セイギノミカタ   作:らて丸

3 / 8
Episode.2:新刈(アシドメ)

「ふっ…!!」

 

俺は宙を舞う

 

俺がそうしたわけじゃない

 

気がついたら飛んでいたのだ

 

「こっから落ちれば死ぬでしょ」

 

俺は、重力に押さえつけられぐんぐんと地面へ加速していく

 

「―――投影、開始(トレース・オン)!!」

 

俺は手元に、不毀の極聖(デュランダル)を投影し校舎の壁に突き刺す

 

そのまま、次々と剣を映し出し、足場にして屋上へと舞い戻る

 

「げっ…戻ってきた」

 

「ひとのこと屋上から落とすなよ」

 

とたん、首が締め付けられるような感覚

 

いや、実際に締められている

 

首が圧縮されて、空気が断ち切られ呼吸もままならない

 

「ッ…」

 

首と縄の間に刃を挟み込み無理やり斬り落とす

 

あっぶねぇ…

 

「普通に殺す気かよ」

 

「夏油様に頼まれたから、ちゃんと殺してあげないと」

 

「そうかよッ!!」

 

映し出すは、漆黒の魔槍

 

本来、魔術と呼ばれる技術で踏破された決して交わることのない路

 

魔槍は形を変え、黒い斧へと姿を変える

 

「モルゴース…」

 

上から下へと…

 

斧を振り下ろせば、黒き波が美々子と菜々子を吹き飛ばす

 

「いったぁッ!!」

 

次に現れたのは青緑色の刀剣

 

『スピュメイダー』『マルミアドワーズ』『カルンウェナン』

 

それは、雨のように二人を襲う

 

「なにそれ、チートぢゃん!!」

 

「ズルい…」

 

うるせぇやい

 

「とっとと、終わらせないとだからな…」

 

姿勢を崩した菜々子へと近づく

 

「菜々子!!あぶない!!」

 

「えッ!?」

 

気がついただろうが、関係ない

 

このまま、掌底打ちを鳩尾にブチ込む

 

しかし、俺は再び別の場所に移動しており、掌底打ちは空を切る

 

「あ?」

 

先程から、菜々子と呼ばれた金髪の少女が手にしてるスマートフォン

 

彼女が、スマホでなにかをしたタイミングで術式は発動している

 

「カメラか…?」

 

思い当たるのはそれくらいしかない

 

ならば…

 

投影、開始(トレース・オン)

 

現れた、黒い暗器

 

音もなく、投げられたそれは二人に当たること無く何処かへと飛んでいく

 

「狙いが粗いね」

 

「そうかな…?」

 

俺が再び、菜々子へと距離を積める

 

「来んなッ!!」

 

再び俺は、別の場所に移動させられる

 

やはり発動条件はカメラ…

 

俺は手にしてある紐を思いっきり引く

 

ピンっ…とタガが外れ空を斬り()()()が撃ち出される

 

柱に引っかかっていた黒い暗器『ダーク』

 

それは、深々と奈々子のスマホへと突き刺さり機能しなくなる

 

「なッ!?」

 

再び突き出された拳は今度こそ菜々子の鳩尾に入る

 

「カハッ!!」

 

「菜々子!!」

 

回し蹴りで菜々子の顎に踵が突き刺さるかに思えた

 

ドンッ!!と校舎を揺らす振動

 

そうすると、校舎は大きく崩れていく

 

雪崩のように、引き込まれていく美々子

 

「美々子ッ!!」

 

「くっ…」

 

急いで、「騎英の手綱」と呼ばれるチェーンと短剣で構成された武器を投影する

 

「間に合えッ!!」

 

鎖は、俺の意識が乗ったかのように瓦礫と瓦礫の合間を通り抜け、美々子を巻き取る

 

「せーのっ!!」

 

グイっと力が込められ、一気に浮き上がる美々子

 

行き場を失った躰は、屋上にゆっくりと打ち付けられる

 

「す、すまない、痛くなかったか?」

 

「な、なんで助けたの?」

 

引き上げられた美々子は、肩で息をしながら問いかけてくる

 

「?」

 

「なんで、アンタはアンタを殺そうとした私を助けたの!?なにが目的!?」

 

「目の前で人が死にそうなのに助けない理由があるのか?」

 

俺は、校舎の内側から現れた大きな、狗頭の呪霊

 

そいつの足元に落ちているのは真希の薙刀

 

「悪い、それより先にこいつをやらなきゃいけないからな」

 

呪霊の中からは、微弱な呪力が7つ

 

そのうちの7つとも人間…

 

そして、1つは知っている反応

 

「―投影、開始(トレース・オン)

 

そう呼ぶと、漆黒の洋弓が呼び出される

 

「―――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)

 

投影された螺旋状の刃を持つ剣は引き伸ばされ、一本の矢のようになる

 

20秒ほど、篭められる呪力

 

矢先は紅く輝き、全てを穿たんと光を灯す

 

引き絞られた矢をこの一言で弾き出す

 

「――――――偽・螺旋剣(カラドボルグ)ッ!!」

 

その瞬間、一本の矢が亜音速で呪霊の頭に突き刺さる

 

それと同時に、呪霊の頭は弾け跳び爆散する

 

「真希、生きてる?」

 

「死んでたら、どう返事するってんだよ」

 

「元気そうだな」

 

しかし、真希は頭から血を流してる

 

「元気じゃねぇ、血出しすぎてフラフラだわ…」

 

「そっか、じゃあ」

 

