今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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アンちゃん、日本の大地に立つ。


安価ウマ娘と帰国!

 

 

「それにしても……ついに帰ってくるわけですね、ヤツが」

 

 

「そ、そこまで邪険に扱わなくてもいいんじゃないか?エアグルーヴ」

 

 

 何やら疲れた表情をしているエアグルーヴを宥めながら学園の校門前で待つ。今日は休日なので登校してくる生徒はまばらだ。まばらにいる生徒も、トレーニングだったり委員の仕事で来る者ばかりだ。大半の生徒は休日を利用して遊んでいるかレースに出走しているかのどちらかだろう。

 

 

「……ッチ。なぜわざわざ休日まで生徒会の仕事に駆り出されなければならないんだ?」

 

 

「仕方あるまい。理事長からの直々のお願いだ。無碍にするわけにはいかんだろう」

 

 

 不機嫌そうにしているブライアンをエアグルーヴが宥める。我々生徒会のメンバーがここにいるのには理由があった。

 つい先日、理事長から依頼という形でお願いがあった。

 

 

『依頼ッ!どうやら明日アンカ君が日本に帰ってくるらしい!そのお迎え役を君達生徒会に頼みたい!』

 

 

『アンカデキメルゼが……ですか?』

 

 

『ウム!生憎と私とたづなはその日は急用があってな、手が離せんのだ!だからこそ君達生徒会に頼みたい!』

 

 

『それは構いませんが……空港まで迎えに行くのですか?それですと、職員の方が向かった方がよろしいと思われますが……』

 

 

『その点に関しては問題ない!空港から学園までは問題なく来れるらしいからな!学園での出迎え役を君達に頼みたいのだ!』

 

 

『……委細承知。そういうことでしたら、その依頼喜んでお受けしましょう』

 

 

 特に問題があるわけでもなかったのでその依頼を私達は受けることにした。ただ気になったのは……理事長室に大量に積まれた空のエナジードリンクと胃薬。そして理事長の

 

 

『いやー!本当にすまないな!我々も用事があるからな!うんうん!用事があって申し訳ないな!』

 

 

 なんというか、わざとらしいぐらいに用事があるということを強調していたのが気になったぐらいだろうか?後たづなさんも理事長に同調するようにうんうん頷いていたが……?

 

 

「それにしても……理事長達には何があったのでしょうか?出迎え役に我々を抜擢したのは良いとしても、なんというか……」

 

 

「出迎え役にならなくて良かった、用事があって良かった。というような反応をしていたな」

 

 

「……考えても仕方ないな。それよりも、頑張ってくれたアンカデキメルゼを労おうか」

 

 

 アンカデキメルゼは海外のレースで目覚ましい……なんていうレベルじゃないくらいの活躍を残してくれた。まさに空前絶後の偉業を成し遂げてくれた。

 エクリプスステークスから始まった彼女の海外遠征。初戦を見事勝利で飾るとその勢いのまま破竹の勢いで勝ち続けた。キングジョージは欧州最強と名高いデイラミを下し、セクレタリアトステークスではマイル戦で驚異の大差勝ち。セントレジャーはアドマイヤベガとの対決を制し、凱旋門賞では我々リギルのエルコンドルパサーとフランス最強のモンジューを大外一気で撫で切った。その勝利は、かつてシリウスが体験したという踊る勇者……ダンシングブレーヴに匹敵するほどだと国内海外問わずメディアは大絶賛していた。

 そして、つい先日行われたチャンピオンステークスも彼女は制した。八面六臂、天下無双の大活躍だ。

 

 

「それで?ヤツらはいつ頃到着予定なんだ?それなりに待っているが」

 

 

「先程、空港まで迎えに行った方々から連絡が入った。もうすぐ学園に到着予定らしい」

 

 

 ……ただ、先程から妙な胸騒ぎがしている。これは一体何だろうか?

