チーム・アルナイルのトレーナーは、良く分からない。
「あの人、一応新人のはずだよね?G1勝利数が10超えてるってヤバくない?え?担当ウマ娘もあの人もどっちもヤバいっしょ」
「アンカさんのトレーナーを務めてる人だよね?う~ん……人が良さそうだよね。人畜無害……っていうの?良い人そう!」
「怖い。主に何をやってくるのか分からないから。担当ウマ娘共々要注意しておくトレーナーだと思う」
「新人でチーム作れるくらいだし、そりゃ凄いんじゃない?担当ウマ娘の実力って本人はいつも言ってるけど……数多のトレーナーが1週間で匙投げたアンカさんを手懐けるだけでもかなり凄いと思う」
「作戦とか全部アンカさんが考えてるって言うけど……絶対そんなことないね!あの人も何か関与していると思う!根拠?……勘!」
「アンカさんに振り回される苦労人って印象が強いよね~。でも、あの人じゃなかったらアンカさんはここまで来れなかっただろうし。あ、後あの人優しいよ」
「なんていうか、胃薬が手放せなそうだよね。チームメンバー的に。そのチームメンバーも主に1人のせいなんだけど。良い人なんだけどね~」
総じて優しくて良い人の印象が強いアルナイルのトレーナー。
今回、藤井記者は……そんなアルナイルのトレーナーに独占取材することに成功した。
「いや~、ホンマにええんですか?アルナイル言うたら、記者にはえらい厳しいことで有名ですけど」
藤井の言葉に、アルナイルのトレーナーは苦笑いを浮かべながら答える。
「う~ん……別にそんなつもりではないんですよね。ただほら、アンカ目当ての記者が多いんですよ」
「まぁ……そらそうですよね」
「はい。だからどうしても記者の方々には我慢してもらうような形になってもらうことが多くて……でも、今回は私個人の取材じゃないですか?だから別に構わないと思いまして」
(聞いとった通り、ええ人そうなトレーナーやな。とても策を弄するタイプには見えへん……)
藤井はそう分析する。だが、こういうタイプこそ案外策士だったりするのだ。そう考える。
藤井は、早速独占取材を開始することにした。
「それじゃ!アルナイルのトレーニング、みせてもろてもええですか?」
「はい。元々そういうお約束ですので。それじゃあ早速行きましょうか」
トレーナーの先導のもと、藤井はアルナイルのトレーニングする場所へと向かう。僅かに期待に胸を躍らせながら。
そして着いた練習場。すでにアルナイルのメンバーは揃っていた。現在トゥインクル・シリーズにデビューしているのはアンカデキメルゼのみだが……アルナイルのメンバーはかなりの粒ぞろいである。
学園の問題児でもあるが、その才能はトレセン学園でもトップレベルと名高いアグネスタキオンを筆頭に、名門シンボリ家のシンボリクリスエス、アイルランドの王族ファインモーション、地元苫小牧の期待を一身に背負ったホッコータルマエ……誰も彼もがその才能を期待されているメンバーだ。
「おはようみんな。それじゃあ早速今日のトレーニングメニューを渡すね」
トレーナーの言葉に、ウマ娘達が一斉にトレーナーの下へと駆け寄ってくる。
「タキオンは……今日はパワー中心のトレーニングにしようか。タキオンはもうすぐデビューだし、少しでも頑丈な脚にするためにも頑張ろう!」
「心配はないさトレーナー君。色んなモルモ……協力してくれるみんながいたおかげで私の脚もかなり頑丈になってきた。これならトゥインクル・シリーズを駆け抜けるのも夢じゃない!」
「モルモットって……まぁいいや。タルマエはここ最近パワートレーニングが続いてたからそろそろスピードトレーニングにしようか。セクレタリアトさん、お願いできますか?」
「おう!任せとけ!さぁしっかりトレーニングに励むぞタルマエ!」
「は、はい!……よ~し、頑張るぞー!」
(あ~そやった。アルナイル言うたら、これがあったな)
