【王家の至宝ドバイミレニアム、ジャパンカップに出走!】
そのニュースは、瞬く間に世界中へと広がっていった。
「おいおい……、マジかいな!
「あたし良く知らないんですけど凄いウマ娘なんですか?」
「凄いなんてもんやない!素質だけ言うたら、デイラミに匹敵する……もしくは
こうして着々とジャパンカップに出走するメンバーは、集まっていった。
あ~……帰りたい。人多すぎ、辛い。でも帰れない。テンション下がるぅ……。
「ほらアンカ、しっかりして。今日は合同インタビューの日だよ?」
「そうは言うがな……僕が人混み嫌いなの知っているだろ?」
「だけど、さすがに欠席するわけにはいかないよ。アンカも主役の1人なんだから」
今日はジャパンカップに出走するウマ娘達を集めての合同インタビューの日。周りには報道関係の人達がたくさんいますねぇ……。関係者の人とか。後なんか王族っぽい人たちも……え?なんで王族っぽい人達いんの?あの人なんか絶対SPでしょ。黒服にサングラスしてるし。間違いなくSPだ。
今回ジャパンカップに出走する人達ですけど……知ってる顔が日本にも海外にもチラホラ。というか、海外から来た人達は知ってる人しかいねぇよ!いや、1人だけ知らない子いたけど!
「めんどい……ご飯だけ食べてよ……」
バイキング形式だし、食べてるだけでもバレへんでしょ。さ~て何を食べ「『凱旋門賞以来だね。アンカデキメルゼ』」……誰ですかね?面倒だけど振り向いたら。
「……あ~『モンジューさん?』」
「『覚えてくれていて恐縮だ、東国からやってきた銀色の勇者……アンカデキメルゼ』」
なんかすっげぇ大層な名前で呼ばれてますね僕。勇者になっちゃいましたか。トライ〇ォースに覚醒したりしないですかね?
モンジューさんは、フッと笑って手を差し出してくる。僕はその手を握り返した。
「『君にリベンジするために……日本のウマ娘の強さを肌で実感するためにここに来た。良いレースをしよう』」
「『陳腐な言葉しか言えないけど、今回も僕が勝つ。それだけだ』」
「……『それでは、またレースで』」
モンジューさんはそのまま立ち去る。さ~て今度こそ食べ「『見つけたぞアンカデキメルゼ!』」今度は誰だよ!?飯を食わせろ飯を!
「……『ゴメン、本当に誰?』」
「『タイガーヒルだタイガーヒル!お前が勝った凱旋門賞で6着だった!……クソ!自分で言ってて悲しくなるな……!』」
「『で?僕に何の用だ?』」
「『お前にだけはぜってー負けねぇからな!覚悟しやがれ!』」
そのままずんずんと足音ならしながらどっか行っちゃった。というか、やたら話しかけられるな。デイラミさんは他の人達に囲まれているからこっちに来れないけど、僕はというと海外の人達から凄い目で見られてる。な、なんだ!?国家ぐるみで僕に報復でもするのか!?や、やってやらぁ!
「『見ろ、あの余裕……あれぞまさに王者の貫禄だな』」
「『さすがは世界最強……佇まいも一流のそれだ』」
「『今のうちにお近づきになっておきたいな……』」
クッソー!こうなったらご飯食べて「『もし。そなたがアンカデキメルゼか?』」今度は誰だよ本当に!?
「……ッ」
苛々しながら振り向くと、そこには鹿毛の髪をセミロングにした、褐色肌のウマ娘が立っていた。背丈は僕より少し大きいくらい……150後半だろうか?そのくらいだ。ただ何よりも特徴的なのは……。
「……『ふむ?聞こえなかっただろうか?それとも人違いだっただろうか?もう一度問おう。そなたがアンカデキメルゼか?』」
なんだこの圧倒的なまでのロイヤルオーラは!?ファインさんに匹敵するぞ!?
