Another Days-case of Shizuku-   作:瑠和

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いやだ…

そんなの嫌だ!虹ヶ咲が終わるなんてそんなのいやだ!

永遠に世界にトキメキを届けてほしい!

俺が死ぬまで…死んでも10年以上は続いてほしい!




舞台裏編
舞台裏・0話 深淵の始まり


それは、ある日のことだった。たまにはオフィーリアを連れてお台場を散歩していた日。たまたま彼方さんと遥さん。

 

そして、その世界では彼方さんと結ばれる瑠和先輩に会った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

初めて瑠和さんに会ったのは入学式の日、風にリボンが飛ばされ、それをキャッチしてくれたのが瑠和先輩だった。

 

運命の出会いかと思った。

 

しかし、この学校は人数も多くそうそう再会することはない。そう思った。

 

だが、再会は早かった。

 

高校に入ってから、新しい表現の方法を学ぶ場所としてスクールアイドル同好会に所属した矢先だった。部室に瑠和先輩がいて驚いた。

 

どうやら妹の璃奈さんに人との関わりの場として進めるためにスクールアイドル同好会を選んだらしい。

 

だけど私は、先輩がそれだけの理由で来てる訳じゃないことに、なんとなく気づいていた。

 

瑠和先輩の視線の先には常に彼方さんがいたからだ。先輩の視線を追いかけ、わざと前を通ってみたりしても、先輩はずっと、彼方さんを見ていた。

 

 

 

 

 

それから、いろいろなことがあった。本当に、いろいろなことが。

 

そしてそのいろいろなことがあった最中、瑠和先輩と彼方さんが結ばれた。

 

だけど…

 

いいえ?

 

それでこの話は終わり。そう。終わりにしなければならない。

 

「本当にそれでいいの?」

 

「…」

 

心の中の私が語りかけてくる。

 

仮面をし、黒い衣装に身を包んだ私。

 

その仮面のしたに何があるか、それは私が一番知っている。知っているからこそ、その声から耳を塞ぐ。

 

「あなたも好きになったんでしょう?彼のこと」

 

「…」

 

「回りの顔色を見て、いい子を演じていた彼に自分と同じものを感じた。違う?」

 

「…」

 

「何度もつまづきながら、傷つきながら、間違えながら、大切な人のために自己犠牲も厭わない彼をみて「この人なら本当の私を受け入れてくれる」って、そう思ったんじゃないの?」

 

「…」

 

「いい子を演じて、いつも演技臭いセリフしか言えなかった私………でも、あの人の前なら自然と話せる気がする…そうとも思ったんじゃない?」

 

「……だったらなに?もう二人は結ばれてる!彼方さんから瑠和先輩を奪うことなんてできない!だって…………それほどまでに、先輩は彼方さんを愛してるから…」

 

「本当にそう思うの?」

 

もう一人の私が私に詰め寄る。

 

「本当にそう思うなら、なぜフェスティバルのとき、たまたま誘ったら乗ってくれた先輩とのツーショットを大切に持っているの?」

 

私の定期入れの中には、スクールアイドルフェスティバルのとき、瑠和先輩と一緒にとれたツーショットが入っている。自分でも未練がましいとは感じていた。

 

「一度試してみたらいいじゃない。きっと瑠和先輩なら、受け入れてくれる…でしょう?」

 

「…」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「あ、瑠和さん、彼方さんに遥さんも」

 

前から来たのはしずくとオフィーリアだった。

 

「お、しずくちゃん」

 

「よう、オフィーリア。久しぶりだな」

 

「どうしたんですか?こんなところで。めずらしい組み合わせで」

 

「お天気よかったら遥ちゃんとお散歩にねぇ。その道中で瑠和君が落ちてたから拾ったんだよぉ」

 

「…………そうでしたか。奇遇ですね」

 

(我ながら不思議な説明したのにこれくらいじゃ驚かなくなったかぁ……)

 

「……お手、おかわり………バーン!……………相変わらず賢いなお前は」

 

瑠和はしずくと彼方が話している間に、オフィーリアと遊び始める。一通りの芸は反応してくれる。あの合宿で2回の夜だけでかなり仲良くなっていた。そんな様子を遥が見つめる。

