外伝:くまに飛ばされたブルックの行き先がエレジアだった世界   作:館凪 悠

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骨と歌と笛吹きの少年 6

 もう、何時間森の中をかけずりまわっただろうか。

 人里のある方角もわからず、樹木の生い茂る森は真っ直ぐに走ることもままならず、カバルは今、自分がどこへと向かっているのかすらわかっていなかった。

 もしかしたら、あの人攫いのアジトに戻るように走っているのかもしれない。

 胸の内に湧き上がるそんな不安を、必死にかき消しながら、カバルは走った。

 日はどっぷりと暮れて、多分もう、ウタたちのライブは始まってしまったのだろう。

 せっかくチケットを貰ったのに、悪いことをした。

 カバルの頭の片隅が、そんなことを考える。

 そもそも、あのチケットは一枚も残っていなかった。たとえ、町に辿り着いたとして、もう行くことは叶わないだろう。

 それよりなにより、かなり有名な音楽家たちのライブコンサートが行われているはずだというのに、カバルの耳には、その喧噪の物音ひとつ届かない。

 それは、町がかなり遠くにあることを意味しているのだろう。

 ──そもそも、逃げ場なんてあるのだろうか。

 考えてもいなかったが、ここがマーリシーモ群島の別の島の可能性は?

 この群島には、小さな無人島がいくつか点在していたはずだ。

 海を隔たれ、そして悪党ども以外に誰もいない島だとしたら、カバルにはもう、なす術もない。

 そんな絶望が、ひしひしとカバルの精神を苛み──、そして、ついにカバルは足を止めてしまった。

 ──きっと、無駄なのだろう。

 近くにあった岩肌に背中を預け、喘ぐように肩で呼吸をする。

 全身が、痛かった。

 走り続けたせいで、筋肉も内臓も悲鳴を上げている。

 そして、裸足で走っていたせいで、足の裏の皮は破れ、血が流れていた。

 ──もう、一歩も歩けそうになかった。

 疲労のせいで鈍麻した思考とは裏腹に、感覚だけが鋭敏に冴え渡っている。

 いや、それも幻覚だろうか。

 耳に届く、草葉の揺れる音が、まるで人攫いどもの出す音に聞こえてならない。

 実際、カバルの闘争は、既に人攫いにバレていた。

 こればかりは、厳格ではない。

 

『くそ、あのガキどこに逃げやがった!?』

 

 そう悪態を吐きながら、カトラスを振り回して草を切りながら、森を行く人攫いの男の一人。

 カバルは木の陰に身を潜めて、それをやり過ごした。

 もうどれくらい前のことだったかわからないが、一度撒いたからといって、探すのを諦めたとは考え難い。

 

(……見つかるのも)

 

 時間の問題かもしれない、とカバルの心を弱気が蝕む。

 

(……でも、見つからないかもしれない)

 

 確かに、人攫いに見つからない可能性だって、あるだろう。

 だが、このまま遭難して、誰からも見つけてもらえなかったら?

 あるいは、森の奥にいるという、凶暴な獣か何かに見つかってしまったとしたら?

 どうせこんな大変で痛い思いをして、それでも結末が変わらないなら、何の意味があるのだろう?

 

「……あれ?」

 

 声の出し方も忘れてしまったかのような、そんな震えたかすれ声が、カバルの喉から洩れる。

 

 ぽたり

 

 手入れのされていない家屋の汚れと、大自然である森の汚れで色が変わってしまったズボンに、小さなシミができった。

 ぽたり

 ぽたり

 違う、そうじゃないとカバルは必死にそれをこらえようとする。

 泣いたって、仕方ないじゃないか。

 絶望したって、意味はないじゃないか。

 やらなくちゃいけないのは、逃げることだろう?