アメリカの二代目ビッグ・レッド、セクレタリアトがコーチに。イギリス最後のクラシック3冠ウマ娘ニジンスキーをサブトレにしているのである。強くなる環境という意味では、学園最高峰でもあるだろう。これもアンカデキメルゼの人徳によるものが大きいだろうが。
「クリスエスは……今日はちょっと足が悪そうだね?準備運動をチラッと見ただけだけど、違和感を感じてるようだったから」
「──No problem。問題、ない」
「ヴィッパー」
「クリスエスさんは脚を捻挫しているです。ただ、それほど重要なものじゃないです。トレーニングする分には問題ないです」
「そっか。でも万が一のことがあるから今日は脚を極力使わないトレーニングにしようか」
「分かった。無理は、良くない。厳禁」
「そうだね。それじゃあファインは……今日は坂路かな?」
トレーナーの言葉に、ファインモーションは少し不満げな表情を浮かべる。近くにいるファインのSPは少し狼狽えていた。
「え~?今日は坂路の気分じゃないな~」
「……殿下、あまりワガママは」
しかし、トレーナーはあっけらかんと答える。
「そっか。じゃあ……スピードトレーニングなんてどう?実は最近ショットガンタッチの機械が新調されたらしくて。その試運転をファインにお願いしようかな?」
「本当!?それは楽しみだね!」
「その代わり、坂路は明日やろうか」
「はーい!分かりましたー!」
(……些細な違和感を見逃さん目、ウマ娘の要望に柔軟に答える姿勢……やっぱええトレーナーやな)
藤井はそう分析する。
そして、藤井にとってメインとなるウマ娘の番となる。超絶気性難なウマ娘……アンカデキメルゼの番だ。
(取材も基本NG、メディアへの露出もレースの会見以外ではでてこぉへん……それはひとえに、このアンカデキメルゼがとんでもない気性難やからや)
果たして、彼女はどんなトレーニングをしているのか?それが気になって仕方なかった。
「それじゃあアンカ。今日の神の啓示は?」
「今日は……日が沈むまでラットプルダウンだな」
「日が沈むまで!?」
思わずそう叫んだ藤井は悪くない。だが、トレーナーは……特に気にした様子もなく答える。
「そっか。じゃあ……Aメニューの4番かな?負荷は50で行こう」
「50は軽い。75で頼む」
「負荷を増やすとなると……Dの3番辺りで良いかな?」
「分かった。それでいこう」
「うん。じゃあみんな!今日も一日頑張ろうか!」
ウマ娘達は別れてトレーニングを始める。藤井は、気になったことをトレーナーに恐る恐る質問した。
「あ、あの~。AメニューとかCメニューとかってなんです?なんかの暗号ですか?」
「暗号……というよりは、スピードとかパワーとか。それらを補うための記号みたいなものですね」
トレーナーは藤井に説明する。
「Aはスピード、Bはスタミナ、Cはパワー……って感じで。アンカが賜った神の啓示を基準に、その日のトレーニングで不足してしまう分を補うんです。負荷はそのままの意味ですね。負荷50で50kgの負荷って感じです」
「は~……4番とか、2番っちゅうのは?」
「それは量の割合ですね。1が最も少なくて、5が一番多いです。アンカの神の啓示は量がまちまちなので。不足する量もその日によって違うんですよ。だから指標になるのを決めてるって感じですね」
「ははぁ……なんか、記号にする意味ってあるんです?」
藤井の質問に、トレーナーは照れ臭そうに答えた。
「いやぁ……こう、秘密の暗号って感じでカッコよくありません?理由なんてそれぐらいで。特に意味はないんですよ」
「あ~!分かります!男やとそういう秘密の暗号っちゅうのに憧れますよね!」
「そうなんですよ!」
「ちなみに、どれくらいあるんです?」
「え~っと……基本はAからEの5つ。そこから1から5に細分化されてるので……25パターン分ですね。まぁ気分によって変わったりするんでさらに増えたりしますけど。後は急な啓示にも対応できるように複数のパターンも考えてます」
「……誰が考えとるんです?」
「全部私ですね」
あっけらかんと答える。藤井は引き攣った笑みを浮かべていた。このトレーナーの、あまりの仕事量に。