 

「遥さんも……撫でますか?」

 

「え?は、はい!」

 

それから、しずくと遥は波打ち際で遊び始める。そんな様子を瑠和とオフィーリア、彼方は見守っていた。瑠和に関しては彼方の膝枕で寝ているだけなので見守るも何もないのだが。

 

そんな二人と一匹の様子を遥は見つめる。

 

「そういえば、瑠和さんとお姉ちゃんってずっとあんな感じですか?」

 

「あんな感じといいますと?」

 

「ずっと惚気てるって言うか……いちゃついてるっていうか……」

 

「あぁ~…………そうですね。最近………特に虹ヶ咲だけのライブを成功させたあたりからより派手にというか、恥じらいがなくなったというか…」

 

「……ひょっとして、お互い急にいなくなっちゃうのを怖がってるんじゃ…」

 

そんなことはない。どちらかというとこの二人の状況は自然とこうなっていったのが正しいし、瑠和が将来のことを考えてより彼方を幸せにしたいと思ったが故の結果だ。だが、周りがそう思ってもおかしくないくらいべったりだ。

 

「………」

 

少し考えたしずくは二人を呼ぶ。

 

「どうしたのしずくちゃん?」

 

「いえ、せっかくですし、ちょっとパートナーを変えてみようかと」

 

「パート……」

 

「ナー?」

 

瑠和と彼方は互いの顔を見合わせる。しずくは彼方にオフィーリアのリードを託した。

 

「あぁ、なるほど~」

 

彼方はまんざらではない表情だ。しずくは遥と遊んでいるし、彼方もオフィーリアとの相性も良かったからだ。しかし、穏やかな空気はそこまでだった。

 

「……瑠和さん」

 

「ん?」

 

「…………ぎゅ」

 

しずくは瑠和に真横に立って腕を抱き、その肩に頭を預ける。刹那、彼方に電流走る。

 

「し、しずくちゃん!?いきなり何を!?」

 

「言ったじゃないですか、「パートナー」を交換するって」

 

「…………いや、いやいや!それはいくら何でも!」

 

驚きでしばらく固まってた彼方が瑠和からしずくを引きはがそうとする。まさか瑠和を取られるとは思ってなかった彼方は焦りまくる。完全に遥とオフィーリアだと思ってたからだ。

 

「あら?彼方さんは遥さんならいいって言うんですか?」

 

「いや、遥ちゃんと遊ぶしずくちゃんと瑠和君といちゃつくしずくちゃんじゃ全然違うから!!いいから早く離れて!」

 

「………そうですねぇ……じゃあ、こうしましょう。今から10分間、私は瑠和さんのことを誘惑します。その誘惑に耐えられたら、瑠和さんを返してあげます」

 

「………いや、いくら何でもそれは」

 

「私は好きな男性をほかの女性から奪う役の練習ということに。瑠和さんも、マネージャーならかわいい後輩の練習、手伝ってくれますよね?」

 

瑠和は唾を呑む。しずくの言葉遣いは何とも淫靡で、色気に満ちていた。これが一つ下の後輩だということが信じられない。

 

「それに、高々10分後輩に弄ばれただけで………心変わりしてしまうほどお二人の関係は脆いものなのですか?」

 

それを言われると、瑠和も彼方も今の状況を力づくでどうにかするのはナンセンスだと思ってしまう。

 

「では瑠和さん、一緒に少し歩きましょうか」

 

「あ、ああ」

 

二人は浜辺を歩き出す。その後ろを彼方が恨めしそうに歩く。

 

「それじゃあ瑠和さん、私のいいところ、教えてあげますね」

 

「…」

 

「そうですねぇ。私は結構料理得意なんです。おいしいお料理ふるまえますよ?」

 

「料理なら彼方さんも………」

 

「それに、私、結構勉強熱心ですよ?だから、瑠和さん好みのわたしになることができます。ファッションも…………夜伽も………」

 

しずくはより一層身体を密着させてきた。しずくの体はそこまで凹凸があるわけではないが、女性に密着されれば瑠和も多少は緊張する。

 

