たんぺんしゅー   作:伊勢うこ

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 リハビリ。
 基本思いついたもん吐き出してるだけなので続いても短いです。
 続き書く前に別の原作のもん書くかも。


十種じゃないんですか?(原作・呪術廻戦)

 

 禪院扇は、未だ当主の座に未練があった。

 

 

 次代当主が決まる前も、己の兄が当主に決まった後も、彼は自分こそが当主に相応しいと思っていたのだ。

 では、彼と彼の兄。その違いは何処にあったのか。

 

 呪術師、特に禪院家においては術式こそが要であるとされる。

 才能で八割が決まるとされる世界では、それを持って生まれるか否かで大きく運命が決まると言っても過言ではない。

 古くから伝わり由緒ある相伝の術式が尊ばれる傾向にあり、そうでないものの価値は薄い。

 

 では、違いは術式にあったのか?

 答えは否。

 兄・直毘人の持つ術式は確かに優れ、最速の術師と呼ばれるに至る程。相伝の術式ではあったが術式そのものの歴史もまだ浅い。その為、そこは争点にはなり得なかった。

 ならば術師としての力量か?

 それも否。

 扇には兄に遅れをとったことは無いという自負があり、呪術師としての階級も同一のもの。

 

 では何が彼我の明暗を分けたのか?

 答えは、『子』。

 

 直毘人の息子の一人、直哉は父の術式を受け継ぎ若くして優秀な術師へと育った。彼を次の当主に推す声も少なくない。

 対して自分の子はどうか。

 二人の姉妹。それも一卵性の双子。

 双子は呪術的な意味において凶兆。呪力や術式が分散してしまうため、まず呪術師として大成しない。

 

 姉は生まれながらに負った呪縛で術式どころか呪力が一般人程度にしかなく、妹の方も術式こそ持てど良くて三級止まりといった具合。

 双子が産まれた際もそのことで家の中から同情的な視線を浴びたことは、彼の生涯で最も忌々しい出来事の一つとなった。

 

 

 優秀な後継を得た兄と、まるで後継に恵まれなかった己。

 この差こそが、惨めな結果に繋がった。

 

 "自分が当主になれなかったのは、娘たちが不出来だったからだ"

 

 扇は本心でそう思っていた。何故ならばそれ以外に自分が当主になれなかった理由が存在しないからである。

 

 だから、であろう。

 だから彼は未だ諦めがつかずにいたのだ。

 もし自分の子が優秀であれば、と。そうすれば今頃は自分が当主の座に納まっていた筈だ、と。

 

 その執着心は澱の様に彼の胸の中で溜まり、燻り続ける。

 

 そしてーーーー子を新しく儲けた。

 

 今度こそ、優れた後継を作り出す為に。

 

 

 

 

 生まれたのは男児であった。

 

 戒、と名付けられたその幼児。

 男が産まれたことに一先ず安堵したが、扇は自身の子にそう大きな期待を寄せていなかった。

 なにせ同じ血を分けた二人の姉があの出来である。術師として一人前になるかも怪しいものだ。

 

 術式も、あればまぁ良し。己の術式を受け継いでいれば御の字と言ったところだが、それも期待薄である。

 呪術御三家に数えられる禪院家に於いても、術式を持たずに生まれる者は一定数いるものだ。事実としてそういった者たちで構成される部隊がこの家には存在する。術式を持たなかった場合はそこに放り込めばいいだろう。

 

 術式が判明するのは平均にして四〜六歳の頃。

 それまでは姉二人と離しつつ、術師としての基本的なことを学ばせる準備をさせた。

 

 

 やがて時が過ぎ。

 扇の長男、戒が五歳を迎えて暫く経った頃。

 彼の呪術師としての素養が判明したのであった。

 

 

 その日は、任務から京都の屋敷へと戻ったばかりであった。

 数日とはいえ自分が留守にしている間に何かなかったかと、息子に尋ねると彼はこう言った。

 

「影を動かせるようになった」と。

 

 扇は一瞬息を忘れーーーー歓喜した。

 

 禪院戒の術式は、十種影法術。

 自身の影を媒介にした式神召喚術であり、禪院家の歴史の中で受け継がれてきた最も高い価値を持つ相伝術式。

 今現在、禪院本家では誰一人として持って生まれなかったそれを、自分の息子が発現させた。

 

