【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ   作:ラットマンΣ

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旧友の来訪

ナズナの一件が落ち着いた次の日、アタシの元に一人の来客が来た。

親父の家業的にアタシの元に会いにくるやつなんてあいつしかいないが。

 

「やぁ、久しぶりだね松崎さん」

 

 そう言って形式的な挨拶をする。

 

「あぁ、久しぶりだなアキル」

 

彼女は蒼葉(あおば)アキル、この町……予玖土町(よくどちょう)の大地主で天下の大企業『サクラ・コーポレーション』社長の娘だ。

こいつとは小学校時代からの家族ぐるみの古い付き合いで、いわゆる腐れ縁というやつだ。

 

「で、お前は何しに来たんだ?」

 

「あら? そんな言い方酷くないかしら? まぁ、ちょっとした野暮用よ」

 

「野暮用ねぇ……まぁ、いいや。玄関で話してもあれだし入りなよ、適当な和室まで案内するわ」

 

「あら、ありがとう。それにしても相変わらず迷路みたいな家ね」

 

「まぁ、家業的にな?」

 

「それもそうね」

 

しばらくして応接用の和室に着く、そこには偶々ナズナがいた。

 

「シオン……と、えーと……」

 

「あら? あなたが噂のナズナちゃん? 初めまして、私は蒼葉アキルよ」

 

「アキルさんですか、ナズナです、よろしくお願いします」

 

「あら、紫苑より礼儀正しいじゃない」

 

「あ? なんか言ったか?」

 

「あら、怖い」

 

「まぁ、いいや。ナズナ、悪いんだけどお茶だししてもらってもいいかな?」

 

「はい! それでは用意してきますね!」

 

そう言って、ナズナはお茶を用意しに向かった。

まだこの家に来て1日なのによく配置を覚えてるもんだ。

 

「……」

 

アキルはそんなナズナの後ろ姿を冷たい目で見つめていた。

 

「ナズナが気になるのか? っていうかなんでナズナのことを知ってんの?」

 

「あら、貴方にしては鋭いのね、貴方のお父様に聞いたからよ、だいたい全部ね」

 

あのクソ親父はほんとロクなことしねぇな?! 

 

「で、何か? 心配でもして柄にもなく見舞いにでも来てくれたってか?」

 

「まぁ、半分正解ね」

 

「半分かよ、ちょっと傷つくぜ」

 

「だって、貴方元気そうじゃない? 普通お腹撃たれたらこんな元気じゃないわよ」

 

「それもそうだな、で、ナズナのことどこまで聞いたんだ?」

 

「だいたい全部よ」

 

なるほど、じゃあこいつもあの突飛な話を信じた上で来たのか、それは意外だ。

その手のオカルトは信じないやつだと思っていたが……

 

「さて、じゃあ残りの半分を済ませちゃうかしらね」

 

「そういや残りの半分てなんなんだよ?」

 

「そうね……」

 

アキルの空気が変わる。

昔から知っていた幼なじみのアキルではなく、親父にも似た威圧的で冷徹な空気を帯びた別人のように。

 

「貴方は何故彼女を助けたの?」

 

ただ冷徹にそう問いかける。

 

「何故って……そりゃあ助けを求められたからで」

 

「そう」

 

まるで、その答えを既に知っていたかのようにつまらなそうに返す。

 

「じゃあ、もう一つ、貴方はあの子が人じゃないと知った上で何故一緒に居続けるの? 一度はあの子のせいで死にかけたのに?」

 

「……確かに死にかけた、けど、私はナズナにそれを助けられたから。私が義理堅いのはよく知っているだろう?」

 

「ええ、よく知っているわ」

 

不愉快そうにそう答える。

 

「……」

 

しばらく、アキルは黙り込む。

その表情は何故だか少し悲しそうに見えた気がする。

 

「はぁ……」

 

しばらくの後、アキルは口を開く。

 

「貴方はそういう人間ですものね、心配して損した気分だわ」

 

「そうかい、お前も会わないうちにだいぶ変わっちまったな」

 

「……どういう意味?」

 

「なんか、冷たくなっちまったよなぁって思っただけさ。後、口調も妙に堅苦しくなったよな」

 

「……」

 

一瞬、アキルはものすごく不快そうな顔をした後、いつもの顔に戻った。

 

「そうね、確かに変わってしまったかもしれないわね」

 

どこかその時のアキルは酷く悲しそうに見えた。

 

「まぁ、いいわ。残り半分も私の考えすぎだったみたいだし、お茶を頂いたらさっさと帰るわ」

 

「なんだい、ゆっくりしてきゃいいのに」

 

「私はこう見えて忙しいのよ」

 

「そうかい」

 

ちょうどその時にナズナがお茶を持って部屋に戻ってきた。

 

「お待たせしました……えっと、遅すぎましたかね?」

 

ナズナはひどく困ったような声でそう言う、まぁ入った部屋の空気が葬式ムードならそうなるわな。

 

「そうじゃないよ、ちょっと色々あっただけさ」

 

「そう……ですか」

 

「そうそう」

 

ナズナはお茶を置いた後、私の後ろにちょこんと座った。

 

「そうね、ちょっと色々あっただけ、ごめんなさいねナズナちゃん、気にしないで」

 

アキルは優しげな声色でナズナにそう話しかける。

 

「はぁ」

 

ナズナは不思議そうにそう呟いた。

 

「ちょっと、長居しすぎたわね、お茶、美味しかったですよ」

 

そう言うとアキルはお茶を飲み切ってそそくさと帰る支度を始めた。

 

「送っていくよ、ちょっと待ってな」

 

「いいわよ、もうこの家の構造は覚えたから」

 

そう言ってアキルは部屋を後にした。

 

「なんだかすごく悲しそうな人でしたね……」

 

不意にナズナがそう呟く。

 

「そうか?」

 

「ええ、なんだかとっても悲しそうに私には見えました」

 

悲しそう、か、確かに少しそんな気もするが……

それ以上にアタシにはアキルが今までとは別人のように思えてしまった。

昔はもっと明るいやつだったんだがなぁ……

今はなんだか酷く疲れ切っている様に思えてしまう。

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