「………」

 

「結構お嬢様なのでお金もあります。瑠和さんが欲しいもの、モノでも…………私の身体でも…………なんだって私が用意立てても………」

 

上目遣いでしずくが伝える。果たしてその言葉は本当なのだろうか?もしここでしずくに乗り換えると伝えれば本当にこの言葉の通りになるのだろうか

 

そんな想像が生まれる。

 

「…………」

 

(だけど………)

 

瑠和の頭には、果林の泣き顔が浮かんでいた。璃奈の笑顔、嵐珠の涙。

 

また大切な人を傷つけるのか?もはや家族といっても差し支えない存在を犠牲にするのか?思い出せ。今の自分が立ってる場所は、多くの仲間の好意と良心のおかげで、そして恋心を踏みにじってきて立っている場所だ。

 

(もうこれ以上の………わがままは許されない。それに…)

 

瑠和は振り返る。振り返った先には彼方がいた。さっきまで真横のしずくしか見えてなかったからしずくが魅力的に見えていたが、改めて彼方を見ると感じる。瑠和にとって彼方が最高の女性であると。

 

「しずくちゃん」

 

「はい」

 

「しずくちゃんはさ、しずくちゃんが俺に、彼方以上に何かできるって本気で思ってるのか?」

 

「………」

 

一言。

 

たった一言だったが、その言葉にどれほどの重みがあるか、そしてどれほど深い愛か、それは瑠和の声色と表情から簡単に感じ取れた。

 

まだ時間はたんまりある。始まってまだ3分程度しか経っていないがしずくは瑠和から離れる。

 

「………オフィーリア、おいで」

 

「わぅ!」

 

しずくに呼ばれ、オフィーリアはしずくの方へ走っていく彼方はオフィーリアが向かっていくのを見て自然とリードから手を放す。

 

「もういいの?」

 

「ええ、残念ながら彼方さんには敵わなかったみたいです」

 

「………ふふん、当然だぜ~。瑠和く~ん!」

 

彼方はオフィーリアをしずくに任せ、彼方はさっきまでしずくがいた場所、瑠和の隣へと駆けていく。彼方は瑠和と腕を組み、歩き始める。

 

「………」

 

どこかはかなげな表情でオフィーリアを撫でるしずくを見て遥は思い切って尋ねてみる。

 

「あの、しずくさん…………ひょっとして、瑠和さんのこと…」

 

「…………まだ私が入学したてだったころ、一度瑠和さんのお世話になったことがあります。風に飛ばされたリボンを、たまたま瑠和さんがつかんでくれて………ただの偶然かもしれなかった…でも、再会した。同好会を復活させようと奔走してくれて、そんな姿を見てるうちに自然と…私は」

 

「しずくさん………」

 

「…でも、もういいんです!なんだか最近の惚気を見てると、軽い気持ちで付き合ってる気がしたので、そうでないってことが分かってよかったです。これでさっぱり気持ちを割り切れました」

 

「そうですか……私も、なんかお姉ちゃん取られちゃいました」

 

「まさかご姉妹で…?」

 

「いえ!そういうのではなく!でも、ずっとそばにいてくれるのが当たり前だったので……お姉ちゃんがお姉ちゃんで自分の居場所を見つけてくれたのは嬉しくもあって……ちょっと寂しかったりもします」

 

「…………さて、せっかくですから遊びましょう!いくよ!オフィーリア!」

 

それから四人と一匹は浜辺で遊び倒した。フリスビーをしたり、唐突に鬼ごっこを始めたり、いろんなかわいい写真を撮ったりした。どこかもやもやする気持ちを吹き飛ばすように。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

しばらくして休憩している間に、遥は彼方の膝枕で眠ってしまっていた。

 

「遥さん、寝てしまいましたね」

 

「遊び疲れちゃったんだねぇ………ふぁ…彼方ちゃんも眠くなっちゃった」

 

「寝るか?」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……すやぴ」

 

彼方は瑠和の肩を借りて眠り始めた。そんな彼方の寝顔を瑠和は慈愛に満ちた瞳で眺め、少し撫でる。しずくはそんな二人の姿を眺めて笑った。

 

