【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ   作:ラットマンΣ

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しばしの平穏

 病室で目を覚ます。

 この前の事件の際に手ひどく負傷した私は半ば療養をしなければいけない状態に陥っていた。

 左親指骨折、肋骨四本骨折etc……頭も10針縫う羽目にもなった。

 正直、生きているのが不思議なくらいだ。

 まぁ、そのおかげで病院からなかなか出られないわけだが。

 これじゃあ、何かあった時に対処に迎えない、いや、それ以前に色々と問題が浮き彫りになった。

 多対一の状況になってしまった時の対処法である。

 この前ので痛感したが、私は多対一の戦闘においてはかなり不利だ。

 前回は〈ヨグ=ソトースのこぶし〉でなんとか難を逃れたが、次はそういかないかもしれない。

 早急に別の戦闘手段を用意するべきだろう。

 

「と言うことでわざわざ二人には来てもらったわけだけど、何か質問はあるかな?」

 

「質問っつうかよぉ、なんで俺とシェリーなんだ?」

 

 グレンは問う。

 

「簡単な話だ、グレンには科学方面……特に機械で、シェリーには私が知らない魔術で各々いい案はないかと思ったのよ」

 

「けど、今でも十分なんじゃない?」

 

 シェリーは問う。

 

「確かに星外の魔術は強力なものが多い、が燃費が悪いの。後、さっき言った通り多対一になると〈ヨグ=ソトースのこぶし〉などのさらに燃費の悪いものを使わないといけなくなるのも問題だから……」

 

「あー、確かにそこら辺はめんどくさそうね。けど、アキルちゃんが使ってる魔術は私のと違ってその出所が星の外側からだからねぇ。そもそもの構造が違いすぎるのよ」

 

「そう言うこと、だから私も星外魔術以外に戦う手段を持とうと思ってね、シェリーは元からこの星にあった魔術には詳しいし、グレンは持ち前の科学力で超自然存在に対抗できそうな武器を作れないかと思って呼んだわけよ」

 

「なるほどなぁ、だがよ、いくらなんでも無理がねえか?」

 

「と言うと?」

 

「単純に俺は魔術ってものが分からねえんだよ、科学とは全く違うし、それにお嬢が相手するのは星の外の化物、言うなれば宇宙人みたいなもんだ、しかもモノによっちゃ物理法則がそもそも効かないときた、正直俺にはお手上げだ」

 

「なるほど、一理あるわね」

 

 グレンの言っていることは至極真っ当だ、超自然存在の中にはこの前の『スグルオ』のようなそもそも実体を持たない奴もいる。

 そんな奴らに対して現在の地球科学で対抗するのは無理があるだろう。

 

「魔術に関しても多分同じねぇ、星外のは専門外だけど、さっきも言った通りそもそもの構造が違いすぎるのよ。仮にアキルちゃんが今から魔術を覚えようとしても長い時間がかかると思うわ」

 

「うむ……弱ったわね、どうにかしてこの弱点は克服したいんだけど……」

 

「発想を変えましょう、そもそも何でもかんでも一人で解決しようとするからいけないのよ」

 

「あぁ、それは俺も思った。お嬢っていつも一人でどうにかしようとするからな」

 

「む、そんなつもりはないんだけどなぁ」

 

「アキルちゃんの悪い癖ね、そこを直しなさいな。具体的に言うとある程度戦える人と常に二人一組で動くとか」

 

「なるほど、となるとケイト、雪奈、ヴァレット辺りかなぁ……」

 

「そうねぇ、あの三人が今いる人員だと一番強いからねぇ、私は戦うのは専門外だしクリスくんはそれなりに戦えるだろうけど正直その三人には劣るだろうし」

 

「確かにな、俺も裏方専門だしな」

 

 ふむ、となるとやはりケイトが適任だろうか、あいつなら暴力ごとに強いし何より状況に対する対応力が高いからな。

 

「ケイトに頼んでみるとするわ。それはさておき、グレンにひとつ依頼したいものがあるの」

 

「ん? なんだ、なんか作れば良いのか?」

 

「あぁ、ちょっとしたものよ、銃弾を作って欲しい。私が作っておいた〈ヘルメス・トリスメギストスの毒塵(どくじん)〉を内蔵させたとっておきのやつをね」

 

「あー、あの化け物共によく効くやつか、まぁ、やっておくよ。サイズは?」

 

「ケイトの銃に合わせておいてちょうだい」

 

「了解、んじゃ俺は帰って作り始めますかね」

 

 そう言ってグレンは病室から出て行った。

 

「今日は、呼び出して悪かったわね。また何か悩んだら相談に乗ってもらえるかしら?」

 

「良いわよ、それくらい。なんたって私の大切な友人ですもの相談くらいいくらでも聞いてあげるわ」

 

 シェリーは笑顔でそう答える。

 我ながら良い友人たちを持ったものだ、だからこそ私はこの友人たちとの日々を守りたいと思える。

 

「はぁ、私も退院したら筋トレの一つでもしてみるかな、少しくらいは自分で対応できるようにしたいし」

 

「ダメよ」

 

 空気が変わったようにシェリーは呟く。

 

「どうしたの急に?」

 

「だって……」

 

「?」

 

「そんなことしたらアキルちゃんが筋肉ダルマになっちゃうかも知れないじゃない!」

 

 力強くそう答える。

 あ、これはめんどくさい地雷を踏んだかもしれない。

 

「いい? 私は可愛い娘の血が吸いたいの! 筋肉なんてそこから最もかけ離れたものよ! アキルちゃんはそのままて折れそうなくらいの細さと白さでいてよ! 吸血する側のことも考えるべきだと思うの私!」

 

「あ、あぁ……わかった、わかったから」

 

 あぁ、シェリーってそう言うのが好みなのか、まぁそう言う約束をしたのは私の方だからなるべく付き合うが、正直ちょっと……と思う。

 

「分かればよろしい!」

 

 シェリーは今まで見たことがないようなドヤ顔で満足げにそう答える。

 ……まぁ、他人の趣味にとやかく言っても仕方ないからな。

 

「じゃあ、私もこれで帰るから。早く元気になってね!」

 

 そう言ってシェリーも病室を後にする。

 私以外がいなくなった病室は寂しいほどに静かだ。

 

「そうだな、早く退院したいものね……」

 

 そう呟く、そうだ、私にはやることがある。

 未だ行方の掴めない『赤スーツの女』やつを捕まえしかるべき対処をする。

 超自然存在を悪用するようなやつだ、いつこのしばしの平穏が崩れるかわかったモノじゃない。

 真の意味での平穏な日々を過ごすためにも奴には会わなきゃいけないのだから……

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