汎用人型ロボットと色ボケのじゃロリ聖剣 作:無機物×無機物
『人工島ミライ島の上空に降り注いだ流星群』
今年で建造10周年となる人工島、ミライ島の上空40kmに突如として流星群を確認しました。流星群は地表に衝突する前に消滅し、現在アイランドパトロールにより調査が行われています。
次のニュースは、絶滅したとされるニホンオオカミがミライ島で──
>──セットアップ中...[■■■□□□□□□□]30%
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>──セットアップ中...[■■■■■■■■□□]80%
>──繝ッ繝シ繝九Φ繧ー:E1002 譛ェ遏・縺ョ險? 隱槭′菴ソ逕ィ縺輔l縺ヲ縺? ∪縺吶?
>── セットアップ中...[■■■■■■■■■■]100%
──雨音がさんざめく鋼の荒地。曇天の下に広がるスクラップヤードの真ん中には、錆ひとつない白銀の諸刃が突き刺ささっている。
「……まさかこんな人気のない場所に墜ちるとはの」
異様な光景はそれだけに止まらない。
その柄頭の上に立つ者が居た。常人にはあり得ない奇跡の様なバランスで立つその者の見た目は、長い銀髪の少年とも少女とも取れる出立ちだった。眉の上で手を傘にして周囲を見回すが、剥げた塗装のまだら模様と鈍色が作るパターンが広がるだけ。
彼は、独り言ちる。
「この身が朽ちる事は無くとも、甚だ不快」
かの者の心境は不快と焦り。
鋼とは自らの
「このままでは、魔王の力が野放しに──」
その声を聞く者は果たして居たか。どこからか何かが崩れる音がした。
>──ようこそ、ミライ島へ。
「──誰じゃ!」
剣に歩み寄る片腕首無しの人型。幽鬼かと睨む彼の目には、無機質そのものな声色で手を振る姿が映る。
>──私に名前はありません。
スクラップヤードに転がる無数の屍の様な雨晒しの
彼は今に朽ち果てそうなその姿を見て、こう思った。痛ましいと。
「痛みは、無いのか?」
>──その様な機能はありません。
「頭と左腕はどうしたのじゃ?」
>──
鉄の人形は頭があったであろう位置の前で手を左右に振る。どうにも頼りにならないそれを前に、彼はため息を吐きながら柄頭を飛び降りた。
「貴様、無い無い尽くしではないか」
>──1万2000パーツはここにあります。
「部品数で語っとらんわ! それなら我は5パーツでしかない──まて、何故会話が通じておる?」
違和の芽生えは一瞬。
知らないのに、分かる。
つらつらと並ぶ言語の数々は、よくよく聞けば彼の知らない言語であった。だが頭は一人手にに働き意味を解く。
「翻訳魔法、ではないな。魔力の喪失感が無い」
>──あなたの使用言語は日本語です。
「……何が何やら」
今の状況を理解するのに苦心していた彼はついに、理解を諦めた。自身も目の前の人形も何も分からないと来れば、もはや手詰まりだからだ。
思考を切り替え、彼は目的の達成に重きを置く事とした。だがその事情は信頼出来る者にしか話す事は出来ないだろう。正確には、自身を信用する者、と言えるか。
「もう余計な事を考えるのはやめじゃ。そこの、我を引き抜け」
とにかく彼は、目の前の人形に何か言う気は無かった。信用が無い訳ではない、そもそもそれを測れる程のやり取りも無い訳で。
ただ、彼には物の寿命が見えるのである。目の前の人形の寿命は、今に尽きかけていた。
「我の本身はあの剣じゃ。アレを抜き、人里へ持って行け」
>──分かりました。
ならば、
──本来ならば、汎用人型ロボットは使用目的に合わせた遵法(コンプライアンス)プログラムがインストールされてから使用される。これは、六法全書を全て記憶する事によりメモリ容量が圧迫される事と、爆発的に増加する判断基準により自縄自縛となる事を防ぐ為である。
故に、それをインストールしていなければ鉄人形は起動しない。単純に危険であるからだ。