「どうかした?」

 

「いえ…本当にお似合いだなぁって」

 

しずくはそう言った後に小さく、誰にも聞こえないようにつぶやいた。

 

「入り込めないなぁ…」

 

犬であるオフィーリアには聞こえてかもしれないが、飼い主の気持ちを知ってか知らずか片目で飼い主を見つめた後に眠りについた。

 

それから日の沈むころに四人は解散した。しずくもオフィーリアを連れて帰ろうとしたが最後にもう一度浜辺を歩こうと思った。

 

浜辺を歩いていると、ふと、こんな暗い中でもなにかが波打ち際で煌めいたのが見えた。

 

「…?」

 

近づいてみるとそれはきれいな石だった。だが、ただの石に惹かれることなど早々ない。何か人を惹きつけるような魅力を出す石は、どこかで見かけたことがあった。

 

「あれ?これ、たしか瑠和さんと璃奈さんがお守りとして持って…」

 

その石を持って帰ったことが全ての始まりだった。

 

 

 

ー桜坂家ー

 

 

 

特に深い考えがあったわけではない。なんとなく持ち帰ったその石をみながら、私はいつの間にか机でうとうとし始めていた。

 

(あーあ………彼方さんと瑠和先輩はやっぱり引き剥がせないなぁ…。せめて…………出会いをやり直せたら…少しは違ったのかな…)

 

そんなことを思いながら私は眠りについた。その石を握ったまま。

 

 

 

 

 

「しずく、そろそろ起きないと入学式、遅刻しちゃうわよ?」

 

「…え?」

 

目を覚ました私は、目を疑った。昨日まで、卒業も近くなった時期だったはずだ。

 

なのに、私は、入学式の朝にいる。

 

「夢…?」

 

何度もそう思ったし、何度も頬をつねったが夢ではなかった。そう、私は気づけば一年前の入学式の朝に戻っていたのだ。

 

それから、私は全く同じ一年を過ごした。まるでこれまで経験したことがちゃんと現実であることを確認するように。

 

幸い持ち前の演技力で、以前の記憶を持っていることは回りには気づかれずに一年間を過ごすことができた。

 

そして私は、再び同じ日に石を拾う。私はその石を持ち帰らず、その場で石を握る。

 

「………もう一度、瑠和さんとの出会いをやり直したい」

 

石を握ってそう願った。

 

 

 

 

 

「しずく、そろそろ起きないと入学式、遅刻しちゃうわよ?」

 

気づけば、入学式の朝にいた。

 

やはりそうだった。あの石がこの現象を引き起こしている。私と瑠和先輩の出会いは入学式の日。だからこの日に戻るのだ。

 

(でも、きっとこれは神様が与えてくれたチャンス。彼方先輩には悪いですけど……私も…瑠和先輩が好きだから!)

 

私は、瑠和先輩に好きになってもらうために、動いた。

 

 

 

 

 

 

「好きです。彼方さん。俺と、付き合ってください」

 

なのに、結果は彼方先輩とくっついた。

 

私は、選ばれなかった。

 

必死にアピールした。必死に求めた。なのに、彼は、私に振り向いてくれなかった。

 

なんで

 

なんで

 

なんで

 

悔しさよりも疑問の方が勝った。私に魅力がないから?彼方さんの方が魅力的だから?私の方が瑠和先輩に尽くせる。私の方が瑠和先輩を幸せにできる。

 

私は繰り返した。

 

何度も

 

何度も

 

何度も

 

何度も

 

何度も

 

いったい何度繰り返したか、わからない。

 

幾重も世界を繰り返した世界の中で、変化が起きた。ある日、瑠和先輩は果林さんと付き合った。その世界では同好会の歩む道も違っていた。

 

「…………あ……はは」

 

世界線が変わった。私の繰り返しが意味を成した。いつか私に振り返ってくれる世界にたどり着くために私はこの一年間を繰り返した。

 

幾重に

 

幾重に

 

幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に幾重に

 

 

 

 

 

 

 

 

……いつ、たどり着くのだろう。私が望む結末に。

 

