超次元ゲイム ネプテューヌ - 終界の新生(ヴィダークンフト) -   作:倉公

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あーネプU楽しみだなあああ


四女神会議

 ネプテューヌ、ノワール、ベール、ブラン。

 

 プラネテューヌ教会内部にある、会議室。

 椅子に腰を掛ける四女神とイストワールの姿があった。

 世界各地で絶えず多発するモンスターの凶暴化現象についての協議を行う為である。

 四つの国のいずれもが頭を抱える怪現象であり、その解決は急務であった。

 

 ……だが。

 

 その会議内容は当初の予定とは大幅に異なるものであった。

 

「モンスターの暴走は、各地で沈静化しています」

 

 イストワールは、端的に結論を述べた。

 現状を要約すればその一言に尽きる。

 

 唐突に始まり世界を混乱させたモンスター達の異常は、その終わりもまた唐突なものであった。

 

 全ては元通り。

 未だ凶暴化したままの個体もいるが、所詮は少数。

 一週間もすれば世界は元通りになるだろう。

 

 無論それは各国の統治者である、四女神のいずれもが熟知していた。

 収束していく世界規模の混乱。

 狐につままれた心地ではあったものの、吉報に他ならない。他ならないのだが、しかし。

 それは真実としてごく一面に過ぎなかった。

 

 でなければ四人は今日という日、会議室の椅子に体重など預けていなかったのだから。

 

「そして次は、悪いお報せになります。これは恐らく、先ほどの吉報と密接な関係があると思うのですが」

 

 沈痛な面持ちでイストワールは告げた。

 それこそが本日の表題。

 

 災い転じて福……とはならず、現れたのは新たなる災いであった。

いうなれば、モンスターらの対策の為の会議がそのまま新たなる問題への会議と転じた体(てい)である。

 

「あなたがこのまえ通信で言っていた『本震』ね」

 

 ノワールは先日のイストワールとのやり取りを回想した。

  

 

「ここ最近で起こっていたモンスターの暴走と異変は、何かの前触れ。だったわよね?」

「はい、その通りです。モンスターの異常の正体……それは怯えと恐れだったのではないでしょうか」

 

 敵意持つ者へと犬が咆哮し威嚇するように。

 戦慄に震える鳥があらん限りの力で鳴き叫ぶように。

 

 

「ネプテューヌさんが交戦した、異次元からの侵略者に対して」 

 

 三日前の15時33分。

 プラネテューヌ上空に特異点たるゲートが出現し、そこから謎の侵略者が出現した時間である。

 イストワールの記録によれば、その時間以降、

 世界各地でモンスターの凶行が鳴りを潜めたという。

 

 イストワールが推測するに、ここ数日にプラネテューヌ周辺のモンスターの暴走が活性化したのはそれが原因であり、

 恐れるが故の凶暴化だったのではないか、という事である。

 

 突如出現した敵は、つまりそれだけの異様な存在であるということである。

 こちらの次元に訪れる足音と気配だけで、こちらの全世界のモンスターに干渉するほどの力を有しているのだから。

 その存在がどれほど常軌を逸した並ならぬものであることは、誰の目にも明らかである。

 

 

 そしてその謎の存在に対して、この場において最も怒る者たちがいた。 

 ベールとブランの両名である。

 

「つまり、全てその『パープルハート』が悪いという事ですわね。絶対に許せませんわ。一刻も早く倒して、帰国致しませんと……週末に大型アップデートが控えておりますのに」

「モンスター対応に追われる中で進めていた新作の執筆も佳境だというのに。パープルハート……絶対にぶっ潰すわ」

 

 そんな二人の赫怒に耳を痛めるのはネプテューヌである。

 

「ううー……なんだかすっごい嫌な気分……まあ、本人がそう名乗っていたんだから仕方ないんだけどさ……はあ」

 

 ブランとベールが打倒の決意を燃やす『パープルハート』がネプテューヌ自身の事を指している訳では無いのは理解している。

 ……が、割り切って考えられぬのもまた事実であった。

 

