【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
———王都ヨクド周辺にて
「いやぁ、まさか馬車で帰れるなんてラッキーだね!」
「なんか前にも似た様なことあったな」
「確かによく人助けしては馬車に乗せてもらったな、俺たちは」
「ですね。僕にも覚えがあります」
そんなたわいもないことを笑顔で話しながら馬車はヨクドに近づいていく。
あぁ、これで本当に私達の旅は終わってしまうんだな。
そう思うと少し悲しくなる。
魔皇……アザトース討伐の旅路は困難を極めたが、その中でも楽しいことは山ほどあってその全てが愛おしい。
そんな長く短い様な旅が今、終わりを告げる。
———王都ヨクドにて
辺り一体から響く祝福の声。
周りの家々からは祝福の花びらが散らされる幻想的な光景。
私達勇者一行の凱旋パレードに対する民の祝福だ。
ジニスは気恥ずかしそうに、フェロウは堂々と、レストは手を振り皆に応える。
私は少し恥ずかしいが微笑みながら手を振った。
そうしてゆっくりとヨクド城に向けて歩みを進める。
———ヨクド城にて
「勇者アリス、魔導師ジニス、戦士フェロウ、僧侶レスト。そなたらによって魔皇と黒白の太陽は打ち滅ぼされた。これからは真に平和な時代が訪れるだろう。本当にありがとう」
王はそう言って頭を下げる。
けど、始まりの日に銅貨5枚しかくれなかったの忘れてないからな!
おかげで最初は馬小屋で寝泊まりしてたんだぞ!
……けど、そうか。
終わっちゃったかぁ……私の……私達の旅路が。
———夜 王都ヨクド 大広場にて
「酒だぁあ!」
「タダ酒だぁあ!」
「「イェーイ!!!」」
そう言ってジニスとフェロウは楽しそうに酒を飲む。
「ふふ、ジニス、フェロウはしゃぎすぎよ?」
「アリス、いいじゃないですか。今日はめでたい日だ。アリスも露店で食べ物をもらってくると良いですよ」
「レストまで……まぁ、そうね! ちょっと行ってくる! 呑んだくれ二人を見といてね!」
「ええ、お任せを」
酔いどれ二人をレストに預けて私も露店を見て回る。
美味しそうなものがたくさんあるけど、それよりも皆んな笑顔だ。
私にはそれがたまらなく嬉しい。
私が旅を始めた頃は皆んな暗い顔をしていた。
けど、今は違う。
皆んな笑顔で希望に溢れている。
あぁ……これが私達が勝ち取った未来の形なんだ。
なんて綺麗で微笑ましく美しいだろうか。
「勇者様だ〜!」
「ほんとだ! ねぇねぇ、旅のお話聞かせて聞かせて!」
気がつくと周りには人が集まっていた。
ジニスたちも呼び、皆んなに旅の話をする。
辛くて、苦しくって、けれど何処か微笑ましく愛しい旅の話を……
———明朝 王都ヨクド入り口にて
「皆んなはそれぞれの居場所に帰るんだね」
そんな話を皆んなとする。
ジニスは賢王の書庫に、フェロウは旅に、レストは冥界に、それぞれの居場所に帰る。
わかっていたけど寂しいな。
「そんなしょんぼりするなよ! たまにゃ遊びにくるぜアリス!」
「うむ、俺の認めた戦士だ。偶には一戦交えよう!」
「ボクも偶に来ます。そうでなくとも文通も出来ますしね」
「……うん、そうだね! 最後は笑顔で、ね!」
そうしてみんなを見送る。
あぁ……本当に終わってしまった。
私達の旅路が。
けど、これからも未来は続いて行く希望に向かって!
「さぁて! せっかく王様からの報酬で王都にタダで住める様になったんだからいい家貰っちゃうぞ!」
そうして私は王都に戻って行く。
今はいっときの別れだけど、またいつか皆んなと一緒に冒険がしたい!
楽しくて笑える様な旅路がしたい!
だからこそ私は変わらない。
もう勇者じゃないけど、おせっかい焼きのアリスとして困ってる人を助ける!
それがこれからの私の生き方だ!