Another Days-case of Shizuku-   作:瑠和

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1ヶ月ぶりくらいです。仕事が忙しくて死んでました。
ovaもう何回観たかわかりません。そして3週目彼方引けなかった…二週目の時はしずく含むazunaが3回でたのに…
可可ちゃん誕生日おめでとう


第八話 仲間と、やるせなさと

かすみに拒絶されてから数日がたった。瑠和たちはもうメンバー集めを目的とした行動をしなくなった。ただ、己が望む最高のステージをやるためだけに練習をしていた。

 

今日もいつも通り潮風公園で練習をしていたが、この日は来客があった。

 

「しずくちゃん」

 

「………エマさん」

 

ランニングトレーニング中のしずくの前に現れたのはエマと彼方、そしてもう一人見慣れない三年生だ。しずくはいったい何者だと思いながら前に出る。

 

「何か御用ですか?」

 

しずくの声のトーンは普段より少しとげとげしさがあった。

 

「これから、生徒会長に会いに行くの……私の親友の果林ちゃんがひょっとしたら生徒会長がせつ菜ちゃんじゃないかって…」

 

しずくは果林と呼ばれた先輩をちらりと見る。しずくの視線に気づいた果林は小さく微笑んだ。

 

「それで、会ってどうするんですか?」

 

「とにかく話を聞かないと、彼方ちゃんたちも何とも言えないからねぇ~」

 

「…………まぁ、いいんじゃないんですか?私は遠慮しておきます」

 

しずくは流れ出る汗をタオルでふき取りながら答えた。いやに冷たい態度に彼方とエマは少し動揺する。

 

「え……」

 

「私は私のステージをやるためにスクールアイドルをやるって瑠和さんと決めたんです。ですので、もう前の同好会には戻れません」

 

しずくの言葉にどうするか彼方が考えていると、エマが前に出た。

 

「そっか………もし、また気が変わったら、連絡して?待ってるから」

 

「……ええ」

 

短い会話が終わり、エマたちが去っていくとタイミングを見計らったようにランニングをしていた璃奈が現れた。

 

「しずくちゃん、今のって……」

 

「…見られちゃった?…………でも、大丈夫だよ。私は私のステージををやるためにスクールアイドルをやるんだから」

 

しずくは微笑む。その笑顔が本当か、演技なのか、璃奈にはわからなかった。

 

 

 

―翌日―

 

 

 

翌日の昼休み、教室で瑠和としずくは次のステージのための作詞をしている。そんな中、しずくのスマホが鳴った。見てみるとエマからの連絡だった。内容は「もう一度あって話がしたい」とのこと。

 

しずくはため息をつく。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、何でもありません」

 

「………しずく、俺は、しずくが幸せならいいんだけど……………そのために、誰かがあんまりいい思いをしないのは……どうかなって…………」

 

瑠和は目を逸らしながらしずくに言った。しずくは少し顔をしかめた。

 

「………璃奈さんから、なにか聞きましたか?」

 

瑠和は小さくうなずく。しずくは再び小さくため息をつき、作詞の手を止めた。

 

「私は、私のステージをやるために、瑠和さんと、璃奈さんと一緒にいるんです。みんなで一緒にとか、そういうのを求めているわけではないんです」

 

「でも、せつ菜に関わることなら、しずくもやっぱりいたほうがいい!せつ菜がどう思ってかなんてわからないけど、やっぱりもう一度みんなで話し合うべきだ!せつ菜だって!きっと何か考えがあって…」

 

「また、せつ菜先輩のことですか?」

 

「………え」

 

「口を開けばせつ菜先輩せつ菜先輩せつ菜先輩せつ菜先輩…………私や璃奈さんよりせつ菜先輩の方が大事なんですか!?」

 

「いや、違うんだしずく!そういう意味じゃ…」

 

「だったら!せつ菜さんの名前なんか出さないください!!そんなにふらふら別の人ばっかり気にしてから!また璃奈さんとすれ違ってしまいますよ!?」

 

「……っ!」

 

正論だ。しずくの激昂もわからないでもない。やっと、璃奈とのすれ違いを解消して一つの目標に進んでいいるのに、またふらついているのだ。

 

「…………そう…だよな。ごめん」

 

「………ごめんなさい。取り乱しました」

 

その日はあまり会話もせずに解散となった。だが、瑠和の心にわだかまりは残ったままだった。

 

「俺は……」

 

放課後、今日はしずくが演劇部の日だった。璃奈もなれない練習で結構疲れが出ていたので、この日は思い切って休みになった。

 