 

 

「……会長?どうかされたのですか?」

 

 

「い、いや。何でもないよ、エアグルーヴ」

 

 

 私の様子がおかしいことを察したエアグルーヴが私を心配するように顔を覗き込む。いかんな、感情が表に出てしまっていたか。しっかりしなければ。

 ……そういえば、アンカデキメルゼと言えば海外で師匠ができたのだとか。その師匠が……まぁ、とんでもない人物でありSNSを中心に凄まじい反響を呼んでいたのだが。主にこの学園に電話の音が鳴り響くくらいには。生徒の間でもその時の話題はアンカデキメルゼの師匠……セクレタリアトさんの話で持ちきりになったし、耳にしない時がなかった。

 そんなことを色々と懐かしむ。叶うのであればお会いしたかったが……あっちでアンカデキメルゼがお世話になったことなどを話してみたかった。

 色々と考え事をしていると、1台のリムジンが学園に止まった。すぐに察しが付く。アンカデキメルゼが帰ってきたのだろう。表情を柔らかくして、アンカデキメルゼを出迎える。

 

 

「お疲れ様、アンカデキメルゼ。ひさ「おぉ!ここがシルバーラビットのいた、日本のトレセン学園か!」……え?」

 

 

 ……おかしいな?アンカデキメルゼは、2mを越えるような身長の持ち主だっただろうか?それに、燃えるような赤い栗毛の髪もしていなかったはずだが?何が「さて、あなた達がMs.秋川の言っていた出迎え役かしら?」……ちょっと待て。待て待て待て待て待て!?

 

 

「会長、どうやら私の目はおかしくなってしまったようです。アンカデキメルゼとアドマイヤベガがセクレタリアト様とニジンスキー様に見えるのですが」

 

 

「現実を見ろ女帝サマ。どう考えてもアンカデキメルゼとアドマイヤベガではないだろ」

 

 

 目の前の現実が直視できない。どういうことだ!?アンカデキメルゼが帰ってくると思っていたのに、どうしてこの方々が私達の前に現れる!?

 

 

「ただいま~……って、どうしたんですか?師匠、コーチ」

 

 

「とりあえず、案内を頼んでいいかしら?」

 

 

 ニジンスキーさんのそんな声でなんとか我に返って、生徒会室にご案内することになった。……彼女達の後ろから、ちゃんとアンカデキメルゼとそのトレーナー達がついてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんとか御一行を生徒会室へと案内することに成功した……。アドマイヤベガはチームに合流、カレンチャンもそれについていく形で離脱。今この場にいるのは……

 

 

「久しいですね会長さん。わざわざすいません」

 

 

 アンカデキメルゼと

 

 

「……」

 

 

 その隣を無言でついているスミニンヴィッパー

 

 

「おいおい、飲み物は紅茶で頼むよ」

 

 

 アンカデキメルゼのトレーナーが作る予定のチームメンバーの1人、アグネスタキオン

 

 

「本当に……本当にゴメン……」

 

 

 滅茶苦茶申し訳なさそうに謝ってくるアンカデキメルゼのトレーナー。ここまではまだいい。だが、ここから先が問題だ。

 

 

「あなたがこの学園の生徒会長ね。初めまして、ワタシはニジンスキーよ」

 

 

「よ、良く存じ上げております……」

 

 

「俺はセクレタリアト!これからよろしくな、日本の皇帝よ!」

 

 

「あ、あなたも良く存じ上げています……」

 

 

 何故、国を代表するような2人がこの場にいるんだ!?いや、アンカデキメルゼと仲が良いというのは知っていたし、お礼に伺いたいぐらいだとは思っていたが……まさか日本に来てるなんて思わないだろ!?

 

 

「かなり委縮してんな、大丈夫か?」

 

 

「まぁ普通はこういう反応になるんじゃないかしら?」

 

 

「とりあえず話が進まないからなんとかしようぜ」

 

 

 エアグルーヴとブライアンもあまりの人物を前に姿勢を正して事の成り行きを見守っている。目線で助けを求めることにした。

 

 

(た・す・け・て!)

 

 

 彼女達は私の視線に気づいて……思いっきり目を逸らした。この薄情者どもが!