「『僕がアンカデキメルゼで合っているが。僕に何の用だ?』」
「『おぉ、合っておったか。それは重畳だ。それにしてもそなたが……』」
彼女は僕を、全てを見透かしているかのような目で見ている。普通だったら不躾と思うかもしれないけど、不思議とそう感じさせないような……そんな魅力があった。
「『さて、こちらはそなたの名を知っているというのに、そなたは余の名前を知らない……それでは不平等であろう』」
やっべ、僕が彼女の名前を知らないのバレてるじゃん。
「『自己紹介が遅れた。余の名前はドバイミレニアム。此度、ジャパンカップに出走することとなった。いまだ若輩の身なれど、精一杯走らせてもらう。良きレースにしよう、アンカデキメルゼ』」
「『あ、あぁ……こちらこそよろしく。ドバイミレニアムさん』」
僕とドバイミレニアムさんは握手をする。凄い、握手1つするだけでも緊張する……!いや、これ多分僕がボッチなだけだな。
「『さん、はいらぬ。余とそなたは歳もそう変わらぬだろう。ゆえに、気軽にミレちゃんとでも呼ぶがよい』」
「『え?』」
「『どうした?さぁ、呼ぶがよい』」
ドバイミレニアムさんは……やっばい!すっげぇ期待の籠った目で見てる!?なんか恐れ多いんだけど!?
「『み、ミレニアム……』」
「……」
すっっっげぇ不服そうな目ぇしてる!耳も絞ってるし!超不機嫌になってるじゃん!?
「『み、ミレちゃん……』」
「『それで良い。それにしても……ほう、これはこれは……。初めて呼ばれなんだが、甘美なる響き……悪くない』」
あ、ご満悦そう。むふーとか言いそう。
「『余もそなたのことはアンちゃん、と呼ばせてもらおう。構わぬか?』」
「『それは……まぁ……はい。良いけど』」
「『では、遠慮なく。アンちゃん』」
「『……なにさ?』」
僕が反応すると、ミレちゃんはそれはそれはご満悦そうに頷いた。
「『ふむ、良きだな。余はあだ名で呼ぶという行為に憧れておったのだ。そなたならば、余とあだ名で呼び合っても文句を言う者はおらんだろう』」
ということは……ミレちゃんはやっぱり高貴な身分のウマ娘なんだろうか?
「『さて、そろそろ呼ばれる時間であろう。余はこの辺で失礼させてもらう。それでは、また会おう……アンちゃん』」
「『あ、あぁ……ミレちゃん』」
ミレちゃんは薄く笑って去っていった。うん……ロイヤルオーラが凄かったね!
「アンカ……君はまた凄い子と話してたね」
「トレーナー君か。今までどこに行っていた?」
気づいたらトレーナーさんが帰ってきてた。トレーナーさんは苦笑いしている。
「ちょっと、ね。記者の人達の対応をしてたよ。それで君が話してた子だけど……」
「ミレちゃんのことか?」
僕がそう言うと、トレーナーさんは口をあんぐりと開けた。顎外れそう。
「あ~……アンカ?それは本人から?」
「そうだな。本人たっての希望だ」
「……まぁ、それならいいのかな?」
顎を大きく開けたかと思えば、今度は思案するように考え込み始めた。一体何なんですかね?
「それで?ミレちゃんがどうかしたのか?」
「あぁうん。君の言うミレちゃん……ドバイミレニアムさんのことだけど、巷では【王家の至宝】、なんて呼ばれるぐらいには有名な子だね」
あ、やっぱどえらい身分の子だったんですねミレちゃん。
「ちなみに、ファインと同じぐらい権力を持ってるよ」
「……僕、命は大丈夫だろうか?」
「本人が希望したことだから大丈夫だとは思うけど……というか、アンカはニュースとか見ないの?凄く話題になってたけど」
「生憎とテレビは見ない。見るとしてもアニメだけだ」
「……雑誌や新聞は?」
「漫画なら買うぞ」
「ウマッターやウマスタ」
「投稿だけしてシャットアウトだ。通知もオフにしている」
そういやなんかフォロワー数が凄いことになってましたね。よく覚えてないですけど。
そんな風に話していると、全員の視線が一点に集まっていた。その視線の先には……海外から来たウマ娘達。ジャパンカップに出走するメンバーが、座っていた。
《それではこれより!海外からきた皆様にジャパンカップへの意気込みを一言ずつ語ってもらおうと思います!まずはタイガーヒルさんから!》
「『勝つ!特に、シルバーラビットとエルコンドルパサー!お前らに負けたこと忘れてねぇからな!覚えてろよ!』」
早速名指しされてるじゃん僕。注目されるから止めてくんない?