 頭では、わかっている。

 しかし──、カバルはもう限界だった。

 

「────」

 

 声は、出ない。

 嗚咽の音すら出ずに、ただ、涙がぼたぼたと零れ落ちる。

 

(誰か──)

 

 誰でもいい。

 本当は、ずっと抱えていた感情だ。

 孤児院でバカにされ、隅に追いやられ、居場所がなかったカバルが、ずっと抱えていた願望だった。

 

(──助けてよ)

 

 でも、もう、何かあったら助けてくれたであろう両親は、この世にはいない。

 それでも──、もしかしたら、助かったかもしれないと思ったのだ。

 ふらりと森の中に現れた二人の音楽家と話して、孤児院のみんなのことが少し理解できたような気になったのだ。もしかしたら、今度はうまくやれるかも、なんて思ったのだ。

 人攫いに遭うまでは。

 

(助けてよ──)

 

 きゅっと唇を噛んで、カバルは汚れた手で顔をぬぐう。

 助けて、と思いながら思い浮かべたのは、二人の音楽家の顔──。

 紅白の髪で片目を隠した、快活な女性と。

 黒い陽気なアフロヘアーの、骸骨の男性を。

 カバルはふと、思い出す。

 腰に提げている、この笛。

 

(──どうせ、歩けないなら)

 

 賭けにすらなっていないけれど。

 でも、もしかしたら。

 この音で、誰かが気づいてくれるかもしれない。

 人攫いではない、誰かが。

 カバルは緩慢な動作で腰に提げた袋からケーナを取り出し、震える腕で、教えてもらった通りに楽器を構える。

 

ポーーゥ……

 

 息が定まらないせいで、音が揺れる。

 ──ああ、吹いてしまった……。

 取り返しがつかないかもしれない。

 だって、この音は、カバルが助けを求める相手だけでなく、カバルを害そうとする者にまで聞こえるのだから。

 ざっ──。

 足音に、はっと顔を上げる。

 そこにいたのは──。

 

「ようやく見つけた! このクソガキ、手間取らせやがって」

 

 ──ああ、やっぱり。

 今までの人生、思い通りに行くことがあったか?

 カバルは力なく、肩を落とす。

 目の前に現れた人攫いが、カトラスを片手に、ニヤリと唇を歪めた。

────

───

──

 スコン!!

 夜の森の中に、小気味いい高い音が響く。

 うっ、という低いうめき声に続いて、どさりと地面に肉が倒れ伏す音。

 ふう、と息を吐く音がして──

 

「なん、で……?」

「いやァ、間に合って良かったよ!」

 

 肩で息をしながら、汗を流し、身長ほどはあるだろう細い鉄の棒を肩に担いで、彼女が言う。

 

「カバル君、大丈夫?」

 

 木の葉の隙間から差し込む月明かりに、紅白の髪が揺れる。

 ティーシャツにジーンズ姿の女性。

 ウタだった。

 

「ウタさん、どうして……?」

「どうしてって、カバル君が攫われたかも、って聞いたからだけど?」

 

 何を当たり前のことを、と言わんばかりにあっけらかんとし言ってから、ウタがニッと歯を見せる。

 でも、とカバルが弱々しい声で続ける。

 

「ライブは……?」

「待たせてある。主賓がいないんじゃ、締まらないでしょ?」

 

 おどけたようにそう言って、ウタは手元を翻すと、鉄の棒がカシャン、と小さな音を立てて短くなった。

 そのまま、ウタはカバルの前にしゃがんで、彼の頭に優しく手を置いた。

 

「大変だったでしょ? もう、大丈夫だよ」

 

 優しく微笑むその顔に、カバルは堰を切ったように泣き出した。

 

「ううう……」

 

 必死さで忘れていた恐怖を思い出したように。

 懸命さでごまかしていた痛みを初めて知ったように。

 そして、数年ぶりに、安堵というものに包まれたかのように。

 まるで幼子のように、カバルは泣きじゃくった。

 そんなカバルに、ウタは「よく頑張ったね」「もう大丈夫だよ」と何度も声をかける。

 

「でも、良かった」

 

 え、とカバルが泣き腫らした目を上げる。

 ほら、とウタは笑顔のまま言う。

 

「カバル君が、楽器吹けるようになってさ。それで、さっき吹いてくれたおかげで、この場所がわかったし。それがなかったら、多分そのまま通り過ぎちゃってたからさ」

 

 ふふ、とウタがいたずらっぽく笑う。

 