 

 

「さて、良いかしら?シンボリルドルフ」

 

 

「は、はい!大丈夫です!」

 

 

 思わず声が上ずってしまった。我ながら失態だと思うが、これも仕方なし。

 

 

「そう硬くならないでちょうだい。楽にして構わないわ」

 

 

「し、しかし……」

 

 

「そうそう。今からそんなんじゃ、これから先が思いやられるぜ?」

 

 

「……そういうことでしたら」

 

 

 少し楽にする。さすがに相手に指摘されたことを変えないのは良くないだろう。それに、少しずつではあるが慣れてきた。

 とりあえず、お礼から言うことにしよう。うん、そうしよう。

 

 

「ひとまずは、あなた方にお礼を申し上げたい。向こうではアンカデキメルゼがお世話になりました」

 

 

「なぁに気にすんな!もとより俺が興味があったからな!」

 

 

「どちらかというとワタシはお世話になった方なのだけどね」

 

 

 豪快に笑うセクレタリアトさんと、ただ粛々と対応するニジンスキーさん。なんというか、対称的な2人だった。

 せっかく来てもらったということで、2人にはいろんな話を聞かせてもらうことになった。アンカデキメルゼの海外のレースでの話などを諸々と。そこではメディアなどでは取り上げられない、裏の話的なものを聞けた。

 

 

「……ということは、ニジンスキー様が作ってしまった呪いを、アンカデキメルゼが解いた、と」

 

 

「そう言うことになるわね。凱旋門賞は本当に驚いたわ。今までとは真逆の戦法を取ったんだもの。始まった瞬間、終わったかと思ったわ」

 

 

「気持ちは分かります。アンカデキメルゼは終始どのようなレースをしてくるか分からないので。心臓に悪いですよね」

 

 

「それほどでも~」

 

 

「褒められてないよアンカ」

 

 

 さすがに話していると慣れてくるというか。少しずつ饒舌になってきた。なのでこの機会に聞いておこう。何故お2人が日本にやってきたのか。まぁ大体察しはついているのだが。

 

 

「それにしても、お2人はどうして日本に?観光目的でしょうか?」

 

 

「日本に来た理由?Ms.秋川から聞いてないのかしら?」

 

 

「お恥ずかしながら、お2人が今日ここに来ることも初耳でして」

 

 

「HAHAHA!日本のトレセンの理事長も中々面白いことを考えてるんだな!」

 

 

 こちらとしては心臓に悪いので金輪際やらないでほしい。

 この2人がここに来た理由は大体察しがつく。セクレタリアトさんはアンカデキメルゼの師匠にあたるわけだし、弟子の様子が心配でついてきた……という線が濃厚だろう。それから何日か滞在して、BCにアメリカに渡るのと同時に別れる。そんなところだろうか?

 ここで分からないのはニジンスキーさんの方だ。果たして彼女はどんな目的でここに来たのか……かなり興味が惹かれる。彼女ほどのウマ娘がどうして日本に来たのか、その理由を知りたい。

 

 

「そうね……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、よ」

 

 

 ……え?

 

 

「そして俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()これからよろしくな!」

 

 

 まってまって、どういうこと?ルナわかんない。

 

 

「Ms.秋川には話を通しているのだけど……どうにも今日は都合がつかなかったみたいで。今度の集会で正式に発表があると思うわ」

 

 

「いや、あの……」

 

 

「お前たちは他の生徒よりも先にトップシークレットを知ったわけだ!嬉しいんじゃねぇか?」

 

 

「……」

 

 

 エアグルーヴもブライアンも驚きのあまり目を見開いて……というか、目を見開かない方が無理だった。ここで、秋川理事長の態度を思い出す。

 

 

『いやー!本当にすまないな!我々も用事があるからな!うんうん!用事があって申し訳ないな!』

 

 

 あの、悪いとも思っていないわざとらしい態度……!もしやあの人!

 

 

(このことを黙っていたな!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 しかもこれ、絶対に理事長だけの仕業じゃない!たづなさんもグルでしょこれ!?だってたづなさんめっちゃくちゃ頷いてたもん!厄介ごとに巻き込まれなくてよかった~みたいな顔してた絶対!あの頷きはそういうこと!?

 何故?どうして?疑問は尽きないが……すでに決まっていることはもう、どうしようもないわけで。

 

 

「これからよろしくね、シンボリルドルフ。良き関係を築けたら嬉しいわ」

 

 

「そっちの副会長……エアグルーヴとナリタブライアンだったか?2人もよろしくな!仲良くしようじゃねぇか!」

 

 

「「「は、ハハハ……」」」

 

 

 笑顔で握手を求めてくるセクレタリアトさんとニジンスキーさんに、私達は乾いた笑いで対応するしかなかった。……お腹痛くなってきたなぁ……。




理事長達に(胃痛)仲間が増えましたよ!
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