(しかも、気分によって変わるんやろ?ただでさえランダムやのに、そっからさらに対応するんか?このトレーナーは……)
これは、アンカデキメルゼを担当して一度も言い争ったことがないという触れ込みにも納得がいく。ランダム要素の強いアンカデキメルゼの神の啓示を元から勘定に入れて、どんな状況にも対応できるようにしている……そう考えれば、このトレーナーの仕事量は計り知れない。
「それじゃあニジンスキーさん。申し訳ないんですけど……後はお願いします」
「任せて頂戴。しっかりと見ておくわ」
藤井とトレーナーは練習場を後にする。トレーナー室で取材を続けることにした。
「……っちゅうことは、ホンマにアンカデキメルゼの作戦指示には関わってないと?」
「はい。……というよりも、どうしてそういう噂が広がってしまったのかが気になるんですよね。私からしたら」
「そらまぁ……アンカデキメルゼのトレーナーですから。そのトレーナーがあの作戦を考えた思われても仕方ないんちゃいます?」
「ですよねぇ……はぁ」
トレーナー室。藤井はアルナイルのトレーナーへの取材を続けていた。どうやら、アンカデキメルゼの作戦指示にはこのトレーナーは関わっていないらしい。ということは、神の啓示だろうか?そう考えている藤井の耳に、驚くべき情報が入ってきた。
「私がやってることなんて、精々対戦ウマ娘の分析ぐらいですよ。どの脚質とかどの作戦で来るとかアンカが注意すべきポイントはどことか……それぐらいのものです」
「……あれ?やけどアンカデキメルゼって戦法も決まってないんですよね?」
「まぁそうですね」
「注意すべきポイントとか、どう伝えるんです?脚質で変わりません?」
「そりゃあ……
「え」
「でもそれぐらい普通のことだと思いますよ?どのトレーナーもやっていると思います」
確かにどのトレーナーもやっているだろう。だが……。
(いやいやいや!?何言うてんねん!冷静に考えて作業量が4倍で済むレベルちゃうぞ!?)
レースは全て同じ条件で走るわけじゃない。距離やレース場から始まり、バ場の状態や天候にも左右される。これが戦法の決まっている普通のウマ娘ならまだ良い。だが……アンカデキメルゼがどの戦法で走るかはランダムだ。もし、それら全てを勘定に入れてやっているのだとすれば……このトレーナーも、アンカデキメルゼに負けず劣らずの傑物だ。
戦々恐々としながらも藤井は取材を続けるが……そんな時、トレーナー室の扉がノックされた。
「あれ、誰でしょうか?今日は特に用事は入ってなかったはずですけど……」
「あぁ、僕のことはええんで。出てもろうても構いませんよ」
「でしたら、お言葉に甘えて……はい、誰でしょうか?」
扉を開けて入ってきた人物を見て、藤井は少しだけ顔をゆがめる。
「いや~お忙しいところすいません。今大丈夫ですか?」
業界でもあまり良い噂の聞かないメディアの記者だった。トレーナーは藤井の方を見る。
「僕はもう聞きたいこと聞けましたんで。ええですよ」
「う~ん……でも」
「ええですええです!気にせんといてください!……ここで断ったらえらい目に遭いますよ。やから大人しく用件聞いた方が方がええと思います」
藤井は言いながら近づいて、トレーナーに耳打ちする。その言葉に、トレーナーも渋々ながら納得したようだ。
「まぁそう言うことでしたら……どうぞ」
席に案内して、2人は座る。藤井は事の成り行きを見守ることにした。
「それで……すいません。どういった御用でしょうか?私の耳には特に入ってなかったのですが……」
トレーナーの言葉に、新聞記者はおどけた様子で答える。
「あぁすいません。今回は取材をしに来たというわけではなくて……取材のお願いに来たんですよ」
「取材のお願い?」
「はい。アンカデキメルゼさんの」
「アンカの……ですか。取材の依頼は本来なら電話でやり取りしているんですけど、そちらの方は?」
「それが電話がつながらなくて。なので許可を取って直接来たというわけです」