「──落ち着いたら、町に帰ろっか。ニーナ修道女も、みんなも心配してたし」

「……み、みんなって?」

 

 喉をヒクリと鳴らしながら、カバルが尋ねる。

 小さく首を傾けて、ウタが答えた。

 

「孤児院のみんな。……ケンカは絶えなかったみたいだけど、やっぱり心配なんだって」

「あいつたちが……?」

「そ。きみとケンカの絶えなかった、孤児院の仲間たちが。……良かったら、これを機にしっかりお話してみたら? それに、話を聞くと、ケンカって程ケンカになってなかったみたいだし、しっかりぶつかってみるのもいいかもね」

「ぶつかる……?」

 

 不思議そうに首を傾げたカバルに、ウタは少しだけ真面目な表情になる。

 

「そう。意見とか、主張が合わない同士で、しっかり自分の思っていることをぶつけ合うのって、相手がいるうちしかできないからさ。……いなくなってから、そのことを悔やんでも、ただ寂しいだけだし、虚しいだけだよ?」

 

 そこまで言って、「なんて」と彼女は照れくさそうに表情を崩した。

 

「これ、受け売りなんだけどね! わたしも、そのことに最近気が付いたんだァ。……でも、今では、ケンカして良かったと思う。だから──」

 

 そこまで言ったウタが、不意に言葉を切った。

 目つきが変わる。

 鋭い眼が音を探るように、右へ、左へと巡り、そして彼女の瞼が、その刃のような眼光をすっと覆い隠す。

 深い、溜め息。

 ウタは気怠げに立ち上がると、庇うようにカバルの前に立ちはだかり、そしてゆっくりと目を開いた。

 

「いい加減、邪魔しないでくれる? こう見えてもわたし、忙しいんだけど?」

 

 口調の棘を隠さずに、森の奥を睨みつけ、ウタが言う。

 ほんのしばしの沈黙。

 ごくり、とカバルが唾を飲み込んだ音を合図にしたように、がさり、という音が暗い森の奥から聞こえた。

 

「いやァ、邪魔しないでほしい、というのは、こちらの台詞なんですがねェ」

 

 白いシャツを着た、軽薄そうな細い男と、それに続く、体格のいい二人の男。片方は背が高く、もう片方はよりがっちりしているが背が低い。

 

「あ──」

 

 カバルの喉が、思い出した恐怖でヒクリと鳴る。

 細い男が、くつくつと笑いをこらえながら言う。

 

「邪魔ですか? クク、いったい、邪魔をしているのはどちらでしょうねェ、お嬢さん?」

「はァ?」

 

 眉間に皺を寄せて、嫌悪感を隠さずに上げたウタの声。

 しかし、そんなウタの態度に、男たちが動じた様子はない。

 

「まず一つ。ウチの従業員に手を出したこと」

「先に手を出したのはそっちでしょ?」

「次に、ウチの商品に手を出したこと」

「……まさか人間を〝商品〟だって言うつもり?」

「最後に、音楽家風情が、おれたちのやることに首を突っ込んだことだ」

 

 最後までウタの言葉には反応を示さず、言いたいことを言い切った細い男は、後ろに控えた二人に「やれ」と簡単に命令を出し、そして高らかと言う。

 

「どんな高名な音楽家だろうと、奴隷として売られたら、唯の金づるにしかならねェよなァ!?」

 

 下卑た笑み。

 どうやら彼らは、ウタを生け捕りにして、ヒューマンショップやらなにやらで売りさばこうという魂胆らしい。

 

「……呆れた」

 

 迫りくる二人の男を前に、ウタは小さく嘆息すると、くるりと手首を返す。

 ジャコン!

