Another Days-case of Shizuku-   作:瑠和

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週一とは。
ちょっと最近忙しくてスピードが遅くなっています。申し訳ないです。
GW中にいろんな作品書きたいな。
鹿角聖良姉さまお誕生日おめでとうございます!


第二話 妹と、友達と

「よし、完成!」

 

夕方の公園で二人で作り上げたビラが完成した。

 

「じゃあ、これをさっそく明日から配り始めましょう!」

 

「ああ。人が増えればきっとせつ菜のステージももっと輝いて………」

 

瑠和がそういった時、ほんの一瞬ピリッとした空気を感じた。しずくを見てみる。さっきと変わらない笑顔だ。

 

「どうかした?」

 

「いいえ?じゃあ、明日は頑張りましょう」

 

瑠和には、生まれつき人の表情に色を感じる独特な感性を持っていた。その見えている色で相手の感情が分かったりするのだが、しずくはどうにも色が見えにくい。

 

まるで、しずくの笑顔の形をしたお面と話しているような感じがする。話によると演劇部を兼部していらしく、だからか瑠和は少ししずくが苦手だった。

 

その日の練習を終えたせつ菜が合流し、軽い談笑ののちにその日は解散となった。

 

 

 

―翌日―

 

 

 

翌日の朝からさっそくビラを配り始める。菜々は放課後にしかせつ菜になれないので瑠和としずくの二人でビラを配る。

 

一通り配り、太陽が昇りきるころにはもうほとんど登校してくる生徒も見えなくなっていた。

 

「もうこんなものですかね」

 

「そうだな。あとは放課後にでも………」

 

いったん引き上げ、放課後に続きをやろうと思っていたその時、正門の方から声が聞こえてくる。

 

「ほら、果林ちゃん、急がないと!!」

 

「エ、エマ、ちょっと待って」

 

「………こんな時間に」

 

こんな時間に走ってくる生徒が見えた。そろそろHRが始まる時間なので当然だが、随分慌てている様子なので瑠和はそのまま行かせようとした。だが、そんな二人にしずくは接近していく。

 

「あの、スクールアイドル同好会です、よろしくお願いします!」

 

「え?スクールアイドル?」

 

前を行く赤い髪を三つ編みにしたいかにも外国人な感じの生徒が反応する。

 

「はい、私、国際交流学科一年の桜坂しずくって言います!もしご興味があられたら放課後正門まで!」

 

まだ同好会として設立していないので部室もない同好会は現在公園で練習中だ。そのために案内役として正門で待ってなければならない。

 

「エマ………スクールアイドルって…」

 

「うん……あ、でもそれより早く教室いかないと!えっと、しずく……ちゃん?ありがとう!放課後、また会えたらね!」

 

そういって先輩二人は去って行ってしまった。

 

「しずく、いまのって……」

 

「え?ええ、なんだか受け取ってくれる気がしたので………。さぁ、先輩。私たちも遅刻しないように教室に行きましょう」

 

「ああ……」

 

しずくの表情から妙な色が見えた。だが、その妙な色の正体はわからず、気のせいだとうと思いながら瑠和はしずくとHRに向かっていった。

 

 

 

―放課後―

 

 

 

放課後になり、瑠和としずくは正門で待っていた。しばらく待っていると、校舎から今朝見た二人が寄ってくるのが見えた。今朝は特に意識してなかったが、リボンの色をよく見ると先輩の様だ。

 

「あ、しずくちゃん!」

 

「あ、こんにちは!来てくれたんですね!」

 

「うん。私、国際交流学科三年のエマ・ヴェルデ!スクールアイドルやりたくて今年、スイスから留学してきました!よろしくね!えっと、そっちの男の子は……」

 

「普通科二年の天王寺瑠和です。よろしくお願いしますね、エマさん。そちらの先輩もスクールアイドル志望なんですか?」

 

瑠和はエマの後ろにいる妙に色っぽい先輩の存在が気になった。

 

「私?私はエマの付き添い。ライフデザイン学科三年の朝香果林。この後モデルの仕事があるからもう行かなきゃなんだけど………ねぇ、しずくちゃんって言ったかしら?」

 

