鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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手柄を欲して

 先遣隊として早めに出発したリーゼロッテとルードたち。

 彼ら、彼女らは以前村の偵察をしたルード自身の案内もあり、なおかつ村自体もダンジョンからそう離れた距離でなかったため、ほどなくたどり着くことができた。

 ただし、遠目から確認できる時点で村の様子がおかしく――。

 

「煙が……!」

「くっ――!」

「間に合いやせんでしたか……」

 

 すでにたどり着いていた傭兵たち――もはやこの状況から野盗とでもいうべきか――によって襲撃されていた。

 村の建物には火が放たれ、方々から悲鳴が聞こえる。もはや、手遅れなのか……。――否!

 

「……いくぞ!」

 

 ぎり、と歯を鳴らしてリーゼロッテは吐くように告げる。悲鳴が聞こえるということはまだ生き残りがいるのだ。ならば、助けることになんの躊躇がある。

 アリアもまた同じ気持ち、そして何よりリーゼロッテへの忠誠から彼女へ続く。

 

「はっ、承知しました! 奴らに目にもの見せましょう!」

 

 そんな二人の心意気をにやり、と見るルード。彼にとって村人の生死など関係ない。しかし、それはそれとして功名をあげる良い機会だ。ここで戦果を上げればダンジョンマスターからの覚えもめでたくなる。

 そして自身が偉くなればそれだけ女、ファラに良い暮らしをさせられるのだ。これほど良いことはない。

 

「それじゃあ、お二人さん。いきやしょうか!」

「……貴殿も手伝ってくれるのか!」

 

 まさかルードが手伝いを申し出ると思っていなかったリーゼロッテは驚きの声をあげる。

 

「当然でありやしょう? あっしたちはおたくらの手伝いを申し付けられてるでさぁ。これで逃げようものなら、ダンジョンマスターの顔に泥を塗ってしまいますわなぁ」

 

 にやり、と不適な笑みを浮かべのたまうルード。むしろダンジョンマスターはその逃げることを推奨していたのだが、功名に逸るルードからすればちょうど良い言い訳だった。

 なにより、ルードは勝算もなしにそのような提案をしているわけではない。彼は勝てると思ったからこそ、勝ち馬に乗っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 村を襲撃し、住んでいた女の服を剥ぎ取り楽しんでいた野盗の一人は周囲の違和感に気付き顔をあげる。

 

「……ん? なんだぁ……?」

 

 男の下では女が精魂尽き果てた様子でぐったりとしている。

 

「あ、ぅ……」

「この女も反応が悪くなってきたなぁ。そろそろ()()か」

 

 男は腰に佩いた鞘から剣を抜き取ろうとして――。

 

 ――――ひゅるるるるる。

 

「なっ――ぎゃ!」

 

 風切り音。

 それが男の最後に聞いた音。命を奪う矢が飛来する音であった。

 

 男を仕留めた矢を放った存在は、もはや興味無し。とばかりに駆けていく。それはコマンドウルフに跨がったルードであった。

 彼は騎乗獣に乗ったまま弓を放つ、いわゆる騎射を行ったのだ。

 

「手応えのない、これじゃあ手柄にならねぇじゃねぇですか」

 

 あまりに野盗が無様なことでため息をつきそうになるルード。

 そんなルードの気を知ってか知らずか、相棒のコマンドウルフがぐるる、と慰めるように唸る。

 

「そうでやすねぇ、いくら無様でも数がいたら多少は手柄になりやすか。なら、励むとしやしょう」

 

 そう言って気を引き締めるルード。そして彼が気を引き締めることを待っていたかのように、辺りを警戒していた野盗が姿をあらわす。

 

「なっ、てめぇ……。ゴブリンだぁ……?!」

「これはこれは……。あんたには手柄になってもらわないとねぇ!」

 

 こちらを警戒する野盗めがけて突進するよう指示を出すルード。

 横腹を軽く蹴られたコマンドウルフは、待ってました、と言わんばかりに突撃する。

 

 怒涛の勢いで接近するコマンドウルフとルード。

 それを迎撃しようと剣を抜き放つ野盗。対するルードも腰に指していたショートソードを手に取る。

 だが、直後。ルードは野盗からすると不可思議な行動にでる。

 

「な、なんだ……?!」

 

 跨がっていたコマンドウルフ、その背に立ったのだ。その状態では不安定でまともに剣を振れないだろう。

 少し冷静になった野盗はにやり、と嗤う。所詮はゴブリン、考える頭がない、と。

 そうやって余裕ぶるのもそこまでだった。

 

 ……コマンドウルフが跳ねた瞬間、ゴブリンルードの姿が消えたのだ。

 

「……っ! どこだ、どこに消えた!」

 

 辺りを見渡す野盗。しかし、ルードの姿は見つかる筈もない。なぜなら――。

 

 ふと、辺りが暗くなったように感じる。……いや、これは暗くなったのではなく……!

 

「上かっ……!」

「遅いっ!」

 

 今さら気付いたところで迎撃も、回避も手遅れだった。見上げた状態で眉間にショートソードを突き立てられる。

 血を、脳漿を撒き散らしながら絶命する野盗。しかし、いままで散々騒いだことでさすがにおかしい、仲間たちがたどり着き……。

 

「てめぇ……!」

 

 仲間へ剣を突き立てるルードの姿に激昂。仇を討つため駆け寄ろうとして――。

 

 ――ぐきり。

 

 コマンドウルフに首を砕かれ絶命する。

 そう、仇はルードだけにあらず。騎乗獣のコマンドウルフもいたのだ。

 己が相棒の活躍を見たルードは口笛を吹く。

 

「ひゅう、さすが相棒。良い仕事振りだぁ」

「わんっ!」

「さてと、じゃあ次の獲物を探しやしょうか!」

 

 そう言ってコマンドウルフへ飛び乗るルード。

 その宣言通り、彼は次なる獲物(手柄)を探しに村を駆けるのだった。

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