 金属の擦れる音がして、再びウタの手に、長い鉄の棒が握られる。

 トン、と地面を軽く蹴って、男たちに肉薄する。

 

「ガキが──」

 

 小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、背の高い方の男が脅すようにカトラスを振り回す。

 

(……遅い)

 

 おそらく、牽制のつもりなのだろう。

 先ほどあの細い男の言葉からもわかる通り、彼らはウタを〝商品〟として見ている節がある。

 であれば、死体となってしまった人間に、〝商品価値〟はない。彼らがそう考えているのが、ありありと見てとれる。

 ウタはひょいと身をかがめてその一撃を躱し、そのまま棒で足払い一閃。

 体が浮いた男の土手腹を、棒の先端で突く。

 

「ぐ──」

 

 呻いた男に追撃を食らわせようとウタは足に力を籠め、しかし考えを改め、彼女は前へと向かっていたその力を無理やり後ろへと反転させ、ふわりと跳び退る。

 

「ちっ」

 

 小さな舌打ちは、背の低い男が放ったものだった。

 構えていたカトラスを、所在なさげにゆっくりと下す。

 

「油断し過ぎだ、馬鹿」

「へへ、悪ィな……」

 

 尻餅をついた背の高い男が、のそりと立ち上がる。

 そして男たちは、ウタを中心に円を描くように、距離を保ったままじりじりと動く。

 背の高い男が、左側に。

 背の低い男が、右側に。

 

「はァ……」

 

 そんな男たちの様子に、ウタは面倒くさいと言わんばかりに溜め息を吐く。

 今軽く交戦した感触的に、おそらくウタが()()を出せばすぐにカタが付くだろう。

 だが、問題なのは、その後だ。

 ウタの本気とは、それすなわち、彼女の持つ〝ウタウタの実〟の能力を使うこと。

 消耗を鑑みて開発した、実用的な能力はあるにはあるが、しかしそれでも体力を大幅に使うことには変わりがない。

 事が済んだら、今待たせている観客たちに、音楽を届けなければならないのだ。

 ここで苛立ちに任せて能力を使ってしまえば、それに影響が出ることは必至だ。

 ぴたり、

 と、二人の足が止まる。

 躱されても、同士討ちにならないためだろうか、それとも、あえて視界に残ることで、気を散らす目的があるのか。

 ウタの真横よりも少しだけ前方に陣取った二人が、下卑た笑みを浮かべて、カトラスを構えなおす。

 

(……だけど、出し惜しみもしてられない、か)

 

 ウタは苛立たし気に、しかし冷静にそう結論付ける。

 理由は単純。

 ケガをするわけにも、させるわけにもいかないから。

 これからステージに立つ予定のウタ自身も。

 そして、既に満身創痍なカバルのことも。

 ウタは目を瞑る。

 

「なんかやる気か!?」

「潰しちまえ!」

 

 男たちが襲い来るのが、ウタには手に取るようにわかる。

 視覚に頼る必要はない。

 足音さえ聞こえれば、それでどう動くのかくらいの予想は付く。

 ウタは大きく息を吸い込んで、微かな木の葉の擦れる音を耳にして──。

 

「右!!」

 

 叫ぶや否や、ダン、と地面を蹴って、ウタは背の高い方の男に肉薄する。

 

「ちっ、フェイク──」

 

 カトラスを上段に構え、舌打ちする男。

 ウタは冷静にそのカトラスを鉄の棒──〝指揮杖(ブラノカーナ)〟で振り払うと、その勢いを利用して、反対側の先端で男の顎を打ち付ける。

 ガクン

 顎という箇所は、人体でも結構な急所であり、そこを強く打ち付けられれば、首を中心として脳を揺らし、脳震盪を引き起こすことができる。

 ずるり──

 男は骨がなくなってしまったかのように、踏ん張りを効かすこともできず、顔面から地面に崩れ落ちた。

 遅れて、弾き飛ばされたカトラスが地面に落ちて、やかましい音を立てる。

 そしてウタは、背後から()()()()()()()背の低い男の方を、ゆっくりと振り返った。

 

「な……ん……」

 

 男は、ガチガチと歯を鳴らして、何が起こったのか理解できないというように目を見開いていた。

 恐怖?