「な、なにしてんだ!!」

 

なにって、横抱きしただけなんだがな…

 

真希は、『離せ〜っ!!』と暴れまわるが、弱っているからか、全然痛くない

 

ほかの生徒たちも運び出そうとしたが、それより前に救急車がたどり着いた

 

「お疲れ様」

 

五条はそういうと補助監督さんの車に戻っていく

 

俺も、疲れ切ってしまい、倒れ込むように車の座席へと座る

 

「どうでしたか?初任務は」

 

「いろいろありすぎました…」

 

「私のときも大変だったスよ〜」

 

「どんなことがあったんですか?」

 

「そうっすねぇ〜、バディが前に突っ込みすぎたりして危うく両方死にそうになったんスよ」

 

『たはは〜』と笑っているが…

 

その時新田さんが死んでしまっていたら

 

考えたくないな…

 

「俺は新田さんが生きてて良かったなって心から思います」

 

「やだな〜そんなこと言ったって何も出ないっすよ〜」

 

「新田さんッ!!前!!前見て!!」

 

「へ?のあぁあぁあぁ!!」

 

 

 

 

 

 

「ハァ〜つ"か"れ"た"」

 

「おつかれ、ユイト」

 

「真希と、生徒はどうでした?」

 

「うん、なんも問題なし。強いて言うなら真希が少し呪力に当てられてるけど、そっちは数日経てば治るよ」

 

「そうですか…」

 

良かった…

 

初任務でタッグが死ぬなんて、そんなことがあってたまるか

 

しかし、あの場面で二手に分かれなければ彼女は呪霊に囚われることもなかったかもしれない

 

親指のツメを噛む

 

ピシっと罅の入ったツメ

 

僅かながら肉からツメが引き剥がされ、血が流れ出す

 

「ユイト」

 

「ッ…な、なんですか?」

 

「キミの選択は決して間違ったものじゃなかったよ。それにもう過ぎたことだ、悔やむなとは言わないけどさ…」

 

五条は一息つき、缶コーヒーをこっちへと差し出す

 

「結果的に誰も死んでないんだ、悔やむ必要はないよ」

 

「…ありがとうございます」

 

俺は五条から手渡された缶コーヒーの蓋を開けて、口に含む

 

うん、美味しい…

 

コーヒーを飲んでる時は落ち着く

 

「じゃあ…」

 

「?」

 

五条は今度は、何も乗ってない手をこっちに向かって差し出す

 

「130円ね」

 

奢りじゃないのかよ

 

良かった雰囲気が台無しだよ

 

「くっそ〜」

 

俺は、ポケットから財布を取り出し1000円札を手渡す

 

「え、なに?もしかしてチップ?」

 

「釣り返せよ」

 

「ハハハ」

 

と言いながら870円を手渡してくる

 

でも、70円分が全部10円玉なの許せないな

 

財布重くなるじゃん

 

「ところで五条先生」

 

「ん?まだなにかあるの?」

 

俺が思い出すのは黒髪のあの呪術師

 

『ゲトウ スグル』…

 

彼は一体、どんな目的であの場にいたのか

 

あの顔、これまででは感じたことないほどの悪意

 

でも何処か気の迷いがあるような…

 

「いや、なんでもない」

 

「なに?真希のことが気になるの〜?」

 

うん、間違いなくこいつのせいで俺の胃が痛くなるな

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ、夏油様」

 

「あぁ、ただいま」

 

私は寺の奥へと進む

 

白髪の彼にとあることを報告しておきたいのでね

 

扉を開けると、黒いチェストプレート、そして赤い腰布が特徴的な男

 

その男はどっしりと和風のこの建物とは似つかない黒い革地のソファーに腰掛けて、足を組んでいる

 

「キミにしては遅かったな、異分子(イレギュラー)な存在にでもあったかい?」

 

「あぁ、これを視てくれよ」

 

私は、飼っている呪霊の口の中から一枚のカードを取り出し、彼に投げ渡す

 

それは、呪術高専の生徒証

 

そこには紫色の髪に紅いメッシュの入った少年が写っている

 

「ほう…?これまた面白いことになったな」

 

「あぁ、君も彼に会いたいんじゃないかい?」

 

「バカを言うな、私がヤツに会う時は…そうだな、ヤツが私に殺されるか、私がヤツに殺されるときだけだ」

 

「変わらないね、君は」

 

男は立ち上がるとふすまを開け外へと向かう

 

「何処に行くんだい?」

 

「仕事だ、キミに頼まれていた『猿共』の処分がまだ残っている」

 

「もう少し、話していたかったんだがね」

 

男はそのまま歩いていってしまう

 

彼の顔は、これまでで視たことないような不気味な笑顔だった




前話、一箇所修正点があります!!

ユイトくんの地元は石川じゃなくて愛知になりました

回遊編へと繋がる部分があります

評価と感想待ってます!!

ヒロインアンケート(この結果が反映されるとは言っていない‼)

  • クールビューティ!!禪院 真希!!
  • ヒロインぽくない!!釘崎 野薔薇‼
  • ザ・オトナな女性!!家入 硝子!!
  • 馴染みやすい!!新田 明!!
  • ドリーム魔法少女!!西宮 桃!!
  • クールスナイパー!!禪院真依!!
  • 筆者の最推し!!三輪 霞!!
  • 可愛い先生!!庵 歌姫!!
  • ブラックホール!!九十九 由基!!
  • 呪詛師だけどなんとかします!!ミミナナ
  • うるせぇ!!全員オトせ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。