果林は自己紹介をしてしずくの前に立ち、しずくの顔をじろじろと眺める。しずくは少し困りながらも改めて自己紹介をする。

 

「はい。桜坂しずくです」

 

「…………うん、やっぱり。一か月くらい前……だったかしら?私が仕事場所に向かうの迷ってた時案内してくれたわよね?あの時は助かったわ。ありがとう」

 

「…………え?」

 

しずくは困惑した表情をする。

 

「ほら、お台場のアクアシティで私が迷ってて、そしたら声かけてくれたじゃない。覚えてない?」

 

「…………えっと……」

 

しずくは必死に記憶を辿る。しかし、この先輩に見覚えはない上に一か月前にお台場にきた記憶もない。

 

「ご、ごめんなさい。私あんまり覚えてなくて………」

 

「そう?でも、確かにあなただったわよ?そのおっきなリボン。かわいいなって思ったから」

 

「そう…………ですか」

 

「ともかく、今日はこの間のお礼を言いたかったの。じゃあ、私はこれで。エマ、がんばってね」

 

「うん、ありがとう。果林ちゃん」

 

果林はしずくに礼を言うとそのままモデルの撮影のに行ってしまった。とりあえず一人確保したことには間違いない。だが、しずくの胸の中にはもやもやが残った。これで二度目になった。

 

しずくは公園につき、エマの紹介とせつ菜の自己紹介中もずっと考えていた。

 

自分の記憶がない行動を誰かに指摘された。最初は瑠和との出会いのことだが、それは小学生の頃のことだからしょうがないと思っていた。だが、たった一月前の話を覚えていないというのはさすがに異常だ。

 

まるで、自分じゃない自分がいるような奇妙な感覚にとらわれる。何なのだろうこのまったくもってよくない気分は。そんなことを考えていた最中だった。

 

「……キヅイテ」

 

「いぁ!!!」

 

耳元で誰かの声がした。そのことに驚いたしずくはしりもちをついた。

 

「しずく!?」

 

「しずくさん!?」

 

「大丈夫か?どうかしたのか?」

 

「え………いえ……」

 

冷や汗をかきながらあたりを見回す。しかし、どこにも誰もいなかった。

 

「ご、ごめんなさい……今日はちょっと具合が悪くて…失礼します!」

 

「しずく!?」

 

しずくは荷物を掴むとそのまま走り去ってしまう。ひどく気分が悪いのは事実だ。まるで自分が多重人格になった様な気がした。自分がやったことではないはずなのに、周りは確かに自分がやったことだという。

 

明確な理由はわからないがそれがとても気持ち悪かった。

 

 

 

―翌日―

 

 

 

この日、天王寺璃奈は放課後に少し気分を落としながらガラスに向き合う。

 

彼女が落ち込んでいる理由は一つ。表情が表にでないためどうしても勘違いされやすく、友達ができないのだ。それでは行けないとわかってはいるのだが、凝り固まったコンプレックスはそう簡単に変えられない。今日もクラスメイトに声をかけようとしたが、うまくいかなった。

 

「…」

 

ガラスに写る自分の口元をなぞり、笑顔を書く。

 

璃奈は一つ上に瑠和という名前の兄がいる。その兄に心配をかけたくなくて、自分自身変わりたくて、頑張ろうとしたのだが、結局うまく行かなかった。

 

「何してるんですか?」

 

背後から声をかけられた。

 

振り向くとそこには大きな赤いリボンを着けた少女がいた。リボンの色は黄色なので同級生らしいが、いきなり声をかけられて璃奈は驚いていた。

 

「…」

 

「あれ?それってジョイポリスの割引券ですか?」

 

少女は璃奈の持っていたジョイポリスの割引券に興味を持った。本来璃奈が友達を誘おうと持っていたものだが今となっては宝の持ち腐れ。たまたま現れた同級生に渡した方が有意義だと考えた。

 

「…お友達と行ってください」

 

「………じゃあ、一緒に行きましょう」

 

しずくは笑った。意外な誘いに璃奈は表情筋が思わず緩む。

 