 まさに望外の悦び。

 同時に扇は確信した。

 自分の息子こそ、次の当主に違いない、と。

 同じ種から産まれた双子の不出来な姉たちは何かの間違いで、やはり己は当主に相応しかったのだと。

 

 口端を歪める扇に、息子は言葉を続ける。

 「影から変なものを出せるようになった」と。

 

 変なものとは、恐らく術式で召喚する式神のことだろうと扇は推測する。

 十種影法術はその名の通り十種の式神を操る呪術であり、相手や状況に応じて使い分けることが強みの術式。

 式神を扱えるようにする為には術者が式神と直接戦い調服するという儀式が必要になり、そうすることで初めて扱えるようになる。

 

 確認のため試しに出してみろと告げ、戒は父に言われた通りの行動に移った。

 掌を合わせ印を組む。

 小さな体躯から呪力が流れ、刻まれた術式が起動。

 

 少年の華奢な身体により作られる小さな影が蠢く。

 十種影法術の術者が最初に召喚することが出来るのは「玉犬」という犬型の式神。

 戦闘だけでなく索敵にも優れ、最もオーソドックスな式神と言えるだろう。

 この玉犬に始まり、先述の通り段々と式神を増やし最終的に十種の式神を駆使することとなる。

 

 

 しかし。

 その期待は大きく裏切られることになる。

 

 どぷり黒い泥の中から這い出るナニカ。

 影から現れたのは、式神と呼ぶにはあまりに禍々しい黒い肌をもつ巨人だった。

 

 

「ーーーー」

 

 

 先刻とは異なる意味で扇は言葉を失い、

 

 

 ーーーー同時に全力で距離を取り戦闘体制に移っていた。

 

 そのことに彼自身が気がついたのは、無意識の内に抜刀し術式を解放した後のことである。

 

 それほどまでに、少年の影から出現したソレは異常だった。

 

 二メートルを優に超える巨躯。漆黒に包まれた筋骨隆々の体躯が放つ圧迫感もさることながら、目を引くのはその異様。

 顔に当たる部分からは濡羽の二対の翼が生え、大きな方陣のようなものを背負い、右手にはゴツゴツとした異常な呪力を感じさせる大剣。

 

 明らかに常識の外にいる存在。

 特別一級術師の肩書きを持つ扇だが、こんな式神は聞き覚えすら無い。

 対峙するだけで汗が噴き出すなど、これまでの経験で一度も起こり得なかった事態。

 

 この式神(本当に式神かすら怪しいが)は一体何なのか、息子は何を呼び出してしまったのか。

 いや、そもそも。

 

 こんな怪物を呼び出した自分の息子は、何者なのか。

 

 あれから十年以上経った今でも、禪院扇は答えを出せずにいる。

 

 

 

 

 

[悲報]ワイ、ヤベー家に生まれる

 

 

 いや、マジでヤベー家だわ。

 何がヤバいってマジヤバい。もう色々とアレ過ぎてヤバい。ヤバみが深いヤバ谷園。

 

 え、何がヤバいか分からない?

 よろしい、順を追って説明しよう。

 

 俺は一度死んだ。

 今となっては記憶がだいぶ朧げだが、新卒で入社して間もなく交通事故に巻き込まれて死んだ、ような気がする。

 

 

 で、気づけばチンチクリンの子供になっていた。

 鏡を見て自分が見知らぬ子どもになっていることに困惑したが、前世の自分より顔が整っていてムカついた。自分の顔なのにネ・・・。

 

 生まれた家は京都に古風なクソデカ屋敷を構える禪院という金持ち一族。

 周りはみんな和服だったので現代ではないのかと思ったが、普通に自動車やPCの類はあったので現代日本ではあるようだ。

 今時にしてはかなり珍しい一族で住む家で、屋敷には何十人といて来客も絶えない。俺は詳しくないのでよく分からんが名家? というやつなのかもしれない。

 家族構成は父と母、上に姉二人がいてどちらも可愛い。将来はさぞ美人になるだろう。

 

 金持ちで家デカくて美人になるであろう姉が二人!

 ヒャッホー! これが噂の転生チートってやつですかー!!

