Another Days-case of Shizuku- 作:瑠和
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|д゚)チラチラ
想定外の出来事が起きた。
何度も世界を繰り返した弊害か、過去に戻りすぎた弊害か、時折、私の意識が消えるようになった。
私の意識が眠っている間は、この世界の本来の私の意識が表に出ている。
つまり、瑠和先輩を手に入れようとしていない。まだなにが起きるか知らない、ただの純粋無垢な桜坂しずく。
これを表人格とでも呼ぼう。
表人格の視界も記憶も見れるしわかるが干渉ができない。
であれば、私は裏人格として………いつか私の意識が完全に消えてもこの世界の私と、瑠和先輩をくっつけて見せる。
諦めるわけにはいかない。もう戻れないから。
そして、月日は流れ、私は中学3年生になった。私は頑張っておこづかいを溜め、何度か虹ヶ咲学園に足を運んだ。そこで私は、はんぺんを手懐ける。
何度か、私のリボンが飛ばされない世界もあった。
出会いが大切なのであればそれすらも徹底する。私のリボンからマタタビの匂いをさせ、奪わせるようにトレーニングする。
繰り返した世界のなかで何度も調教したからもはやお手のものだ。これではんぺんは入学式の朝、私のリボンを奪っていく。走るルートも覚えさせたから瑠和先輩が通る道に逃げていくように仕込んだ。
ー入学式ー
一番大事な入学式の日は、不幸にも表人格が表に出ていた。不安はあったがこれまでの自分の行動を信じた。
「きゃっ!」
「おっと!大……………丈……夫?」
「すいません、猫が……私のリボン……を?」
仕込み通り、はんぺんは私のリボンを咥えて逃げていった。私ははんぺんを追いかけ、通路へ走る。そして、瑠和先輩とぶつかった。
「………お前…………しずく?」
もう一つの想定外。それは、私が切り出そうとしていた過去の出会いを瑠和先輩が覚えてくれていたことだ。
「え、ええ。私は確かに桜坂しずくですけど………えっと……どちら様、でしたっけ?」
だが、生憎表の私はその事を覚えていない。
というか知らないのだ。裏の私が行った行動は、表の私には共有されないらしい。
何度も裏の私がお台場に行って、不自然にお小遣いが減っていることに表の私が疑問に思っていたことでそれを知った。
そんな私は、リボンをはんぺんに取られた焦りと、先輩をナンパと思った勘違いで逃げるように去って行ってしまった。
まぁ、出会いはうまくいったと前向きに考えよう。
それから、表の私はお母さんにお台場に行った時の話を聞き、裏の私の記憶を部分的に見ていたのか、瑠和先輩に興味を持ったようだった。
―翌日―
「走り出した……想いは強くするよ…♪」
翌日、演劇部を見学しに向かっていた私はせつ菜さんのライブを目撃した。そしてその近くには「入部希望は私まで」と書かれたシャツを着た瑠和先輩がいた。
どうやらこの世界線はせつ菜さんとくっつく世界らしい。
助かった。
エマさんとの世界の場合、寮暮らしのために関係が深く、引きはがすのが難しいからだ。
表の私は瑠和先輩を見つけ、話しかけに行く。そこで表の私は先輩と裏の私の出会いを聞いた。聞いたところで私であって私でない行動に表の私は困惑するばかりであった。
「それにしても、よく私だってわかりましたね?会ったのなんてもうかなり前なのでは…」
「ああ、なんかな………そういえばしずく…ちゃん、少し前にお台場にきてなかったか?」
「え?」
「今年の頭くらい……2月の半ばだったっけな?しずくちゃんっぽい人見かけたんだ。大きいリボン付けた……そんな時は遠くから見ただけだからしずくちゃんとは思わなかったけど」
「……」
表の私は今年の2月半ばにお台場に来た記憶はない。
「他人の空似だと思いますけど……」
「そうかなぁ……」
当然だ。
その時お台場にいたのは裏の私だ。
―二ヶ月前―
「ん……?ん~」
その日、朝香果林は有明ガーデンでモデルの撮影があった。しかし、迷子になってしまい、お台場のあたりをさまよっていた。
困っていた果林の前に一人の少女が近づく。
「お困りですか?」
「え?」
声をかけてきたのは大きなリボンをつけた茶髪の少女。誰あろう桜坂しずくだ。
「さっきからこの辺りを右往左往しておりましたので……」
「実は恥ずかしい話、迷子になっちゃって」
果林は少女に今の自分の状況を見破られ、照れくさそうに状況を話した。
