鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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ダンジョンコアNo.70 ナオ

「さて、どうするべきか……」

 

 ルードの配下から王国、ならびに帝国の軍勢が進軍していることを報告された翌日。俺は今後の行動をどうするべきか考えていた。

 

「単純に考えるなら帝国に接触、開拓村――いや、今はルディアだったか」

 

 開拓村が発展した後、村固有の名称がないと不便ということでルディア、という名前が制定された。一応、この名前が制定されるまで色々と候補が出たらしいが……。

 

「まぁ、流石にクランはない、なぁ……」

 

 会議の際に出た候補で、当事者のクラン女男爵がぶんぶん、と首を横に振って否定してたのが印象的だった。

 それも仕方ない。そもそも開拓村は公国直轄嶺であり、公王直系のリーゼロッテの名前ならともかく、貴族でしかないクランの名を付けるのは流石に憚られたのだろう。

 

「……いやいや、今はそんなこと考えてる場合じゃないだろ」

 

 考えが脱線してしまった。今はそれより、今後についてだろう。しかし――。

 

「次はなにをする、と言ってもなぁ……。正直、打つ手が極端に限られるんだよなぁ」

 

 はぁ、とため息を吐く。そうなんだよなぁ。どうしてもこちらの手持ちの駒がモンスターということもあって、打てる手が限られてしまう。

 それこそ、モンスターたちを迎えに出そうにも、襲撃と勘違いされて戦闘へ発展してしまうのが関の山。

 それでも最初はルードを迎えに出そうかと考えたのだが……。

 

「ルードがホブゴブリンに進化してるのが問題なんだよなぁ……」

 

 確かにルードとリーゼロッテは開拓村で共闘した。が、それはあくまでゴブリンのルードとだ。パッと見、ホブゴブリンのルードは今までとはまったく違う見た目ということもあって、一目では分からずそのまま戦闘、という可能性が否定できない。

 一応、リーゼロッテたちを信じてルディアで待つという選択肢もあるにはあるが……。

 

「確実に来る、とは言えないのが問題か……」

 

 そもそも、あちらとしても帝国から助力を得られた以上、こちらにこだわる必要などない。直接、王国軍を叩きにいっても問題ない筈だ。だが……。

 

「王国には勇者、という不確定要素がある」

 

 避難民の情報屋からもたらされた眉唾の情報。と言えれば良かったのだが……。

 

「どうにもキナ臭い。……黒髪黒目の少女、か」

 

 ……ヒロイン、という言葉が頭をよぎる。かつて俺が暮らしていた筈の国。日本で活躍していた女性たち。彼女らは一騎当千、それこそリーゼロッテやアリアとも互角にやりあえる実力を持っていた、と記憶している。

 しかも、そのヒロインは一人じゃない。ある者は超能力を宿し、ある者は超科学の申し子であり、そしてある者はオカルトの領域である()()を操っていた。

 そんな彼女、ないし()()()がこちらへ渡ってきているのだとしたら……。

 

「冗談じゃないぞ……」

 

 仮にリーゼロッテと共闘しても勝算は低い、と言わざるを得ない。特に超能力を宿す少女。彼女が本気を出す、もしくは能力を暴走させたらルディア()()の広さなら簡単に更地となる。言い方を変えればダンジョンを崩壊させられる。

 

 ――ズキ、ン。

 

「……なん、だ――?!」

 

 頭に鋭い痛みが走る。気持ち悪い、吐き気がする。脳裏になにか映像が――。

 

 ――立ち並ぶ崩壊したビル群。中には火災が起きているところもある。

 ――響き渡る悲鳴。苦悶の、怨嗟の声がどこかしこから聞こえてくる。

 ――爆発音が聞こえた。至近距離だ! 熱風が肌を撫でた。

 

 ――くるくる、と視界がまわる。景色が赤く染まり、少しづつくらくなってきた。

 

 

 ――視界が消える間際、誰かの叫び声が聞こえた、気がした。

 

 

 

 

 

「は、ぁ……!」

 

 今のは、いったい……。何かの光景がフラッシュバックした?

 

「ぅ、げぇ……!」

 

 吐き気が……。気持ち、悪い。頭の中でも意識が、視界が明滅する。

 

「――スター、マスター!」

 

 ナオの、ダンジョンコアの声が――。

 

 

 

 

 

 ……う、ぐ。ここ、は……。

 いつの間にか意識を失っていたらしい。ダンジョンの最奥、ダンジョンコアの部屋から移動してないらしい。

 そこではたと気付く。どうやら横になっていたようだが、頭にふにっ、と柔らかいものが当たっていることに気付く。

 

「気が付かれましたか、マスター」

 

 上から声が聞こえる。女性の――いや、ナオの声だ。しかし、いつもは機械音声のような抑揚のない声色だったが、今回のは――。

 

「ナ、オ……――?!」

 

 目を開いて驚く。見覚えのない人物の顔……と、むちり、とした柔らかそうな双丘が見える。つまり、頭に、後頭部に感じた柔らかい感触は彼女の膝……?!

 衝動的にがばり、と起きそうになるが必死にその場へ留まる。下手に起きようものなら豊かな双丘へ突っ込むことになりかねないからだ。

 そんな俺の挙動を可愛らしく感じたのか、彼女。目の前の女性はくすり、と笑った。

 

「マスター、何をなさってるのですか」

「ナオ、なのか?」

「ええ、そうですよ。マスター」

 

 俺の疑問に穏やかな笑みを浮かべ答えたナオ。しかし、今度は申し訳なさそうな顔をすると――。

 

「すみません、マスター。緊急事態だと思いましたので、勝手にDPを使わせていただきました」

「DPを……?」

 

 彼女に言われたことで、慌ててダンジョンマスター権限を使って確認する。すると、確かに最後に確認したときより5000DPほど減っている。……まぁ、現状で言えばその程度、移民が増えたことですぐに補充されるから問題ない。

 

「ですが、無事で良かった」

 

 そのまま俺は、彼女が促すまま起き上がる。そのことで初めて、ナオらしき人物の全容を見ることが出来た。が……。

 

「――げほっ、ごほっ! おま――」

 

 思わず驚きと共に咳き込む。それほどまでに彼女の格好がすごかった。

 肩口より少し下まで伸びる艶やかな蒼髪、少し年格好より幼く見えながらも少し色気を感じさせる顔。そこまでは良い。

 どことなく、ゴスロリ風なミリタリーコートを羽織っているが、その下はレオタード。しかもかなり角度が際どいハイレグ型。さらには胸元は開いて、ふとした拍子に双丘がこぼれ落ちるのでは、と心配になる有り様。

 足はサイハイソックスで覆われ、下手な服より、言い方はなんだかエロチックになっている。

 もはやコスプレか、そういう行為のための服だと言われても違和感がなかった。

 

「なにか……?」

「いや、なにかじゃないが!」

 

 しかも本人は疑問にすら思ってないと来た。どういうこったよ!

 

「マスターの記憶では、こういう女性がいると――」

 

 ――あれ? もしかして、その姿。俺の趣味だと思われてる?!

 それ以前に、ナオはダンジョンコアの筈なのに、人の姿になってるんだ……?

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