 

 

 ーーーーそう思っていた時期が僕にもありました。

 

 

 我が生家、禪院家はオレが思ってたよりずっとヤベー家でした。

 

 まず生業が呪術師とかいう極めてオカルティックなもので、しかも一家どころか一族単位でそれである。

 呪術師って何だよ新手の宗教詐欺かよw と当初は思っていたが、親父殿に連れられた先で明らかに自然界には存在しない化け物を直に見せられれば納得せざるを得なかった。

 

 化け物は「呪霊」といい、人の負の感情が集まって生まれ人を襲う怪物だそうな。

 そして呪術師はそれを祓うためにいるのだそう。

 

 驚きはしたが前世でそういう類の創作物には触れていたため「あーはいはい、そういう感じの世界ね」と取り乱すことなく一先ず受け入れることが出来た。

 なんかポンポン死人が出る業界らしいけど、幸い禪院家は御三家と言われる程に勢力として大きく、優秀な家系なんだとか。

 ほなそう簡単には死なんやろし、最悪その優秀な人たちに守ってもらえばええか。

 そう楽観していた。

 だが、この禪院家というのがある意味呪霊よりもヤバかったのだ。

 

 

 まず男尊女卑は当たり前。

 女性は家で給仕にあたり、子を産む道具程度にしか見られない。

 

 さらに『禪院家にあらずんば呪術師にあらず、呪術師にあらずんば人にあらず』とかいう明らかに現代の風潮に真っ向から対立して喧嘩売ってるとしか思えない家訓を掲げていたのだ。知った時は普通にドン引きした。

 また呪術師が生まれながらにもつ「術式」至上主義の一家であり、この術式を持って生まれなければ一生雑に扱われるというのだ。

 自分の術式が判明するまでは毎日気が気でなかった。

 

 理想的な家庭環境なんて簡単に手に入らないものとはいえ、これはちょっとあんまりでは?

 

 

 だが一方でいいこともあった。

 

 それは五つほど歳の離れた双子の姉の存在。上の姉が真希、下の姉は真衣といいよく構ってくれたものだ。

 まぁ精神年齢二十歳超えてる自分から見れば二人とも妹みたいなもんだしな。

 機会こそそう多くなかったが、二人と遊んだのは良い思い出だ。仲も良好、のはず。

 

 オレと姉二人は実の兄弟姉妹だが、あまり自由には会えなかった。

 何故か?

 それは親父殿の所為である。

 

 術師として出来損ないだという姉達とは極力関わるなと言われ続け、術師としての訓練に時間を費やす日々。

 オレの貴重な癒しの時間を奪う親父殿。立派な呪術師になって欲しいそうだが知ったこっちゃねぇ。いつか必ず報いを受けさせてやるぜ・・・!

 具体的にはケツに爆竹突っ込んでやる(強固な意志)。

 

 

 母については、正直あまり関わりがない。

 術式が判明する前はともかく、判明した後は距離ができてしまった。

 実の親子のはずが、まるで従者のように畏まられてしまってからはあまり顔を合わせないようにしてしまっている。

 

 オレの術式は十種影法術といい、禪院家相伝の術式。

 それはもう随分古くから伝わる術式だそうで、それを発現させてからオレはこの家で最も価値のある存在になってしまったのだ。

 それまではただの子供だったオレが、蝶よ花よと過保護なまでに扱われ始めた。

 たかが術式が分かっただけでこれだ。

 やっぱりこの家おかしいわと、オレは再認識した。

 

 

 そんなことがあった所為か、オレは自分の術式が正直あまり好きじゃない。

 ただ相伝の術式が使えるというだけで知らないヤツからもおべっかを言われ遜られるわ、次代当主はお前だの御三家のうち残り二つは禪院家の足元にも及ばないだの洗脳教育を施されるわ、散々だ。

 

 あとついでにーー

 

 

「十種って聞いてたのになぁ・・・」

 

 

 目の前の黒い巨人を見上げる。

 オレが術式で唯一召喚出来る式神。

 十種影法術って名前のくせに、出てくるのはコイツ一種だけ。景品表示法って知ってる? 詐欺やろこんなん。

 

 ホント、残る九種どこ行ったん?

 

 

 

 

 

 

 

 あ、当主さまチーっす。どっか行くんすか?

 え、東京? 真希姉さんが昇級査定中?

 

 それ、オレも行っていースか?(コキ・・・)

 




 禪院戒
 ・シスコン

 禪院扇
 ・クソ親父

 禪院直毘人
 ・戒から相対的に実父より好かれてる。

 禪院真希・真衣
 ・かわいい。すこ。
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