鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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間違った前提《情報》からは、間違った解《答》へとしか辿り着けない

 さて、なんとかしなければ。なんて考えたのは良いが実際問題、どうすればこちらにとって理想的になるか。

 そのためにまず、こちらにとって都合の良い状況というものを考えてみよう。

 

「こちらにとって都合の良い、か……」

 

 まず勘違いしてはいけないのが、こちらの都合が良いとはアルデン公国、または支配者がこちら側。ダンジョンに対して好意的であること。そして、好意的であるならアルデン公国の支配者は()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 むろん信頼関係、という意味では多少なりとも人となりが知れているリーゼロッテが好ましいのも確か。だが今回の場合、それに固執する必要はない。あくまで最終目的は()()()()()()と協力関係を築く、というところだからだ。

 まぁ、彼女自身人としてそれなりに信用できる、とは考えている。為政者として信用できるかどうかは未知数だが。人として優秀な者が独裁者となる、などということも往々にしてある。……ただ、独裁者だから悪い。ということはなく、政治体系として優れている面も確かにある。が、それをできるのは本当に一握りの者だけだ。

 

 だからこそ指導者にはこちらの都合が良い人物を就けたいが……。

 

「まぁ、そんなキングメイカーのようなことをやるのは、早々不可能よな」

 

 そもそもこちらにコネなどがない以上、そんな大それたことをできる道理がない。……あったとしても、それをしてしまえば最悪、こちらがクーデターなどで足元が揺らぐ可能性が高いが。

 実際、内政干渉も甚だしいことをやるなど現実的ではない。やれるとしても上手く誘導するのが関の山、か。

 それに――。

 

「問題はアルデン公国だけじゃなくて、帝国もだしな」

 

 ルシオン帝国。リーゼロッテの婚約者がいて、彼女を援けるため軍を動かした国家。彼らの思惑がどこにあるのか、というのも問題だ。

 

「国家に真の友情は存在しない、とは言うが……」

 

 当然の話でしかない。国家にもっとも大切なのは自国民であり、他国民ではない。民は国の礎であり、もっとも重要な部分。

 史実においてもプロイセン王、フリードリヒ二世は君主は国家第一の下僕。すなわち、王とは国という組織の奴隷である、と説いている。

 それほどまでに、そこに住む人々。マンパワー。人的資源というものは重要なのだ。それを軽視する国家は例外なく滅びる。必然であり、当然。

 かつてロシア帝国が革命で滅び、共産主義。ソビエト連邦が勃興したように。かつて加賀国――現在の石川県南部――が百姓一揆によって支配者が打ち倒され、百姓の持ちたる国と評されたように。

 むろん、それが良きことかどうかはまた別だ。そのことは歴史が証明している。

 

 国家、という巨大な組織を動かすには優れた指導者、もしくは優れた統治システムが必要だ。

 前者が王権政治、後者が官僚制、議会政治となる。つまり極端な言い方をすれば、先ほど話した独裁者ともうひとつ、民主主義だ。

 

 選挙や政治家、などと聞くとそこまで良い感情を抱かない人もいるだろう。

 

 そのことについて、かつて第二次世界大戦時の英国首相、ウィンストン・チャーチルも言葉を残している。

 

 ――これまでも多くの政治体制が試みられてきたし、

またこれからも過ちと悲哀にみちたこの世界中で試みられていくだろう。民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。

 

 ここだけ見ると、チャーチルもまた民主主義に否定的だった、と感じることができる。が、この言葉、続きがある。

 

 ――これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。

 

 すなわち、チャーチルは他の政治体系よりは民主主義がまだマシである、と説いている。

 

 

 

 ……少し話が脱線してしまった。今考えることは帝国の思惑だったか。

 帝国が、公国の、アレク皇子の婚約者たるリーゼロッテのため援軍を出した。と考えるのはあまりに短絡。何らかの思惑がある、と考えるのが自然。ならば、その思惑とはなにか?

 

 単純に考えるなら国の、公国の乗っ取り。アレク皇子とリーゼロッテの婚姻を推し進め、皇子を公王へと据える。

 聞く話ではもともと、アレク皇子は第4皇子。単純に考えて皇位継承権第4位だ。彼が皇帝の座に就くのは難しい。だが飼い殺しにするのも勿体ない。

 そんな彼を公国に送り込めば?

 

 帝国の貴き血を引く属国、あるいは同盟国の出来上がり。帝国からすれば笑いが止まらないだろう。なにせ、そのあと併合するか傘下とするか、それは帝国の思うがまま、なのだから。

 

 

 

 

 

 …………なんて、考えてたんだけどなぁ。

 

「ねぇねぇ、きみがダンジョンマスターさん?」

 

 今、俺の前にいる元気良く弾むような声をあげている小柄な子。

 

「リズ姉が世話になったんだってね、婚約者としてお礼を言うよ。ありがとう」

 

 パッと見、小生意気な少年に見える目の前の人物。

 

「あぁ、自己紹介がまだだったよね。ボクはアレク、ルシオン帝国のアレクだよ、よろしくね」

 

 なぁんで、目の前にアレク皇子の名を名乗る、可愛らしい見た目の()()()()がいるんだろうねぇ……!!

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