鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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新機能、新たな犠牲者

 侵入した兵士たちの末路を見た俺。

 ルードたちもいたしあまり心配していなかったが、それでも無事に終わり一安心、といったところか。

 

「……やれやれ、うん?」

 

 すべて終わった、と俺はポイントを確認するためモニターから目を離したのだが、いつの間にかポイント画面についていた侵入者の有無を表示するランプがまだ点灯している。

 

「まだ侵入者がいるのか……?」

 

 最初、確認した時は確実に五人しかいなかったのだが……。

 そう思って、俺は侵入者が存在する地点を走査する。するとそこは先ほどストーンゴーレムが侵入者を仕留めたはずの地点であり――。

 

「どういう……。うん?」

 

 そこで俺はもう一度侵入者を確認する。するとかの兵士。まだ、微かに胸が上下している。息をしていたのだ。

 仕留め損なったのか……? いや、違うな。これは――。

 

「敢えて、手加減したのか?」

 

 よく見れば兵士を殴ったはずのゴーレムの腕にはなにも付着していない。それこそゴーレムの膂力なら、兵士の頭など石榴のように砕けていてもおかしくないのだが……。

 

「……ふぅ、これは怒るべきか。それとも、()()()べきか」

 

 最初、俺は情報を得るため兵士のうち一人、二人程度生け捕りにしようか、と考えていた。しかし、生け捕りにするとなると普通に殺すよりも余計な労力がかかる。まだ戦力が整っていない状況でそれを行うのは、流石に危険だと判断した俺は敢えて指示しなかったのだが……。

 

「あのゴーレム、俺の意を汲んだか?」

 

 あの時、俺はゴーレムを過小評価していた。その時はすぐに頭を下げたが、やつはそれだけでは納得できなかったのかもしれない。だから――。

 

「敢えて行動することで、自身の有用性を示したか? 本当にそうなら、やってくれる……」

 

 ある意味、俺に対する当て付けだが……。しかし、侮ったのは俺だ。そのことで文句は言えまい。

 ただでさえ、あのゴーレムに狭量である、と示してしまったのだ。これ以上、無様をさらすのは今後の活動にも支障をきたす可能性がある。

 ならば、俺が出来ることは――。

 

 俺は、ストーンゴーレム相手に通信を送る。

 

「……よくやってくれた。その捕虜をつれてきてくれ、頼むぞ」

 

 やつは確かに功績を上げた。ならそれを称賛すべきだ。上に立つものとして組織を運営するため、信賞必罰は何よりも重要だからな。

 俺の通信に、ゴーレムは画面越しに腕をつき出すと――。

 

「……はっはははは! そうか、そうかっ!」

 

 親指を突き立て、サムズアップする。なかなか粋なゴーレムなことだ。

 後はあいつらがこちらに戻ってくるまで、今後のことを考えておくか。

 

 

 

 

 

 

 そうしてゴーレムたちを待っていた俺だが、その間に、ポイントのなかにちょっとした面白い機能を見つけた。

 

「これは……。少し、割高だが使えるかもなぁ」

 

 まったく、笑いが抑えきれなくなりそうだ。

 そんな俺の耳にナオの報告が届く。

 

「ルードたちが帰還しました。また、捕虜もルードが連れています」

「うん、ルードが……?」

「はい、こちらの扉はゴーレムが潜るには少し小さいかと」

「あぁ……」

 

 ……そこまで考えてなかったな。今後、そちらの拡張も検討しておくか。それはそれとして。

 

「マスター、連れてきやした」

「ご苦労」

 

 俺はルードが放り投げた捕虜。兵士をまじまじと確認する。こいつは間違いなく男だな。なら、()()()だな。試してみるか。

 

 この確認した新機能。選択した個体の、()()を変更する機能を。

 

「では、やるか」

 

 俺は捕虜を選択して開始のボタンを押す。すると効果はすぐに現れ始め――。

 

「ほう、こうなるのか……」

 

 いかつい、角張った体躯の兵士の身体が丸みを帯びはじめ、腰は細く、胸が少し苦しそうに――。

 

「ぐぅっ……。なん、だ――」

「ようやくお目覚めか」

 

