【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ   作:ラットマンΣ

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この物語は蒼葉アキルが魔皇となりアリスの時代に語り継がれることとなる本編で描かれなかった決戦の物語です。



番外編 第一次魔皇大戦

 ———それは唐突だった。

 ある日、予玖土町の空に()が空いた。

 何もかもを吸い込むような真っ黒な穴が。

()()()はそこから這い出でた。

 触手頭の蟾蜍もどき、四つ腕の巨人、馬面の鳥、黒い粘液の塊……

 終わることのない怪物の雨。

 現れた怪物どもは手当たり次第に虐殺を始めた。

 男も女も子供も大人も関係なしに皆殺しだ。

 アタシは……アタシ達はかろうじてその地獄から逃げられた。

 ……いや、逃げ出した。

 リリスが開いた緊急のゲートで屋敷にいた奴らはみんな助かった。

 正直、一体なら何とかなるがクソッタレな怪物(アイツら)の数の暴力にはアタシでも勝てない。

 リリスの拠点……ノアに着いてアタシ達はようやく事態を把握した。

 予玖土町に開いた穴は外宇宙と繋がっていてそこに居る怪物を無尽蔵に呼び出していた。

 数日もすれば日本は怪物達の楽園だ。

 事態を把握した日本政府は外宇宙存在の秘匿を破り公開、同時に各国政府も助力し一時的にだが予玖土町周辺を強固な結界で封印し事なきを得た。

 裏では光美(ミツミ)や『教会』の連中も動いている。

 そして数ヶ月後、()()が降臨した。

 他の怪物とは全く異なる存在、見た目はほぼ人だが頭部には歪な角が生えた少女の姿をとっている……アタシは何処となくその姿に既視感を覚えていた。

 ……話が逸れたが魔皇は()()()()()

 光美と『教会』の敷いた結界をまるで障子を破るかの如く破壊し、怪物達を統率し、()()()()()()()()()()()

 魔皇と言う統率者が現れた怪物達は予玖土町から東京までの道行を最短で目指しながら殺戮を繰り返した。

 当然日本政府も黙ってはおらず自衛隊による殲滅作戦が行われたが、悉く魔皇によって阻まれた。

 そうして数日後、東京は血と臓物で彩られた街へと姿を変えた。

 怪物……特に魔皇はあまりにも強すぎる。

 東京の一件を持って世界は一時的に一つにならざるを得なかった。

 今まで秘匿されて来た魔術や『教会』、陰陽師に地獄の存在、リリスと言う外星人の存在を解禁、総動員し日本にいる生存者を全員諸外国に避難させた。

 そうしてもぬけの殻となった日本……魔皇が沈黙している東京に対して核攻撃による殲滅を行なった。

 当然批判は凄まじかったがそれも直ぐ冷めた。

 怪物は居なくなり残ったのは焦土と化した東京……そして()()()()()だった。

 その後、日本は大結界が張られ世界から孤立した。

 核作戦から数日後、東京上空に巨大なホールが発生した。

 そこから這い出でた怪物は今までのやつとは決定的に違った。

 蝙蝠の羽を生やした肉体を持つタコ頭の怪物、頭のない巨人、闇が形をとったナニカ、生ける狂い火、黄衣の王、顔の無い漆黒の巨人……数えきれないほどの怪物、いや邪神が降臨し魔皇に従った。

 そうして魔皇はゆっくりと目醒める。

 初めに超規模の地殻変動が起きた。

 日本を中心として世界がパンゲア大陸の様に物理的に一つにされた。

 その際の災害で多くの人類が死傷した。

 次に魔皇は結界を破った。

 それにより邪神の狂気が世界中に伝播した。

 狂った人間たちは互いを殺し合いまるで招かれるかの如く魔皇の元を目指した。

 最後に魔皇は星辰を書き換えた。

 これ自体は人類に対しては特に意味はない。

 しかし、邪神達はその力を増大した。

 この時点で人類の50%は魔皇によって殺害ないし服従された。

 そして———

 

 

 

 ———ノア内部にて

 

「ケイト・リード、リリス、サタン、君たちには魔皇と戦ってもらう」

 

 モニター越しに各国首脳がそう告げる。

 

「は! アレがたった3人でどうにかなるもんかよ?!」

 

 アタシは叫ぶ外星人のリリスと地獄の魔王サタンはまだわかる。

 だけど何だってアタシがそのメンツに入る?! 