 それもあるだろう。

 ウタに対して──ではない。誰だって不意を突かれれば、恐怖しようものだ。

 だが、背の低い男が歯を鳴らすのは、単純に生物の生存本能故だった。

 体が冷えれば、生物は死ぬ。生き残るためには、動く筋肉を震わせて、体温を維持する必要がある。

 男は下半身を氷漬けにされて、その場に立ち尽くしていた。

 

「ヨホホ、こんばんは、いい夜ですねェ人攫い諸君。いかがですか、黄泉の冷気は?」

「ヒッ! が──、ガイコツ!?」

 

 戦闘に参加していなかった細い男が、悲鳴を上げた。

 そんな男の様子に、ブルックは低くヨホホと笑う。

 

「おやおや、悪党のくせに、しゃれこうべが怖いのですか? さんざん人の命を弄んできたというのに?」

 

 そう言いながら、ブルックは空に向かって口を開き、

 そのぽっかりと開いた暗い口の中から、薄緑色の〝魂〟がふわりと飛び出した。

 

「だというのに、死者が怖いと? 恨みが、憎しみが、怨嗟が、呪いが怖いと?」

「あ……ひ……」

 

 言葉にならない悲鳴を漏らして、男の瞳がぐるりと上転する。

 そしてそのまま、男はどうと音を立てて地面に倒れ伏した。

 おや、というように、ブルックの〝魂〟がつまらなそうな表情を浮かべる。

 

「まったく、悪党のくせに、意気地のないことです。この程度で意識を失うとは……」

 

 〝魂〟のままひとりごちるブルックの声に、霜を踏む軽い靴音が応える。

 

「ブルック、あんたのそれ、あんたが思ってるよりも怖いから」

「そうですか?」

「だってほら、カバルくん見てみなさいよ」

「え?」

 

 ブルックはそのままふよふよと宙を舞って、ウタの後ろを覗き込む。

 

「…………」

「か、カバルさん?」

 

 ブルックようやく、ブルックは木陰に座るカバルの様子に気が付いたようだ。

 カバルはぽかんと口を開けたまま、ブルックと違い魂こそ見えないが、確実に〝放心〟していた。

 

「も、もしもーし、カバルさーん?」

 

 〝魂〟のままカバルに近づき、ブルックが覗き込むようにしながら言う。

 

「あ……え……?」

 

 寝ている人を優しく起こすようなその声色に、ようやくカバルは意識を取り戻し──

 

「ぎゃああああ!?」

「ひええええっ!?」

 

 目の前の〝人魂〟に恐怖の悲鳴を上げて、今度こそカバルが気絶をした。

 その恐怖の悲鳴に中てられて、ブルック自身も驚いたように悲鳴を上げてしまう。

 

「……って、おや?」

 

 唖然とするブルックに体に戻るよう促して、ウタはさて、と気を取り直して真面目な話をする。

 

「で、ブルック、どう思う? こいつが首領なのかな?」

 

 こいつ、と言ってウタは、目を回して倒れている細い男を指差す。

 

「ああいえ、その男は首領じゃないですよ」

 

 と、ブルックはあっさりと応える。

 

「こっちに来るまでの間に、運良く人攫いたちのアジトを見つけまして。既にそちらは制圧してあります。その中に、首領と思しき人物がいたので、こちらはただ少し立場が高いだけの男かと」

 

 特に手柄を振りかざすでもなく、淡々と戦果を報告するブルックに、ウタはぽかんと口を開けてしまう。

 

「……さすがというか、何というか」

 

 ヨホホ、と小さく笑って、ブルックはカシャンと肩を竦めた。

 

「これでも元奇襲部隊隊長ですからねェ。どこぞの馬の骨ともわからない悪党に遅れは取りません。骨だけに!」

 

 スカルジョークを言って、独りヨホホホと笑うブルックに対して、ウタは特に笑うこともせず受け流し、真面目な調子で言う。

 

「で、どうしよう?」

「ライブに戻る前に、もう一仕事仕上げておかないと」

「……まあ、ここまで露骨に人攫いがいるんじゃあ、まあきっと、()()()()()()だもんね」

 

 二人は意識や戦意を失った者たちを連れて、人攫いのアジトへと向かう──

 




お読みいただきありがとうございます
このお話は一応最後まで上がりましたので、あとは投稿するだけとなりました。せっかくですので最後までお付き合いいただけると幸いです

次回投稿は水曜の夜になると思われます。よろしくお願いします。
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