鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで── (旧題名 ダンジョンマスターもの)   作:想いの力のその先へ

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こんにちは作者です。
前書きにて注意事項ですが、本話にて犯罪行為を助長させるような描写がありますが、決して犯罪を推奨するものではありません。
節度ある行動、行為をお願いいたします。


ルードの嫁取り

 ハンスとファラ、二人の侵入者がダンジョンの養分となってから約一ヶ月がたった。とはいえ、ファラ。女の方は殺した訳じゃない。ゴブリンの母体になっただけだ。

 まぁ、女としては死んだ方がまし、かもしれないが。

 そして、もう一つ。俺にとって予想外、と言っても良い意味での予想外があった。

 

「また、今日もDPが増えてるな。これはありがたいものだ」

 

 そう、どうやら救済措置、ということなのかもしれないが、侵入者がダンジョンに存在するだけでも、僅かだがDPが増えていたのだ。

 ファラを捕らえた時点でのDPは、ハンスをアンデッド化させるのに450、ルードに言語を習得させた際に使用した250を差し引いて1400。

 その後、侵入者を殺害したりはしていないことから本来、数値の増減はない筈なのだが、実際には現在DPは1700。300も増えている。

 単純に考えて、1日10づつ増えていっている計算だ。

 しかも驚いたことに、つい先日ファラはゴブリンの子供を5体ほど出産している。

 その事をルードに確認してみると、どうやらゴブリンは人間と違い、一ヶ月で出産可能なまでに成長する、らしい。

 先ほど、俺が約一ヶ月たった。と言ったのもこれが要因だ。

 つまり、ファラは300DPだけでなく、ゴブリン5体。実質250DPの肩代わりもした。ということになる。

 ハンスの2000DPほどではないとはいえ、一ヶ月550DPを持続的に供給してるというのは、こちらにとって朗報といえた。

 もっとも、このままだとファラを使い潰すことになりかねないので、大事に酷使する必要があるだろう。

 

「と、なると何らかの方法を試してみたいが……」

 

 一応、考えがあることはある。それが有効なのかを確認する意味も込めてやってみるのも悪くない。最悪、開拓村を襲って女を連れてくる、という手もあるのだし……。

 

「マスター、ルードがお目通りを願っていますが?」

「……ん? おぉ、そうか。ちょうど良い、俺の方でも話がある。すぐに通してくれ」

 

 ナオからの報告は、俺にとっても渡りに船だった。俺の考えにルードは必要不可欠だったからな。

 ほどなくして、ルードが俺の前にやってくる。

 

「マスター、報告です。あっしらとコマンドウルフの訓練は順調に進んで、ある程度形になってきてまさぁ。もうそろそろ、次の段階に進もうかと……」

「ふむ、そうか……」

 

 コマンドウルフの騎乗訓練は順調か。なら、近く開拓村への偵察を行わせるのも一つの手だな。

 

「なら、いずれお前たちに動いてもらうとしよう」

「じゃあ……?」

「うむ、近々、貴様らゴブリンライダー隊とハンスで夜間、開拓村への偵察。可能であればハンスの家へ侵入し物資、特に地図などを優先的に強奪してきてもらう」

 

 俺の指令を聞いたルードはぶるぶると震えている。しかし、これは恐怖ではないな。むしろこれはわくわくした、武者震いというやつか。

 指揮も旺盛、悪くない。それに――。

 

「時にルード」

「……? なんでありやしょう?」

「お前はあの女のところへ通っていないようだが……。なにか、理由があるのか?」

「……いえ、それは――」

 

 む、露骨に目を逸らした。これは嫌悪、というよりは罪悪感、か?

 なるほど、こいつ。ハンスとある程度仲良くなっていたな。あいつの昔の女を使うことに罪悪感を抱く、か。おもしろい、ならば――。

 

「なぁ、ルード」

「……はい」

「俺は、なにも貴様を責めるつもりなど毛頭ない。ただ、少し気になっただけで、な」

「はぁ……」

 

 気のない返事なことだ。まぁ、そんなことはどうでも良い。それよりも先の話だ。

 

「ゴブリンであるお前が、人間の女を心配することについても、何も言うつもりなぞない。ただ、そうさなぁ……」

 

 俺は勿体つけるように言葉を切るとルードを見る。その視線に、ルードは気圧されたのか後退った。

 

「貴様、あの女の世話をしてみるか?」

「…………は?」

 

