【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
———王都ヨクド アリスの家にて
「そう言えば、アリス。星剣はどうした?」
フェロウが不意にそんなことを聞いてきた。
「星剣なら勇者の隠れ里に返しちゃったわよ? ほら」
そう言ってマドホで勇者の隠れ里の記事を出す。
そこには勇者が実際に使った星剣として写真が写っていた。
「お前は馬鹿か?! あれほどの武器を返したぁ?! 馬鹿なのか……いや、馬鹿なのか?!」
「え、酷くない? 泣いちゃう」
「しかも岩に刺しただけって……大丈夫なのか?」
「あー、それなら大丈夫。私以外の人じゃ引き抜けなかったから。それになんか御利益ありそうじゃない? ほんのり光ってるし」
「やっぱりお前は馬鹿だよアリス……」
フェロウはしばし絶句していた。
そんなことないもん。
ちゃんとあるべき場所に還しただけ、それ以外の何でもないのだから……
「それはさておき、ジニスとレスト遅いねー。お腹空いてきちゃった」
「話を逸らすな! ……まぁ、確かに遅いな」
そうしてしばし沈黙する。
冷静に考えるとフェロウと2人っきりって珍しいなぁ。
旅の道中での宿屋くらいでしかなかったし、あんまり喋らないで寝ちゃうんだもん。
「そう言えば、フェロウ。傷の具合はどう? 大丈夫?」
「ん? あぁ、大丈夫だ。だが、この俺が腕を捥がれるとはな……正直敵を侮りすぎた」
フェロウは捥がれた筈の腕を触りながら答える。
フェロウは勇敢な戦士だ。
故に今回の敗北はかなり来ているんだろう。
「フェロウも慢心するんだね」
「何だ? 喧嘩か? 買うぞ?」
「いやそうじゃ無くて、フェロウもそう言うところあるんだなぁって思っただけ。だって一緒に旅した戦士フェロウは油断も慢心もしない完璧な戦士ってイメージだったから。なんか人間臭くっていいなって」
「なんか絶妙にムカつくな」
「え、酷い! 褒めてるんだよ!」
「褒め方に悪意があるように感じる……いや、何も考えず真っ直ぐに言ってるからそう感じるのか? まぁ、褒め方を少しは覚えた方がいいな」
「採点が厳しいなぁ」
「俺とて乙女だ少しは傷つくんだぞ?」
その一言を聞いて絶句する。
フェロウの口からそんな台詞が出るとは思わなんだ……
けど、へぇ、乙女ね。
「なら、乙女同士今度お茶会でもする?」
「な、べ……別にやりたいなら付き合ってやるが……」
フェロウは耳を赤くして恥ずかしそうに答える。
何だ、私全然みんなのこと知らなかったんだ。
今回の事件が終わったら親睦会でも開こうかな。
そんなことに思いを馳せながら日は傾いてきていた。
漆黒の闇の中混沌の残滓が蠢く時が刻々と近づいてきていた……