《気合十分ですね!それでは次はモンジューさん!お願いします!》
「『日本のウマ娘の強さは凱旋門賞で実感した……とても心躍るレースだったと記憶している。加えて、凱旋門賞はとあるウマ娘に負けてしまった。その雪辱も果たしたいところだ』」
こっちをチラチラ見んな!注目されるだろうが!陰キャは注目されるの嫌いなんだよ!
《それでは続いてインディジェナスさん!お願いします!》
「あ、あ~……『精一杯頑張ります。応援よろしく~』」
《続きましてボルジアさん!意気込みのほどを!》
「『雪辱を果たしますわ!必ずこの手に勝利を!』」
着々とインタビューが進んでいき……そして、一気に圧が増した。
「「……」」
残った2人……それは、デイラミさんとミレちゃんである。デイラミさんは楽し気に、ミレちゃんは粛々と自分の番を待っている。
《そ、それでは!デイラミさんの方からお願いします!》
「フフ……あまり多くは語らないさ。ただ」
デイラミさんはそれはそれは楽しそうに両手を大きく広げて宣言した。
「君達の輝きを!素晴らしい美学を!私に見せてくれ!この場にいる英傑達、世界から集った君達の強さを!そして、そんな英雄達を制して頂点に立つのはこの私……デイラミだ」
会場を支配する一瞬の静寂。その後湧き起こる……大歓声。記者の人達が楽しそうでなによりです。
そして最後。ミレちゃんの番になる。会場はさっきのデイラミさんの番で大盛り上がりだ。聞いてんのかな?記者の人達。
《では最後にドバイミレニアムさん!お願いします!》
「『──拝聴せよ。余が話す』」
一言。ただ一言で……喧騒に包まれていた会場が一気に静まり返った。いや……すご。これがカリスマってやつ?
「『此度のレース、余にとっては苦々しい思い出がよみがえる距離だ。分の悪い勝負であること、覚悟の上。しかし……』」
ミレちゃんはただ静かに話している。けど……誰もがミレちゃんの言葉を黙って聞いていた。
「『余の威光を日本のファンに知らしめよう。ドバイミレニアムというウマ娘を、時代を象徴するウマ娘の名を刻むがよい』」
そう言ってマイクを返す……が、記者の人はまだ呆然と立ち尽くしていた。
「『どうした?早くマイクを受け取るがよい』」
「……え?あ、あぁすいません!」
我に返ったのか慌ててマイクを受け取る。いや……すっごぉ……。
「凄いな。まさに上に立つ者といった感じだ」
「彼女はデビュー前から有名だったからね。いつの日か時代を象徴するウマ娘になる……彼女のトレーナーはそう言っていた」
時代を象徴するウマ娘……確かに大物オーラ凄いもんな。夢物語でも何でもない、絶対に現実になる。そんな気がする。
そして、次に日本のウマ娘の番である。僕も当然登壇するんだけど……。
(おい!?なんで僕が大トリなんだよ!止めろよ!会場白けたら終わりじゃん!やだー!誰か代わってよー!)
