今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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その頃日本ではから始まるそんな話。オペラオーとトプロはトレーニングしてます。


解かれた呪縛

 

 

 

 

 

《……見事凱旋門賞を制することができるか!?注目の一戦が間もなく始まろうとしています!》

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ始まりますね~」

 

 

「けっぱれー!エルちゃーん!」

 

 

 トレセン学園カフェテリアの大型テレビ前。スピカのみんなとリギルの人達、そしてシリウスの人達みんなで凱旋門賞の中継を見ています。勿論、トレーナーさん達も一緒です!

 

 

「エルがムービースターみたいデシタ!」

 

 

「あぁ。威風堂々とした佇まいだった。これは好走が期待できるだろう」

 

 

 タイキさんとルドルフさんがそう話してる。世界の大舞台なのに、エルちゃんは堂々としていた。私は勿論エルちゃんを応援しています!エルちゃんずっと言ってましたから!世界最強のウマ娘になるって。だから、勝ってほしいと思ってます!

 ただ気になるのは……和気藹々としているみんなとは違って、厳しい面持ちをしているトレーナーさん達です。どうしたんでしょうか?

 

 

「……沖野。アンカデキメルゼはなにをしてくると思う?」

 

 

「さぁな。ただ、まともに来ると思ったら痛い目を見る……アイツはそういうウマ娘だ」

 

 

「同感ですね。果たしてどういう作戦で来るのか……。アンカデキメルゼのトレーナーは、どういう指示を出したのか」

 

 

 なんというか、アンカちゃんを凄く警戒しています。ただ、そうこうしているうちにレースが始まって……あ、アンカちゃん出遅れた。

 

 

「アンカは今日は追い込みで走るんだね~」

 

 

「海外のレースでは逃げばかりで走っていたそうですから。追い込みは随分と久しぶりなのではないでしょうか?」

 

 

 テイオーさんとマックイーンさんがそんな会話をしています。ただ、テレビの向こう側のファンの人達は悲鳴を上げていました。なんででしょうか?

 アンカちゃんは最後方からのスタートになる。そのままレースは進んでいきました。

 

 

《各ウマ娘が坂の頂上である第3コーナーのカーブへと入ります!先頭を走るのはエルコンドルパサー!14人のウマ娘を引き連れてエルコンドルパサーが先頭を走っている!2番手との差はおよそ3バ身から4バ身程でしょうか?tres lourdということを考慮すると全体的に速めのペースで動いています。2番手はチンギスカン、中にはタイガーヒル。そして内の好位置にモンジューがついております。モンジューはこの位置だ。そして……最後方にポツンと1人アンカデキメルゼ。集団からは5から6バ身、下手をするともっと離れているでしょうか?アンカデキメルゼ。その表情はいつもと変わらないポーカーフェイス。しかし心なしか焦りが生まれているようにも感じます!これがセントレジャーの呪いなのか!?セントレジャーの呪いが、アンカデキメルゼに降り注いだのか!?》

 

 

「ねぇねぇグラスちゃん。セントレジャーの呪いって?」

 

 

 聞きなれない言葉に、私は隣にいるグラスちゃんに尋ねる。

 

 

「凱旋門賞を目指しているウマ娘はセントレジャーステークスに向かうべきではない……そんなある種の迷信のようなものですね」

 

 

「なんで?」

 

 

「それにはニジンスキーってウマ娘が関わっているんだ、スぺ」

 

 

 私の疑問に代わりに答えたのはトレーナーさん。シリウスのトレーナーさんが補足するように続けます。

 

 

「イギリスにはニジンスキーっていう凄く強いウマ娘がいたんだ。彼女はその強さでイギリスのクラシック3冠を無敗で制してね。その勢いで凱旋門賞に乗り込んだ。だけど……数々の不運が重なって、凱旋門賞で初めて負けてしまったんだ。敗因には諸説あるんだけど……その中の1つに、セントレジャーステークスを使ったから凱旋門賞で負けたんじゃないか?っていうものがある」

 

 

「それが、セントレジャーの呪いってやつだな。別名をニジンスキーの呪い。現に、セントレジャーから凱旋門賞に向かって勝てたウマ娘は1人もいねぇ」

 

 

「え~っと……なんでセントレジャーステークス?を使うのは良くないんですか?」

 

 

「それは距離の問題よ。セントレジャーステークスは約3000m、凱旋門賞は2400mで600mの差があるわ。それに加えて、イギリスとフランスで国を跨ぐことになる。レース場の造りも全然違うしね。さらにはレース間隔は2週間ほど……セントレジャーの権威がニジンスキーの呪いで失墜しているのも相まって、セントレジャーは回避される風潮が強まっているわね」

 

 

 は~……そうなんですね。

 トレーナーさん達からのお話を聞いていると、勝負は最後の直線に移っていました。エルちゃんは……先頭だ!