 理解できないししたくない。

 

「核攻撃をしようにもまだ一般市民がいる、他の邪神たちは今まで動く気配すらない。ならば魔皇さえ倒せば事態は丸く収まるはずだ!」

 

 一人の首脳が声を荒げる。

 それはあまりにも希望的観測すぎる。

 第一、魔皇を殺せたとして邪神どもは残ったままだ。

 何も解決しない。

 

「頭がイカれちまったのか? 何一つ解決何ざしねぇよ! もうアタシ達に残された選択肢は服従だけだ! わざわざ死にに行くなんざゴメンだね!」

 

 首脳陣がざわつく。

 結局その日の会談は有耶無耶になって終わった。

 

「……勝てるわけないだろあんな化け物に……」

 

 そんな独り言を吐いていると肩を叩かれる。

 目の下に深いクマを作ったグレンがそこにいた。

 

「話聞いたぜ、ひでぇ話だな」

 

「……アンタこそ酷いツラね、どうしたの?」

 

「なに、アナンタの調整と量産をな。こっちもお偉いさんからの依頼だ。やっこさんらはまだ人類に勝ち目があると思ってるらしい」

 

 グレンはため息をつく。

 

「無理よ! 核で傷一つつかない相手よ?!」

 

「んなこたぁ分かってるよ。ただ……」

 

 グレンは一呼吸置いて語る。

 

「このまま何もせずに人類が滅亡するのは嫌だ。俺たちは過去を走り抜けた先人達の上に生きている。それがクソッタレの邪神(よそ者)のせいで終わるなんて認めねぇ! 俺たちはこの先も生きて人類の歴史を刻むんだ!」

 

 そうグレンは告げた。

 何時もらしからぬグレンに少しドキッとする。

 あぁ……けど、確かにそう言われるとムカついてきた。

 終わりが来るのは構わない。

 けど、アタシにだって認められない終わり方ぐらいある! 

 

「グレン、お願い聞いてくれる?」

 

「……何だ?」

 

「アタシの身体改造よ、アタシはリリスやサタンみたく特別な力があるわけじゃないなら、他のもので補うしかない」

 

「…………」

 

 グレンの表情が曇る。

 

「それにさ、アタシが選ばれた理由何となくわかるんだよね。ほら、アタシって世界最大の殺人鬼じゃん? 魔皇殺せなくてもアタシを処理したいやつなんて山ほどいるのよ。なら、最後くらい役に立って———

 

「死ぬ気か? 俺は認めないぞ!」

 

 グレンがアタシの手を掴む。

 

「お前は確かに最低最悪の人殺しだ。死んで当然だろうよ。けど……俺はお前に死んで欲しくない! なんて言うか……あー! 好きなんだよ! お前の事!」

 

 予想外の発言に思わず目を丸くする。

 好き? ライクじゃなくてラヴ? 

 グレンがアタシの事を? 

