【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
「では、少し昔話をするとしよう」
賢王様はそう言うと一人語り始めた。
———遥か昔、大体70億年くらい前か。
今の様に大陸が一つになる前のことだ。
ある時天空に黒白の太陽……今で言う魔皇城が現れた。
魔皇城からは雨の様に忌々しい怪物や魔物、異形の神々が降り注いだ。
その時代の生命態では彼らを倒すことはできないのは明白だった。
だから全ての現生生命体は歴史上初の団結をした。
まずは二人の巫女、生者にして生命と光を司る巫女ミツミと死者にして死と影を司る巫女ミカゲの二人がその身と魂を糧として巨大にして強大な結界を張った。
それが現代にも残る大結界だ。
そして結界内で生命たちは各々別方向のアプローチで魔皇に対抗する手段を生み出そうとした。
死の世界を支配していた魔族……特に七大罪の魔王と閻魔率いる十王たちは魔皇の尖兵達を殺す魔術の発展形態である魔法を、ワタシの様な異星より来たる者たちは科学技術を発展させ、星に眠る神の力を持って星の聖剣や聖装を作り上げた。
そして人類は魔皇を打ち滅ぼす器……即ち勇者というシステムを作り上げた。
勇者は生まれながら魔力と身体能力が他者より遥かに優れ、我々が作り上げた聖剣に選ばれ扱うことのできる者のことを指す。
それを人工的に生み出す技術を人類は作り上げた。
そして最初の勇者となり後続の勇者のモデルとなった者、ケイト・リードと魔族代表の憤怒のサタン、そしてワタシの3人が最初の魔皇討伐に向かった。
……結果は惨敗、我々は誰一人として魔皇に傷一つ付けることすら出来ず、ケイトに至っては塵となって消えた。
それから幾億年、我々は技術の進歩のための道を歩んで行った。
そして今に繋がる。
本来なら太陽によって焼却されるはずだった星は邪神の気まぐれで生き残り、大陸は一つになった。
北部は邪神たちの領域になってしまった。
大結界は消耗し数年のうちに破壊されるだろう。
だから———
「最後の勇者アリス、キミが魔皇を討ち取るんだ」
賢王様は私の瞳をまっすぐ見てそう語る。
「……元よりそのつもりです。私は魔皇を打ち滅ぼし、世界に平和を訪れさせる為に戦いの旅に出たのですから!」
「ふふ、頼もしい勇者だ……そんなキミにジニスを預けるよ、きっと旅の共として役に立つ」
「は?! 師匠! 何言ってるんすか! そもそも俺は……」
「ジニス、キミはもう十分魔導を極めた。それに、そろそろワタシも限界でね。悠久の時間のなかで身体も所々ダメになり始めた。いわゆる寿命という奴だ。それにキミはもっと広い世界を知るべきだ。わかるね?」
「……分かりましたよ! つうことでよろしく勇者様。魔導師ジニス、せいぜいこき使ってくれや!」
そう言ってジニスは手を差し伸べる。
私はその手を取って握りしめる。
「あぁ、よろしくジニス。それに勇者様じゃなくてアリスで良いよ。これからは共に旅をする仲間なんだからね」
「そうかい、そんじゃアリスよぉ次は何処に行くんだ?」
「次は厄災の森に行く。腕利きの戦士がいると言う話だから、まずは仲間を集めたい」
「厄災の森か、随分と懐かしい響きだな。ジニス、アリス、気を付けたまへあの森は入るものを試す獣の残滓がいる。だが、きっとキミたちなら突破できるだろう。さぁ、行くといい最後にして新たな勇者達よ。願わくばキミたちの行く道に祝福があります様に」
「ありがとうございます、賢王様! それでは!」
「今まで世話になったなリリス様! じゃあな! 次会う時は魔皇倒した後だ!」
そう言って私達二人は賢王の書庫を後にした。