璃奈は先に家に帰り、瑠和は海浜公園で黄昏ている。黄昏ている理由はただ一つ、しずくを想う気持ちと、同好会、そしてせつ菜を想う気持ち、その全部が瑠和の中でぐちゃぐちゃと渦巻いている。

 

「…………くそっ」

 

そんな中、瑠和の背後に誰かがやってきた。

 

「瑠和さん?」

 

聞き覚えのある声に、瑠和は振り向く。振り向いた先にいたのは一年生の女子。ショートの髪型に白いリボンが特徴的で、あまり活発でない表情。

 

三船栞子だ。

 

「…………栞子!?お前………なんでここに…」

 

「何でもなにも、私が虹ヶ咲学園に入学したからですが」

 

「…………」

 

「勘違いしないでくださいね?私がここに来たのは、私のやりたいことができると思ったからです。あなたは関係ありません」

 

「………そう…か」

 

 

 

―数年前―

 

 

 

その少女の感情の映らない瞳は、どこか妹に似ていた。

 

そのせいか、自然と惹かれていった。

 

告白し、承諾され、付き合う様になってその少女も俺と同じで人の表情から色が見えるという感覚の持ち主だということがわかった。

 

同じ感性の持ち主同士、話も合い。よりその少女に惹かれていった。

 

それから、一年ほど付き合って卒業の時。俺は高校に行くためにずっと遠ざけていた実家に帰ることになった。でも俺は彼女から離れたくなかった。

 

卒業式の後、俺は彼女と少し話した。

 

「なぁ、俺はお前と一緒にいたい………こんなに誰かと一緒にいたいって思ったの初めてなんだ……」

 

想いを伝えた。伝えたところでどうにもできないとわかっていながら、伝えずにはいられなかった。

 

「……私が思うに、あなたに必要なのは私じゃなく妹さんなんだと思います。きっとあなたは………私を通して妹さんを見ているんじゃないんですか?」

 

「そんな…俺は!」

 

「いいんです。私もあなたが好きです。初めて会った時のあなたはどこか魂の抜けた感じでした。でも、私と一緒にいたことであなたはずいぶん明るくなりました。あなたのためになれたのならよかった。さようなら」

 

 

 

―現在―

 

 

 

もう二年も前の話だが、瑠和と栞子は付き合っていた。そんな元カノが突然自分の前に現れた。しかも同じ学校に通って。

 

「随分落ち込んでいる様子ですが、どうかなさいましたか?」

 

「………気にすんな。栞子には関係ない」

 

栞子はそれを聞くと、少し考えて瑠和の隣に座り込んだ。

 

「あなたと私が付き合っていたのはもう前の話です。ですが、旧友として心配するのは普通のことでありませんか?」

 

「…………」

 

瑠和は栞子にこれまであったことを話した。自身の感性のせいで瑠和はあまり他人に心を開くことはなかった。ここまで事情を話せたのは付き合っていた過去がある栞子だからこそと言えた。

 

「…………そうですか」

 

「どうすりゃいいかわからなくてさ………。そりゃ、しずくのためには色々してやりたいけど………せつ菜を見捨てることもできないんだ」

 

「…そうですね」

 

少しの間、沈黙が流れる。しばらく波音だけが響く中、瑠和の頬にいきなり冷たいものが押し当てられた。

 

「うおわ!」

 

栞子がカバンから先ほど自販機で買っていた飲み物を押し当てたのだ。栞子の急な行動に瑠和は困惑する。

 

「??」

 

「………あなたらしくないですよ」

 

栞子はそう言って微笑んだ。

 

「え?」

 

「どんな壁があっても、愚直に、真正面から立ち向かっていくのが私の知っている天王寺瑠和さんです。だらだら悩むなんて、あなたらしくないです」

 

「………だけど」

 

「あなたには人助けの適性があります。自分を信じてください」

 

栞子は瑠和に押し付けた飲み物を渡し、その場を後にした。

 

栞子はそのまま海浜公園を去ろうとしたが、近くからただならぬ気配を感じ、立ち止まる。顔を上げると階段を上がった先に一人の虹ヶ咲学園の生徒が立っているのが見えた。

 

しずくだった。しずくの視線は明らかに栞子に向けられている。栞子はしずくとは初対面だが何かこちらに用事があるのかと思った。

 

「………あなたは」

 

「…………あの、失礼ですけど瑠和先輩とはどんな関係ですか?」

 

「…………」

 

栞子は「そういうことか」と思った。さっき聞いた瑠和が言っていた「しずく」という少女は彼女のことだと察した。

 

しずくの表情からはとある色が見えていた。栞子は階段を上がり始める。

 

栞子はしずくの横を通り過ぎようとしたとき、口を開いた。

 