 

 

「いっけー!エルちゃーん!」

 

 

「エル!もうひと踏ん張りですよ!」

 

 

「これは……エルのヤツは勝てるんじゃないかい!?」

 

 

 映像のカメラは先頭を走るエルちゃんを中心に映して……!?そ、そんなっ!?

 

 

「ここでモンジューだと!?」

 

 

「す、凄い……!あっという間にエル先輩に追いついた!?」

 

 

 このレースでも本命の1人に推されていたモンジューさんが、エルちゃんに並ぼうとしていました!?エルちゃんも必死に走っていますけど、モンジューさんはエルちゃん以上の脚で迫ってきて……?あれ?なんか……

 

 

「どうしました?スぺ先輩」

 

 

「そ、外……カメラの外から、なんか、凄い勢いで飛んできた子が……」

 

 

「……えぇ!?」

 

 

 ウオッカさんが私につられるように視線を向けると……そこには、外ラチいっぱいからエルちゃん達を抜き去ろうとしている影がありました。その正体は……最後の直線に入るまでは、最後方にいたはずの、アンカちゃんです!?

 

 

《お、おぉ大外からアンカデキメルゼ!?外ラチいっぱい!アンカデキメルゼが上がってきていたぁぁぁぁぁぁぁ!?し、信じられない!?い、いつの間に上がってきていたんだアンカデキメルゼ!アンカデキメルゼが、最後方にいたはずのアンカデキメルゼが気づいたら先頭争いに加わって……!?な、並ばない並ばない!あっという間にモンジューとエルコンドルパサーを抜き去った!エルコンドルパサーもモンジューも必死に追走する!だ、だが……アンカデキメルゼはまるで意に介していない残り100m!し、信じられない!他のウマ娘は不良バ場で思ったように伸びていない!だがアンカデキメルゼは……アンカデキメルゼだけは!まるでスキップを踏むかのように!まるで踊っているようにパリロンシャンレース場を駆け抜けている!》

 

 

「嘘だろ!?どこから飛んできたんだよ!?」

 

 

「これは……!かつて、シリウスが体験したという……!」

 

 

 会長さんはシリウスさんの名前を上げました。凄く驚いてて……というか、私達みんな驚いています。さっきまで影も形もなかったはずのアンカちゃんが、いつの間にか先頭争いの位置にいたんですから!驚かない方が無理ですよ!?

 エルちゃんやモンジューさんも必死に追い上げようとしてますけど……アンカちゃんはその勢いのまま、2バ身ぐらいの距離をつけて勝ちました。私達は……あまりの出来事に呆然としています。

 

 

「「「……」」」

 

 

「……この大一番で、とんでもない作戦に出たわね。あの陣営は」

 

 

「あぁ。普通やらねぇだろ、この凱旋門賞の舞台でよ」

 

 

「だけど……それをやるからこそ、彼らは勝ってきた。やっぱり凄いね、彼女達は」

 

 

 トレーナーさん達は冷静に、そう分析していました。

 

 

「ど、どういうこと?トレーナー。アンカって普通に追い込みで走っただけだよね?」

 

 

 テイオーさんの疑問に、トレーナーさん達が答えてくれます。

 

 

「そうね。あの陣営からすれば追い込みで走っただけ。だけど……それに持っていくまでの布石が、とんでもなくいじらしいってだけよ」

 

 

「ど、どういうことですか?おハナさん」

 

 

「まず、この凱旋門賞までの大前提として……アンカデキメルゼは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 え~っと、確か……。

 

 

「ずっと逃げでしたよね?」

 

 

「そうだね。日本ダービー以降、アンカデキメルゼはずっと逃げで走っていた」

 

 

「けど、アンカさんはどの戦法でも走れましたわよね?凱旋門賞に出走するウマ娘は世界でもトップレベルのウマ娘、意識にはあったはずですが……」

 

 

「……この作戦の肝は、ダービー以降……というのが焦点だ」

 

 

 会長さんがそう答える。ダービー以降が肝……?