言いながら記者は首から下げた許可証を見せる。ちゃんと許可を取って敷地に来たようだ。
「電話がつながらなかった……それはすいません」
「いえいえ!トレーナーさんもお気になさらず。それで……アンカデキメルゼさんの取材の件なんですけど」
「そうですね……まず、これはみなさんにお願いしていることなんですけど、アンカへの質問は3つまでに絞ってください。あまり長い時間拘束されるとアンカがへそを曲げちゃうので」
その言葉に、記者は露骨に顔をしかめた。藤井はその様子を静観している。
(困っとったら助け舟を出せばええ。幸いにも、コネはあるしな)
そう考えながら。
「いやいや、アンカデキメルゼさんはただでさえ記者の質問にもろくに答えないじゃないですか。だから何とかなりませんか?」
「そう言われましても……」
「ウィナーズサークルでのインタビューも本当に最低限ですし……このままだと、アンカデキメルゼさんの心象も悪くなる一方かと」
「う~ん……」
記者の言うことにも一理ある。メディアが世間に与える影響は、良くも悪くも絶大だからだ。
悩むように逡巡した後、考えが纏まったのかトレーナーは口を開く。
「……申し訳ありません。アンカのことを考えたら、おいそれと約束はできないので。やはり質問は3つまでに絞ってくれますか?」
答えは拒絶だ。その答えに、記者は隠すことなく不快感をあらわにする。そして、口を開いた。
「……そうですか。それは仕方がありませんね」
「はい。申し訳ないんですけど……」
「ただ、少し面白い情報を耳にしましてね。なんでもトレーナーさん……あなた、人には言えない秘密があるのだとか」
「なっ!?」
「それを口外したら……一体どうなるんでしょうねぇ?少なくとも、トレーナーを続けられるかどうか……」
勿論、そんなものはない。記者のハッタリだ。だが、その情報が不確定である以上……藤井は慌てる他ない。
(コイツ……!まさか脅すつもりか!?どこまで腐っとんねん!)
「トレーナーさん!聞く必要はないで!あれやったら僕らの方で……」
だが、当のトレーナー本人は……軽い調子で答えた。
「あ、そうなんですか。別にいいですよ、公表しても」
「「……は?」」
あまりにも軽いノリに、藤井達は素っ頓狂な声を上げる。
「い、良いんですか!?あなたのトレーナー人生が終わるんですよ!?」
「う~ん……私には心当たりがないですし、それにトレーナーを辞めることになっても別に、とは思いますね。あ、でもみんなが悲しんじゃうな……それは良くないな。うん、良くない」
コイツは、何を言っているんだ?記者はそう思わずにはいられない。苦労してトレーナーの門を開いたというのに、目の前にいるこの男は……トレーナーという職にあまり執着していないように思えたから。
そんな記者に、トレーナーは……笑みを浮かべながら続ける。
「記者さん、俺はですね……アンカが輝けるんだったらどんなことでもします」
「な、何を……?」
「あの子が言う神の啓示を聞くのもそうですし、あの子のためだったらどんな苦労だって受け入れる覚悟です。あの子が……トレーナーを降りろって言うんだったら。ちょっとは悲しいですけど、まぁ降ります。だって仕方ないですよね、あの子が輝くためなんですから」
トレーナーは変わらず笑みを浮かべている。だが、記者と藤井には……その笑顔が。
「あの子はですね、夢を魅せてくれるウマ娘なんです。俺はそんなアンカのトレーナーであることを誇りに思っていますし、その手助けができるってことに喜びを感じています」
「あ……あっ……」
「あ、だからって他の子を蔑ろにするわけじゃないですよ?そこはちゃんと分かってますので」
酷く、不気味に見えた。
「アンカが輝くためだったら、俺はどんなことだってする。ただし……あの子の輝きを奪うような存在が現れるんだったら……」
(……確かにええトレーナーや。それは僕も思うてる……やけど!)
「
(滅茶苦茶にイカれとる……!)