 俺の提案が予想外すぎたのだろう。ルードのやつ、目を見開いてポカンとしてやがる。そうでなくては困るがな。

 

「なぁに、あの女も今のダンジョンからすれば重要な資源だ。まさか、使い潰すわけにも行くまい?」

「そ、それは……。そうでありやしょうが……」

 

 ある程度の納得は示しているな。あともう一押しか。

 

「何も一から十まで世話をしろ、などと言ってる訳じゃない。ただ、ここでいつまでも慰みものでは精神が壊れるやも知れない。だから、貴様には話し相手になってもらいたいんだよ」

「……話し、相手?」

「そうだ、あれが追い詰められている理由の一つが、ダンジョンに繋がれていることだと俺は思っている。なにせ、ダンジョンには人語を介するものなど普通はいないからな」

「……はぁ、まぁ、その程度で宜しいんであれば……」

 

 ルードは気のない返事ではあるが、俺の提案を了承した。なにより、意味が分からないだろうし、な。

 

「くくっ、ならば頼むぞ。……そうそう、紳士的に接しろよ。紳士的に、な」

「はぁ……?」

 

 ルードのやつ、最後まで意味が分からない、といった様子で出ていったな。それで良い、それで。むしろ、それが良い、といったところでもある。さて、どうなるか……。

 

 

 

 

 ――ストックホルム症候群、という現象がある。

 

 色々と説明すると長くなるが、早く言えば被害者が加害者に好意的な感情を持つ、刷り込まれるといったものだ。

 今回、俺はそれを意図的に作り出そうとした。

 あの女にとってこのダンジョン、そしてゴブリンと過ごすのはまさしく地獄だろう。コブリンどものおもちゃにされてるんだから、間違いない。

 だが、ルードはそれに参加してなかったし、人語を介し、理知的でもある。……あの言葉づかいだと、そうは思えんがな。

 ともかく、そんなルードにあの女の話し相手、といいつつも世話をさせた。

 そもそも、他のゴブリンどもが女をおもちゃにしている間は話をするのは不可能だからな。献身的に女を守っていたよ。

 女も女で、最初の頃はルードを罵倒していたようだが、自身を守ってくれる、と理解したあとはあいつに心を開いていたようだ。まぁ、ホログラムで監視している時も、敢えて音声は切っていたから憶測でしかないが……。

 ともかく、そんな状況が一週間、二週間と続けばどうなる?

 己を守ってくれる男と、己を、しかも異種族を慕ってくれる女。しかも、子を成すことは可能と来ている。

 そろそろだと思うが……。

 

「マスター、ルードが――」

「……通せ」

 

 来たか!

 

 ナオはルードがこちらに来たことを告げた。理由なぞ簡単に予想できる。

 

「……申し訳ありやせん、マスター! 一つお願いが――」

「良いぞ」

 

 くっ、くく。ルードのやつ、俺が間髪いれずに許可したことに面食らってやがるな。

 お前がファラ、あの女と恋仲になったことなんて分かってる。そして、独り占めしたいこともな。

 当然だよなぁ、自分の女が他のやつに好き勝手されるなんて許せないよなぁ?

 良いとも、良いとも。それこそ俺の狙いだったんだから。

 

「あれの身請けをしたいのだろう? 構わんとも、他の奴らには一切、手を出さないように指示を出す。もし、出すような愚か者がいれば、見せしめも兼ねて首を刎ねればよかろう」

 

 俺の言葉を聞いたルードは緊張感が一気に抜けたのか、床にへたり込む。

 そこで安心されても困るのだがな。

 

「ただし、条件がある」

「……なんでありやしょう」

 

 気丈に振る舞っているが、恐れているのが手に取るように分かるぞ?

 まぁ、お前にとって悪い条件じゃないとも。

 

「なぁに、お前が身請けする以上、大切にしてやれよ。それと、ちゃんと子供は作るんだぞ?」

「……へ、へい! ありがとうごぜぇやす!」

「はっはははははははははっ!」

 

 俺のイタズラだと気付いてやっと安堵したようだな。今の言葉に嘘はない。大切にすることも、子供を作ることも、()が望んでいることだからな。

 なにせ、大切な資源なんだ。

 こちらに気持ちよく協力させるための手は打つさ。それに、あぁ、楽しみだ。

 くつくつ笑う俺を、ルードは恐る恐る、しかし俺の機嫌を損ねないように慎重に見つめていた。

 それがまたおかしくて、俺は内から笑いが込み上げてくるのだった。

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