鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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裏方の悲哀

 ルードたちに指示を出し終えた俺はナオに命じて通信を解除させる。ぷちり、とルードたちが映し出されていた映像が途切れ、遮断される通信。

 今頃はダンジョン内にいるゴブリンやコボルトたちも指令に従い、粛々と開拓村へ移動を開始していることだろう。

 

「さて、こちらもできることをしないとな」

 

 ルードたちに指示を出した訳だが、その間こちらに仕事がない、などということはない。

 それにリーゼロッテ、彼女がダンジョンに現れてから一連の出来事。それの後始末というのも必要だ。具体的に言うなら、彼女たちを追撃してきた傭兵団の死体処理などが。

 

「……さて、どうしたものか」

 

 こめかみをとんとん、と叩きながら思案する。雑兵たちはハンスと同じようにスケルトンへ加工することは決定事項。しかし、ダンジョンの防衛戦力にするのは――。

 

「……いや、いまさらか」

 

 正直、スケルトン。アンデッドの団体が防衛しているダンジョンなど悪しき存在がいます、と喧伝しているようなものだ。

 そのため、ルードにはスライムを主軸とした防衛を敷く、といったんだ。スライムなら自然発生したモンスターとして怪しまれない、と考えたからだ。

 しかし、開拓村で俺の存在をすでに既知で、ルードたちにも特に口止めしていなかった。ダンジョンマスターという存在が知れ渡ることになった。

 その状態で俺の存在を隠そう、と考えたところで、本当にいまさらだ。それならば、有効活用して防衛力を強化すべきだ。ただ……。

 

「グレッグ、だったか……。()()に関しては――」

 

 開拓村でアリアに切り捨てられた雑兵たちならともかくとして、かの頭目。ルードの話ではリーゼロッテがやつに対してそれなりの敬意を払っていたという。

 俺に戦士の機微、というやつは分からない。しかし、()()の死体を利用してあまつさえアンデッドにした、ということをリーゼロッテが知れば激怒する。という程度はさすがに分かる。

 それを鑑みればグレッグの死体を利用する、というのは悪手でしかない。死体を放置して自然にアンデッド化させ、それを支配する。という手もなくはない。しかし、それだって彼女を納得させられるかどうかは未知数だ。

 ……と、なるとやはりベターなのは。

 

「精々村の外へ埋葬。そこら辺りが落とし所かねぇ……」

 

 さすがに襲撃してきた賊の死体を村で埋葬させるのは無理がある。しかして、リーゼロッテの手前、粗略に扱って良い訳でもない。

 そう考えると、やはりそこら辺りが落とし所になる。

 

「死体処理はそれで良いとして……。……はぁ」

 

 俺の口から自然とため息が漏れる。なにせ、今まで意図的に目を逸らしていた問題に取り掛からないといけなくなったのだから。

 村長に、そしてリーゼロッテたちに村をダンジョンに取り込むことのメリットを提示して、実際に許可ももぎ取った。それは良い。しかし――。

 

「実際のところ、DPが()()()()なんだよなぁ……」

 

 確かにダンジョンへ侵入した傭兵団、という臨時収入はあった。……のだが、問題はその臨時収入をすべて使って、ようやく村を取り込むことができる。という、ある意味悲しい現実だ。

 これで、村で壊滅させた分のDPも手に入れられれば万々歳だったのだが、そんな上手い話がある筈もなく――。

 

「グレッグがダンジョン内で死んでくれてたらなぁ……」

 

 無い物ねだりだと分かっていても、そう嘆かずにはいられない。……まぁ、今後定期的にDPが手に入ると考えて、己を慰めるしかない。

 

「それでもダンジョンの維持にDPを消費する、とかいう制約がなくて良かった。いや、本当に……」

 

 もしそんなことになれば頭を抱える事態だったことに違いない。まぁ、消費したトラップの再補充にDPは必要だが、そこはまだ必要経費として割り切れる。

 

「それでも、現状では放置するしかないけどなぁ……。死体のモンスター化、ダンジョンの拡張。するべきことは一杯ある」

 

 それにダンジョンを拡張すれば新たなモンスターやトラップが解放される可能性もある。もちろん、それを前提に計画を立てる訳にもいかないが……。

 問題はそれだけじゃない。エィルへ向かったセラが、どれだけ新しい(スラムの)住人を連れ帰ってくれるか。

 開拓村自体も襲撃の結果、人手不足は否めない状態だ。それの補充、という意味でも是非とも成功してほしい、というのが俺の偽りざる気持ちだ。それ以上に住人が増えればDP獲得効率が上がる、という浅ましい打算もある。

 俺自身もそうだが、部下たちの命にも関わる以上武士は食わねど高楊枝、などと言っている余裕などないのも確かだ。

 

「まぁ、彼女自身、自信ありげだったし任せるしかない、か……」

 

 俺はセラが吉報を持ってきてくれることを期待しながら、作業を進めるのだった。

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