「………いいの?」

 

「ええ。行きましょう。こういうのは一緒の方が楽しいですよ」

 

「……」

 

 

 

―数時間後―

 

 

 

「ただいま」

 

「お帰り、璃奈」

 

璃奈が帰宅すると瑠和は台所で夕食を作っていた。そんな瑠和に近づき、璃奈は独り言のように報告する。

 

「………お兄ちゃん、私、友達出来た」

 

「…………え?」

 

「うん、できた」

 

「そっか………よかったな。友達、作りたいって言ってたもんな」

 

「うん」

 

瑠和は喜んだ。

 

この兄妹は少しだけ問題を抱えている。かつて、瑠和はこの家を少し出ていたことがある。ただでさえ仕事が忙しかった両親に瑠和は不満を抱えていた。しかし、妹という存在があったため瑠和は不満を持ちながらも家事や妹の世話を頑張っていた。

 

しかし小学生のある日、両親の仕事の都合で引っ越しと転校が決まった。別にそれは構わなかったのだが、両親の都合に振り回されることが嫌になり、瑠和は家族での引っ越しを拒んだ。

 

高校入学まで瑠和は別居を続け、去年から璃奈や両親ともう一度暮らす決心をしたのだが、いまだ家族にちゃんと向き合えていない。

 

おまけにずっと家族が関わってやれなかったせいで妹の璃奈は表情が表に出せなくなっていた。

 

瑠和はそれが自分のせいだと思い、罪悪感を感じていた。

 

「あ、あのさ、その友達の名前………なんて言うんだ?」

 

璃奈は今まで表情のせいで失敗を続け、友達ができなかった。今度会いに行ってこれからも璃奈のそばにいてほしいと伝えようと思ったのだ。

 

「えっと、確か桜坂……しずくちゃん」

 

「………は?」

 

「?」

 

瑠和は名前を聞いて固まる。

 

「それってひょっとして………茶髪で、おっきいリボンした?」

 

「あ、うん…………なんで知ってるの?」

 

「ちょっとな………あ、買い忘れたものあるから、俺ちょっと行ってくる」

 

「うん」

 

瑠和は慌てて部屋から出ると、すぐにしずくに連絡を取った。

 

『あ、瑠和さんこんばんは』

 

「しずくちゃん………今日、俺の妹と遊んだって本当か?」

 

『え?ああ、璃奈さんのことですか?今日、たまたま出会って仲良くなったんですよ。素敵な妹さんがいるなら紹介してくださってもよかったのに』

 

「………」

 

たまたま?たまたま数年前に出会った女の子が、たまたま再会し、たまたまスクールアイドルに興味を持ち、たまたま友達が欲しいと思っていた自分の妹の友達になってくれた。

 

こんな偶然があるのか?

 

瑠和の中になにかよくわからないが、不安の種というかが芽生えた気がした。しかし、それはあくまで推測の域を出ない。確証がないことは何も言えない。

 

「………いや、ありがとうな。妹は…璃奈は昔から友達ができなくて………無表情でもちゃんと喜怒哀楽を感じてるから。どうか気を悪くしないで付き合ってくれたらうれしい」

 

『………はい!心配なさらないでも璃奈さんと私はもうお友達ですから!』

 

「そっか………ありがとな」

 

瑠和は電話を切る。しずくは外面だけみればなにかに秀でてる子でもなく、悪い子でもない。普通のいい子だ。だが、瑠和の感性がなにか内面に秘めたなにかを感じさせている。そんな気がした。

 

それにせっかく璃奈にできた友達だ。無下にするわけにも、瑠和の現在の立場的にもしずくと離れることはできない状況だ。

 

 

 

ー翌日ー

 

 

 

「瑠和さんいまよろしいでしょうか」

 

「ん」

 

昼休み、昼食を買いに行こうとしていた瑠和のところに生徒会長の中川菜々がやってきた。

 

「先日提出いただいた進路志望の用紙、誤字があったので直していただきたく。少しよろしいですか?」

 

「……ああ。わかった」

 

瑠和は菜々について、空き教室までやってきた。空き教室に入り、回りに誰もいないことを確認すると、菜々は小さくため息をついた。

 

