【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
———王都ヨクドにて
「はぁ、すっかり暗くなっちまったぜ」
「ジニス、しょうがないですよ。何せアリスの家にはまともな食料がない。食事を作るのにはまず材料から! 貴方も美味しい料理が食べたいでしょう?」
「……だな、飯が干し肉だけはごめんだ。さて、そろそろ出てきたらどうだ?」
そう言ってジニスは後ろを振り返る。
その視線のいくらか先には黒いローブを着た1人の少女が佇んでいた。
「初めまして、勇者御一行様。唐突ですが力試しをさせていただきます」
そう言うと少女は瞬時に消える。
「な……」
「破!」
彼女はジニスの懐に潜り込み腹部に手を当てる。
瞬間、ジニスは後方に吹っ飛ばされる。
「ジニス! 何者か知らないがそっちがその気なら!」
レストが少女めがけて奇蹟を放つ。
しかし、少女は再び姿を消して数秒後にはレストの懐に潜り込んでいた。
「しまっ……」
「遅い!」
レストもまた吹き飛ばされる。
街はざわめき、夜の暗がりが恐怖を煽る。
◇◆◇
ジニスとレストがボロボロになって倒れていた。
その先には黒いローブの少女が一人。
街はパニックになっていた。
ドクンっと心臓が脈打つ。
少女の冷たい視線……まるで、魔皇を想起させるような視線。
私は手にした剣を力いっぱい握る。
怒りを込めて静かに紡ぐ。
「
蛇腹剣と化した剣を少女めがけて斬りつける!
しかし……
「遅い!」
まるで風のように少女は蛇腹剣を避ける。
数秒後、私は後方に大きく吹っ飛ばされた。
「ガハッ……くぅ……」
痛みの中、何とか体を起こして敵を睨む。
フェロウも攻撃を加えているが
そのままフェロウも同じく吹き飛ばされる。
「この程度か! 勇者一行とは! 立てるものはいないのか!」
少女が吠える。
私は再び起き上がり、蛇腹剣を鞭のようにしならせ反撃に出る!
逃がさない、今度は逃がさない!
あらゆる角度から攻撃できるように高速で剣を振るう。
「……なるほど、少しは骨のあるものがいましたか」
そう言うと少女が視界から消える。
ありえない、確かに仕留められる範囲にいたはず……そうでなくとも刃の包囲網を突破できるはずがない!
「どこを見ているのですか?」
その声と共に背部を強烈な一撃が襲う。
そのまま地面に叩きつけられ、めり込む。
「……まぁまぁ、ですかね。とりあえず———
「ははは……」
「…………」
あぁ……
私は今負けている!
圧倒的に、完膚なきまでに!
ああ……ああ!
こんなのはあの旅路以来じゃないか!
辛く苦しく楽しいあの旅以来の敗北!
昂る!
痛みが私に生きている実感をくれる!
そのまま私は苦痛に満ちた体を無理やり動かし立ち上がる。
「ふふ、ははは、あははは!!! 最ッ高!!! それでこそ! それでこそ!!! 戦い甲斐があるッ!」
「笑いますか……随分とクレイジーな勇者も居たものですね。貴女じゃ私に触れることすら出来ないのに……」
「そんなもん、やってみなきゃわかんないじゃない?
その一言で剣は歪な刃物の集合体に姿を変え、私の拳に纏われる。
まるで拳に無数の刃を刺したような無骨な剣。
あぁ、けど今はこれが1番良い!
「行くぞ?」
全身全霊で踏み込みダッシュする!
当然少女は避けようとするが
少女の足を掴み地面に叩きつけ、上から破壊剣を叩きつける!
「ガッ!」
「もう一発!」
だめ押しの二発目を叩き込む。
少女は血反吐を吐き、破砕音が響く。
「くっ……
少女が呟くと途端に少女の傷が癒える。
なら、
「もう一発———
「聖装展開!」
三発目を叩き込もうとした瞬間少女が光り輝く。
目を閉じている間に少女は眼前から消えていた。
しかして気配は後ろから感じる。
振り返るとそこには全身に軽度の鎧を身に纏い、下半身、特に脚部が重点的に装備によって強化されており、両足は完全に鎧で覆われかつその鎧にはブースターの極小版の様なものが片足につき左右5個づつ、計10個も付いている両足で計20個もあるブースターから分かる通りあれはスピードに特化したものだろうか?
そして、一際目を引くのは彼女の背面に浮遊している彼女の身長の倍ほどの大きさの
まさしく聖なる鎧といったところか……
面白い!
「少々ギアを上げます。ついて来れますか?」
「ハッ! いいじゃん、いいじゃん! もっと闘おうよ! サァ!」
少女が迅雷の如く駆け巡る。
先程よりもはるかに早い!
ああ……
五感を研ぎ澄まし少女の位置を探る。
———視えた!
体を捻り拳を置く。
そこめがけて少女は来る!
しかし……
「
身体が重くなり拳が下がる。
瞬間、眼前から一撃が飛んでくる。
しかし、
まるでそこに磔にされているかのように動けない!
そこから更に連撃が加えられる。
痛い、痛い痛い痛い!
あぁ、けど———
「これで終わりです」
少女が高く飛翔し右足にクナイが集中し円環を作る。
彼女の必殺の一撃なのだろう。
私の身体は相変わらず動かせない。
まるで身体中を鉛でコーティングされたかのような嫌な感覚。
意識は今にも飛びそうで全てがゆっくりに見える。
あぁ、けど———
「ブラストストライク!」
「まだ足りないんだよ!」
身体を無理矢理動かす。
骨が砕け、肉は弾ける、痛みが身体を支配する。
だが、一撃、あと一撃ぶち込めればいい!
彼女の必殺の蹴りに必殺の拳をぶつける!
「な……きゃあああ!!!」
彼女の叫び声が聞こえる。
どうやら足が砕けたらしい。
「ザマァみろバァカ……」
そのまま私は地面に倒れ込む。
右腕はグチャグチャ、身体も限界。
身体からは大量の血が滴り、血溜まりを作り上げる。
肉体が少しづつ冷えていく。
あー、けど……
「楽しかったなぁ……」