Another Days-case of Shizuku-   作:瑠和

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少し短いです。
ようやく話が前に進む…。
璃奈ちゃんボードが初日い決定しましたね。璃奈の兄としてこれは買わねば。値段にもよるけど、二つ買って瑠和カラーにしようかな。


第六話 ライブと、勇気と

璃奈は公園を走っていた。練習中だが、やはりしずくや愛に比べれば遅くなってしまう。だが璃奈は今変わろうとしている。こんなことでめげることはない。

 

「………はぁ、はぁ…ん?」

 

走ってる道中、璃奈は何かを見つけて立ち止まる。

 

 

 

―集合場所―

 

 

 

「………で、拾ってきちゃったの?」

 

「……………うん」

 

璃奈の手には白い小さな子猫がいた。公園に捨てられていたのだ。

 

「うーん……………璃奈さんの家ってマンションだから多分ペット無理だよねぇ……うちにはオフィーリアがいるから気が合わないと難しいだろうし……愛さんの家はどうですか?」

 

「愛さんの家も飲食店だからなぁ……」

 

「でも、かわいそう……」

 

「………」

 

愛としずくが顔を見合わせているとそこに瑠和が来た。

 

「どうかしたのか?」

 

「あ、瑠和先輩。実は……」

 

しずくは璃奈の手元を指さす。

 

「猫………か」

 

「この子、捨てられてて」

 

普段何の色も見えない璃奈の表情からはこの子をどうにかしたいという意思が感じ取れた。瑠和は少し考える。

 

「………まぁ、うちじゃ無理だよなぁ。とりあえず…」

 

瑠和たちは子猫を学校に連れてきた。

 

「学校?」

 

「あそこじゃ結構危ないからな。海に落ちるかもしれないし、鳥に狙われるかもしれない。学校ならその危険は少ないし、毎日見に来れる」

 

「えーでも先生とかに見つかったらやばくない?」

 

「そこはうまくやるしかないさ。璃奈、この子に名前つけてやってくれ。できれば猫ってバレにくいやつ」

 

日常の中や世話鵜をする上で猫の名前が出れば存在がばれることもあり得る。なのでなるべく猫っぽくない名前をもとめた。

 

璃奈は猫をしばらく眺める。

 

「じゃあ、はんぺん」

 

我が妹ながらそのネーミングセンスはどうかと思うが、まぁ猫っぽくないなまえを求めたのは自身だということもありその名前で決定した。

 

「いいかはんぺん、学校の敷地から出るなよ?」

 

「みゃ」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

とりあえずその日はそれで解散となる。その帰り道、璃奈とは特になにも話すことをしなかったが、しばらく歩いていると璃奈がボソッと声を漏らす。

 

「私、スクールアイドル……ちゃんとやれるかな」

 

それを聞いたとき、俺の胸に何かが灯った気がした。

 

きっと、今日の練習で宮下やしずくに比べ、自分は劣っていると感じたのだろう。一応事実ではあるがそう思うのはあまりに早計だ。

 

これから伸ばしていけば延びる部分は山ほどあると言うのに。だが、思ってしまえばそこからマイナスに考えていくことは容易だ。早いうちに手を打たねばならない。

 

璃奈はやさしい子だ。そこらの人であれば無視するであろうちいさな命さえ救おうとする。

 

そんなやさしさを知るものは少ない。

 

璃奈が誰ともつながってないからだ。璃奈がつながるために始めたスクールアイドル。このまましずくもやめてしまえばもうそのつながりのチャンスすらなくなってしまう。

 

こんなにいい子に、これ以上嫌な思いはさせない。そのために、俺ができることは………

 

 

 

―翌日―

 

 

 

瑠和は早朝に虹ヶ咲学園の正門前で立っていた。待っている人物は無論しずくだ。しばらくするとしずくが登校してきた。

 

「おはようございます。瑠和先輩」

 

「………これを、君に」

 

瑠和は作曲をしたノートをしずくに渡した。

 

「完成したんですね!ありがとうございます!」

 

「…………しずく!」

 

瑠和は新しい曲が完成して喜んでいるしずくの手を取った。急に手を掴まれ、しずくは妙な悲鳴を上げる。

 

「ひゃい!?」

 

「………俺、作曲なんか自信ないし、この曲だって正直ちゃんとした曲かなんて自信ない………けど、俺の気持ちを届けたい相手がいるんだ!だからしずく!………たのむ」

 

