【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ   作:ラットマンΣ

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魔導王リリス

強烈な魔力の流れが世界を書き換える。

先程まで太陽が輝いていた天空は星空に変わり、冷たい風が吹き荒んでいる。

そして、天の中心にて極大の魔力を放つ者が1人……リリスだ。

しかし、姿はいつもの子供の姿ではない。

二十代くらいの大人の姿で服装も変わっていた。

体の丈に合わな大きなローブに身を隠していた子供の姿とは違い、漆黒のドレスを優雅に纏っている。

右手にはいつも使っている杖が姿を変えて握られていた。

杖は木製だったはずが金属のような光沢を放ち、その先端には魔力で出来た真円の結晶体が浮かんでいた。

 

「ふぅ……さて、第二ラウンドだ。シェリー、起きろ」

 

リリスの声に従う様に蝙蝠の大群も一つに混ざり合い、シェリーの姿に変わった。

大鎌は先程より更に巨大で歪な形に変質していた。

 

「なぁにが、『第二ラウンドだ』ですか!最初っから本気出しなさいよ!……まぁ、それやるならシェリーちゃんは観戦に回るわよぉ〜」

 

シェリーはそう言うと鎌を下ろした。

 

「構わんよ。何、こういうのは様式美と言うやつさ!ここからがワタシの本気だ」

 

そう言うとリリスは杖を両手で持ち、私が知る限りでは初めて呪文を詠唱し始めた。

 

「我、虚空より呼び起こすは天の観測。我が眼は天と一つになりけり。故に我は全てを見通す天体也『天体・根源の瞳(はじまりのほし)』」

 

詠唱が終わるが何も起きない。

魔力の変動は元が大きすぎてわからない。

いったい、何をした?

 

「どうした?見ているだけでは何も変わらんぞ?」

 

リリスはわざとらしく煽る。

けど、見ていたところで何も変わらないのは事実だ。

なら———

 

「言われなくても!」

 

攻撃あるのみ!

私の声に合わせてみんなが動き出す。

ジニスは氷柱を出現させながらも、リリスに視線を向け魔力を込めている……あれは氷結魔術の準備段階、対象を即座に凍結させる絶対零度の術。

これなら目下1番マズいであろうリリスの動きを止められる!

なら、私とフェロウは止まる瞬間を刈り取れば良い!

気づいたフェロウはジニスが作った氷柱を足場にして駆け上がる。

次いでレストは奇蹟をもって私とフェロウを強化する。

一撃、一瞬で決める!

それくらい出来なきゃ魔皇なんて倒せるわけがない!

 

「視えているぞ?」

 

ジニスの氷結魔術が決まる瞬間にリリスは視界から消えた。

 

「は?」

 

確かにさっきまで居たはずなのに!

まるで何が起こるかわかっていたかの様に消えた!

 

「我、虚空より呼び起こせしは天を裂く嵐也『観測・宇宙嵐(ソラアラシ・マガツ)

 

詠唱が終わると同時に身体が上下左右めちゃくちゃな方向に回転しながら切り刻まれる!

痛い!痛い痛い痛い痛い痛い!

早く脱出しなくちゃ身体が細切れになる!

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「アリス!フェロウ!レスト、アリスとフェロウに治癒の奇蹟ってその距離から撃てるか?!」

 

「大丈夫です!ですがジニス、長くは持ちませんよ?!」

 

「わかった!なんとかする!して見せる!」

 

考えろ、俺!

早くしなきゃ2人は死ぬ!

そもそも魔法の射程範囲はどこまでだ?

あの回転、まるで嵐だ!

下手に止めてもバラバラになるだけだぞ?!

……嵐?

 

「……ッ!賭けるしかねぇな!」

 

重力操作の魔法で2人をとりあえず一塊にする!

 

「ジニス、何を?!」

 

「賭けだよ!あぁ、けど……」

 

一塊になった2人は同じ方向に回転した。

これなら……!

 

「凍れ!」

 

即座に2人を氷結魔法で周囲の空間諸共氷漬けにする。

一塊の巨大な氷塊は空中で回転しながらも、その重さに耐えきれず落下を始めた。

地に着く寸前で重力操作の魔法で氷塊を掴み取る。

氷塊はそのままゆっくりと地面に落ちた。

……後は氷結魔法を解くだけ。

もし予想を外して失敗してたら最悪の結果が待ってる。

 

「頼むぜ……!」

 

魔法を解いた瞬間、ボロボロになった2人が氷塊の中から現れた。

 

「うっ……おぇ……」

 

「よし!生きてる!レスト、早く治癒の奇蹟を!」

 

「分かってます!それより、周囲に警戒を!」

 

「オーケー!」

 

あの師匠のことだ、こんなチャンス必ず狙いに来る!

だから、既に準備した!

特定範囲内に侵入し次第、氷の剣が対象を貫く結界を張った!

来やがれ……アンタなら絶対に来るはずだ!

 

「…………」

 

来ない?

何故だ?

師匠がこんな見え見えのチャンスを逃すはずがない!

ん?

見え見え……

 

「そうか、わかった!けど、ちくしょう……そんなのありかよ!」

 

師匠が攻撃してこない理由は見えているからだ!

俺たちの行動が!未来が!

だから、自分に有利な選択しか取らないんだ!

 

「おや、気づいたかいジニス?ワタシの『天体・根源の瞳(はじまりのほし)』の仕掛けが」

 

師匠の声だけが響く。

出てくるわけない、俺は結界の直径を1キロで設定した!

