【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ   作:ラットマンΣ

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賢王と蝙蝠の女王

 ———契約したしばらく後

 

「さて、アリス。サタンの魔法を契約した以上、本気で魔皇を倒すんだな?なら、私がお前たちを北の大地の門まですぐにでも連れて行ってやろう。チクタクマンは一年の猶予を設けたが、あれは間違いなく魔皇が自壊するのを待つ目的もあるだろう。とにかく、キミたちには可能な限り最速で魔皇の元に辿り着いてもらわないと困る。だから私の転移魔術でキミたちを北の大地に続く門まで送り届けさせてもらう。異論はあるかね?」

 

賢王様はそう言って空に触れる。

瞬間、空間が裂けた。

 

「……はい!すぐ行きましょう!」

 

そう言って賢王様の後に続いて私達は、空間の裂け目の中を進む。

先頭を歩く賢王様は、聞き取れないが何かと話していた。

しばらくして、私たちは北の大地と人間界を隔てる門……地獄門の前に着いた。

 

「ここが地獄門……」

 

ジニスが一人呟く。

堅牢なる門は北の大地と人間界を隔てるためのもの。

しかし、本体は門ではない。

門を中心に展開されている70億年前の魔皇降臨時に作られた結界……『桜花・神代(オウカ・カミシロ)』が本体だ。

門は楔としての役目を果たしている。

 

「さて、諸君。地獄門には着いたが、キミたちにはこれから超えなければならないものがある……()()だ」

 

賢王様はそう言うと、指をパチンと鳴らす。

瞬間、地獄門に無数の魔力で編まれた鎖が巻きつき、門を固く閉ざす。

そして、それと同時に蝙蝠の大群が賢王様のすぐ横に集まって行った。

それは次第に人型を形造り、溶け混ざり合い破裂して一人の蝙蝠の翼が生えた背の高い女性となった。

 

「ハァイ、お待たせリリス。会うの何億年ぶりだっけ?」

 

「3億と2千7百年ぶりだ」

 

「あらまぁ、よく覚えてることで」

 

現れた女性は賢王様と軽い雑談を交えながらこちらを一瞥する。

鮮血のように赤い瞳は私達の全てを見透かすように鋭く、妖しく輝いていた。

 

「……ッ!」

 

「あら?あらあらあら?サタンとの契約の話は聞いていたから分かってはいたけど、一人だけ魔力量が異常な子がいるわね?すっごく強そう」

 

「私のことですか?」

 

「そうそう!貴女!随分と理不尽な契約結んじゃったらしいじゃない?命は大事にしないとダメよ?まぁ、とりあえず……」

 

言葉が終わるより先に身体が動く。

首元に迫っていた大鎌をノーデンスで弾き飛ばす。

 

「あら?受け止められるんだ?」

 

女がそう呟く。

どう言うつもりかは分からないが、彼女は敵らしい。

 

「いきなり始めるなシェリー……いや、始めてしまうか。アリス、ジニス、フェロウ、レスト、キミたちには私達を倒してから、この地獄門を進んでもらう。まぁ、キミたちが魔皇と戦うに値するかを見極めるためだ。拒否権は無い」

 

そう言うと賢王様は空間の亀裂から杖を取り出した。

 

「雷霆」

 

唱えると同時に幾千本もの雷が轟音と共に降り注ぎ始める。

 

「いきなりかよ!クソッ!氷柱!」

 

雷が私達を貫くより先にジニスが魔法によって無数の巨大な氷柱を生成する。

氷柱は避雷針の様に雷を吸い寄せる。

この段階になって、ようやく私達は状況を理解した。

これは試練だ。

賢王様……リリスが与えた試練。

人類史最強の魔法使いと蝙蝠の女王を倒すと言う試練、私達が魔皇とチクタクマン相手に戦うに値するかを見定めるための試練だと嫌でも気付かされた。

 

「シェリー、加減はいらない。殺す気でやれ」

 

「いいの?あの子たち、最後の勇者でしょ?殺しちゃったら人類お終いよ?」

 

「構わん。そもそも、私達を倒せないなら結果は同じだ」

 

「それもそうか!じゃあ、本気で殺すわね(やるわね)!」

 

蝙蝠の女王……シェリーはそう言うと、また蝙蝠に分裂し、姿を霧散させた。

……狙われる筆頭は私かジニス、レストの3人のうち誰か。

瞬間、私はフェロウにアイコンタクトを送る。

フェロウはその意味に気づいてくれた様で、ジニスが作り出した氷柱を足場にしながら、戦場を駆ける。

狙いは蝙蝠の群れそのもの。

追いついたフェロウが蝙蝠の群れに対して大鎌で切り裂く。

 

「危な!なんでそんな武器で的確にコア()が狙えるのよ〜?!」

 

そう言って、シェリーは上半身だけ人間体になって、自身の大鎌(獲物)でフェロウの攻撃を防いだ。

 

「何、魔力の流れを見て、な?あまりにも露骨に高い魔力の個体がいたから突いてみたらアタリだったらしい!」

 

攻撃を防がれたフェロウは大鎌を自身の身体を軸に逆回転させて、もう片方の刃でシェリーに切りかかる。

 

「危なっかしいなぁ!けど、攻撃が単純すぎ!」

 

シェリーの大鎌が一瞬で液体に変わり、そしてすぐにまた大鎌となってフェロウの攻撃を弾く。

 

「な?!」

 

「ふふん!シェリーちゃんの武器はただの無骨な大鎌じゃ無いのだよ!じゃ、さよなら!」

 

フェロウの大鎌を弾いた後、シェリーの大鎌は再び液体になり、今度は槍となってフェロウの身体を貫いた。

 

「がぁッ!」

 

「まずは一人……へ?」

 

貫かれたフェロウはなおも大鎌を振るい、シェリーの首を断ち切った。

そして、フェロウは自身に刺さった槍を無理やり引き抜く。

 

「あぁ……、クソ痛い!だが!まずは一人取った!」

 

「勝ち誇ってる場合ですか!今治療しますからね!」

 

レストがすぐさま奇蹟を使いフェロウの治療に取り掛かる。

実際、フェロウのおかげで数の差ができたのはデカい。

残りはリリスだけ、なら……

 

「全力でぶっ倒す!」

 

ノーデンスを強く握り締め、氷柱を足場にしながら宙に浮くリリス目掛けて駆け抜ける。

 

「愚直すぎだ馬鹿者!」

 

リリスが空間の亀裂を作り、その中に手を突っ込む。

すると、私のいる真上の空間から巨大化したリリスの掌が現れた!

 

「な……?!なら……!」

 

空中で身体を翻し、ノーデンスに魔力を込めて光の斬撃を放つ。

リリスの掌はバラバラに切り刻めた。

後は本体だけ……

 

「もらった!」

 

「…………」

 

ノーデンスでリリスを真っ二つに切り裂く。

……あぁ、これで決着。

私達の勝ちだ!

 

「馬鹿だな、この手のパターンは往往にして第二形態があるものなのだよ、アリス?」

 

背後からとてつもない魔力を感じる。

同時に、蝙蝠の群れが先程より増えているのに気がついた。

そうして次の瞬間、巨大な魔力の流れが私達を飲み込んだ。

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