【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
———厄災の森入り口
「何もいませんね」
「いねえなぁ、影も形もありゃしない」
私達はふと言葉をこぼす。
御者が言っていた通りなら厄災の獣の一匹や二匹居てもおかしくないのに、何もいない。
否、いなさ過ぎる。
聞こえるのは風の音だけ、そして漂う死臭。
賢王様は森は入る者を試す獣の残滓がいると言った。
おそらくそれの影響だろう。
「ジニス、戦いの準備はいいですか?」
「……おう、かなりヤバそうな相手じゃねぇか。こっちも気合い入れてかないとな!」
そうして私達二人は森の中へと入る。
しばらく進むと真っ黒な人影が現れた。
漂う死臭からアレがこの森の番人だと言うことはすぐに理解した。
「ジニス!」
「おう!」
即座に陣形を組み上げる。
前衛に私、後衛にジニス。
黒い人影は消えるように私の元へ飛び込んできた!
ギリギリ視界に捉えることはできた。
だけど、早すぎる!
その黒い腕が触れる刹那、体を捻らせギリギリで避ける。
どうやら武器の類は持っていないらしい。
純粋な肉体だけの力で私達の力量を図るようだ。
影の動きはまるで獣の様で、森の暗さに身を潜めながら不意に襲ってくる。
避けられる攻撃は捌きながら、ジニスの魔法支援で防御魔法を張ってもらいながら戦いを続ける。
影の軌道を読み聖剣で切りつける。
しかし……
「な、捕まれ……キャァァァア」
「アリス!」
私はそのまま聖剣を捕まれ大樹に向かって投げ飛ばされ激突する。
幸い強化された鎧のおかげで大きなダメージはない。
だけど、ジニスが一人になってしまった!
「やばっ」
ジニスの元に獣の影が迫る。
このままではジニスは確実に殺される。
なら———
「魔力集中、脚部増大、弾けろ!」
魔力を脚に一点集中し爆発的に加速させる。
足は耐えきれず砕けるがそんなこと構ってられない。
ジニスの元に早く辿り着かなくては!
影がその狂腕を振るう刹那、私の剣が影を貫く。
「魔力充填! ノーデンスの光を!」
聖剣に魔力を回し影を掻き消すほどの光を放つ。
影は何事もなかったかの様に消え、あたりは静まり返った。
「馬鹿野郎! アリス! 足が!」
「大丈夫です……ジニスなら治せます、それにこうするより他に無かったのですから仕方のないことです」
「……つくづく馬鹿だよお前は、足見せてみろ今から治す」
「……すいません、ジニス」
「謝るくらいなら最初からやるな」
その日、私は初めてジニスに本気で怒られた。
私のやり方はどこか間違っているのだろうか?
勇者とはその身を犠牲にしてでも未来を繋ぐ存在、そうじゃなきゃいけないんじゃ無いのか?
……どちらにしろ、森の番人は倒すことができた。
あとはこの森にいると言う戦士。
エルフ、フェロウを仲間にできるかどうかだ。