瑠和はしずくの手を握りながら頭を垂れて頼み込む。絞り出すようなその声は切羽詰まっている瑠和の感情を表すのに十分すぎた。

 

急に重荷を背負わされたが、しずくは笑顔だった。

 

「わかりました。任せてください。瑠和さんのためにも、私の大好きのためにも」

 

「しずく…ありがとう」

 

しずくは瑠和に一礼してから校門をくぐった。その表情は、恍惚としていた。しずくはすぐに一人になれそうな場所に移動し、瑠和の作曲ノートを天にかざす。

 

「やった……やった!!ついに手に入れた……侑先輩でも他の誰でもない、瑠和先輩が作曲してくれた曲…っ!あはっ…あははは!璃奈さんも、彼方さんも果林さんもエマさんもせつ菜さんもミアさんも!!誰もこんな経験ない!アハハハハ!」

 

狂ったようにしずくは笑う。普段のおしとやかな態度なんて存在しない。その姿は、無邪気な子供のようにも、悪魔のようにも見えた。

 

 

 

ー放課後ー

 

 

 

「瑠和さん、璃奈さん、愛先輩。日曜日、ここに来てください」

 

放課後の部活中、練習を終えた瑠和と璃奈にしずくは日曜にジョイポリスに来るように伝えた。そこはよく近所の学校のスクールアイドルがライブを行う時なんかに使われる場所だった。

 

「ここで、ライブを行います」

 

「おお!しずくライブやるんだ!」

 

「すごい…」

 

「必ず満足していただけるステージにします。そう…………自分の気持ちを正直に伝えられるくらい」

 

しずくのその言葉に瑠和はピクリと反応する。ほかの二人にしてみればよくわからない比喩だったかもしれないが瑠和にはその言葉の意味がよく分かった。

 

「では……日曜日に」

 

それだけ伝え、しずくはその場を去った。

 

しずくは足早に公園から出ようと歩いていると背後から自身を呼ぶ声が聞こえ、振り返る。そこには見慣れた同級生がいた。

 

「しず子~!」

 

「かすみさん………」

 

「何してるのこんなとこで、演劇部は?」

 

しずくはかすみが同好会を復活させたいことを知っていた。しかし、それを一度演劇部が忙しいという理由で断っている。

 

しずくとしてはかすみに対して少しバツが悪く、あまり会いたい相手とは言えなかった。

 

「うん、ちょっとね…………かすみさんは何してたの?」

 

「なにって決まってるじゃん!スクールアイドル同好会再興のための部員集め!今日二人も先輩捕まえたんだから!」

 

「…………そうなんだ」

 

「そうだ!しず子もおいでよ!そうすればメンバー四人になって部の設立にもあと一歩だし、それに歩夢先輩にもかわいい指導が………」

 

そこまで話したとき、しずくの表情が急に強張った。

 

「…………ねぇ、かすみさんはなんでスクールアイドルを諦めないの?」

 

「え?そりゃかすみんの可愛いワンダーランドを……」

 

「かすみさんが先頭に立って、そうやって引っ張っていくのはいいけど………「それ」が望みじゃない人もいるんじゃないかな?その歩夢先輩は本当にかすみさんの思うかわいいを目指しているの?」

 

「…え」

 

「私は、私の目指したいスクールアイドルの姿がある。かすみさんもそうでしょう?だから、かすみさんと一緒には…………「今」のかすみさんとは一緒にやれない。ごめんなさい」

 

「………」

 

かすみは何も言わなかったいや、何も言えなかったが正しいのだろう。胸の中でどこか理解していたせつ菜との衝突の理由。それを直接言葉にされるのはそこそこ辛いものがあったのだろう。

 

しずくとしてもこれを言葉にするのは少しためらわれるものがあったが、今はかすみとの間よりも重要なことがある。

 

「もし、何か変わったらまた誘って?待ってるから」

 

しずくは帰っていく。一人残されたかすみは、いつものしずくとなにか違う空気に困惑し、それ以上にしずくに言われた言葉に胸を痛めていた。

 

 

 

―日曜日―

 

 

 

日曜日になった。三人は言われた通りジョイポリスのステージ前に来た。いつの間にか宣伝していたのか結構客も入っている。

 

「しずく…いつのまに」

 

『会場にお集まりの皆さん!本日はお越しいただきありがとうございます!』

 