「イストワール、そのパープルハートって……」  

 

「はい、ネプテューヌさんの証言どおり、別の次元からやって来た、別の次元の女神様なのではないでしょうか」

 

 

「別の次元……極めて近く、限りなく遠い世界という事ですわね。俄かには信じられませんが……」

 

「でも、信じるしかないわ。『彼女達』も、そうだったでしょう?」

 

 ブランの言葉に、ベールは首肯した。

 『彼女達』……ファルコムやサイバーコネクトツーやMAGES.ら、異次元のゲイムギョウ界から来訪した者達。

 マジェコンヌが暗躍した先の大乱の折、自分達と共に戦ってくれた同志らである。

 

 異世界の扉をくぐる者は、必ずしも彼女らのような友好的存在ではないという事であれば、このほど襲来した『パープルハート』を名乗るものは招かれざる客といったところか。

 

「そういえば彼女達は、別次元のネプテューヌを知っていると言っておりましたわね。なら、ネプテューヌ達が戦ったというその『パープルハート』というのも異次元のネプテューヌなのでしょうか?」

 

「いやーそれがサッパリなんだよねえ……そういえば。前にわたしが変身してた時と似たような姿をしてたような……」

 

 プロセッサユニット・パープル。かつてネプテューヌが纏っていたそれと似通ったものを、先日戦った『パープルハート』が着用していたのが思い出される。

 

 そしてややあって、ネプテューヌは何やら重大な事実に気づいたとばかりにポンと手のひらを鳴らした。

 

「あーわかった。これはもう、考えられるのはひとつだよ。いやー、わたしにもついに偽者を名乗るファンができちゃったかー」

 

「バカ言ってるんじゃないわよ」

「ありえませんわね」

「それだけは、無い」

 

 ノワール、ベール、ブランによる情け無用の三連撃は、ネプテューヌの涙腺を破壊した。

 

「うぅ……ひでぇ。ところでいーすん、あの敵は、どうしてこの世界にやって来ちゃったのかなあ。なんだか、『滅ぼすー』とか、『あなたたちを認めないー』とか言ってたけど」

「確かに正体は異次元の女神でいいとして、この世界にやってきた目的は気になりますわね」

「ネプテューヌさんのお話によれば、全く会話が通じない相手だったそうですね。恐らくその女神さまは、何かに惹かれてこの世界にやって来たのでは無いでしょうか」

 

 

 夜空を往く羽虫が光源に惹かれて羽撃くように。

 双眸を盲いた者が、耳朶を打つ音のみを頼りに光無き世界を行路するように。

 『パープルハート』を騙る存在を、こちらの世界へ導いたものとは一体なんなのか。

 

 イストワールは、一つの仮説を表した。

 

 

「何か……例えば、大きなシェアエナジーの動きなどですね。そう、ちょうど一年前の天界での決戦のときに、皆さんでマジェコンヌに捧げた祈りの力などです」

 

 黙して耳を傾ける四者を見渡しながら、イストワールは続けた。

 

「その際に生じたシェアエナジーの震動は次元を超えて、その異次元の女神さまの元に届いたのではないでしょうか」

 

「そして、その『パープルハート』はこの世界を知った、と。けれど、あれから一年以上経っているのよ? なんで今更……」

 

 小首を傾げるノワールに、ブランが補足した。

 

「次元を移動したのだから、時間の差を考えるのはナンセンスよ。こちらにとっては一年前の出来事でも、向こうにとっては一日前にあちらの世界からやってきたのかもしれないわ」

 

「じゃーやっぱ、あの子が着てたのはプロセッサユニットで、あの子は女神だったって事かぁ」

 

「『唯一国プラネテューヌ』……でしたわね。その女神がやって来たというのは」

「プラネテューヌがゲイムギョウ界でただひとつの国……ふざけているわね」

「本当だとすれば、それは恐ろしいことです」

「? どゆこと、いーすん」

「女神さまの力の源である、シェアエナジー……こちらの世界では、それが四つの国に分割される形で、それぞれの女神さまに捧げられています。しかし」

 