「ふぅ、すいません、わざわざお越しいただいて…」

 

「気にすんな。共犯者、だろ?」

 

瑠和は一年前、菜々がスクールアイドルを始めようと色々練習をしているところをたまたま見てしまったのだ。菜々としては見られた時点で終わりと思っていたが、瑠和は協力を申し出たのだ。それ以降、瑠和は正体を隠すことを約束し、菜々を、スクールアイドルを支える立場になったのだ。

 

「実は…昨日のダンス練習中に衣装を少し破いてしまって…。せっかく作っていただいたのに…申し訳ありません」

 

「いいや、それだけ練習をしっかりしてるってことだろ。気にすんな。直しておくから」

 

「ありがとうございます」

 

この衣装を用意したのも瑠和だ。家でも正体を隠している菜々にとって瑠和はなくてはならない存在だった。

 

瑠和は衣装を受けとると、そのまま昼食を買いに購買へ向かう。

 

「あ、瑠和先輩」

 

「しずくちゃん。しずくちゃんもお昼?」

 

「はい。あ、瑠和先輩はお昼、買いに行くんですか?」

 

「ん、ああ……」

 

「スクールアイドルの練習のためにって張り切ってちょっとお弁当作りすぎちゃったんです。よかったらいかがですか?」

 

そういってしずくは二つ分のお弁当を取り出した。

 

「そっか…………なら、ちょっといただこうかな」

 

 

 

―西棟屋上―

 

 

 

西棟の屋上に二人はやってきた。二人は屋根があるベンチに座り込み、昼食にする。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

瑠和は弁当を受け取るとさっそく弁当箱を開く。中には和風な感じのおかずが詰めあわされたかわいらしい弁当だった。

 

「お、おいしそうだな」

 

「ありがとうございます」

 

「しずくちゃん家はいつも和食なのか?」

 

「ああ、私は詳しくは知らないんですけど私の家結構由緒ある家系らしくて。だから結構和食が多いですね」

 

「へぇ。んじゃお嬢様なんだ」

 

「全然そんなことないですよ。どこにでもいる、普通の女の子です………そういえば瑠和先輩、その紙袋、なんなんですか?」

 

他愛ない話の途中でしずくは瑠和が持っていた紙袋に興味を抱いた。

 

「ん?ああ、そうだ忘れてた。菜………せつ菜から衣装の修繕頼まれてたんだ。今日の練習で使う予定だから、昼休みに直しちゃおうと思ってたんだった」

 

「あ、すいませんそんな大事なご用事があったのに…」

 

「気にすんなって。乗ったのは俺だし。放課後に間に合えばいいんだし。授業中とか、次の休み時間にゆっくり作るさ」

 

少しスケジュールは厳しくなってしまうが瑠和にとってはあまり気にすることでもない。今言ったやり方で今日は行こうと思っていたが、しずくは少し考えてお弁当からおかずを箸でつかむと瑠和に差し出した。

 

「………え?」

 

「これなら、作業しながら食べれますけど………どうでしょうか?」

 

つまり、しずくが食べさせれば瑠和は衣装の修繕をしながら食事ができるという提案だ。だが瑠和は当然というか、普通に遠慮する。

 

「え、いや、大丈夫だよ。そんな」

 

「大丈夫です。私は気にしませんから。はい、どうぞ」

 

「…………」

 

瑠和としては恥ずかしい限りなのだが、しずくはあくまで善意でやってくれているのは表情の色からわかった。最近の女子高生はこれくらいの距離感が普通なのだろうか。

 

瑠和はそんなことを思いながら不承不承ながらしずくの差し出したおかずを口にする。

 

「おいしいですか?」

 

「ああ、おいしいよ」

 

そういいながら瑠和は裁縫道具を取り出し、急いで衣装の修繕を始めた。恥ずかしいのでさっさと終わりにしたかったのだ。その様子を見ながらしずくはニコニコ笑っていた。

 

意図的になのか、偶発的になのか、少しずつ瑠和の日常にしずくが入り混じってきていた。

 

 

 

続く

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