「私でよかったら、案内いたしますよ!」
「本当?ありがとう」
「いいえ?…………「お気になさらず」」
……………………………。
その日、お台場に行ったのは可能性を潰すためだ。基本的に同好会が誕生してからフラグが立つのは、彼方さん、愛さん、嵐珠さん、かすみさん、栞子さんだけだ。
学校が始まる前に瑠和先輩と出会うパターンは結構多く、その中でも出会いを潰せるのはせいぜい果林さんくらいなのだ。
だから、申し訳ないが果林さんと瑠和先輩の出会いは確実に潰しておく必要があった。
瑠和先輩は2年に上がる前に迷子の果林さんを助けることで果林さんとのフラグが立つ。逆を言えば果林さんが迷子にならなければいい。私は親切な人間を装って果林さんのフラグをへし折った。
◆◆◆
少しして、私は同好会に入部した。まだ部室がなく、公園で練習していた時だ。まずは部員を集めようと瑠和先輩とポスターやビラを制作していた。
せつ菜さんは少し離れた場所で練習をしている。
運がいいことに、この日は裏人格の私が表に出ていた。私は今しかないと思った。
先輩とせつ菜さんを引き剥がすのは。
この世界はどちらかと言うとせつ菜さんが最初に瑠和先輩に惚れている。それを断ち切ればいい。
私はお手洗いに行くと瑠和先輩に伝え、そのまま自販機で飲み物を買ってからせつ菜さんのところへ向かった。
せつ菜さんが練習に熱中していたところに、背後から近寄り、頬にジュースを押し付けた。
「ひゃっ!」
せつ菜さんが驚いて振り返る。
「しずくさん…」
「お疲れ様です。これどうぞ」
そういって私はせつ菜さんの頬に押し付けたジュースを渡す。
「あ、ありがとうございます」
二人は手すりに寄りかかる。さて、ここからが勝負だ。せつ菜先輩には申し訳ないけど、ここで瑠和先輩への好意を断ち切らせてもらう。
「…瑠和さんから聞いたんですが、何か、見られたくないものを見られたんですか?」
「え?ええ………私としてはとても重要なものです。ですが………自分が黙ってればいいだけと、瑠和さんがおっしゃってくださったので……協力していただく形に……」
ただ事情を説明しただけだが、せつ菜先輩の顔が若干赤くなっているのはきっと、夕焼けのせいだけではないことを私はなんとなく察した。
先輩は、優しすぎる。誰にでも優しくするから、無駄に好意を持たれる。だけどそれは本当の先輩ではない。本当の先輩はわがままで自分勝手で甘えん坊で………そんな自分を隠し、いい子を演じているに過ぎない。
やはり私しかいない。本当のあの人を理解できているのは。
「へぇ………あ……でも瑠和さんは…………いえ、何でもないです」
ふと何かを思い出したような態度をとったが、すぐに何でもないと言った。
「どうかなさいました?」
「いえ……何でも」
「あの、瑠和さんに関することなら教えてください!結構私も無理を言っていますので……もし不満など漏らされていたら…」
「そんな、せつ菜さんのことではないですよ。ただ……噂で聞いただけですが、瑠和さんは結構、責任感が強くて誰にでも優しいって話ですよ」
「え?」
せつ菜先輩は妙に含みのある言い方をした私の言葉を気にする。半分釣るための言葉だが、半分は事実だ。あの人の根底を理解できない人間があの人の隣に立つなんて、おこがましい。
「それってどういう…」
「いえ、私の勘違いならいいんですが、もし今私が予想しているせつ菜さんの気持ちに間違いがなければ………変に期待はしない方がいいっていうだけの話です……」
「………言ってる意味が…わかりません」
「…………それならいいです。ただの私の勘違いなので。すいません、変なことを言ってしまって。私、せつ菜さんの、迷いのない大好きのステージを見てスクールアイドルやってみたいなって思ったんです。だから、練習頑張ってくださいね」
私はそう言い残してその場を後にした。残されたせつ菜先輩は迷いを、さっき感じたもやもやを振り払うように練習を始めた。
私はそれを木の陰から見つめ、ほんの一瞬、怪しい笑みを零した。
これで大体のつながりは切り落とした。だが、まだ問題はある。
それは瑠和先輩自身がほかのメンバーのところに行く場合だ。
いくらつながりを少なくして、私の方を向かせようとしても、先輩自身の言動を制限するのは難しい。あまり関わると露骨になってしまうからだ。
だから、申し訳ないですけど………私のことを見ていただくために、先輩には誰も救わせません。
ずっと、私だけを見ていてくださいね♡先輩♡