鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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予定外の侵入者、公国の姫騎士

 ルードの回答に満足した俺は頷くと、そのまま次の話へ入る。

 

「それで、その俺たちの軍隊をどうするか、だが――」

 

 そこで俺の話を切るようにナオが話しかけてきた。

 

「マスター、侵入者です」

「……なに?」

 

 侵入者だと、あの兵士たちの増援か?

 確かに人数が少なかったから、先遣隊と考えれば辻褄が合うが……。

 しかし、やつはそんなことを言ってなかった。本当にそうだとするならば、あそこまで無様な命乞いをするとも思えない。

 

「ナオ、侵入者を表示できるか?」

「了解、映像表示します」

 

 ナオの言葉とともに眼前にホログラムが表示される。

 そこには二人の女性、しかも鎧を纏った人物たちの姿があった。

 しかし、その鎧はところどころ汚れていて、まるで戦場から逃げ帰った敗残兵のようで。

 

「……なんだ、あれは?」

「さぁ……?」

 

 ルードと二人、首をかしげる。少なくとも、あの兵士たちの仲間ではないように見えるが……。

 映像の先で水色の髪を短く切り揃えた女騎士が、金髪のポニーテールをした、どこか品のある女騎士に心配そうな様子で話しかけているのが見える。

 どことなく、その様子から二人が主従関係であるように感じるが……。

 俺はそれを確認するためにナオへ話しかける。

 

「ナオ、音声。拾えるか?」

「了解、音声取得します」

 

 ジジ、という雑音が出た後、少々聞き取りづらいが女性二人の話し声が聞こえてくる。

 

『姫様、ご無事ですか!』

『ええ、こちらは。それより、アリアこそ大丈夫?』

『もちろんにございます。姫様の騎士として、この程度で音を上げるほど柔な鍛え方はしていません』

『……頼もしいわね』

 

 姫、姫と言ったか? あの水色の髪をした騎士は?

 それに姫の騎士、ということは護衛か、それとも近衛か。

 それに、あの姫と呼ばれた騎士。彼女が纏う鎧に刻まれた紋章。あれはアルデン公国の……。

 だが、どういうことだ?

 あの兵士の話だと、別にアルデン公国は戦時中じゃなかった筈だが……。

 

「どうしやす、マスター? あの二人、捕まえてきやすか?」

 

 悩んでいる俺に、ルードはそう提案してくる。

 確かに捕まえられるならそれに越したことはない、が。

 

「……いや、いまはまだ様子見だ」

「了解しやした」

 

 相手が損耗しているとはいえ、実力は未知数。ゴブリン程度簡単に蹴散らせる力がある可能性は否定できない。

 いくら公国が小さいとはいえ、その支配者一族の護衛に抜擢されるほどの騎士なら油断して良い相手じゃないのは十分に理解できる。

 それに――。

 

『それにしても、ここにこのような洞窟があって助かりました。ここなら追手もやり過ごせるでしょう』

『はい、姫様』

 

 ある意味予想通りというか、そんな二人の不穏な会話が聞こえてきた。

 

「まぁ、そうだろうな」

「追手、とは穏やかじゃねぇですなぁ」

 

 冗談のようや軽口を叩くルードだが、その表情は苦々しく歪んでいる。きっと俺も似たような表情をしていることだろう。

 

「まったく、面倒事はやめて欲しいな。……ルード、念のためゴブリンたちを避難させろ」

「了解しやした」

 

 俺の指示を受け、ルードは仕事のため退室する。

 せっかく、本当にせっかくある程度戦力が拡充できたのに、それを潰されてはかなわないからな。

 一度、戦力を安全な場所へ避難させなくては。しかし、ストーンゴーレムはどうするか……。

 そんな悩んでいる俺の耳に、女の声が聞こえてきた。

 

『姫様、念のためもう少し洞窟の内部へ進んでおきましょう』

 

「おいおい、まじかよ……」

 

 その場に留まれば良いものを。奥に進んでくるか。最悪、ゴーレムを囮に使った奇襲も視野に入れるべきか?

 できれば危ない橋は渡りたくないんだが……。あの時と違い、確実に渡らないといけない、という訳でもないのだし。

 それにあの姫騎士。兵士からの情報の一つにあったな。その情報が確かならば、帝国の皇子。と言っても継承権の低い皇子の婚約者だった筈だ。

 そんな地雷を踏んでしまえば最後。帝国と公国、二つの国家からなる討伐隊を組まれる可能性は十分ある。

 いくらなんでも、現状でそんなことになれば対応は不可能だ。できれば穏便に帰ってもらいたいが、どうしたものか。

 俺は痛む頭を抑えながら、どうしたものか。と、考え込むのだった。

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