【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
———勇者アリスの旅立ちから4年 ティンダロスの大口入り口
「後はここをひたすら下っていくだけね」
そう言って、ティンダロスの大口の壁面にある階段を下っていく。
「相変わらず冥界までの道は長いな」
フェロウはそんなことを言いながら足取りを進める。
言い方的に前にもきたことがあるのかな?
「つうか、道なくね?」
ジニスは足を震えさせながら殿を務めて階段を下る。
「何を言うのジニス? あるでしょ、階段が」
改めて、そう言って私は大穴の淵に造られた階段を指差した。
その底に見えるのは漆黒の暗闇だけだ。
「……なぁ、お前ら飛行魔法使えたりしない?」
「「しない」」
「ちくしょう! これだから脳筋どもは! はぁ……歩くか」
「ジニス、お前も筋肉をつけろ。俺のように華奢だがお前には筋肉が足りない」
「俺は魔導師だっつうの! とにかく行くぞ!」
「そうね、先頭は私で殿はジニスに任せても良い?」
「わぁったよ!なぁに歩くのにはもう慣れた」
そうして私達の冥界下りが始まった。
……
冥界には魔物は出現しない。
したとしてもすぐに魔族に殺されるからだ。
それを学習したのか冥界に魔物は近づかなくなった。
いわば冥界は結界内では賢王の書庫に次いで一番安全な場所とも言えるだろう。
そして冥界にはこの世に未練を残した魂が集まる。
だからきっとあの子もいるはずだ。
「どうしたアリス、さっきからやけに静かだな?」
「え? あ、何でもないよ!」
「ふむ、アリスよ。何か隠しているな? さてはへそくりでも作ったか?」
「……そんなんじゃないよ、フェロウ」
「仲間に隠し事とは感心しねぇなぁ、そういやアリス達の昔の話は聞いた事なかったな」
「お前もだろうジニス」
「どうせ道のりは長いんだ、昔話でもしながら冥界下りしようぜ!」
ジニスがそう提案する。
……言えない、言いたくない。
けど、本当にそれで良いの?
仲間に嘘をついてまで……共に戦うパーティーに嘘を吐くのは勇者として本当に正しいの?
……違う。
断じて違う!
ジニスとフェロウは私を信用して着いてきてくれた!
なのに私は二人にずっと嘘をついてきた!
そんなんじゃダメだ……
せめて最後は怖いけど本当のことを言わなくちゃ。
「……ジニス、フェロウ。今から大切な話をします。よく聞いてください」
「……随分と真剣そうじゃねぇかアリス」
「……」
「私は……私は
「……」
「……」
二人は黙り込む。
当然だ。
今まで勇者だと思って、勇者だからこそ私に着いてきてくれたのにその私が勇者じゃないのだから。
私はこの4年間ずっと二人を騙していたのだから。
私は最低最悪の女だ。
けど、その旅路もようやく終わる。
冥界で本物の勇者……あの子にこの身を捧げることこそが私の役割なのだから。
「今まで騙して本当にごめんなさい。謝って許されないのは百も承知です。だけど、冥界に辿り着ければ
「そうかよ。じゃあ、何で偽物か洗いざらい吐いてもらわねえとなぁ!」
ジニスはいつもの飄々とした態度に少し怒りを混ぜて私に問いかける。
「ジニス!」
フェロウは怒りの一言を放つ。
だけど、それが今は辛い。
「フェロウ、いいの。分かった、下りながら話しましょう。今はなき勇者の隠れ里であった話を」