どこか安全な場所で見てやがるな……

 

「アンタの魔法は未来視だろ?インチキ臭い魔法だ!」

 

「正解だ。流石、我が弟子だ。で?どう突破する?」

 

正解(最悪)だ。

そんなもん、突破できるわけがない。

未来が見えるなんてズルだろ!

決まっているものを変えるなんて出来ない。

魔皇なんかよりよっぽどタチが悪い。

……結界の維持もそろそろ限界だ。

幸い2人は十分回復したが……

 

「…………」

 

魔力の維持のために結界を解く。

瞬間、師匠は俺たちの前に現れた。

 

「どうやら詰みらしいな」

 

「あぁ、その魔法は無理だ。未来を変えるなんて出来やしない」

 

そう、できるわけがない。

俺たちの未来はここで終わり。

そう……

 

「そうか、では……我、虚空より呼び起こせしは降り注ぐ憐れみの涙也『天体観測・流星(レンビン)』」

 

宇宙から無数の星が降る。

まるで涙の様に。

この量なら地上は焼け野原になるだろう。

それが師匠が視た未来。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「そうだよなぁ、師匠!俺たちが諦めたら、星ごと魔皇を壊す賭けに出るよなぁ!アンタなら!」

 

星を焼く魔法。

勇者達が魔皇を倒せなかった時用に師匠が作っていた最後の魔法。

それが放たれた。

それこそが俺が狙っていた、たった一度のチャンス!

 

「ジニス、何を言って……?!」

 

「未来は変えられない。俺はそう思っていた!けど、破滅への過程は変えられる!実際、アンタがその気ならもっと早く『天体観測・流星(レンビン)』を撃てただろ?けど、違った!アンタは最後の最後まで勇者一行(俺たち)に期待していた!だから、俺たちが……俺が諦めたから『天体観測・流星(レンビン)』を撃った!逃れられない破滅、絶対的な死!だけど、それが俺に理解させてくれた!未来は変えられるってな!」

 

あー……我ながら何言ってるのかめちゃくちゃだ。

アリス達も何言ってるのかわかってないし。

まぁ、なんだ?

つまりは……

 

「俺たちの未来は、俺たちが創る!」

 

「…………ジニス」

 

「我、虚空を喰らい、孤独を喰らい、天を喰らいて全てを統べる全能の理を破壊する『創世(カイビャク)』」

 

瞬間、降り注ぐ憐れみの星の主導権が俺に移る。

降らせる場所を『黒白の太陽(ピンポイント)』にして一点集中!

後は地上への被害を逸らすためには……

 

「アリス!黒白の太陽側の空に向かって全力でノーデンスを放て!」

 

「え?わ、わかった!はァァァア!!!」

 

星剣(ノーデンス)による光の刃(ビーム)をクッション代わり兼地上からの攻撃として使う!

星剣(ノーデンス)の魔力パターンは解析済みだ、なら……

 

「我、地より放たれし星剣の光と天より降り注ぐ憐れみの涙をもって災禍を撃滅せん!」

 

二つの軌道を一つに修正、目標は黒白の太陽(魔皇城)

 

「いっけぇぇえ!!!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

ワタシは長い間この星を見てきた。

そして多くの別れを経験した。

次第に、ワタシは未来が怖くなった。

次の別れがいつ来るのかが怖くなった。

だから未来を視る魔法を作った。

未来を知れば覚悟ができるからだ。

そして、100年先の未来を視る魔法ができた。

ワタシは魔法が見せる未来を視て覚悟を決めることができた。

だけど、出来るのは決まった未来を受け入れることだけ。

未来は変わらない、そう思っていた。

それをまさか弟子に否定されて、あまつさえ本当に未来を変えられたのだから不甲斐ない。

二つの大魔法によって黒白の太陽は跡形もなく砕け散った。

そんな光景、ワタシの視た未来にはなかった。

あぁ……これが人の可能性か……

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「よっしゃァァァア!!!見たか!未来なんざいくらでも変えられるんだよ!」

 

ジニスがそう叫ぶ。

私が放った星剣(ノーデンス)の一撃とリリスの『天体観測・流星(レンビン)』の同時攻撃で黒白の太陽は砕け散った。

リリスはその光景をただ見つめていた。

結局、リリスとの勝負は有耶無耶になってしまったが……

 

「と言うか、ジニス!もう、色々と説明して!言われるがままに星剣(ノーデンス)を撃ったけど、どこからどこまで計算のうちだったのよ!」

 

「説明いるか?まぁ、師匠の『天体・根源の瞳(はじまりのほし)』をハッキングした辺りからは計算のうちかな、なんて」

 

それを聞いたリリスは笑う。

 

「ははは!ワタシの『天体・根源の瞳(はじまりのほし)』をハッキングしていたのか!そんな芸当ができるのはお前くらいだよ、ジニス!」

 

「魔法ハッキングされたのに喜んでやがる……まぁ、勝負は有耶無耶になったが黒白の太陽はぶっ壊れたからよしとしようぜ!」

 

なんだか話が噛み合わないが、事実黒白の太陽は破壊できた。

あの威力だ、中にいた魔皇も無事では済まないだろう。

そう自分に言い聞かせる。

そう、終わった。

全部、きっと。

瞬間、星空は玉虫色の不気味な空へと書き変わった。

そして、私たちは対峙することになる。

魔皇と千貌道化に……

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