Another Days-case of Shizuku-   作:瑠和

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最近本能的にミアが好きなんだなぁと気づく日々。Anotherdaysのミア編を作ろうか、新しい主人公でミアの話を書くか、悩んでます。


第三話 璃奈と、スクールアイドルと

スクールアイドル同好会にしずくが加わってからしばらくして、エマが加わりさらに一年生の中須かすみ、三年生の近江彼方がほぼ同時に入部した。それによって部員が5人以上になったことで虹ヶ咲スクールアイドル同好会は正式に同好会としてスタートした。

 

そして正式スタートした同好会は部室をもらい、今日はその第一回部活となった。

 

「というわけで、改めまして!部長として引っ張っていかせていただきます!優木せつ菜です!よろしくお願いします!」

 

せつ菜が全員の前で自己紹介する。

 

「あなたのかわいいはここにいる、中須かすみです!」

 

「スイスから来ましたエマ・ヴェルデです。よろしくお願いします」

 

「彼方ちゃんは近江彼方ちゃんで~す。よろしくね~」

 

「桜坂しずくです。演劇部と兼部ですが、よろしくお願いします」

 

「天王寺瑠和だ。サポーターとして頑張るよ」

 

とりあえず改めて全員で自己紹介をし、練習場所の確保がまだ終わってないので練習はまた別のタイミングでやることになった。軽い自己紹介と今後の予定を大まかに決めて、その日は解散となる。

 

全員が先にいなくなるのを見届け、せつ菜は一度、部室に戻って着替えようとした。せつ菜のすがたのまま帰るわけにもいかず、菜々の姿へ戻ろうとしたのだ。

 

「さて、ようやくここまで来ましたね………これで私もスクールアイドルとして…」

 

「あ、よかった!せつ菜さんまだいたんですね!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

着替えようとした瞬間にしずくが部室に入ってきた。

 

「ど、どうしたんですかしずくさん!」

 

「すいません、私としたことが忘れ物を。家が遠いから忘れ物すると大変なんですよ…………どうかしました?」

 

「いえ、忘れ物に気づけたのなら何よりです」

 

冷や汗を流しながらせつ菜はしずくを部屋に入れた。眼鏡一つかけただけでせつ菜は菜々にぐっと近づく。眼鏡をかける前でよかったとせつ菜は思った。

 

「…………せつ菜さん、ちょうど二人きりですし、少し話しておきたいことがあるんですが、よろしいでしょうか?」

 

「はい?何でしょう?」

 

急に改まったしずくに、何か重要な話なのかとせつ菜もいったん着替えようとしていた手を止めた。

 

「せつ菜さんは、どこを目指していますか?」

 

「………目指す……というのは、どういう意味ですか?」

 

「そのままの意味です。せつ菜さんはこのスクールアイドル同好会の部長として、虹ヶ咲学園のスクールアイドルをどこへ連れていきたいんですか?」

 

「どこへ………そうですね、とりあえずやはり目標は……ラブライブでしょうか。スクールアイドルといえばやはりラブライブを目指すのがセオリーかと」

 

その話をしたとたんしずくの目付きが変わる。

 

「…………スクールアイドルは今やかなり大きなコンテンツになっています。参加する学校は500をゆうに超えます。そんなアイドルサバイバルの中で私たちが勝ち残るには、どうすればいいとせつ菜さんは思いますか?」

 

せつ菜は少し硬直した。そんなこと考えたこともなかったからだ。確かにスクールアイドルはやりたいと思った。だがそれはやってみたいという漠然な理由が故だ。無論、とりあえずの目標であるラブライブに対して努力が億劫だとかそういう理由で考えたことがないわけでもない。

 

単純に何が必要か、そんな答えがあるとも思ってなかったからだ。

 

「………どうすればよいのでしょうか……すいません、始めたのは私なのに、あまり考えてなくて……」

 

「いえ、そこまで考える人の方が少ないと思いますよ。ですけど、だからこそラブライブを目指すなら、私たちのような始まったばかりの、おまけに同好会程度の弱小部が勝ち残るにはどうすればいいか考える必要はあると思います」

 

「確かに………そうですね」

 

しずくの話には妙に具体性があり説得力があった。せつ菜も確かにと思いながら今後どうするかを考えていると、しずくはせつ菜にゆっくり近づいていく。

 

「……これはあくまで持論ですが、ラブライブで勝ち残るのに必要なのは、チームが一つの色にまとまること………だと思います」

 

「色が……ですか?」

 

しずくは言葉をつづけながらどんどんせつ菜に迫っていく。徐々に迫ってくるしずくに対してせつ菜は少し恐怖心のようなものを覚え、後ずさりしてしまう。

 

「はい。そして、この同好会の部長はせつ菜さん、あなたです。あなたが目指す色を示し、導いていく……………」

 

とうとう壁まで追い込まれた。しずくはもう目の前にまで迫っている。せつ菜はさっきかいた冷や汗とは違う汗を流す。

 