しずくの影の努力に驚いていると、会場にしずくの声が響く。そして、ステージのスクリーンが開いてしずくが現れた。

 

『私は虹ヶ咲学園のスクールアイドル、桜坂しずくです!今日は、皆さんを夢の世界へ連れて行ってあげます!』

 

「…」

 

『今日私が歌う歌は、私の大事な親友のご兄弟が作り上げてくれた曲です。その方の勇気が、思いが、私をこのステージに立たせてくれました。だから、今度は私の番』

 

その言葉に、瑠和は一瞬反応する。

 

『このライブで、あの人に、皆さんに前に進む勇気を渡せたらと思います!』

 

しずくのその決意の言葉と同時に曲が流れだす。

 

「いつものように一人きり、汗まみれの稽古だって、もう辛くなんてないよ。あなたに出会って…♪」

 

しずくはゆっくりと唄い始める。それは、瑠和と出会ってからの自信を表す歌だった。瑠和は作曲のために歌詞は何度も、それはもう穴が開くほど見ているはずだ。しかし、改めて歌として聞くとえも言えぬ感覚を感じた。

 

「これまでの私にはなかった表現力が今、物語…第二章の始まり……静かに幕が上がる…♪」

 

(第二幕……)

 

これまでの自分になかった表現力…歌や演技を使ったこれまでのしずくになかった表現力という意味だろう。だが、それを得たのはしずくだけでない。立場は違えど同じ目的に向かって努力してきた瑠奈も同じだ。

 

そしてそれを使えば、新たな物語は幕が上がる。

 

「誰かを笑顔にできる人になりたい…でも一番はあなたを笑顔にしたい♪」

 

(俺の笑顔………俺の笑顔のために必要なのは……)

 

瑠和は隣でしずくのステージに夢中になっている璃奈を見た。

 

「あなたの理想のヒロイン……いつの日にかなれますように………アドリブが苦手な私を素敵なシナリオで導いて!繰り返し覚えたセリフも、きっと目を見ては言えないから……ずっとそばで、ただの後輩を演じさせてください……♪」

 

ライブが終わった。拍手喝さいがあたりを埋め尽くす。しずくは一礼し、ステージを掃けようとしたが、一瞬瑠和の方を向き、ウィンクした。

 

どうやら瑠和がしずくの歌から感じていたしずくのメッセージは瑠和が感じた通りなんだと思う。

 

瑠和はカバンからしずくにもらったぬいぐるみを取り出し、胸の前で握る。決意を固め、璃奈の方を向いた。璃奈も、瑠和がこちらを見ていることを気づく。

 

「お兄ちゃん?」

 

「…璃奈、俺はさ、ダメな兄ちゃんだよ。お前のことを考えずに父さんと母さんに反発して、お前を一人にした。だけど、璃奈を一人にしたこと…ホントは…ホントはずっと後悔してた!璃奈が表情を表に出せなくなったのは、俺のせいだ!でも、いまからでも、璃奈の助けになりたい…璃奈の失った時間を取り戻すための……。こんな、たよりがいのない情けない兄ちゃんだけど……璃奈のそばにいていいか?」

 

「お兄ちゃん…」

 

少しの間が開く。あたりの喧騒はまだ続いているのに関わらずそれは瑠和の耳には何も届いていない。返事がないのが怖い。璃奈からの返答がない時間はまだ数秒のはずなのに数時間にも感じられた。

 

「……私は、お兄ちゃんのそばにいたい。お兄ちゃんにそばにいてほしい」

 

まっすぐな、嘘偽りのない瞳で、言われた。表情の色が見えない璃奈からでもがはっきりわかるくらいに、心からの言葉だった。

 

「…………あ…ぁ………ありがとう…璃奈」

 

瑠和は璃奈の肩を掴み、涙ながらに、振り絞るように言った。

 

ようやく瑠和は勇気を出して、壁を乗り越えた。これからようやく瑠和と璃奈の新たな物語の第二章が始まるのだ。

 

その様子を、しずくはステージ端から見ていた。

 

「よかった。うまく行ったみたいですね」

 

瑠和と璃奈の関係が完全に修復されたであろうことにしずくは安堵する。

 

「…でも、これが終わりじゃない。ようやく、始まり」

 

安堵した笑顔から一変、しずくは無表情に変わり呟いた。

 

 

 

続く

 

 

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