「ご心配なく。私と瑠和さんの間には何もありません。昔の馴染みで少しだけ、激励の言葉を送っただけです」

 

「………」

 

栞子はそれだけ伝えると階段を上りきって帰路に就いた。その場に残ったしずくは拳を握った。

 

「その激励が……余計なんですよ…っ!」

 

 

 

―天王寺家―

 

 

 

この日、しずくは瑠和の家に泊まりに来ていた。急遽来たいという話になったが瑠和も璃奈も快く承諾した。

 

「すいません何度も何度も」

 

「いや、食事はみんなで食べた方が美味しいからな。それに、俺もしずくに話があったからちょうどいい」

 

「……そうですか」

 

瑠和としずくと璃奈は共に夕食を食べ、璃奈は風呂へ行った。

 

居間にはしずくと瑠和の二人だけとなった。璃奈がいる間は話せない内容を話すためだ。

 

「………で、お話って何ですか?」

 

「…………ごめん、しずく。やっぱり俺は、せつ菜のところに行く」

 

「……」

 

しずくは黙ったままだ。しずくの反応を見ながら瑠和は続ける。

 

「俺は、しずくのそばにいる。だけど、こんな、もやもやした気持ちでしずくを応援しちゃいけない………そう思うんだ。だから………その……ごめん」

 

「まぁ、そういう話だと思っていました」

 

「…」

 

しずくは少し俯いた。瑠和はしずくの反応をうかがう。少ししてしずくは顔を上げ、笑顔を見せた。

 

「まぁ瑠和さんはそういう人ですものね。でも、すいません、少しだけ考える時間をいただけますか?できるだけ前向きな回答をさせていただきますので」

 

それが偽りの笑顔であるということは瑠和にはわかりきっていた。だけど、せつ菜のことを放っておけないのも事実だった。

 

そこに風呂から上がった璃奈が来た。

 

「あ、ちょうど璃奈さんも上がりましたし、私もお風呂いただいちゃいますね」

 

「ああ………」

 

そういってしずくは出ていった。残された璃奈は瑠和の方を見る。

 

「なにかあった?」

 

「いいや、何でも」

 

「……?」

 

璃奈は頭に「?」を浮かべながらも冷蔵庫からドリンクを取り出して飲んだ。瑠和は少し悩みながらスマホを取り出し、エマたちに連絡を入れようか悩む。

 

「なぁ、璃奈。この間言ってた同好会のどうこうって…エマさんたち以外に誰かいたのか?」

 

「…………詳しくは……わからない……でも、この間学校で…………まだ…見たことない人が………」

 

「どういう人たちだった?」

 

「………………確か…………ピンク色の髪に……………お団子の…………人と……黒髪で…………………毛先だけ……………緑の………ツインテー………ルの…」

 

瑠和が悩みながら璃奈の話を聞いていると、「ボフッ」という少し大きな音がした。

 

「璃奈?」

 

音のした方を見ると、璃奈がソファに倒れこみ、寝息をたてていた。

 

「………璃奈?」

 

「…」

 

軽く揺すってみるが璃奈は無反応だった。疲れているのだろうと思い、瑠和は璃奈を抱えて璃奈の部屋に運ぶ。いくら高校生とはいえ璃奈は結構小柄で、瑠和でもまだ軽々運べた。

 

璃奈を部屋に運ぶととりあえず瑠和は宿題でも済ませておこうと自身の部屋に向かう。そして、勉強机に向かった。

 

瑠和が宿題を初めてしばらく経っただろうか。少しずつ集中力が途切れてきたので、少し休憩でもしようかと思った。飲み物を取りに行くために椅子を回転させた瞬間、瑠和は動きを止めた。

 

「………え」

 

振り向いた先にいたのは、しずくだった。

 

風呂上がりで体は所々湿っているし、髪も乾かしていない様子だ。そしてなにより、その格好に目が行く。しずくは、全裸にタオルを巻いただけの格好で瑠和の部屋にいた。

 

「なんで…ここに」

 

恥ずかしがるとか慌てるとかそういう次元を越えていた。それよりも先に、なぜという感情が優先された。

 

もしかしたら混乱しているせいかもしれないが、いまはそんなこと問題ではない。

 

「なんで…………理由がいりますか?」

 

しずくは窓の外を眺めながら瑠和に歩み寄る。

 

瑠和は部屋の隅にある机に座っている。後退することはできず、椅子にめり込むようにのけぞることしかできなかった。

 

「………」

 

「…どういう」

 

刹那、瑠和の唇はしずくに奪われた。瑠和はすぐさましずくを引き離そうとしたがしずくは瑠和の服をがっちり掴んでいるせいで引き離せなかった。

 

