「あれ?なんだろ、この香り…」
しばらくした後、アリアは森の奥の方から甘い匂いが流れてきたことに気がついた。それはまるで嗅いだことのないような、不思議な芳香だった。
『それは……まさか』
「知ってるの?」
『…確か…。……いや、知らんな。香りが特徴的なモンスターだって何体かいるだろうからな』
「そっかー」
『だが、嫌な予感がするぞ。注意しろ』
「えっ!?」
その言葉を聞いた瞬間、突如アリアの足下から数多の棘を生やした蔓が伸びて来た。それはアリアの足を絡めとり、空中へ持ち上げる。
「きゃあ!」
『しまった! このツル…いや、茨はローズヴァインのものだ!』
「ロ、ローズヴァイン?」
『薔薇のような植物型モンスターだ。これはその中でも上位種かもしれん!』
「そんなこと言ってる場合じゃないよぉ!」
なんとか抜け出そうともがくも、ローズヴァインの拘束から逃れられない。それどころかますます締め付けが強くなっていくようだった。
「す、スケルトン!何とかして!」
茨を切り払わせようとスケルトンを召喚する。スケルトンの剣は茨を切り落としアリアは解放されたが、茨はいくら切ってもすぐに再生してしまい、無力化することができない。その上、ローズヴァインは茨を操っているだけで、本体自体は姿を見せようとしない。
「だめ……このままじゃ……」
どんどんと数を増やしていく茨の攻撃に、アリアは為す術もなく体力と魔力を奪われてしまう。そしてついに限界が訪れ、崩れ落ちるスケルトンの骨格を最後に意識を失ってしまったのだった。
『アリア!!』
「……う……ん……?」
『目を覚ましたか。……だが、ここは……』
「どこなんだろう……? 森の中なのは間違いないと思うけど…それより何?このすごい香りは…」
アリアが最初に感じたのは明らかに強くなった…バラの香りだった。
アリアは辺りを見回す。そこはさっきまでいた森とは全く違う場所だった。彼女は今樹木を背に座り込んだ形で放置されており、目を上げると前方では色鮮やかな薔薇の花が今にも開花しようとしていたのだ。
「こんなところ、いつのまに来たの……?」
『あの後すぐにだ。だが、花が開く前に目覚めたのは幸いだな。それに他のモンスターも見当たらない』
「そうだよね……。とにかくこいつを封印しないと……」
『いや。こいつはスノージャイアントと同じレアの等級だ。このままでは無理だろう』
「うん……」
立ち上がったアリアはどうすればいいのか分からず、ただ呆然と見つめていた。するとその大きなつぼみが開き始め真っ赤な花びらが姿を現す。その途端、今までとは比べ物にならないほど強烈な甘い香りがアリアを襲った。