>──傷は付きませんか。
「構うな、やれい」
だがこれはこうして起動し、今、残された右腕を剣の柄に掛けている。
彼は知る由もなく、この鉄人形もそれを警告する意思はない。
そして、渾身の力でもって、白銀の刀身が引き抜かれようとして。
止まる。
「抜け──ておらんではないか!」
>──各部アクチュエーター出力低下。バッテリーの交換、モーターの交換が必要です。
思わず叫んだ彼だが、至る所の関節から火花と煙を蒸すそれを見て、額を抑えた。
(寿命か……我の魔法を使えば伸ばせる。が、この世界に魔力はまるで感じられん。使えば我の刀身に蓄えられた勇者の魔力が削られる。そうなれば魔王の再封印も儘ならぬ)
>──申し訳、ありませ、ん。
顔もなければ声色も変わらない。ただ電圧低下によりトーンダウンするその電子音に、彼は奇妙な感覚を覚えていた。
自我を持って話す物品など、かつて彼が居た世界にはごく僅かでしかなかった為初めての感覚だった。
仲間、否、同族。人に造られ、人に従い、人を守る定めを持って生まれた物。
未熟だった頃、創造物として命令を果たせぬ悔しさを知る彼は、今ここで何も果たせず朽ち行くそれを見て、何を思っただろうか。
『──困った人が居たら、助ける。難しい事は後で考える、今は今しかないから!』
ふと、彼の脳裏を過ぎるのは百年前の言葉。
「……ええい、何を悩んでおる我は! 勇者も常々こう言っていたであろうに!」
彼は魔法を行使する。銀色の髪が風に舞う様に踊り輝く。
一瞬の事だ。
だがそれは見た、ストロボライトの様に一瞬間現れた銀の魔法陣を。
──更なる閃光。
それと同時に、鉄人形に空から雷が落ちた。
天の怒りではない、祝福だ。
>──バッテリー充電完了。
光が消え、再び現れた鉄人形の姿は様変わりしていた。
弱り切ったバッテリーが回復した事で、その全身の輪郭をなぞる様に伸びている空色のライトが輝きを取り戻す。
>──モーター損耗率0%
そのボディは、彼の髪にも似た銀色に鈍色の混じるカラーリングに。
手足は同様のカラーリングに加え一回り大きく頑丈に。しかし、片腕は依然無いままだった。
そして──
>──メインカメラに接続...完了。
その頭部は、かつて勇者が身に付けていたフルフェイスヘルメットを模した物が据えられていた。
(っ……これは、存外恥ずかしいの。まだ未練があったとは)
幾つかのスリットが空いた頭部を向けられた彼は、頭を抑え蹲る。恥ずかしさと懐かしさが去来していた。初心な餓鬼かと、己の頭を叩いている。
>──この
そして、彼の本体は鉄人形の右手に収まっていた。鉄人形は質問する。今自分が立っている場所が、まるでスコップで掘り出した砂地の様に滑らかなクレーターとなっている事について。
彼は顔の熱を払い、それに肯首する。
「我は貴様の構造など知らんからな。分析と材料の確保に使った」
>──そうですか。
「共食いなどさせたのは謝ろう、だがこれは──」
「ありがとうございます」
すると、聞こえたのはまるで人間と遜色ない声。彼は目を見開く。
‘「音声ソフトを、
「その声は、いや、何でもない」
紛れ込んでいた不明なデータを取り込んだ鉄人形は、少しだけ流暢な言葉を使う。彼は、余計に恥ずかしくなって目を逸らす。
(我の馬鹿馬鹿! 未練タラタラなんてレベルではないぞ! 穴があったら我を埋めてくれぇ!)
もはや何も言うまい。彼は何も言わず、鉄人形も何も聞かなかった。
鉄人形は刀身を隠す為、スクラップヤードに放置された廃材の茶色いテントを借り、その身ごと隠すマントとした。ボロボロだが、雨を凌ぐ事はまだ出来るだろう。
「あなたの目的は?」
「──ああ、ここまで来たからには語ろう、我がここに居る理由と、これから果たすべき使命について」
2人は歩き出す。
雲間から、少しだけ光が差していた。
一言コメント:彼、とは書いてるけど中性感出したいだけで性別は普通に女の子。