 

 

「アンカデキメルゼは逃げでも走れる、という情報をダービーまで徹底的に隠し続けてきた。そして、そのダービーでワールドレコードを樹立した。それゆえに、周りの意識には……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「けど、それだけじゃまだ弱い。彼女はどの脚質でも勝ってきた……だから、他の脚質で走る可能性は十分にある……そう思っていたけど」

 

 

「海外の大レース全てを逃げで走ってきた。それは、G2のセクレタリアトステークスでもそうだった。そして、凱旋門賞という大舞台……だからこそ、周りのヤツらは確信したのさ」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……ってね」

 

 

「「「あっ!」」」

 

 

 トレーナーさん達に言われて、気づきます。た、確かに……大レースをずっと逃げで走っていたんだからそう思っても不思議じゃありません!

 

 

「そんな意識が根付いていたところに、この凱旋門賞での追い込みだ。さらには出遅れ……これが奇跡的に噛み合った」

 

 

「他のウマ娘には、アンカデキメルゼの逃げが頭にチラついていた。だからこそ、彼女の出遅れは好機だと思ったはずだ。他の子達はアンカデキメルゼを逃げさせないためにペースを上げていた……パリロンシャンレース場の、ただでさえ重い芝に、過去最悪レベルの不良バ場でペースを上げ続けていたんだ」

 

 

「でも、肝心のアンカさんは……ッ!」

 

 

「そう。後方で脚を溜め続けていた。最後の直線で一気に捲るために……ずっと控え続けていたんだ」

 

 

「けど!この不良バ場じゃアンカだってスピードは出ないはずじゃ!?」

 

 

「等速ストライド」

 

 

 トレーナーさんの言葉に、またみなさんがハッとした表情を浮かべます。冷や汗を流しながら、トレーナーさんは続けました。

 

 

「この走法がある限り、アンカデキメルゼにとってバ場なんて関係ねぇ。ある意味、1人だけずっと良バ場で走ってるみてぇなもんだからな」

 

 

「噓ぉ……」

 

 

「だが……普通はそんな作戦は取らねぇ。これまで逃げで走ってきたという意識を植え付けさせた上で、この大一番を真逆の追い込みで走らせるなんてよ!」

 

 

「えげつないわね。アンカデキメルゼのトレーナーは……!これを全て、計算ずくでやっているなんて……!」

 

 

「そうですね。とても新人とは思えない……!とんでもない策士だ!」

 

 

 トレーナーさん達は、アンカちゃんのトレーナーさんに対抗意識を燃やしているみたいです。

 アンカちゃんのトレーナーさん……きっと、凄い人なんですね!だって、こんな作戦を立てるぐらいですから!

 

 

「スぺ。お前も気を付けておけ。もしかしたら……アンカデキメルゼは、ジャパンカップに出走してくるかもしれねぇからな」

 

 

「ッ!はい!」

 

 

 アンカちゃんが、ジャパンカップに……!私、負けません!気合を入れて練習を頑張りましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、凱旋門賞が終わったパリロンシャンレース場。

 

 

「……なんか、著しく誤解されている気がする」

 

 

「どうしたんだい?トレーナー君。体調が優れてないようだが?」

 

 

「なんでもないよ、タキオン」

 

 

 アンカデキメルゼのトレーナーとタキオンのそんな会話があったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワタシにとって、ニジンスキーの呪いというのは……耐え難いものだった。

 元々セントレジャーに出走したのは権威を取り戻すためだったというのもある。中距離路線と長距離路線が完全に別のものとして考えられるようになり、3冠最後の戦いであるセントレジャーの権威は長距離ということもあり失墜しつつあった。ワタシ以降、イギリスのクラシック3冠ウマ娘が現れていないのはそういうことなのだろう。

 無くなりつつあるセントレジャーの権威。そんな中、ワタシに白羽の矢が立った。ワタシが勝って、凱旋門賞にも勝てばセントレジャーの権威を取り戻せるんじゃないか?そう期待を背負ったものの……ワタシは凱旋門賞を勝てなかった。

 

 

「あのニジンスキーでさえ勝てなかったんだ」

 

 

「セントレジャーの勝ちウマ娘は凱旋門賞に向かうべきじゃない」

 

 

