走れてる」
「そう……どうして、ここに私を呼んだのかしら?」
私の言葉に、妹は……寂しそうな笑みを浮かべた。……なんとなく、言いたいことが分かったかもしれない。
「お姉ちゃんに、お別れを言いに来たんだ」
「……そう」
そんな気はしてた。だって、凄く寂しそうな表情を浮かべているんだもの。
「私は……元から存在していないようなもの。そして、お姉ちゃんの左足の運命も一緒に持っていける力がある……だから、お姉ちゃんが楽しく走るためにも「あなたは、楽しかったかしら?」……え?」
妹の言葉を遮って聞く。前にも聞いたこの質問。妹は……ぎこちなく笑った。
「……うん。すっごく楽しかった。私が実際に走っていたわけじゃない、お姉ちゃんを通して走る景色を見てただけ。でも……それでも楽しかった」
「そう。それは良かったわ」
「だけど、もうお姉ちゃんの苦しむ姿は見たくない。だから、苦しむ原因を私が持っていく。お姉ちゃんのためにも」
覚悟を決めた表情をしている妹。私はそれを黙って聞く。
「楽しかったよ、お姉ちゃん。こうして話せたのは少しの時間だけど……それでも、私にとってはかけがえのない時間だった」
「それは良かったわ。私も……とても楽しかった」
「本当?だったら嬉しいな!」
「……」
「私はもういなくなっちゃうけど……お姉ちゃんも、元気でね」
妹は別れようとする。そんな妹の腕を……私は掴んだ。
「待ちなさい」
「……え?」
「私と一緒に走るの、楽しかったんでしょう?」
「そ、それはそうだけど……」
「なら、私から提案があるわ」
戸惑う妹に、私は提案する。
「あなたの力を貸してちょうだい。クソッたれな運命を乗り越えるためにも、アンカさんに勝つためにも……あなたの力を貸してくれないかしら?」
妹は、唖然としていた。
セントレジャーって菊花賞のモチーフになったレースだし実質菊花賞みたいなもんでしょ(暴論)。