なお、今更代わることはなく。インタビューが始まる。
《それでは!まずは最初、サイレンススズカさんお願いします!》
「……BCターフでは、逃げ切ることができませんでした。だから、今度こそ逃げ切ってみせます!」
《堂々の逃げ切り宣言!ありがとうございます!続きましてはステイゴールドさん!》
「……ん?あぁはいはい。頑張りま~す……これでいいだろ?」
《あ、アハハ……》
畜生!僕だってあのポジションにつきたかった!大トリだと下手なこと言えないじゃん!
《それでは続きましてエルコンドルパサーさん!お願いします!》
「エルは誰にも負けませーん!ジャパンカップ2連覇デース!」
《それでは続いてラスカルスズカさん!一言お願いします!》
「は、はい!みなさん強い方達ばかりですけど、精一杯頑張ります!」
あ~……天井のシミでも数えてようかな?ハハ、照明が眩しくて見えねぇや。
……てか気づいたら僕の番もうすぐじゃん。なんならもう2つ前まできてるよ……あ、終わった。
《……はい!それではスペシャルウィークさん!お願いします!》
「は、ハイ!同じチームの、憧れのスズカさんと走れるのもそうですけど、エルちゃんとも久しぶりに走れるのですっごく楽しみです!それに、海外からも強いウマ娘さん達がたくさん来てるので、一緒に走るのが楽しみです!」
「アハハ!スぺちゃんはいつもの調子デスね!意気込みとかないんデスか?」
「あ!い、意気込み!そうだった……えっと、えっと~。が、頑張ります!」
会場が笑いに包まれる。和やかなムードだな~……僕のハードル上げんじゃねぇよ!余計下手なこと言えなくなったんじゃんか!別にスペシャルウィークさんは悪くないけどさぁ!
《スペシャルウィークさんらしい回答、ありがとうございました!それでは最後に!アンカデキメルゼさんお願いします!》
マイクを渡される。もう逃げられねぇ……。会場中の視線が僕に集まる。すんごい期待の籠った目で見られてる!止めろよ本当!くっそ~!どうにでもなれ!
「……相手が誰であろうが関係ない。ただ、走って勝つ。それだけだ」
ハイ終了!僕の出番終了!さっさとマイク渡しますよ僕は!
《……ッ!相変わらずのクールなお言葉!ありがとうございます!それではみなさん、もう一度盛大な拍手を!》
あ、受けは良かったのか。よ、良かったぁ……。さっさと降りよ。
それから程なくして合同インタビューは終わった。僕達はそれぞれ帰路に着く。その帰り際。
「『アンちゃんよ。忘れていたことがあった』」
「『……どうかしたんですか?』」
「『敬語は止めよ。余とそなたは友のようなもの、敬語などというものは不要だ』」
……え?友達になってくれるの!?やったー!
「『そうか、では遠慮なく……それで、どうした?』」
「『何、LANEの交換でもと思ってな。他の者にも頼んだのだが、デイラミ以外には拒否されてしまった……』」
……ミレちゃん心なしかしょんぼりしてるな。後LANEやるんだミレちゃん。
「『構わない。それじゃあ早速交換するか』」
お互いにウマホを操作して……よし、完了だ。
「『それでは、また会おうアンちゃん。次会う時は……レース場で。そなたの強さを、学ばせてもらおう。そして、余の強さ、余の威光を……そなたの身に刻んでやろう』」
「『あぁ……僕の強さを教えてやるミレちゃん。負けても泣くなよ?』」
「『フ、それはこちらも同じこと。それでは……さらばだ』」
ミレちゃんはSPさん達に連れられるまま去っていった。ふ、フフ、フフフ……友達が増えたぞ!やったー!
「アンカが嬉しそうで何よりだよ。まぁ……この後理事長達がまた胃を痛めるんだろうなぁ……」
「どうかしたか?トレーナー君。何やら浮かない表情をしているが……」
「いや、なんでもないよ。それじゃあ記者の人達に捕まらないうちに帰ろうか」
「そうだな。早速帰るとしよう」
いやーたまにはいいもんですね合同インタビューに出るのも!最高の気分で帰れますよ!
友達が増えたよ!やったねアンちゃん!