 そんな評判が、ワタシにはとても悔しかった。自分の不甲斐なさに、期待に応えられなかった情けなさに……涙を流したこともある。

 そんなことはない!ニジンスキーの呪いなんてものはない、自分がそのジンクスを越えてみせる!そう声高に宣言する後輩達もいた。だけど……勝てる者はついぞ現れなかった。

 だからこそ、ワタシはもう諦めていた。このニジンスキーの呪いが解かれることはないのだと。未来永劫……このニジンスキーの呪いは、後世に語り継がれるのだと。そう考えて、自分への不甲斐なさからまた涙を流した。

 レースの世界への復帰も、考えてない。もう関わらないようにしよう。そんな時だった。セクレタリアトから一本の電話が入る。

 

 

「俺の弟子が今度のキングジョージで走るんだけどよ。これがまた面白い奴でな!お前も見に来い!」

 

 

「……嫌だけど」

 

 

「拒否権はねぇ!じゃあな!」

 

 

 一方的に用件を伝えて、一方的に切られた。頭に血が上りそうになるもそういうヤツだったことを思い出して……まぁ、たまには気晴らしに見にいくかということでレース場へと赴いた。

 結論から言えばアンカデキメルゼは強かった。セクレタリアトの弟子というのも頷ける。だが、それはワタシにとっては関係のないこと。そう思っていたところに、セクレタリアトから投げかけられた言葉。

 

 

「アイツはセントレジャーからの凱旋門賞に挑もうとしている」

 

 

 その言葉に、心臓が飛び跳ねそうになった。

 

 

(もしかして、ワタシの呪いを……越えようとしているの?)

 

 

 そう淡い期待を抱きそうになるがすぐに思い出す。ワタシが生み出してしまった呪いのせいで、セントレジャーの権威を失墜させてしまったことを。だからこそ、無理なことだとセクレタリアトには言い返してきた。

 もうこれ以上ワタシの呪いに苦しんでほしくない……そこにはきっと、ワタシ自身が耐え切れないという思いもあったのだろう。他のウマ娘が挑戦しては、現実に打ちのめされていく。それが……何よりも耐え難いことだった。

 ワタシは絶望していた。呪いに、ジンクスに。永劫破られることのないと思っていた……この、ニジンスキーの呪いに。絶望していた、そんな時だった。

 

 

「あ……あぁ、あぁ……っ!」

 

 

 あの子は、アンカデキメルゼは……セントレジャーを制したあの子は。凱旋門賞のゴールを誰よりも早く駆け抜けた。その姿は、かつてのダンシングブレーヴを彷彿とさせる勝ち方。

 気づいたら涙を流していた。あの子が勝ってよかったという気持ち、あの子がなんともなくて安堵した気持ち、何よりも……呪いが解けて、ワタシ自身が救われたような……そんな気持ちになった。セクレタリアトが、ワタシの肩に手を置く。

 

 

「『な?言ったろ?俺の弟子が……お前のくだらねぇ呪いなんざぶっ壊してやるってな』」

 

 

「えぇ……、えぇ……ッ!」

 

 

 感情がぐちゃぐちゃになる。だけど……やることは決まっていた。

 

 

(まずは、あの子に謝ること。非礼を詫びること……色々と、やりたいことはあるわね)

 

 

 そして……レースの世界に復帰しようか?コーチとして復活しようか?そんな風に思えた。それくらいに、ワタシの心には……変化が訪れていた。

 ワタシが生み出してしまった呪いは……この日、日本からやってきた、小さな銀色の勇者によって解かれた。ワタシは、そう強く認識した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンカデキメルゼ現時点での育成目標

 

 

メイクデビューに出走 達成!

 

フェニックス賞に出走 達成!

 

新潟ジュニアステークスに出走 達成!

 

京王杯ジュニアステークスに出走 達成!

 

全日本ジュニア優駿に出走 達成!

 

桜花賞で1着 達成!

 

皐月賞で1着 達成!

 

NHKマイルカップに出走 達成!

 

オークスで1着 達成!

 

日本ダービーで1着 達成!

 

エクリプスステークスに出走 達成!

 

キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに出走 達成!

 

セクレタリアトステークスで1着 達成!

 

セントレジャーステークスに出走 達成!

 

凱旋門賞で1着 達成!

 

チャンピオンステークスに出走

 

菊花賞で1着

 

BCクラシックに出走

 

エリザベス女王杯に出走

 

ジャパンカップに出走




周りの人達「アンカデキメルゼのトレーナー……なんて策士なんだ!」


アンカデキメルゼのトレーナー「知らん、なにそれ、怖」


明日辺りからプロキオンの方も書いていきます。
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