封印のカード【アリアの物語】   作:デアウムウス

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初戦闘【スノージャイアント】

一方その頃、アリア達が戦っていた場所から少し離れた村の反対側で――

 

「ちぃいっ!」

 

一人の青年が苦悶の声を上げていた。彼は、この村に住む冒険者だ。普段は森の奥で薬草採取をして生計を立てている。そんな彼の前にいるのは、一体の怪物。

その名は、スノージャイアント。本来、この村の周囲には間違っても出現することのない強力なモンスターだ。その見掛けどおりのゆっくりした速度でしか移動せず、だがその怪力は青年のようなレベルの冒険者にとっては脅威そのもの。

だが、その雪男は今や見る影もなく弱っていた。自慢の剛腕の片方は半ば千切れかけており、足取りもおぼつかない。その背からは大量の血が流れ出している。おそらく、背中に深々と突き刺さった槍によるものだろう。

 

「グォオオッ!」

「くそぉおっ…!」

 

雄たけびと共に振るわれた爪を辛くも避ける青年。しかし、完全に避けきることは出来ず、肩口を切り裂かれてしまう。

 

「ぐぅあああっ!!」

 

あまりの痛みに絶叫を上げる青年。だが、それで終わりではなかった。今度はその足で踏み潰そうと持ち上げてきたのだ。

もはや避けられない。そう思った瞬間、横合いから女の声が飛び込んできた。

 

「まったく、何をこんなところで手を焼いてるのかしら。雪の巨人のくせに…。そいつはもういいから例の封印者のところへ行ってきなさい」

「…な、なんだって…?」

「ほら、早く」

 

女は再び急かす。青年のことははなから視界にすらいれていないようだった。だが青年がそれ以上の問いをかけることはどのみち不可能だった。なぜならば足を引きずる巨人が村の中心方向へと歩いて行く記憶を最後に、その意識が途切れたからだった。

 

***

 

「ふう。これであらかた片付いたかな?」

『うむ。よく頑張ったな』

「えへへ……。でも結構疲れちゃったよ……」

 

アリアは、地面に座り込んで息を整えていた。彼女の周りではゾンビとスケルトンが、傷を負いながらも立っている。見た限りではすでにモンスターは殲滅できたようだ。

 

『お主がもう少し成長すれば、もっと効率良く戦えるようになるだろう。精進せよ』

「うーん……。なんかブレスレットの私に対する態度、ちょっと偉そうだよねー……」

『なっ!? し、仕方があるまい! ワシはお主のパートナーなのだから!』

「ふふっ。冗談だよ、じょ・う・だ・ん。じゃあ、今日はこれぐらいで休もうかな?」

『ああ、そうしろ…。いや、まだだ!』

 

ブレスレットの慌てる様子に、アリアは立ち上がり身構えた。

直後、再びの地響きとともに前方の家の向こうから白い巨体が姿を現した。それは、アリアが見たこともない敵、スノージャイアントだった。咄嗟に封印の力を使うが、カードに変わる様子は見られない。

 

「嘘……!? どうして!?」

「グオオオオッ!」

 

戸惑っている間に距離を詰められ、振り下ろされた拳が目前に迫る。その一撃はなんとか避けたものの、続けざまに放たれた蹴りをまともに受けてしまい、アリアは吹き飛ばされた。

 

『まだ立てるな、アリア?あれはレア――つまりこれまでより高位のモンスターだ。ある程度弱らせねば抵抗されてしまう』「うん……」

『まずはゾンビ共に任せてみよ。それでダメならワシらが加勢する。良いか?』

「わかった」

 

アリアは立ち上がると、改めて対峙する怪物を見据えた。そして手近にいたゾンビに指示を出す。

 

「ゾンビさん!お願い!」

 

ゾンビは命令に従い、素早く動き回り、相手の注意をひく。そして隙を見て噛みつこうとするが……

 

「グオオオ!」

 

あっさりと殴り倒されてしまった。さらにスケルトンにも指示を出すが、手傷を負わせたもののすぐに吹き飛ばされてしまう。

 

「だめ…。どうしようもないよ…」

『やはり、ここはワシらの出番のようだな』

「……うん。でも、一体どうすれば…」

『ならば諦めるのか!?皆を救うのだろう。それにこの程度の敵に屈するようでは両

親を探すことなど不可能だぞ!』

「……そうだったね。私は負けない!」

 

アリアは気合を入れなおすと、もう一度ジャイアントを観察した。落ち着いて見れば、その姿は片腕が無くなった上に幾つもの傷で弱っているのが分かる。

 

(なら、隙を少しでも作れば…)

 

アリアは残りのカードを見下ろした。

 

【ゴブリン】【ホーンラビット】【スライム】【グリムリーパー】

「よし、行って、ホーンラビット!」

 

召喚されたのは、角を持つ兎だ。それをジャイアントに向かって突進させる。二体のモンスターにしか気が向いていなかったジャイアントはそれを顔にもろに食らい、仰向けに転倒してしまった。

 

「今、とどめを!」

 

アリアの指示に従って、スケルトンが進み出る。手にした剣を振り上げ、倒れた怪物にトドメを刺した。

 

『今だ!完全に息絶える前に封印しろ!』

「分かった!」

 

アリアは最後の力を使って封印を行う。すると、その体が光に包まれた。

やがて光が収まった時、そこには三つの星が記された一枚のカードが残されていた。

 

「やった……。倒したんだ……」

 

その事実がじわじわと心に染み渡っていく。アリアは自身の持つ力の使い方を改めて理解することができたのだった。

 

『あいにくだが、まだ終わったわけではないぞ』

「え?」

 

感慨にふけっていたアリアに、ブレスレットが水を差した。

 

『この霧、どうにもただの霧ではなさそうだ。あのモンスターも自然のものとは思えん。休んだらすぐにでも森へ向かうぞ』




コモン:【ゾンビ】【スライム】【ホーンラビット】【ゴブリン】
アンコモン:【スケルトン】【グリムリッパー】
レア:【スノージャイアント】


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