【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
「
「はい、天獄です」
クリスは不可解そうな私に対してきっぱり答えた。
続け様にクリスが語る。
「簡単に説明すると、地獄と天国が合併したんですよ。大体30億年くらい前に。と言うのも、地上の天国信仰は強くなる一方で地獄の伝承が薄れていってしまったんです。閻魔大王曰く『信仰なくして地獄は形作られない』との事で、地獄が消滅しかけたんですよね。そんな時に天国側と地獄側で協議して両者を合併、新たな天獄として再構築したわけです」
なるほど、情報量が多いが、要点だけ摘めば天国と地獄が一緒になったわけだ。
「けど、それに何の意味が?」
「地獄と天国は表裏一体、どちらかが忘れられればもう片方も崩れていくそうです。それに、罪人とはいえ魂の眠る場所は必要ですからね」
「……随分と詳しいのね、クリスは」
「はい、今は天獄の管理団体に所属していますので。他の方々よりは詳しいですよ」
「そう……ねぇ、あっちに見える街? みたいなのは何かしら」
「あれは天獄最大級の都市、『十王街』ですね。元々は閻魔大王達十王の裁判所だったものです。今となっては死者達の住まいが集う活気にあふれた街ですよ!」
「そう、少しだけ行ってみたい。案内をお願いしても良い?」
「ええ、喜んで!」
クリスはにっこりと笑ってそう答えた。
私はクリスについて行きながら考える。
本当に私が
———十王街入り口
「魔皇だ! 魔皇がやってきたぞ!」
「来るな! 消えろ悪魔め!」
「何で天獄に魔皇がいるの?! 王達は何をしているの?!」
あぁ……やっぱり私は居るべきじゃない。
天獄に集う魂の大半は私の被害者だ。
やはり私は居るべきではない。
そんなことわかっていたのに少しだけ期待した自分が愚かだった。
「皆さん落ち着いて! 話を聞いて……」
「クリスさん?! 何で魔皇なんか連れてきた! 早くそいつをどっかに消してくれ!」
「……ッ!」
クリスが拳を握りしめる。
あぁ、いけない。
私のせいでクリスまで悪者になるなんてダメだ!
「黙れ! 我こそは魔皇! 魂さえも焼かれたくなければ疾く消え失せろ!」
そう言い放つ。
瞬間、街中の魂が逃げ始める。
これでいい、これで……
「アキル! なんで……」
「お前も消え失せろ、それとも余と戦うか?」
「……そう言うことですか。天獄には人気がない場所もあります。私は市民の誘導をします。……お気をつけて」
「そうか、失せろ」
そう言って踵を返し私は十王街を後にした。
それからはただひたすらに歩き続けた。
どうやら天獄にも昼夜があるらしい。
何日も、何日も、ただひたすらに誰もいない場所を目指して歩き続けた。
そうしていつしか私は薄暗い洞窟に辿り着いていた。
ここなら誰の迷惑にもならない。
誰かが怯え、恐怖することもない。
幸い死者だからか空腹でも死にはしない。
ただ、少し疲れた。
少しだけ眠りにつく。
冷たい石の上で一人静かに……
あぁ……寂しいな……
せっかくクリスに会えたのにまた離れ離れになってしまった。
けれど、私にはそれがお似合いだ。
私の罪は許されない。
例え死のうと決して許されないものだ。
けど……あぁ……誰か私を見つけてよ!
一人は嫌だ!
何億年も孤独を過ごしてきた!
それでも一人は嫌だ!
あぁ、あぁ……お願いだから誰か私を受け入れてよ……
涙が溢れる。
止まることなく涙は岩を濡らす。
冷たい漆黒の中、いつしか私は意識を失った。