 空恐ろしげな面持ちでイストワールは続ける。

「その女神さまは、向こうの国……というより、全世界のシェアエナジーを一身に受けている存在であるということです」

 

 100%のシェアが凝縮された存在。

 『向こう側』の世界のあらん限りのシェアエナジーを受ける唯一神の力は、まさしく想像を絶するものとなろう。

 その存在強度は正しく計り知れまい。

 

「そういえば死に設定気味に忘れてたけど、いーすんって森羅万象に干渉できるんじゃなかったっけ? あの女神の子に、向こうの次元に召喚ならぬ強制送還!……なんてできないの?」

 

「恐らくその女神さまは、向こうの世界のシェアエナジーの加護を受け続けていると思われます。

 臍の緒でつながれた、母体と胎児のように。そんなこちらの世界とは異なる存在が相手には、介入は不可能だと思われます」

 

「……やっぱいーすんって、けっこうポンコツだよね」

「誰がポンコツですか!」

 

 怒り出したイストワールを眺めつつノワールは、先のモンスター騒動もイストワールの力を使えばなんとななったのでは……? と素朴な疑問を思ったが……口にしない。代わりにという訳でも無いが、交戦したネプテューヌに問うた。

 

「ところで、その『パープルハート』はそんなに強かったの? まるで手も足も出なかったそうじゃない」

「いやぁ、わたしたちもすっごい疲れてたんだって……確かにマジェっちがいなかったらヤバかったかもだけど」

「そういえば、彼女は無事ですの? 大怪我を負ったと聞いておりますが」

「うん、わたしを庇ってくれたときにね。でも、大丈夫だよ。コンパがきっと治してくれるからさ!」

 

 ふと思い立ったように、ブランが口を開いた。

 

「ネプテューヌ。本当にその自称パープルハートは、あなたの知り合いじゃないの? 知らず知らずのうちに恨みを買って、仕返しにきた……とかいう可能性は……」

「もーなに言ってるのさブラン。いくらわたしでも、異次元に知り合いなんていないよ」

「分かってるわ。自分が馬鹿なこと言ってることくらい」

 

 しかしながら、それほどまでに事態の奇妙さを物語っている。

 一年前の戦いのシェアエナジーが次元を超えて伝わり、その世界の女神が自分達を滅ぼすために襲来したなどと。

 だが、いつまでも右往左往している訳にもいかない。

 

「そこで、本題です。みなさんには、その異次元の女神との接触をお願いします。おそらく、和解は不可能かと思います。でもまずは接触をこころみて、それが不可能ならば」

 

 それに続く言葉を遮ったのは、ノワールである。

 

「言わなくても分かってるわよ。だからこそ、わたしたちはここにいるのだから」

「問題はプラネテューヌだけのものじゃないですものね。あいちゃんが生きるこの国は、必ず守ってみせますわ」

「放っておけば、その矛先は他国にも向けられるでしょうしね。さっさとこの件を終わらせて、次のラノベ大賞に送る作品を書かないと」

「あなたたちね・・・まあ私としても、提供した警備機械の面目を潰してくれたお礼をしないといけないしね。招かれざるお客さまは、もとの次元にお帰り願いましょうか」

 

 ノワールらの意気に中てられてか、いざ戦場に赴かんとネプテューヌも椅子から腰を上げた。

 

「よーし、そうと決まればさっさく皆でリベンジだー……あいだっ!」

 

 立ち上がったポーズのままに、悲鳴と共に硬直する。その目尻には、うっすらと、涙。

 

「いけません。ネプテューヌさんはあと三日間は安静にしていなければ。状況説明の為に参加してもらいましたが、本来ならば療養していてもらいたいのですから」

「珍しくやる気を出したときには動けない身体になるなんて、なんという皮肉……」

「まあ、私とブランとベールに任せておきなさい。あなたの敵は討ってあげるわ」

「うぅ~……わたしまだ死んでないのに……」

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