そこでしずくは大きく後ろに下がっていつもの笑顔を見せた。

 

「べきかな、なんて思います♪。ごめんなさい。これだけは話しておきたくて。せっかく始まった夢ですから、少しだけでも、本気になりたくて。それじゃ、お邪魔しました」

 

しずくは笑いながら帰っていた。残されたせつ菜の心臓は少し早く鼓動している。しずくの言った、せっかく始まった夢と言うのはせつ菜だって同じだ。せつ菜の耳にしずくの言葉が木霊する。

 

「メンバーが一つの色に………」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ふ~」

 

ある日の昼休み。仲良くなったしずくと璃奈は一緒にお昼ご飯を食べていた。食事中しずくは肩のあたりを掴みながら小さなため息をつく。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ………スクールアイドルと演劇部の兼部や、長い登下校のせいか疲れているみたいで………」

 

「おうち、遠いの?」

 

「ええ、鎌倉から通っているので1時間以上はかかりますね。演劇部でたまに朝練習もあるんですけど、ちょっとさすがに疲れてしまって」

 

「そうなんだ………」

 

璃奈は少し考える。せっかく一人ぼっちだった自分を助けてくれた初めての友人だ。なにか助けになれることはないかと。

 

「私の家、大体お兄ちゃんと二人きりだし、家もそこそこ広いから………もしよかったら………朝練習の日だけでも、家泊まる?」

 

意外な言葉にしずくは目を丸くする。

 

「……いいんですか?」

 

「うん、お兄ちゃんがなんて言うかわからないけど………」

 

璃奈は普段の兄の姿を思い浮かべ、友人を泊めたいといった場合をシュミレーションしてみた。

 

「………多分、大丈夫」

 

「大丈夫なんだ……」

 

少なくとも兄はそこまで頭が固いわけではない。しずくという友達ができたといった時も喜んでくれたのだ。拒んだりはしないだろうと思った。

 

「いいんだ………じゃあ…………さっそく今日、泊まってもいい?なんて」

 

しずくは手帳をペラペラめくり、明日に朝練があるのを確認するとダメもとで璃奈に頼んでみた。璃奈は少し考え、瑠和に連絡してみる。すると一分も待たずに返事が返ってきた。

 

「いいって」

 

「いいんだ……」

 

 

 

―放課後―

 

 

 

瑠和は夕飯の材料を買ってスーパーを出る。しずくが泊まりに来ると聞き、せっかくの妹の友人が泊まりに来たのだ。もてなさないわけにはいかない。

 

しかし、あいにくにも買い物の前は降ってなかったはず雨が、瑠和が買い物を終える頃に降ってきていた。

 

「雨か……」

 

瑠和は折り畳み傘をさして雨の帰り道を進んでいく。家から行きつけのスーパーまで大した距離はないがもてなしのための料理の材料が詰まった買い物袋を下げながら帰るのはやや憂鬱だ。

 

「ただいま~」

 

ぱんぱんに膨らんだビニール袋を抱えた瑠和が帰ったが何も返事がない。

 

「璃奈……?しずく……?」

 

瑠和は買い物のせいでだいぶ遅れて帰ってきたのでまだ二人が帰ってないということはないと思った。耳を済ますと声が聞こえた。どうやら部屋にいるらしい。

 

「璃奈、しずくは一緒なのか?」

 

何の気もなしに、あるいは本当にしずくが来ているのかという疑問から璃奈の部屋を開けてみる。

 

「え」

 

「あ」

 

扉の先には、半裸のしずくがいた。上半身は裸で、下半身は下着のみのしずくを見て瑠和は思考が止まる。瑠和の思考が止まると同時にしずくの顔が見る見るうちに赤くなっていくのが見えた。

 

次の瞬間、耳をつんざくような悲鳴と同時に瑠和の目の前にしずくのスマホが迫る。

 

(うん、よけられないな)

 

瑠和の顔面にそこそこの痛み走った。

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!」

 

「いや、俺も普段通りと思ってノックしなかったのが悪かった」

 

瑠和は鼻血を拭きながら謝罪する。

 

どうやら急な雨に打たれ、璃奈としずくは全身くまなくびしょ濡れになったらしい。そしてシャワーを浴びてから璃奈の部屋で着替えていたのだが、璃奈の服が当然というかサイズが合わなかったのだ。どうしようか悩んでいたところに瑠和が帰ってきたといういきさつだ。

 

「でも、どうしよう。制服は明日にならないと乾きそうにないし……」

 

現在しずくは大きめのタオルで身体を隠している。

 

「ん~。父さんと母さんの服勝手に使うのもちょっとあれだし………しずくがよかったなんだが俺の寝間着貸そうか?ちょっとオーバーサイズだし。今日俺は学校のジャージで寝るからさ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