少しの間瑠和は抵抗したが、引き離せないことが分かると抵抗を諦めた。瑠和の抵抗がなくなったことを感じると、しずくは瑠和の膝の上に乗った。

 

「ぷぁ………」

 

月明かりが、二人の唇をつなぐように糸を引いた唾液を照らす。タオル越しに浮かぶ身体のラインから、しずくが下着をつけていないことはすぐにわかった。

 

「しずく……」

 

「私がここにいるのは、最初からずっと、同じ目的です」

 

しずくはタオルに手をかけ、外そうとした。瑠和はその手を止める。

 

「しずく………待って、待ってくれ」

 

「もう、待ちくたびれました」

 

タオルが床に落ちた。しずくのきれいな肌と、美しい身体があらわになる。

 

視線を外すべきだ。頭ではわかっているが身体が言うことを聞かない。心臓の鼓動がうるさい。瑠和は両手を握りしめる。

 

「先輩……………好きにして、いいんですよ?いいえ、好きにしてください。先輩がしたいように…」

 

しずくは瑠和の握りしめられた手を掴み、自身の胸に運んでいく。

 

様々な思いが瑠和の中にめぐる。瑠奈だって健全な高校生だ。こんな状況に興奮しないわけがない。

 

しかし、瑠和はしずくの胸に手が届く直前にしずくの手を振り払った。

 

「瑠和先輩?」

 

「…………しずく………ちゃん…。やっぱこういうのはよくないよ…」

 

「……私には、魅力はありませんか?」

 

「俺だって……男だから…。そういうこと、したくないわけじゃない…でも、まだしずくも俺も高校生なんだから………それに、順序ってあるだろ…」

 

全うなことを言った。当然本心ではない。出来ることならしずくの身体を味わいたいという思いも当然あった。

 

だが、いまここで欲望に溺れてはいけない。そんな気がした。瑠和の言葉を聞いたしずくはうつむく。

 

「…………………………たら………」

 

「?」

 

「だったら!!!せつ菜さんのところに行くなんて言わないでください!!!!!」

 

しずくは目に涙を溜めて言った。しずくの顔からは本音を叫んでいる色が見えた。瑠和は驚くと同時に自らの行動を悔いた。

 

こんなことをするくらい、しずくは追い詰められていたことを瑠和は気づけていなかったこと。自分の気持ちばかり優先して

 

「しずく…」

 

「怖いんです………皆さんのところに行かせてしまえば、瑠和先輩は、そばにいてくれるのに………私を見てくれていない…そんな未来が見えてしまって……」

 

しずくは両手で顔を覆った。

 

「………」

 

瑠和はしずくの身体から目を逸らすようにしずくを抱きしめた。

 

「ごめん…………」

 

それは、誰に対しての謝罪だったのか。しずくはもちろんだが一番意味合いが大きかったのはおそらく自身を激昂してくれた栞子、そしてせつ菜にだろう。

 

だけど、目の前で泣いている女の子を放っておけるほど瑠和は無神経にもなれなかった。

 

「…………もう、せつ菜のところにはいくなんて言わない。だから、もうこんなことやめよう」

 

「………だったら、せめて、今日だけでも、一緒に寝てくれませんか?」

 

「……いいよ。だから、早く服着て…」

 

しずくは服を着た。その姿を見届けると瑠和はしずくと一緒に布団に入る。しずくは瑠和と一緒の布団に入ると、涙を隠すように瑠和の胸に顔を埋める。

 

「瑠和さんの匂い………安心します」

 

瑠和はしずくの髪を撫でる。なんだかこうしていると兄妹の関係の様だ。だが、兄妹でない以上、その関係の在り方は決まっている。

 

まだお互い口にしていない言葉を伝えなければならない。

 

「……………なぁ、しずく………お前は、俺のことが…」

 

「好きじゃない殿方に、こんなことすると思いますか?」

 

「…」

 

わかりきっていた回答だ。

 

「小さいころに会って、再会できて、妹さんと仲良くなったと思ったらそのお兄さんが瑠和さんで、夢でも会って…………きっとこれって運命なんだって……」

 

「…」

 

「瑠和さんは、私のこと………お嫌いですか?」

 

「………まさか」

 

瑠和はしずくを抱きしめる。嫌いではない。それは事実だ。

 

しかし、恋人として見れるのか聞かれたら………。

 

瑠和はそれ以上考えるのをやめた。誰かを悲しませるのはもうやめにしたかった。そのためにこの眼があるわけでもない。

 

同好会は侑たちが動いてくれている。そのことを信じて目の前の傷つけたくない存在を抱きしめる。瑠和はしずくとともにまどろみに落ちていった。

 

 

続く

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