 

「……今言うセリフ、それ? ……けど、嬉しい。アタシ、愛とか恋とかわからないけど間違いなく嬉しい!」

 

 これは本当だ。

 アタシは誰かに愛される資格なんかない。

 ずっとそう思って来たし当然だと思ってた。

 けど、グレンはこんなアタシを愛してくれている。

 なら、期待に応えないと。

 

「グレン、必ず生きて帰って来る。だからその時は、ね?」

 

「……おう!」

 

 

 

 ———決戦前夜

 

「さて、作戦は以上だ何か質問はあるかね?」

 

 リリスが問う。

 サタンはつまらなそうに欠伸をする。

 

「要点は大体分かった、身体改造の方もだいぶ馴染んだし。そこの魔王様は知らんけど」

 

「失礼だなぁ。僕だってやる時はやるんだぜ? それに今回の件は結構頭にきてるんだ。外宇宙だか何だか知らないけど勝手に人の星乗っ取りに来るなんてねぇ?」

 

「あら、以外とやる気はあるみたいね。なら、安心した。明日はお互い死なない様にしましょう」

 

「言うねぇ、君。一応僕地獄の王なんだけど?」

 

「喧嘩するな! サタン、ケイト!」

 

「「はいはい」」

 

 ……明日が決戦。

 人類の道を分ける重要な闘い。

 決心はついた、覚悟もできてる。

 けど、やっぱり怖い。

 今まで人を殺して、殺して、殺し続けた。

 そうしなきゃ生きていけなかったから。

 それ以外の生き方を知らなかったから。

 だけど、最後くらい人の役に立ちたい。

 いや、最後じゃない。

 また笑ってグレンの元に帰ってくるんだから。

 

 

 

 ———翌日 魔皇の地にて

 

「…………」

 

 魔皇がこちらを認識する。

 他の邪神は手を出してくる気配すらない。

 魔皇はただじっとアタシ達を見る。

 

「いくぞ!」

 

 リリスの声で作戦を開始する。

 と言ってもやることは簡単だ、全力で殺すだけだ。

 

「魔皇、死ね!」

 

 リリスのワープゲートが無数に展開する。

 アタシはそこに飛び込み魔皇の死角からゼロ距離射撃を行う。

 しかし魔皇の肉体は傷つかなない。

 直ぐ様ワープゲートに入り再び別角度からナイフの一撃を加える。

 先程と異なり僅かながら傷がつく。

 魔皇は傷ついた部分を少し見る。

 

「よし! サタン!」

 

「任せろ!」

 

 僅かに傷ついた部分が大きく広がり大量に出血する。

 すかさずアタシは即座にワープゲートに飛び込みヒットアンドアウェイで魔皇に傷を少しづつ付けていく。

 それをサタンが広げる。

 これを繰り返し、魔皇を殺す! 

 

「…………」

 

 魔皇は大量の出血を見て尚動かない。

 これなら……! 

 瞬間、私の左腕が弾け飛ぶ。

 

「……え?」

 

 痛覚はオフにしているから問題ない。

 けど、何をされた? 

 そもそもワープゲート内は干渉できないはず。

 いや、考えてる暇はない。

 まだ右腕が残っている! 

 

「貰っ……」

 

 瞬間、アタシの胴体が弾け飛ぶ。

 

「あ……」

 

 まだ……だ、まだ右腕で貫けば! 

 

「…………サヨウナラ、ケイト」

 

 え? なんでアタシの名前……を……

 あぁ……()()()()()

 あんたも苦労してるのね……

 触れられた部分からアタシが崩れ去って行く。

 ……ごめん、グレン。

 アタシ、帰れないや。

 

 

 

 ———翌日

 

 リリスとサタンは満身創痍で帰って来た。

 作戦は失敗したものの予備の作戦……美影(ミカゲ)光美(ミツミ)、二人の大術師によるその身と魂を生贄にした大結界の構築は成功し邪神達は結界外には出られない状態になった。

 人類はこれから先の未来を対邪神に捧げることになる。

 残されたケイトの遺伝子を元に俺が『勇者』を作り出し、リリスが回復し次第『聖剣』を造る。

 サタンは地獄を解放、統一したのち人類最後の『シェルター』の作成を行う。

 ……俺は……俺たちはやり遂げなければいけない。

 死んだケイトの為にも必ず魔皇を打ち倒す。

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