鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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化け物たちの共演

 ダンジョンの最奥、中枢で侵入者たちの成り行きを見ていた俺は人知れず胸を撫で下ろしていた。

 

「やれやれ、思い付きだがなんとかなるものだな?」

「お見事です、マスター」

 

 ナオのやつがそうやって称賛してくる。おべっかなのか、本心なのか……。まぁ、それはともかく――。

 

「ストーンゴーレムをダンジョンの壁に隠す。というよりも待機させる、というのが正しいか? これが成功したことで少しは戦術の幅が広がるな」

 

 そう、俺が思い付いた手段とはダンジョンの壁にゴーレムの待機スペース。ゴーレム自身がすっぽり入る窪みを作っただけだ。

 なにせぴったりフィットする窪みだからな。傍目には壁画にしか見えないだろう。

 だが、実際にはゴーレムであり油断したところでこんにちわ、だ。さぞビックリすることだろう。まぁ、殴られた当人はビックリする暇もなく壁の染みとなったが。

 

「しかし、それはどうでも良いとして。まさか、姫騎士か……」

 

 一応、あの兵士から姫騎士の噂は聞いていた。アルデン公国が誇る一騎当千の騎士、という触れ込みだったが……。

 

「まさしく、噂に違わぬ。というやつか」

 

 部下の女騎士がいたことと、可能な限り一対一の戦いを心がけていた。というところを加味しても、まさか二人で20人ちかくの傭兵を屠るとは。

 

「これは敵に回したらこちらが壊滅的被害を被るなぁ……」

 

 まぁ、そうでなかったとしても、こちらとしては敵対する気など毛頭ないが。なにしろこちらは姫騎士さまさまで笑いが止まらない状態だからな。

 

「く、くく……。DPが増えるトリガーは生命体の死亡時、というのはわかっていた。が、まさか下手人に関して問わないなどと、こちらにとって嬉しい誤算だなぁ」

 

 なんといっても、あの姫騎士たちが傭兵どもを殺す度にDPが増えていくのだ。座しているだけで成果をもらえるのだから、まさしく笑いが止まらん、と言ったところだ。

 

「それにいくつか面白い話も聞かせてもらった。うまく使えれば、こちらにとっても旨みのある話ができるだろうし……」

 

 と、なればここは共同戦線、と洒落こむか。ナオにゴーレムとの通信を繋げてもらう。

 

「ゴーレム、好きなように暴れろ。戦力として新たにサンドゴーレムを2体追加する。それと、女の方とは敵対するな。あくまで共闘だ、良いな」

 

 ナオの通信越しにストーンゴーレムから了解の意が伝わってくる。また、それとは別にすごく楽しそうだ。まぁ、サンドゴーレムという部下ができるのだからさもありなん、というやつか。

 と、なるとあまり待たせるのもかわいそうか。さっさと召喚するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 突如あらわれたストーンゴーレムに驚愕していた両陣営。しかし、呆けている暇はなかった。

 相手がモンスターである以上、どちらの味方でもない、第3勢力と考えるのが自然だからだ。

 

「やれやれ、本当ツイてないわね」

 

 己の愛剣をちゃきり、と構え直しながらリーゼロッテは口をこぼす。なんといってもゴーレムが出るダンジョンだ。いままで確認されているダンジョンは大抵出現するモンスターは統一されていた。つまり、ここではゴーレム系が出てくると考えるのが自然。

 そしてゴーレム系は総じて物理防御力が高い。すなわち、今のリーゼロッテたちでは対処するのが面倒な部類だった。しかし――。

 

「うん……?」

 

 リーゼロッテたちのことははじめから眼中にない、とでも言いたげに背を向ける。今なら無防備な背中から奇襲できるが……。

 

「どういう思惑か、知らないけど――!」

 

 リーゼロッテは足に力をこめると吶喊。ストーンゴーレムの()を通りすぎて傭兵たちに切りかかる。

 

「てめ……! 正気か!」

「正気でもあるし、本気でもあるわよ!」

 

 彼女には確信があった。何故かは知らないがゴーレムはこちらに手を出さない、という確信が。

 事実、リーゼロッテが突撃したのを確認したゴーレムはゴゴゴ、と地響きを鳴らしながら彼女が狙った傭兵とは別の獲物に狙いを定める。

 

「くそっ、が――」

 

 そしていくら傭兵とはいえ、あくまでただの人間。これがリーゼロッテのように英雄とでもいえる力量を持っていればゴーレムであろうと対処できたであろうが……。

 しかし、ただの人間では荷が重すぎた。

 ゴーレムの拳を防ぐことなどできる筈もなく、吹き飛ばされて、新たな壁の染みとなる。

 まぁ、殴り飛ばされた当人は拳が当たった時点で全身の骨が折れ、原型をとどめないほど肉がぐちゃぐちゃに掻き回され絶命していた。

 そして、それを間近で見せられた他の傭兵たちにとってはまさしく悪夢。一気に士気が崩壊していた。

 

「じょ、冗談じゃねえ! ただでさえ姫騎士なんて化け物相手にしてるのにゴーレムの相手までなんてごめんだね!」

「あっ、おい! ま――」

 

 1人で逃げようとした仲間を引き留めようとした傭兵。しかし、その言葉は続かなかった。何故なら仲間は逃げなかった。……否、()()()()()()()()からだ。

 突如として打ち上がる仲間の身体。そのまま天井に叩きつけられ、言葉を発することなく文字通り血の雨を付近に降らせる。

 そしてその足元には――。

 

「――――――」

 

 どろどろとした流体と固体の中間とでもいうべき体躯を持つ砂の集合体。サンドゴーレムの姿が、しかも、2体。

 

 仲間の無惨な最後。そして、追い詰めていた筈のこちらがサンドゴーレムによって退路を断たれてしまった。前門と後門、それぞれにゴーレム(化け物)姫騎士(化け物)に挟まれた傭兵たちは己が不運を嘆く。

 

「おお、神よ。俺たちがいったいなにをしたと――」

 

 だが、嘆いたところで彼らの結末が変わることはない。化け物たちによって擦り潰される、という結末は……。

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