つまるところ、トレーナーの言いたいことはこうだ。自分はどうなっても良いが……アンカデキメルゼに危害を加え、彼女を不快にさせるようだったら、
恐ろしい……藤井達は、自分達の目の前にいるトレーナーに対して、そう思わずにはいられなかった。このトレーナーは、自分の立場というものに執着していない。自分が担当しているウマ娘達のためならば……トレーナーを、辞めてさえも良いと考えている。
笑みを浮かべていたトレーナーだが、今度は急に困ったような表情をし始めた。
「あ~……でも、俺がトレーナーを辞めることになったらアンカは悲しんでくれるかな?いや、悲しんでくれるはずだよね?一応、彼女のトレーナーなわけだし」
その言葉に、藤井は電流が走る。この不届き者の記者を追い出し、今後一切舐めた口を利けないであろう妙案が思いついたのだ。
「いや~!それはえらい悲しむと思いますよ!やってアンカちゃんがトレーナーさんを信頼しとるのはインタビューで分かっとりますからね!そら、えらい悲しむと思います!」
「そ、そうですか?だったら嬉しいなぁ」
藤井は続ける。記者の方を威圧するように。
「きっと、アンカちゃんえらい悲しむやろうな~……そうなったら、お前終わるで?」
「……は?どういうことだ?」
「なんやよう分かってへんみたいやな。やったら教えたる。アンカデキメルゼの交友関係……よ~く思い出してみ?」
「……ッ!?」
記者はハッとしたような表情を浮かべる。どうやら気づいたようだ。アンカデキメルゼを敵に回すということが……どういうことなのか。
「脳足りんのお前でも気づいたみたいやな。そうや、アンカデキメルゼの師匠は
「あ、あぁ……っ」
「セクレタリアトはアメリカでは英雄的存在、大統領選挙に出たら当選間違いなしなんてジョークが生まれるくらいのウマ娘や。ニジンスキーもイギリスで根強い人気を誇っとる。イギリスのウマ娘のほぼ半数以上はニジンスキーを慕っとるやろうな。そして、デイラミはアイルランドの王家ともコネクションがある。アルナイルにはファインモーション殿下もおるから……まぁアイルランドも黙ってへんやろうな。そして、ドバイミレニアムは言わんでも分かるな?ドバイの王族や」
トレーナーとアンカデキメルゼの信頼関係は厚い。トレーナーが解任されたとなれば、アンカデキメルゼはその原因となった相手を敵と定めるだろう。そうなったらどうなるか?彼女の交友関係を紐解けば……それは明らかになる。
「アンカデキメルゼを敵に回すっちゅうことは……
「……!し、失礼しましたぁぁぁぁぁ!」
記者は慌てた様子で去っていく。あの様子なら、今後二度とここには来ないだろう。藤井は安堵した。
「あ、あれ?取材の件は……」
「あの様子やと、もうこぉへんと思いますよ?」
「えぇ~……アンカのイメージを良くするために頑張ってもらおうと思ったのに……」
(……どこまでも、自分のことよりも担当ウマ娘優先なんやなぁ)
アルナイルのトレーナーの凄い一面を見た。藤井は、そう思わずにはいられなかった。
「ちなみにですアンちゃん。仮にトレーナーさんが辞めちゃったらどうするです?」
「えぇ!?止めてよヴィッパー縁起でもない!ありのままの僕を担当してくれるのなんてトレーナーさんしかいないんだから考えたくもないよ!?」
「実際トレーナー君は凄いねぇ。我々のために日々尽力しているわけだから」
「──Yes。だから、応えなければならない」
「そうだね。私はまだデビューしてないけど……トレーナーさんのために頑張らないと!」
「はい!トレーナーさんが良いイメージを持たれるためにも、苫小牧の復興のためにも!みんなで頑張りましょう!」
そんな会話があったそうな。
担当が担当ならトレーナーもトレーナーでイカれていたでござる。ちなみにこの記者はこの後アンちゃんの実家に突撃しました。丁重におもてなしされましたよ。なんかげっそりしてましたけど。