しずくは瑠和から寝間着を借り、着替える。瑠和がオーバーサイズだと言った通り、しずくの璃奈よりも大きな色々は問題なく入った。

 

しずくは来たパジャマを着てから不思議そうな顔をしている。

 

「……どうかしたか?」

 

「ああ、いえ………瑠和先輩のにおいがするなぁって」

 

「そりゃそうだろ……あ、いやだったか?」

 

「いえ、これで大丈夫です。ありがとうございます」

 

とりあえずしずくはその格好で一晩を過ごすこととなり、夕食にすることとなった。

 

瑠和は腕によりをかけて料理を作った。多少思うところがあるとはいえ璃奈の友人を拒否する理由はない。とにかくいまは璃奈の喜ぶ顔のためだけにがんばった。

 

「すごいです!これ全部瑠和先輩が作ったんですか!?」

 

しずくは食卓に並んだ様々な食事を見て目を輝かせる。璃奈もいつもみている食卓に比べかなり豪華な料理に表情は動いていないもののどこか輝いているように見えた。

 

「ああ。遠慮なく食べてくれ」

 

「いただきます」

 

食事は璃奈にもしずくにも好評だった。食事の最中、しずくは今日泊まりに来た理由を瑠和に伝えた。

 

瑠和は「いつでも泊まりに来るといい」と言った。改めて話してみると、しずくはとても良い子というか、育ちのよさは伝わってきた。

 

気になるところはあるが、彼女は悪い子じゃない。それを確認すると瑠和は少ししずくに対する警戒を解いた。

 

きっと、偶然に偶然が重なり、しずくとは深い縁ができたのだろう。瑠和はそう考えた。その日は眠るだけとなり、瑠和は先に自身の部屋に行った。

 

しずくと璃奈は璃奈の部屋でしばらく話をしていた。しずくは瑠和と数年前に会っていたらしいという話を璃奈にした。何か知ってないかと思ったのだ。

 

「じゃあ、お兄ちゃんと会ったのは数年ぶりなんだ」

 

「うん。私にその記憶はないんだけど………璃奈さんは何かしらない?」

 

「私……多分その頃お兄ちゃんと暮らしてないから…」

 

聞いてはいけない案件だったかと思い、しずくは申し訳なさそうな顔をした。

 

「ごめんなさい」

 

「気にしないで…………そういえば、最近お兄ちゃんの帰りが遅いんだけど………しずくちゃんはなにか知ってる?」

 

「聞いてない?今瑠和先輩はスクールアイドル同好会にいるんだよ?」

 

「スクール………アイドル…?」

 

聞きなれない単語に、璃奈は首をかしげる。

 

「うん」

 

「初めて聞いた。お兄ちゃんがアイドルやってるの?」

 

「ううん、瑠和さんはあくまでサポート。マネージャーっていえばわかりやすいかな?」

 

「そうだったんだ……………どうしてお兄ちゃんはその同好会に?」

 

「さぁ………理由はわからないけど、ともかく楽しそうだったよ」

 

「そうなんだ………しずくちゃんも………アイドル……やりたいの?」

 

「私?うん。私は………」

 

ふと、なぜ自分がスクールアイドルを始めたのかを考えた。いや、はっきりしてはいる。ただ、璃奈に説明するために自分の中で整理しようとしただけだ。

 

(昔から演劇が好きだった私が、あの日せつ菜さんのライブを見て、自分を表す表現方法の一つとしてスクールアイドルをやってみようと……)

 

「チガウデショ?」

 

耳元で声がした。とっさに振り替えるが、そこには誰もいなかった。

 

「どうしたの?」

 

急に振り返ったしずくをに璃奈が訪ねる。

 

「………ううん、何でもない。あ、私ね実は演劇が好きで…………」

 

璃奈としずくが楽しそうに話している中で、夜は更けていった。

 

 

 

―数日後―

 

 

 

「熱いとかじゃなくて!かすみんはもっとかわいいのがいいんです!!!」

 

それは必然のように起きた。

 

ここ最近のせつ菜の練習メニューは過激化した結果、部内の決裂が発生した。

 

その日はそれで解散になり、しずくは落ち込んだ表情で下校した。夕日が赤く染める道を歩いていると、前から璃奈が歩いてくるのが見えた。

 

「璃奈さん」

 

「しずくちゃん、どうしたの?」

 

「………なんでもないよ。璃奈さんこそどうしたの?」

 

「忘れ物しちゃって……………あのね、しずくちゃん、私………あれからいろいろ考えたんだけど……スクールアイドルやってみたい」

 

「……!」

 

しずくは言葉を失った。なんというタイミングだろう。きっと、璃奈がこんなことを言い出したのは自分が瑠和のことを話したからだ。そう思うと、罪悪感で押しつぶされそうになった。

 

「…………ごめんなさい!!」

 

しずくは璃奈の横を通り抜け、去っていった。

 

「しずくちゃん………?」

 

 

続く

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