 ここまできて、ようやくお目覚めのようだ。だが、もう色々と手遅れな訳だが……。

 もともと兵士の姿は30代のいかつい、強面の男だったのが今は10代後半から20代前半の、金髪ロングヘアーの美女となっている。

 もはや、もとの面影などどこにもないな。

 

「おれ、は……。このこえ……?」

 

 まだ意識はもうろうとしているらしい。そして、自身の変化にも気付いていないようだ。ここまでくると哀れだな。

 

「やぁ、気分はどうかな侵入者」

「しん、にゅうしゃ……。――!」

 

 俺に侵入者と呼ばれて、ようやく意識がはっきりとしてきたようだ。顔は青ざめ、小刻みに震えている。まぁ、それも仕方あるまい? なにせ、先ほどまで殺されかけてたんだからなぁ。……もっとも、あのまま死んでいた方がましだったろうが。

 

「俺は、どうして……? 声が――! 俺に何をしたんだ!」

 

 そこでようやく自身の異変に気付いたようだ。そうだよなぁ、そんなソプラノボイス。男がそうそう発せられる訳ないものなぁ?

 

「はっははは、女として生まれ変わった気分はどうだ?」

「女だと……。どういう――、それよりも、お前は何も――!」

 

 そこで女となった兵士の声は途切れる。ルードのやつに殴られたからだ。

 やれやれ、忠誠心が高すぎるのも考えものか?

 

「あんたごときがマスターになんて口をきいてんですかねぇ……!」

「やめろ、ルード」

「しかし……」

 

 俺たちが問答しているのを見て――さっきルードに殴られた時、口が切れたのだろう――口から血を流している兵士が青い顔をして呟く。

 

「……ダンジョン、マスター。そんな……」

 

 兵士の絶望しきった顔を見て、俺はにやり、と笑いつつ彼女の呟きに同意してやる。

 

「そうだ、俺はこのダンジョンのダンジョンマスター。運が悪かったな、いや、良かったのか。()()殺されていないんだから」

 

 それで兵士は現状を正しく認識できたのだろう。ガタガタ震えながら命乞いする。

 

「た、助けてくれっ! い、命だけは――!」

「そう心配しなくとも助けてやるとも――」

 

 俺の命()助けてやる宣言に、少しだけ緊張がほぐれた兵士。しかし、その考えは甘いな。

 

「――ただし、それは貴様しだいだ」

「な、なにをすれば良いん――ですか?」

 

 俺にいつもの口調で話したらまずい、と気付いたのだろう。兵士は急におとなしい口調になった。

 そのことに俺は吹き出しそうになりながら、やつへ語りかける。

 

「……っ、なぁに簡単だ。お前が知ること、すべて話せ。そうしたら命は助けてやる」

「……そ、その程度ならなんなりと――!」

 

 そうして、兵士は助かりたい一心でぺらぺらと、あらゆることについて話し出す。

 それを俺はナオに記録させながら笑みを浮かべていた。

 

 

 そしてしばらくして、すべて話し終わったのだろう。兵士は卑屈な笑みを浮かべて、俺を上目使いにみてくる。

 

「へ、へへ……。こ、これが俺の知るすべてです。だから――」

「ほう、そうか。ご苦労」

 

 俺は彼女によく見えるように笑みを浮かべる。その笑みにつられ、兵士もまた可愛らしい笑みを浮かべ――。

 

「約束だ、命だけは助けてやる。ルード」

「はい、どうしやしょう?」

「連れていけ、()()()()()()()()()?」

「えぇ、もちろんでさぁ……。ほら、こいっ!」

「えっ、え……!」

 

 ルードに引き擦られることで目を白黒される兵士。その目は話が違う、と抗議しているように見えた。

 なに、ちゃんと命は助けるさ。()()()()()()()()()()()

 

 さてさて、どうなることやら。一応確認しておくかな?

 俺はナオにモニターを起動させると、先ほどの兵士が連れられた場所。()()()()()()()()を表示させる。

 

『な、なんだ……! お、俺は男なんだぞ! や、やめ――』

 

 そこには既にゴブリンに襲われている女体化した兵士の姿が――。

 少なくとも、ゴブリンどもの食指には叶ったらしい。

 後は、あの兵士が仔を成せるかどうか。それを楽しみにしておくか。

 そう思いながら、最後に兵士の悲鳴を聞きつつ俺は映像を切断するのだった。

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