果林さん、エマさん、ミアさん、侑さん、せつ菜さん、栞子さん、妹である璃奈さんでさえ、付き合っている世界があったのに…。

 

特に多かったのはいま言った6人と彼方さん。ほかのみんなと付き合う世界もあった。唯一例外があったのは歩夢さんだったけど、歩夢さんは絶対に現直さんとくっつくだけだった。きっと彼がいなければ歩夢さんとも………。

 

もう、疲れてしまった。

 

いつしか、私の胸に

 

雷鳴が鳴り響き

 

閉じ込めていた感情があふれ出していく

 

もう見失ったりしない

 

私自身の想いを

 

それから、私は、それぞれの世界線で起きる出来事を覚えていった。起きる事象からどのような流れで瑠和先輩とその世界のヒロインが付き合うことになるのか。

 

私は、それを、逆手にとった。

 

瑠和先輩がその人を魅力に感じる、ターニングポイント。そこを、潰せばその世界のヒロインとなる同好会メンバーと先輩はくっつかない。

 

申し訳ないけど、私にはもうそれしかなかった。

 

なのに

 

「あなたを愛してます、彼方さん。初めて会った時から。俺と、付き合ってください」

 

先輩は、また、彼方さんと結ばれた。

 

だから

 

繰り返した

 

また

 

何度でも

 

 

 

 

 

 

しばらくして、一つの法則のようなものがわかった。

 

瑠和先輩は、誰かと引き離しても主に彼方さんとくっつきがちであること。

 

そして、出会いが大切であること。

 

例えば、果林さんとくっつく世界では、瑠和先輩は同好会が本格的に動き出す前の月に、迷子になっていた果林さんと出会っている。

 

 

 

…私はほとんどの世界線でリボンが風に飛ばされ、瑠和先輩に拾ってもらってるのに。

 

 

 

であれば、もっと過去だ。

 

リボンを拾ってもらったとき、瑠和先輩に運命を感じてもらうために。私はもっと過去へと行った。小学生のとき、一度だけ家族とお台場に行ったことがある。

 

そのときに無理矢理にでも会いに行く。

 

そうすれば、きっと…

 

 

 

 

「あら?しずく?」

 

私は母の目を盗んで自由行動を開始した。瑠和先輩のご家族が以前暮らしていた街は知っている。手持ちのお金もそこまでないが、会いに行こうと私は駅へ走る。そんなとき、目の前を一人の少年が通った。

 

「え…」

 

いまよりずっと幼いが、一目でわかった。

 

先輩だ。

 

それを運命と呼ばずしてなんと呼ぶだろう。

 

先輩はそのまま海浜公園へ向かい、つまらなそうに海を眺めていた。

 

なぜ瑠和先輩がいまここにいるのか?それはわからないが、そんなことはどうでもいい。

 

私は高鳴る鼓動を押さえながら先輩の前に立つ。

 

「ねぇ、君、一人?」

 

「……うん」

 

「じゃあ、一緒に遊ぼう!?私、桜坂しずく!鎌倉から来たの!」

 

「………天王寺瑠和」

 

瑠和先輩は、どこか寂しそうだったけど、私をみて一緒に遊び始めたらとっても楽しそうだった。

 

(やっぱりだ…)

 

これまでの世界を通してきて、ひとつだけわかったことがある。

 

瑠和先輩は、愛情を求めている。

 

それも、母性的な愛を。本当は家族が大好きなのに、お兄ちゃんとして甘えずに勤めを果たし、大好きを圧し殺して家族と離れて暮らしたのだから当然だ。

 

そう、彼方さんに惹かれる一番大きな要因だ。エマさんの方が母性が強いと思うがそれはきっと瑠和先輩の好みの問題なのだろう。

 

だから、瑠和先輩の言葉は否定しない。全て受け入れて、「小さいときに会った味方でいてくれる女の子」の印象を刷り込む。

 

遊び終わってから母のところへ戻るとかなり叱られた。だが、先輩を手に入れるためだ。そんなこと屁でもない。

 

絶対に、手に入れる。あの人を。

 

なにがあっても。

 

 

続く




種明かし編の始まりです
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